飲食店の10年以内の廃業率は?廃業の要因と長く続けるポイントを解説

飲食店は「開業から10年以内に約90%が廃業する」と紹介されることがありますが、この数字を飲食店全体の廃業率として直接裏付ける公的な調査は確認できません。本記事では、飲食店の廃業率を考える際の注意点や近年の倒産動向、経営が難しくなる要因を解説。あわせて、長く続けるためのポイントと、営業継続が難しい場合の選択肢も紹介します。
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飲食店の10年以内の廃業率は?
飲食店は「開業から10年以内に約90%が廃業する」と紹介されることがあります。ただし、公的資料ではこの数字を直接裏付ける調査は確認できません。飲食店全体に共通する廃業率として受け取らないことが大切です。
2023年版中小企業白書では、業種別の開業率・廃業率で「宿泊業,飲食サービス業」が高いことが示されています。しかし、これは宿泊業も含む区分のデータで、開業した飲食店を10年間追跡した結果ではありません。雇用保険の記録に基づくため、従業員を雇っていない事業所などは把握できないという制約もあります。
年間の廃業率と、開業後10年間に廃業する割合は別の指標です。「1年で何%」「5年で何%」といった情報についても、調査対象や期間が異なる数値を並べて、生存率の推移として扱うことは避けましょう。
飲食店の倒産件数は近年増加している
飲食店の「10年以内の廃業率」を直接示す統計とは別に、近年の経営環境を見る指標として倒産件数があります。ここでいう倒産は、負債1,000万円以上で法的整理となった事業者を対象としており、自主的な閉店や廃業まで含めた数字ではありません。そのため、以下の倒産件数をそのまま飲食店全体の廃業率として捉えないよう注意が必要です。
帝国データバンクによると、2025年の飲食店経営事業者の倒産は900件で、前年の894件を上回りました。2000年以降の集計で最多となり、3年連続で増加しています。2026年上半期は473件と、前年同期の458件から15件増えました。上半期としては4年連続の増加で、過去最多を更新しています。
2025年は、負債5,000万円未満の倒産が696件と全体の77.3%を占めました。小規模な倒産が多いことも特徴です。食材費や人件費の上昇などを背景に、売上があっても利益を十分に残せない飲食店の厳しい状況がうかがえます。
※参考1:帝国データバンク│「飲食店」の倒産動向(2025年)
※参考2:帝国データバンク│「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)
飲食店が廃業に至る主な経営上の要因
飲食店が事業をやめる事情はさまざまですが、経営面ではコストの増加や人員確保、集客の難しさが課題になります。近年の倒産調査でも指摘される背景を踏まえ、営業継続を難しくする要因を解説します。
食材費や光熱費などのコストが増えている
食材の仕入れ価格や電気・ガス料金が上がると、同じ売上を維持していても手元に残る利益が減ります。調理や冷蔵・冷凍設備の稼働に必要な光熱費は、単純に削りにくい支出です。
例えば、料理の販売価格を据え置いたまま食材の原価が上がれば、一品を販売して得られる利益は小さくなります。客数が落ちていなくても、仕入れ単価や使用量を把握していないと、気付かないうちに収益が悪化するおそれがあります。
人手不足や人件費の上昇が経営を圧迫している
必要なスタッフを確保できないと、接客や調理が滞り、受け入れる客数や営業時間を制限せざるを得ない場合があります。残ったスタッフや店主に負担が集中すれば、営業体制の維持も難しくなります。
人材を採用・定着させるための賃上げや求人費用も、経営上の負担です。人件費を抑えようと人数だけを減らすとサービスに影響するため、売上規模と必要な人員のバランスが求められます。

コスト上昇分を価格転嫁しにくい
価格転嫁とは、増えた仕入れ費用などを販売価格に反映することです。飲食店では、客離れや近隣店との価格差を気にして、十分な値上げに踏み切れない場合があります。
帝国データバンクの2026年7月調査では、飲食店の価格転嫁率は28.7%でした。これは値上げした店舗の割合ではなく、コスト上昇分を価格へ反映できた度合いを表す指標です。費用の増加を自店で吸収し続ければ、利益を確保しにくくなります。
※参考:帝国データバンク│価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)
競合が多く安定した集客が難しい
競合になるのは、同じ料理を提供する店だけではありません。例えば居酒屋であれば、別の業態の飲食店や、持ち帰り用の総菜なども顧客の選択肢になります。
周辺の客層や利用目的と店の特徴が合わなければ、継続的な来店にはつながりにくいでしょう。開店直後に注目されても、その後の来店理由をつくれなければ売上は安定しません。「誰に、どのような場面で選ばれる店か」を明確にすることが大切です。

飲食店を長く続けるためのポイント
飲食店を長く続けるには、まず売上やコスト、資金繰りを確認し、自店の経営状態を把握することが重要です。そのうえで、リピーターの獲得や集客方法、メニュー・業態の見直しなど、売上や利益の改善につながる施策を検討しましょう。ここでは、収支管理から集客・メニュー改善まで順に解説します。
売上とコストを把握して収支を管理する
月々の売上だけでなく、食材費、人件費、家賃、光熱費などを確認しましょう。特に、食材費と人件費を合わせた「FLコスト」は、飲食店の利益を左右する重要な費用です。
あわせて、利益がゼロになる売上高である「損益分岐点」を把握すると、必要な売上の目安が分かります。実績と計画を比べ、仕入れ量やスタッフの配置を調整してください。利益が出ていても、借入元金の返済などで手元資金が減ることがあります。入金・支払いの予定を資金繰り表にまとめ、数カ月先まで資金が足りるか確認しましょう。
リピーターを増やして売上を安定させる
一度来店した人に再び選んでもらえる店づくりが、継続的な売上につながります。看板メニューの味を安定させるとともに、料理の提供や接客で期待に応えましょう。
例えば、定番料理に季節のおすすめを加える、来店客の反応を次のサービスに生かすといった工夫が考えられます。割引だけに頼らず、「またこの店で食事をしたい」と思ってもらえる体験を積み重ねることが大切です。
複数の方法で集客する
SNS、グルメサイト、自社サイト、店頭の看板など、客層に合う方法を組み合わせて店を知ってもらいましょう。例えば、SNSで料理の写真を発信し、サイトで営業時間や予約方法を案内すれば、来店までに必要な情報を伝えやすくなります。
ただし、媒体を増やしすぎると更新作業や広告費が負担になります。来店のきっかけを尋ねるなどして反応を確認し、運用を続けられる方法に絞って改善することが重要です。
必要に応じてメニューや業態を見直す
売れ行きだけでなく、メニューごとの原価や調理の手間も確認しましょう。よく売れていても利益が少ない料理は、価格や食材の組み合わせを見直す余地があります。
注文の少ない商品の整理や、食材を複数の料理で使う工夫も検討できます。店全体の業態を変える場合は、改装や設備への追加投資が必要になることもあります。まずは小さな変更から効果を確認し、費用と見込める売上を比べて判断しましょう。
経営改善をしても営業継続が難しい場合は早めに店舗売却を検討する
赤字や資金繰りの悪化が続き、改善策を実施しても回復が見込めない場合は、閉店や店舗売却も含めて今後の方針を検討しましょう。資金が尽きる前に相談すれば、売却条件や退去費用を比較する時間を確保しやすくなります。
賃貸店舗では、内装・厨房設備などを次の借主に譲る「居抜き売却」が選択肢になります。これは建物そのものの売却とは異なり、造作譲渡を通じて設備などを引き継ぐ方法です。条件が整えば、売却代金を得たり、撤去費用を抑えたりできる可能性があります。
ただし、買主との合意だけでは原状回復義務はなくなりません。貸主の承諾を得て、残す設備や原状回復の扱いを書面で確認しましょう。解約予告期間や引渡しまでの家賃も確認が必要です。リース品は原則としてリース会社の所有物なので、無断で譲渡せず、契約先に取扱いを確認してください。

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飲食店の将来を考える際は、廃業率の数字だけで判断せず、自店の収支や資金繰り、改善の見込みを確認することが重要です。営業継続が難しい場合には、内装や設備を生かした売却も検討しましょう。
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