飲食店の閉店時に必見!賃貸借契約書の見直しポイントと撤退コストを削減するコツ

飲食店を閉店することになったら、まず見直したいのが賃貸借契約書です。賃貸借契約書には原状回復義務や解約予告期間が明記されており、閉店のタイミングや費用を大きく左右します。飲食店閉店時の賃貸借契約書の見直しポイントや注意点、原状回復の詳細、閉店費用を削減するコツを解説します。
飲食店を閉店する際の賃貸借契約書の見直しポイント
飲食店の閉店が決まったら、最初に賃貸借契約書の内容を確認します。賃貸借契約書には、閉店後に必要な原状回復の詳細や解約予告の期間などが記載されています。後々のトラブルや想定外の出費を避けるためにも、契約書の見直しポイントを押さえておきましょう。
①原状回復の項目を確認する
飲食店の閉店時に、賃貸借契約書を見直す際に重要なのが「原状回復」の項目です。原状回復とは、借りた当時の状態に戻して物件を返却すること。特に飲食店の場合は原状回復費用が数百万円規模になるケースも多いため、原状回復の範囲を正確に把握することが重要です。
事業用の賃貸物件である飲食店では、経年劣化や通常の使用によって生じた汚れや損傷であっても、借主の負担で修繕する義務を負うことが一般的です。例えば、油汚れやタバコのヤニ、ニオイなどは、住居用の賃貸物件では貸主負担となることが多いですが、飲食店の契約書では「すべての損耗について原状回復義務が生じる」と明記されている場合があります。
また、入居時に内装や設備をゼロの状態(スケルトン)から作りこんでいる場合、「スケルトン渡し」(建物の骨組みだけが残った状態に戻すこと)が義務付けられているケースも多く、これによって解体工事の範囲が変わり、費用も高額になります。このような特約があるかをチェックし、どこまでが借主の責任範囲なのかを明確にすることが、後の工事費用削減や交渉の鍵となります。
②解約予告期間を確認する
賃貸借契約書に記載されている「解約予告期間」も、飲食店の閉店時に確認すべき項目です。解約予告期間とは、店舗を明け渡す意思を貸主や管理会社に伝える期限のことです。
飲食店などの事業用テナントの契約では、解約予告期間が3カ月から6カ月前と比較的長く設定されていることがほとんどです。例えば、「解約予定日の6カ月前までに書面で通知すること」と記載されている場合、退去したい日の6カ月前までに「解約通知書」を提出する必要があります。
資金繰りが厳しくなり、店舗をすぐに閉じたいと思っても、6カ月予告の契約であれば、通知後すぐに退去しても残り6カ月間の家賃を支払う義務が生じます。赤字が続き資金が底をつく前に、まずは契約書の解約予告期間を確認し、計画的な閉店を進めることが重要です。
飲食店の閉店時に賃貸借契約書を見直す際の注意点
契約書を確認する際に、見落としやすい点がいくつか存在します。原状回復の範囲や、解約予告を伝えるタイミングなど、誤った認識で進めると金銭的・時間的な損害につながるため、正しい知識を身につけておきましょう。
民間住宅と事業用物件で原状回復範囲が異なる
原状回復の概念は、一般の方が住む民間住宅と、飲食店などの事業用物件では根本的に異なります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、民間賃貸住宅の場合、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は賃料に含まれるとされており、借主に回復義務はありません。しかし、オフィスや飲食店などの事業用物件においては、入居時の状態に戻すことが契約に盛り込まれているケースが多いでしょう。
さらに、契約によっては原状回復工事の際に、貸主指定の業者を利用するよう義務付けられているケースもあります。この場合、「相見積もりを取って安い業者を選ぶ」などのコスト削減方法が難しくなります。事前に賃貸借契約書にて、原状回復の範囲や取り決めをしっかり確認しておきましょう。
解約予告の前に不動産会社へ相談する
契約書に定められた解約予告期間を確認したら、貸主や管理会社に通知する前に、居抜き売却を専門とする不動産会社に相談することをおすすめします。
解約予告を先に出してしまうと、貸主は次のテナント探しや原状回復工事の準備を始めるのが一般的です。すると、居抜きでの売却交渉の期間が短くなったり、居抜き自体を認めなかったりする可能性が高まります。
居抜き売却を成功させるためには、解約予告を出す前に不動産会社に相談し、貸主へ居抜きでの引き渡しを交渉することが理想的です。閉店を決断した段階で早めに、店舗買取専門の不動産会社に相談し、貸主との交渉戦略を立てておくと良いでしょう。
飲食店の閉店時に行う原状回復の種類
飲食店の閉店時に求められる原状回復には、主に3つのパターンがあります。どの方法で物件を明け渡すかによって、閉店にかかる費用や期間が大きく変わるため、契約内容や店舗の状況に適した方法を選びましょう。
内装解体工事
内装解体工事とは、契約で定められた範囲の壁、床、天井などの内装部分や、借主が設置した造作物を撤去する作業を指します。工事の範囲は契約によって異なりますが、厨房機器やイス、テーブル、照明器具、什器など、借主が追加した造作物はすべて撤去するのが基本です。
後ほど紹介するスケルトン工事とは異なり、建物の骨組みには手を加えず、あくまで内装と設備のみを対象とするため、比較的工事費用や工期を抑えられる方法です。
スケルトン工事
スケルトン工事とは、建物の骨組みだけを残し、内装材、設備、配管などを撤去して、コンクリートがむき出しの状態に戻す工事です。
飲食店のテナント契約では、入居時の状態がスケルトンであった場合、退去時もスケルトンに戻す「スケルトン返し」が特約として課されていることが多くあります。天井や壁の解体はもちろん、水道配管や電気配線、エアコンなども撤去対象となるため、工事の規模が大きく、高額な費用がかかる要因となります。
一般的な相場として、飲食店のスケルトン工事には坪あたり数十万円の費用がかかると言われています。仮に30坪の店舗であれば、数百万円の出費を覚悟しなければなりません。次に紹介する居抜きでの売却は、このスケルトン工事を回避する有効な手段となります。

居抜き
居抜きとは、閉店する店舗の内装や設備などを解体せずに残し、次のテナントに有償で譲渡する方法です。居抜き売却が成立すれば、原状回復のための工事費用が不要になるのが最大のメリットです。場合によっては、造作の売却益として数十万円から数百万円の収入を得ることもできます。
また、解体工事の期間を設ける必要がないため、退去直前まで営業を続けられるのも嬉しいポイントです。ただし、居抜き売却をするには貸主からの許可が必要です。契約書に「原状回復義務あり」と書かれていても、交渉次第で居抜き売却が可能になるケースもあるので、まずは居抜きを専門とする不動産会社に相談すると良いでしょう。

飲食店の原状回復工事の具体的な内容
原状回復工事を行う場合、具体的にどのような作業があるのかを知っておくと、見積書の内容を精査できるようになります。飲食店の原状回復工事で行われる主な内容について解説します。
内装解体
内装解体とは、店舗の内側に施された内装を取り除く作業のことです。客席と厨房を隔てる間仕切り壁から、カウンター、造り付けの棚、天井や床の仕上げ材(クロス、フローリング、タイルなど)まで、借主が設置したものはすべて解体の対象となります。
補修
原状回復工事において、貸主が残すことを定めた部分に傷や損傷が生じていた場合、必要となるのが補修工事です。厨房の床コンクリートに重い厨房機器を設置した際にできたひび割れや、壁にビスを打ち込んだ跡、油やタバコのヤニによる壁や天井の汚れなどが対象となります。
産業廃棄物処理
内装解体や設備撤去の過程で発生する、木材、コンクリート片、金属くず、プラスチックなどの廃材は「産業廃棄物」とされるため、法律に基づいた適切な処理が必要です。一般の家庭ごみとして出すことはできず、許可を得た専門の業者に回収・処分を依頼しなければなりません。処理費用は、廃棄物の種類や量によって細かく決められており、解体工事の規模が大きいほど廃棄物も増え、コストが高額になります。
防水・防災設備などの移設
厨房の防水機能や、火災報知器、排煙設備といった防災設備は、店舗の安全に関わる重要な設備であり、借主の都合で変更・移設した場合、退去時に元の状態に戻す義務が生じます。特に重飲食を経営していた店舗では、強力な換気ダクトを設置するために建物の構造の一部に手を加えたり、厨房のレイアウト変更に伴って火災報知器の位置を変更したりすることがあります。
このような「躯体に影響を与える変更」や「法定設備への変更」は、原状回復の際に戻さなければならず、工事費用が高額になりやすい傾向があります。
飲食店の閉店時に原状回復費用が高額になる事例
飲食店の原状回復費用は、店舗の業態や立地、内装によっても変動します。どのようなケースで費用が高額になるのかを把握しておきましょう。
重飲食店を経営していた
焼肉店、中華料理店、ラーメン店といった重飲食店を経営していた場合、カフェやパン屋などの軽飲食店に比べて、原状回復費用が高額になる傾向があります。
これは、重飲食店特有の設備や、営業による建物への影響が大きいことが主な理由です。例えば、焼肉店では各テーブルに排気ダクトを設置するために、天井や壁に大掛かりな工事が必要です。中華料理店でも、強力な排気や防水が必要なウェットキッチンを採用していることが多く、床のコンクリートの解体作業が必要となる場合もあります。
個室や造作物が多い
客席に個室を多く設けていたり、造作物が多かったりする店舗は、原状回復の際に解体費用がかさみます。個室を区切るための間仕切り壁や、複雑な形状の造作カウンターなどは、解体作業に手間と時間が必要となるためです。
搬入・搬出しにくい建物にある
店舗が建物の高層階にありエレベーターが小さい、あるいは間口が狭く、廃材の搬出が困難な建物に入居している場合も、工事費用が割高になる可能性が高いです。
原状回復工事では、大量の廃材や解体機材を運び出す必要があり、作業効率が悪いと人件費の上昇に直結します。例えば、エレベーターがないビルの2階以上の店舗では、解体したコンクリート片や木材を階段で運び降ろさなければならず、作業員が増えるか、作業時間が長くなることで費用が増加します。
商業施設に入居している
駅ビルやショッピングモールといった大規模な商業施設に入居している店舗は、通常の路面店に比べて原状回復工事の費用が高くなりやすい傾向にあります。商業施設の場合、原状回復工事に際して指定業者の使用を義務付けていることが一般的です。指定業者は、建物の構造や設備を熟知している一方で、他社との競争がないため、見積もり価格が割高になる傾向があります。
また、施設の営業時間中は工事ができないため、騒音や振動を伴う解体作業は夜間や早朝に限定されることが多く、割増料金も発生しやすくなります。
換気や防水防災設備を変更している
厨房の換気ダクトを屋上まで伸ばしたり、防水機能を強化したりと、設備に大きな変更を加えている場合も復旧費用が高くなります。特に、排気ダクトの設置場所の変更は、外壁や屋根の工事を伴うことが多く、解体して元の状態に戻す作業も複雑です。
また、厨房の防水機能を高めるために床を深く掘り下げて再構築している場合も、退去時には元に戻さなければなりません。これらの工事は、専門性の高い技術が必要となる上、建物の骨組みに関わる部分のため、貸主側も慎重になり、厳格な原状回復を求めてくるケースが多いでしょう。
飲食店の閉店時に原状回復費用を削減する方法
飲食店の閉店に際し、高額になりがちな原状回復費用は大きな負担です。しかし、居抜き売却を検討したり、原状回復工事の詳細を明確にしたりすることで、費用を大きく削減できる可能性があります。
居抜き売却を検討する
飲食店の閉店コストを削減するなら、居抜き売却が最もおすすめです。内装や厨房設備、造作物を解体せずに次の借主へ譲渡できるため、数十万円~数百万円の原状回復工事費用が不要となります。
例えば、工事費用が500万円かかる見込みだった場合、居抜き売却にすれば500万円を払わずに済むだけでなく、内装や設備によっては造作譲渡費を得ることも可能です。
実際、多くの閉店事例において、居抜き売却は費用対効果が最も高い選択肢となっており、閉店費用の削減に貢献しています。ただし、貸主の許可が必要となるため、必ず解約予告を出す前に居抜き専門の不動産会社に相談し、貸主と交渉することが重要です。
原状回復工事の範囲を明確にする
居抜き売却が難しい場合でも、原状回復工事の範囲を明確にすると閉店費用の削減が可能です。契約書に「原状回復」とだけ書かれており、「スケルトン返し」が明記されていない場合は、より費用の安い内装解体工事で済ませられるか、貸主と交渉する余地が生まれます。
また、エアコンや照明などが入居時に設置されていて、貸主の資産であれば撤去は不要です。さらに、壁や天井のひび割れなど、入居時から存在していた設備の老朽化は、交渉によって借主の負担から外せる可能性があります。交渉を有利に進めるためには、賃貸借契約書を確認するとともに、入居時の写真などを証拠として提示すると良いでしょう。
原状回復工事の見積書を見直す
業者から提示された原状回復工事の見積書は、記載内容を細かくチェックし、費用が適正かどうかを検証します。見積もりに記載されている工事項目と単価が、契約書で定められた原状回復の範囲と一致しているかを確認しましょう。解体するはずのない、壁や設備の撤去費用が含まれていないか精査します。
もし、原状回復工事において業者指定がない、あるいは交渉の余地がある場合は、必ず複数の工事会社から相見積もりを取るのがおすすめです。相見積もりを比較すれば、より安い業者を選んだり、価格交渉をしたりすることが可能となります。
飲食店閉店時の賃貸借契約書の見直しポイントを押さえよう
飲食店の閉店を考え始めたら、賃貸借契約書の「原状回復の範囲」と「解約予告期間」を確認することが重要です。特にスケルトン工事など、原状回復の範囲が広いほど費用負担も大きくなります。記事で紹介した賃貸借契約書の見直しポイントやコスト削減のコツも参考に、スムーズで負担の少ない閉店方法を探ってみてください。
原状回復工事費用が高額になる場合は、大幅に費用を削減できる居抜き売却がおすすめです。「買取の神様」は、飲食店の居抜き買取に特化した不動産会社として、首都圏・東海・関西・九州の広範囲で店舗売却の実績があります。豊富な実績をもとに、居抜き売却を全面的にサポートします。店舗の移転や売却をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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