飲食店における「廃業」と「閉店」の違いは?用語解説から具体的な流れまで解説

飲食店を経営する中で、店舗を畳む決断を迫られた際、直面するのが「廃業」や「閉店」といった言葉の定義です。これらの言葉は混同されがちですが、対象の範囲と事業の継続性において違いがあります。本記事では、飲食店舗の売却や撤退を検討中の方に向けて、用語の正確な意味と具体的な手続きの流れを解説します。

目次

閉店とは?

閉店とは、特定の店舗がその場所での営業を終了することを指します。多店舗展開をしている企業が一部の不採算店舗のみを閉める場合もこれに該当し、事業そのものが消滅するわけではありません。まずは閉店という言葉が持つ範囲と、混同しやすい閉業との違いについて整理しましょう。

店舗や事業所が業務を停止すること

閉店とは、文字通り店舗の営業活動を停止することを指します。飲食店経営において閉店が選択される理由は、売上不振による撤退だけでなく、契約満了や建物の老朽化、移転など多岐にわたります。

重要な点は、閉店はあくまで特定の拠点における業務停止であり、経営体としての活動が必ずしも終わるわけではないということです。例えば、地域に根ざした個人の定食屋が、店主の高齢化を理由に「今月で閉店します」と告知する場合、それは利用者に対する営業終了の合図となります。この際、店舗としての機能は失われますが、運営主体が個人事業主であればその事業主としての立場、法人であれば会社組織そのものは存続している状態です。

閉業との違い

「閉業」は「閉店」と似た響きを持っていますが、文脈によってニュアンスが異なります。一般的に閉店が「店舗(建物)」に焦点を当てているのに対し、閉業は「なりわい(事業)」を閉じるという意味合いが強くなります。飲食業界においては、単一店舗のみを経営している個人事業主の場合、閉店と閉業は結果として同じ状態を指すことが多くなります。

一方で、複数の飲食店を運営している法人が、そのうちの一つのブランドや特定の店舗のみを畳む場合は、閉店とは言いますが閉業とは言いません。なぜなら、会社としての事業は他の店舗で継続されているからです。このように、閉業という言葉は、より「事業全体の終了」というニュアンスを強調したい場面で使われます。

廃業とは?

廃業は、経営者が自らの意思で事業そのものを完全に、かつ永続的に終了させることを指します。閉店が物理的な店舗の停止であるのに対し、廃業は社会的な事業主体としての活動を終えるという、より重い意味を持ちます。

飲食店における廃業の理由として近年増加しているのが、後継者不在による黒字廃業です。中小企業庁のデータによると、日本の中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、たとえ店舗に利益が出ていても、引き継ぐ人がいないために廃業を選択せざるを得ないケースが後を絶ちません。

廃業は倒産とは異なり、基本的には債務超過に陥っていない状態で、経営者が自主的に判断して行います。例えば、長年地域で愛されてきたレストランが、店主の健康上の理由で、借金もなく余力があるうちに事業を畳む決断をするのが典型的な廃業の姿です。

廃業と関連用語との違い

廃業を検討する際には、倒産や解散、清算といった多くの専門用語が出てきます。それぞれの用語が持つ意味と、飲食店経営における位置付けを確認しておきましょう。

廃業と閉店の違い

廃業と閉店の最大の違いは、継続性の有無と対象の広さにあります。閉店は「特定の場所での営業終了」であり、事業自体は移転や他店舗で続く可能性があります。一方、廃業は「事業活動そのものの消滅」を意味し、復活を前提としない永続的な終了を指します。

例えば、あるラーメン店が建物の建て替えのために一旦店を閉める場合は閉店ですが、店主が引退して二度と商売をしないと決めて役所に届け出るのが廃業です。飲食店オーナーが店舗売却を検討する場合、一店舗を閉店して譲渡するだけで良いのか、あるいは自身の事業家としてのキャリアを終えて廃業するのかという視点を持つことが重要です。

廃業と倒産の違い

廃業と倒産は、どちらも事業が終わるという点では共通していますが、そのきっかけと財務状況が異なります。廃業は、経営者が自分の意思で、多くの場合、負債をすべて返せる状態で行う自主的な終了です。これに対し、倒産は借入金の返済ができなくなったり、不渡りを出したりして、事業の継続が客観的に不可能になった状態を指します。

資金繰りに行き詰まり、裁判所に破産を申し立てるのが倒産であるのに対し、廃業は経営状態が健全であっても、戦略的な出口として選ばれることが多くあります。

廃業と解散の違い

法人の場合、廃業へ至るプロセスの中に「解散」というステップが含まれます。解散とは、会社が本来の目的である営業活動を止め、清算の手続きに入ることを法律上宣言する行為です。つまり、廃業が事業活動の実態がなくなることを指すのに対し、解散は法人の法人格を消滅させるための法的手続きの始まりを意味します。

例えば、株式会社として飲食店を運営している場合、株主総会で解散の決議を行い、登記をすることで会社は解散した状態になります。解散しただけではまだ会社という枠組みは残っており、その後の清算手続きを経て初めて完全に消滅することになります。

廃業と清算の違い

清算は、解散した会社が残した資産を整理し、負債を支払って、最終的に残ったお金を株主などに分配する一連の作業を指します。廃業を完遂させるための、事務的な実務が清算であると考えてよいでしょう。飲食店の場合、厨房機器の売却代金や店舗の敷金返還分などを回収し、そこから未払いの仕入れ代金や従業員の給与、税金を支払う作業がこれに当たります。

すべての清算が終わると「清算結了」となり、登記簿からも会社名が消えることになります。この清算過程で、いかに資産を高く売却できるかが、最終的に手元に残る金額を左右します。

廃業と休業の違い

休業は、事業を辞めるのではなく、一時的に営業をストップさせる状態です。廃業は永続的な終了ですが、休業は将来的な再開の意思があるという点が大きな違いです。例えば、店主の病気療養や店舗の改装、あるいは社会情勢の変化による一時的な営業自粛などが休業に該当します。

休業はあくまで「再開を待つ状態」であるため、店舗の維持費が発生し続けるリスクも考慮しなければなりません。

飲食店における廃業や閉店に向けた流れ

飲食店を廃業・閉店する際は、契約や法務に関する事務作業を計画的に進める必要があります。真っ先に確認すべきなのが、賃貸借契約書に記載された「解約予告期間」です。一般的に事業用の物件では、退去の3ヶ月から6ヶ月前に通知を出す必要があると定められています。

例えば、6ヶ月前予告の契約であれば、今日辞めたいと思っても、半年後までの家賃を支払い続けなければなりません。さらに、解約予告を出すタイミングも慎重に検討する必要があります。一度解約予告を出してしまうと、後から取り消すことが難しく、次の借主が決まるまでの期間が限定されてしまうからです。もし後述する居抜き売却を検討予定なら、解約予告を出す前に不動産会社に相談し、水面下で買い手を探し始めるのが理想的です。

次に、店舗をどのような形で手放すかを決定します。選択肢は大きく分けて、内装や設備をそのまま残して売却する「居抜き売却」と、すべてを撤去して更地のような状態に戻す「スケルトン戻し」があります。飲食店の廃業や閉店において最も推奨されるのは、居抜き売却です。なぜなら、スケルトン工事には坪単価で数万円から十数万円の費用がかかりますが、居抜き売却であればその費用が浮くだけでなく、逆に内装や設備を「造作譲渡料」として売却できる可能性があるからです。

また、飲食店では、製氷機や食器洗浄機、POSレジなどをリースやレンタルで導入していることがよくあります。これらの機器は、たとえ店舗を廃業・閉店するからといって勝手に処分したり、次のオーナーに売ったりすることはできません。リース品はあくまでリース会社の所有物であるため、廃業時には残債を一括で支払って買い取るか、リース会社に返却する必要があります。

飲食店において廃業と閉店で異なる部分

廃業と閉店は混同されやすいですが、実務レベルでは明確に異なる点と共通している点があります。特に従業員への対応や役所への手続き、コストの面から、違いを具体的に見ていきましょう。

従業員への対応が異なる

従業員への対応は、廃業と閉店で最も大きな差が出る部分です。閉店の場合、経営母体が存続していれば、その店舗で働いていたスタッフを別の店舗へ異動させることが可能です。例えば、複数店舗を運営するチェーン店が1店舗を閉める際、雇用を維持したまま配置転換を行うことで、熟練した人材を流出させずに済みます。

一方で、廃業の場合は事業そのものがなくなるため、全従業員を解雇せざるを得ません。この際、少なくとも30日以上前に解雇予告を行うか、30日分以上の解雇予告手当を支払うことが労働基準法で義務付けられています。

行政での手続きは同じ

保健所や消防署といった行政機関への届け出は、廃業でも閉店でも「その店舗での営業を辞める」という点では同じ内容になります。具体的には、保健所へ廃業届を提出し、消防署には防火管理者選任解任届出書を提出する必要があります。これらは営業終了から10日以内など、提出期限が短く設定されているため注意が必要です。

また、税務署への手続きについては、個人事業主が廃業する場合は廃業届を提出しますが、法人が1店舗を閉店するだけなら特別な届け出は不要です(会社自体を解散させる場合は別途登記や申告が必要です)。

深夜営業を行っていた場合は警察署への届け出も必要になるなど、飲食業特有の行政手続きは多岐にわたります。これらの手続きを怠ると、将来的に別の事業を始める際や、店舗を譲渡する際の妨げになる可能性があるため、チェックリストを作成して確実に済ませていくことが求められます。

かかる費用はほぼ同じ

金銭的な面で見ると、店舗を畳むために発生するコストは、廃業か閉店かによって大きな差はありません。どちらの場合も、店舗を空け渡すための原状回復費用(スケルトン工事費)や不用品の処分費用、公共料金の精算、解約予告期間中の家賃が発生するからです。飲食店は特に厨房の防水工事や排気ダクトの設置など、内装が特殊であるため、撤去費用が高額になりやすい傾向があります。

例えば、20坪度の小規模なカフェであっても、スケルトン戻しには100万円単位の費用がかかることも珍しくありません。ここで重要になるのが居抜き売却です。廃業という形をとるにせよ、一時的な閉店にするにせよ、店舗の価値をそのまま次の利用者に引き継ぐことができれば、解体費用をゼロにし、さらに売却益を得ることも可能です。支出を減らすための工夫として、専門の不動産会社による査定を早期に受けることが推奨されます。

飲食店の廃業・閉店時には居抜き売却を検討しよう

飲食店の「廃業」と「閉店」は、事業そのものを完全に辞めるのか、あるいは店舗単位での営業を停止するのかという点で大きな違いがあります。しかし、どちらの道を選んだとしても、賃貸契約の解約予告やリース品の処理、そして高額な原状回復費用といった課題は共通して立ちはだかります。

現在、店舗の売却や撤退を検討されているオーナー様にとって、最も賢明な選択肢は「居抜き」としての価値を最大限に活かすことです。廃業や閉店に伴う経済的な損失を最小限に抑え、次のステップへ向けて資産を残すために、まずは専門の不動産会社に相談し、店舗の現状を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

廃業や閉店に伴う店舗売却を検討されている方は、ぜひ「買取の神様」へお問い合わせください。首都圏から九州まで広範囲にわたるエリアで、これまで数多くのオーナー様を支えてきた豊富な実績があります。売却の時期が具体的に定まっていない状態での相談も喜んで承りますので、まずはお気軽にお問い合せください。

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この記事を書いた人

首都圏在住・ライター歴7年。東京近郊の食べ歩きが趣味です。路地裏にあるような穴場の名店を見つけると嬉しくなります。元マスコミ勤務の経験を活かし、正確で読みやすい情報提供を心がけています。

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