赤字店舗は立て直すべきか撤退すべきか|判断を誤らないための基礎知識

飲食店の経営において、赤字が続く状況は経営者にとって大きな負担となります。しかし、赤字は「経営からのサイン」であり、正しく数字を読み解けば必ず次の一手が見えてきます。本記事では、黒字化のための具体的な立て直し術から、損失を最小限に抑える撤退の判断基準まで、経営者が今取るべき行動を解説します。

目次

飲食店が赤字に陥る本当の理由とは

「一生懸命働いているのに、なぜかお金が残らない」という状態には、必ず明確な理由があります。まずは自分の店舗がどのパターンの赤字に陥っているのかを客観的に把握することから始めましょう。

赤字には「一時的な赤字」と「慢性的な赤字」がある

一時的な赤字とは、オープン直後の販促費や、急な設備の故障、近隣の工事による一時的な客足減少などが原因です。これらは原因が去れば回復の余地があります。

一方で慢性的な赤字は、原価や人件費が売上に見合っていない「構造的な問題」です。今の努力の延長線上に黒字があるのか、冷静な見極めが必要です。

数字で見る飲食店の赤字構造

飲食店経営において重要な指標がFL比率です。FL比率とは、Food(食材費)とLabor(人件費)の合計を売上高で割った比率のことで、一般的に50%から60%以下に抑えることが目標とされています。食材費は24~40%、人件費は20~36%程度が目安で、FL比率が65%を超えると経営は危険な状態といわれています。

もし食材費と人件費だけで売上の70%を超えているなら、どんなに客数を増やしても利益は出ません。まずは自店舗のFL比率を計算してみることが、立て直しの第一歩です。

月商300万円モデルで見る赤字構造

月商300万円の小規模飲食店をモデルに、FL比率が高い場合の収支を具体的に確認してみます。
※一般的な数値を用いた想定例です。

食材費35%(105万円)、人件費38%(114万円)の場合、FLコストは219万円となり、売上の73%を占めます。
ここに家賃や水道光熱費などの固定費65万円が加わると、

売上300万円 −(FLコスト219万円+固定費65万円)= ▲16万円

このように、FL比率が高い状態では、客数を増やしても赤字が解消されず、営業を続けるほど資金が減っていく構造になります。

赤字経営でも即倒産しないケースがある理由

帳簿上は赤字でも店舗が回っているのは、減価償却費などの「現金の支出を伴わない費用」があるため、あるいは経営者が自分の給料(役員報酬)を削って支払いに充てているためです。

国税庁の統計によると、2022年度の赤字法人率は61.1%にのぼり、多くの企業が帳簿上赤字でも事業を継続しています。しかし、これは貯金や借入金を切り崩しているのと同じ「延命」に過ぎません。手元の現金(キャッシュ)が尽きる前に、根本的な改善か撤退の決断を下す必要があります。

※出典:国税庁「令和4年度分 会社標本調査結果」

赤字店舗立て直しに必要な2つの基本原則

店舗を黒字化させる仕組みは非常にシンプルで、「売上を増やす」か「費用を削る」かの2つしかありません。重要なのは、どちらを優先し、どこに注力するかを明確にすることです。売上アップとコスト削減は同時に進めるべきですが、まずは利益に直結しやすい「費用のコントロール」で足元を固め、その後に確実な売上施策を打つのが基本的な考え方です。

売上を上げる施策の考え方

売上を伸ばすためには、施策を「客単価」「来店頻度」「注文点数」の3つに分解して考えることが重要です。どれか一つだけに偏るのではなく、自店舗にとって改善余地の大きい項目から優先的に取り組みます。

① 客単価を上げる
客単価向上は、単純な値上げではなく、付加価値を加える形で行うのが基本です。トッピングの提案やセットメニューの設計により、顧客の満足度を下げることなく、自然に単価を引き上げることができます。

② 来店頻度を高める
新規顧客の獲得にはコストがかかるため、既存顧客の再来店を促す方が効率的です。次回利用できるクーポンの配布や、SNSを活用した限定情報の発信などにより、再訪のきっかけを作ります。

③ 注文点数を増やす
一度の来店での注文点数を増やすことも、売上向上に直結します。「あと一品」を意識したメニューブックの構成や、食後のデザートをスタッフが声掛けするなど、オペレーションの中で工夫を徹底します。

費用を下げる施策の考え方

FLコストや固定費の削減は、いきなり大きな改革を行う必要はありません。日々の管理方法を少し変えるだけで、確実に効果が出る項目から着手します。

FLコスト削減の具体策

  • 食材の廃棄ロスを毎日グラム単位で記録する
    → 廃棄量が可視化され、仕入れ量や仕込み量の見直しにつながります。
  • 暇な時間帯のシフトを見直し、15分単位で調整する
    → 人件費は「合計時間」で決まるため、細かな調整が効果を発揮します。

固定費削減の具体策

  • 電気・ガスの契約プランを見直す
  • 利用頻度の低い月額制サービスを解約する
    → 一度見直せば、継続的にコスト削減効果が続きます。

業務効率化による間接的なコスト削減

  • スマホで注文できるモバイルオーダーを導入する
    → スタッフの負担軽減と注文ミス防止につながり、結果的に人件費削減が可能です。

すぐ着手すべき赤字店舗立て直し施策

赤字の立て直しというと、大規模な改装や新たな投資を想像しがちですが、必ずしもそうではありません。まずは今日から実行でき、費用をかけずに改善効果が見込める取り組みから着手することが重要です。小さな変化でも、現場の意識や数字に確実な影響を与えます。

掃除と片づけによるオペレーション改善

清掃と整理整頓は、すべての改善の土台となる施策です。厨房内が整理されることで調理動線が短くなり、提供スピードが安定します。また、清潔な環境はスタッフの意識を引き締め、ヒューマンエラーの防止にもつながるでしょう。来店客は店内の細かな汚れや乱れを意外なほど見ています。「清潔感」は、広告を使わずに再来店を促す重要な要素です。

定番・主力メニューの再設計

メニュー数が多い店舗ほど、食材ロスや仕込み負担が増えやすくなります。売上への貢献度が低い商品は思い切って見直し、売れ筋商品に集中することが重要です。主力メニューの品質を高めつつ原価率を調整することで、「この店といえばこれ」と認識される強みを作ることができます。

販促・広告費の見直しが利益を圧迫していないか

広告を出して集客できていても、その利益が広告費で相殺されていては意味がありません。一人の顧客を獲得するためにいくらかかっているのかを把握し、費用対効果を冷静に見直す必要があります。近年では、Googleマップの情報を充実させるMEO対策など、費用をかけずに成果が出やすい集客手法も増えています。

レジ・会計・事務作業の無駄を削減する

経営者が事務作業に多くの時間を取られている場合、本来注力すべき経営判断や現場改善に手が回らなくなります。クラウド型の会計ソフトやPOSレジを活用すれば、売上管理や給与計算の自動化が可能です。空いた時間を接客や商品改善に充てることが、結果として売上向上につながります。

赤字店舗立て直しを阻む典型的な失敗パターン

改善に取り組む姿勢は重要ですが、判断を誤ると状況を悪化させてしまうこともあります。よくある失敗例を把握し、同じ状況に陥らないよう注意が必要です。

安売りによる利益率の悪化

客数減少を理由に、安易な値下げやクーポン施策に頼るのは危険です。価格だけを目的とした来店が増え、通常価格に戻せなくなるケースが少なくありません。重要なのは「安さ」ではなく、価格に見合った価値を提供できているかどうかです。

集客ありきで原価・人件費を見ていない

話題性によって一時的に忙しくなっても、原価率の高い商品構成や無理な人員配置が続くと、売上が伸びるほど利益が圧迫されます。集客施策と同時に、原価・人件費が適切に管理されているかを確認する必要があります。

無計画な追加投資・新規出店

「今の店がダメだから別の業態に変えよう」「2号店を出して利益を合わせよう」という考えは、多くの場合失敗します。1号店の赤字原因を解決できていないまま投資をしても、赤字が2倍になるだけです。まずは今の店を「利益が出る体質」に変えることが先決です。

赤字店舗が「立て直せるか」を判断する基準

努力を続けることは大切ですが、すべてのケースで立て直しが最善とは限りません。判断の基準となるのは、感情ではなく数値です。

営業損益・経常損益・キャッシュフローの見方

まず注目すべきは営業利益です。ここが継続的にマイナスの場合、本業そのものに課題があります。一方で、本業が黒字で借入返済のみが重荷となっている場合は、金融機関への相談余地があります。

資金繰りが維持できる期間で判断する

現在の赤字状態が続いた場合、あと何か月営業を続けられるのかを具体的に把握することが重要です。現金残高が家賃の数か月分を下回ると、閉店費用すら確保できなくなる可能性があります。

金融機関・取引先との交渉余地

支払いが厳しくなる前に、早めに相談する姿勢が信頼維持につながります。改善計画を示すことで、条件変更に応じてもらえるケースもあるでしょう。

赤字が膨らむ前に撤退するという選択肢

閉店は失敗ではなく、次の機会に備えるための経営判断の一つです。早期に撤退を決断することで、損失を最小限に抑えられる場合もあります。

立て直しより撤退を選ぶべきタイミング

立地環境の悪化や競合状況の変化など、自店舗の努力だけでは改善が見込めない要因がある場合は、立て直しに固執すべきではありません。また、長時間労働による体調悪化や、家族との生活が破綻しかけている状況も、経営判断として無視できないサインです。

「努力すれば何とかなる」という段階をすでに超えている場合、撤退は逃げではなく、合理的な判断といえます。

撤退が遅れることで生じるリスク

赤字を放置したまま営業を続けると、原状回復費用や人件費、仕入先への支払いが重くのしかかります。特に注意すべきなのは、閉店するための資金すら確保できなくなるケースです。

この状態に陥ると、自己資金の投入や借入に頼らざるを得なくなり、結果として個人資産まで失うリスクが高まります。撤退が遅れるほど、選択肢は確実に狭まっていきます。

感情ではなく数字で撤退を判断する重要性

撤退判断を難しくするのは、「ここまで続けてきた」「顧客に申し訳ない」といった感情です。しかし、経営判断において感情は、しばしば誤った方向に導きます。

あらかじめ下記のようなといった数値基準を決めておくことが重要です。

  • 赤字が何か月続いたら撤退するのか
  • 現金残高がいくらを下回ったら判断するのか

数字を基準にすれば、判断のタイミングを逃さず、自分自身と家族、そして次の挑戦を守ることにつながります。

赤字店舗の退去・閉店コストを抑える方法

閉店時に大きな負担となるのが原状回復費用です。どのような契約内容になっているかを確認し、不要なコストを抑える工夫が求められます。

スケルトン工事が必要になるケース

多くの賃貸借契約では、退去時に「入居時の状態へ戻す」ことが求められます。飲食店の場合、これは内装・設備をすべて撤去し、コンクリート剥き出しの状態に戻す、いわゆるスケルトン工事を指すことが一般的です。

ただし、すべての契約で一律にスケルトンが必要とは限りません。契約書の特約によっては、壁や天井、床の一部を残せる場合や、貸主との協議によって工事範囲を調整できるケースもあります。まずは契約書を確認し、「どこまで戻す義務があるのか」を明確にすることが重要です。

原状回復費用の相場と注意点

原状回復費用は、業態や設備の内容、立地条件によって大きく異なります。一般的には、軽飲食であれば1坪あたり数万円、重飲食の場合はさらに高額になることもあります。小規模店舗であっても、工事内容次第では数百万円規模の費用が発生することも珍しくありません。

注意したいのは、最初に提示された見積もりが必ずしも適正とは限らない点です。工事項目が過剰に含まれていたり、本来不要な撤去作業が盛り込まれていたりするケースもあります。複数社から見積もりを取り、工事内容を比較検討することで、無駄な支出を防ぐことができます。

居抜きで売却・譲渡するという選択

退去コストを抑える方法として、有力なのが居抜きでの売却・譲渡です。居抜き譲渡とは、内装や厨房設備をそのまま次の借主に引き継ぐ方法で、原状回復工事を行わずに退去できる可能性があります。

この方法が成立すれば、

  • 高額な原状回復費用を回避できる
  • 内装や設備を造作譲渡料として評価してもらえる

といったメリットが期待できます。

重要なのは、解約通知を出す前に動くことです。一度スケルトン前提で話が進んでしまうと、居抜きという選択肢が取れなくなる場合があります。閉店を視野に入れた段階で専門業者に相談することで、条件や選択肢が大きく広がる可能性があります。

赤字店舗立て直し・撤退時の注意点

立て直し、または撤退のどちらを選ぶ場合でも、法的手続きや契約処理を誤ると、想定外のトラブルや追加コストが発生する可能性があります。特に注意すべきなのが、スタッフ対応とリース契約、そして各種届出の漏れです。いずれも後回しにすると、閉店後に問題が表面化しやすいポイントです。

スタッフへの解雇予告について

労働基準法では、労働者を解雇する場合、30日前までの予告、もしくは30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払いが義務付けられています。この手続きを怠ると、未払い賃金請求や労働トラブルに発展する可能性があります。

経営が厳しい状況であっても、スタッフへの説明はできるだけ早く、誠実に行うことが重要です。次の仕事を探すための時間的余裕を与えることで、不要な対立やトラブルを防ぐことにつながります。

リース契約の取り扱い

厨房機器や設備をリース契約で導入している場合、閉店時には必ずリース会社への連絡と精算が必要となります。リース品は所有物ではないため、無断で売却・譲渡することはできません。

居抜き売却を検討する場合でも、リース契約を次のオーナーへ引き継ぐには、リース会社による審査と承諾が必要です。閉店を決めた段階で早めに相談することで、対応の選択肢を確保しやすくなります。

閉店後のトラブルを避けるために

店舗の解約には、契約書で定められた解約予告期間(通常1〜3か月前)を守る必要があります。期限を過ぎると、不要な賃料が発生するケースもあるため注意が必要です。

また、保健所への廃業届や税務署への異動届など、行政手続きも忘れずに行いましょう。これらを適切に処理しておくことで、閉店後の問い合わせやトラブルを未然に防ぐことができます。

赤字店舗立て直しを考え始めたら、今からできる準備を進めよう

赤字店舗の立て直しでは、売上改善やコスト削減と同時に、「立て直すべきか、撤退すべきか」を数字で判断する視点が欠かせません。無理な延命は損失を拡大させる一方で、早めに選択肢を整理すれば、資金や次の可能性を守ることもできます。現状を冷静に見極めたうえで、最適な判断を行うことが重要です。

赤字店舗立て直しを検討する中で、撤退や売却も視野に入れたい場合は、「買取の神様」にご相談ください。「買取の神様」は、首都圏・東海・関西・九州で多くの飲食店オーナー様に選ばれている居抜き買取の専門サービスです。居抜き売却に対応しているため、原状回復工事を行わず、内装や設備を残したまま整理できる可能性があります。造作譲渡に必要な貸主との交渉や手続きも任せられるため、判断が難しい場面でも進めやすい点が特長です。

10業態100店舗以上の開業・経営経験をもとに、店舗の状況に合わせた現実的な提案を行っています。無料相談・無料査定も行っていますので、「まずは話だけ聞いてみたい」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

男の子3人を育てるママライターです。飲食店を経営していた両親の元で、美味しいものを食べて育ちました。現在は息子たちの野球の遠征先でお気に入りの飲食店を探すのが趣味です。満足してもらえる記事の執筆を心がけています。

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