居抜き物件を借りる際は、通常の賃貸借契約に加えて造作譲渡契約(※1)(ぞうさくじょうとけいやく)も締結する必要があります。
契約書の内容を十分に確認せずに契約すると、開業後や退去時に予想外のトラブルや費用が発生するリスクが高くなります。とくに造作譲渡契約書は居抜き物件特有のもので、なじみのない方も多いでしょう。
この記事では、居抜き物件で締結する契約書や契約の流れ、チェックポイントについて詳しく解説します。この記事を読めば、契約内容やチェックすべき点を正しく理解し、トラブルを未然に防げるでしょう。
(※1)前の借主が店舗の内装や設備を次の借主に引き継ぐ際に締結する契約のこと
なお、居抜き物件の工事について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。

【居抜き物件】契約書の種類

居抜き物件を借りる際は、以下の2種類の契約を締結するケースが一般的です。
- 賃貸借契約書
- 造作譲渡契約書
それぞれの契約書について詳しく見ていきましょう。
1.賃貸借契約書
賃貸借契約書は、賃貸物件を借りる際に締結する契約書です。貸主と借主の間で締結され、以下のような項目が記載されています。
| 項目 | 内容 |
| 契約の種類 | 普通建物賃貸借契約もしくは定期建物賃貸借契約 |
| 店舗の情報 | 所在、地番、構造、床面積など |
| 契約期間 | 契約の開始日と終了日 |
| 更新条件 | 更新料やその他必要な費用 |
| 家賃・共益費 | 月額の家賃や共益費の金額 |
| 敷金・保証金 | 契約時に預ける保証金の金額 |
| 原状回復義務 | 退去時の修繕・撤去範囲 |
| 契約解除 | 契約を途中で解約する際の条件 |
| 使用目的 | 店舗用途や業種の制限 |
| 修繕・管理 | 建物の修繕や管理の責任範囲 |
賃貸借契約書の内容を確認し、不明点があれば事前に必ず質問しておきましょう。
普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の違い
賃貸借契約には、「普通建物賃貸借契約」と「定期建物賃貸借契約」の2種類があります。
普通建物賃貸借契約は、契約期間が満了しても自動で契約が更新されるタイプの契約です。借主が更新を希望する場合、貸主は正当な事由がない限り更新を拒否できません。
一方、定期建物賃貸借契約は、契約期間が満了すると自動で契約が終了するタイプの契約です。貸主と借主が合意すれば再契約は可能ですが、自動更新はされません。
長期的に店舗経営を行う予定であれば、普通建物賃貸借契約の方が安心して経営を続けられるでしょう。
2.造作譲渡契約書
造作譲渡契約書は、前の借主が使っていた内装や設備を次の借主に譲渡する際に締結する契約書です。賃貸借契約書とは別に作成され、前の借主と次の借主との間で締結されるケースが大半です。
造作譲渡契約書は、譲渡価格や譲渡内容などを定め、契約不適合責任(契約内容と異なる場合に売主が負う責任)を明確にするために締結されます。
具体的には、以下のような項目が記載されています。
| 項目 | 内容 |
| 物件所有者(貸主)の承諾 | 譲渡にあたり貸主の同意 |
| 譲渡する造作物のリスト(譲渡項目一覧) | 譲渡対象となる内装・設備・備品の詳細 |
| 造作譲渡価格 | 譲渡金額の総額 |
| 支払い期日 | 代金の支払い日 |
| 支払い方法 | 現金・振込など |
| 引き渡し期日 | 設備・造作の引き渡し日 |
| 契約不適合責任の範囲 | 譲渡物に不具合があった場合の責任範囲 |
| 原状回復義務の有無・範囲 | 退去時の内装・設備撤去責任 |
| 契約解除条件 | 契約を解除できる条件や手続き |
口約束だけでは後々トラブルにつながる可能性があります。契約書に詳細を明記しておくことで、設備の不具合や認識の相違によるトラブルを防げるでしょう。
なお、造作譲渡契約書について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

居抜き物件の契約の流れ

ここでは、居抜き物件の契約の流れについて、以下の7つのステップに分けて解説します。
- 居抜き物件の情報収集・内見の申し込み
- 内見・現地調査
- 入居の申し込み・入居審査
- 費用の確認
- 造作譲渡契約の締結
- 賃貸借契約の締結
- 物件の引き渡し
各ステップで注意すべきポイントを把握しておくことで、スムーズに契約を進められるでしょう。
1. 居抜き物件の情報収集・内見の申し込み
まずは、希望条件に合う居抜き物件を探すことから始めます。効率良く居抜き物件の情報を集めるには、居抜き物件専門の検索サイト「居抜きの神様」を活用するのがおすすめです。
「居抜きの神様」は、3,700件以上の居抜き物件情報を公開している物件検索サイトです。
エリアや家賃、業態などの条件で絞り込んで検索できるため、希望に合った物件を効率良く比較検討できます。
無料の会員登録を行うと、一般公開前の新着物件情報や未公開物件の情報を優先的に受け取れます。好条件の居抜き物件は早めに成約する傾向があるため、会員登録して物件情報を見逃さないようにしましょう。
もし気になる物件が見つかったら、不動産会社に連絡して内見の申し込みを行います。「居抜きの神様」の場合、希望日時を選んでボタンを1回クリックするだけで簡単に申し込めます。
複数の物件を比較検討するために、いくつかの物件をまとめて内見予約するのも良いでしょう。
\東京・千葉・埼玉・神奈川エリア/
関東の居抜き物件をお探しの方はこちら
\大阪・京都・兵庫エリア/
関西の居抜き物件をお探しの方はこちら
2. 内見・現地調査
内見では、実際に物件を訪れて、立地や周辺環境などをしっかり確認します。居抜き物件の場合は、インフラや設備の状態、前テナントの状況なども確認する必要があります。
具体的には、以下のような項目をチェックしましょう。
- 厨房設備や空調設備の動作確認
- 電気・ガス・水道の容量や配置
- 内装や外装の劣化状況
- 周辺の競合店や人通り
- 騒音や臭いなどの環境
設備の状態や改装の必要性については、設計士や施工業者と一緒に確認すると安心です。
内見時に気になる点は写真や動画で記録しておき、後で比較検討する際の材料にしましょう。
なお、居抜き物件の探し方やチェックポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

3. 入居の申し込み・入居審査
内見で気に入った物件が見つかったら、入居の申し込みを行います。基本的に申し込みは先着順となるため、気に入った物件は早めに申し込むのが良いでしょう。
入居の申し込み後は、貸主や保証会社などから入居審査を受けます。審査では、借主が家賃を支払える能力があるか、事業計画が現実的かなどが確認されます。
事業計画書の提出が求められる場合もあるため、売上や収益予測、資金計画などを詳しく記載しておくことが重要です。事業計画書をしっかり作っておけば、審査に通りやすくなるだけでなく、開業後の経営も見通しやすくなります。
審査期間は、物件や保証会社によって異なるものの、一般的には1週間程度かかります。審査結果を待っている間に、必要な書類の準備や資金計画の最終確認を進めておきましょう。
4. 費用の確認
入居審査に通ったら、契約前に必要な費用を改めて確認しておきます。居抜き物件では、補修工事や追加の設備工事などが必要になる場合があるため、総額でいくらかかるのかを把握しておくことが重要です。
居抜き物件で必要な主な費用は以下のとおりです。
- 造作代金
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
- 火災保険料
- 内装工事費用
- 運転資金
- 予備資金
内装工事費用は、物件の状態や改装の程度によって大きく変わります。一般的な目安としては、坪単価15〜30万円程度ですが、大規模な改装が必要な場合はさらに費用がかかることもあります。
また、予期せぬ出費に備えて、総予算の5〜10%程度の予備費を確保しておくと安心です。資金計画に余裕を持たせることで、開業準備をスムーズに進められるでしょう。
5. 造作譲渡契約の締結
費用の確認が終わったら、造作譲渡契約を締結します。契約前に、設備の故障の有無や譲渡される設備の内容などを詳しく確認しておきましょう。
また、リース品が譲渡対象に含まれていると、後でリース会社とのトラブルになる可能性があります。そのため、造作譲渡契約を締結する前に、リース品の有無を確認しましょう。
不明な点があれば、契約前に専門家に相談することをおすすめします。
6. 賃貸借契約の締結
造作譲渡契約の締結後、賃貸借契約を締結します。不動産会社が仲介している場合は、物件の重要事項説明を受けた後に賃貸借契約を締結するのが一般的な流れです。
重要事項説明では、宅地建物取引士が物件や契約条件について詳しく説明します。以下のような内容が説明されるため、しっかり確認しておきましょう。
- 物件の登記事項や権利関係
- 家賃や敷金の金額
- 契約期間や更新条件
- 特約事項(※2)や制限事項
- 原状回復義務(※3)の範囲
(※2)通常の契約内容に追加で設けられる特別な条件のこと
(※3)退去時に、借りたときの状態に戻す義務のこと
疑問点があれば質問して、納得したうえで契約することが重要です。契約書は重要書類のため、大切に保管しておきましょう。
7. 物件の引き渡し
契約を締結したら、入居日に物件の引き渡しを受けます。引き渡し時には、必ず以下の項目を確認しましょう。
- 設備や備品など、譲渡されるものがそろっているか
- 各設備が正しく動作するか
- 建物や設備に損傷や不具合がないか
設備の動作確認は、実際に電源を入れて動かしてみることが大切です。厨房機器や空調設備など、すべての設備を一通り動作させて、異常がないか確認しましょう。
もし、不具合や不足している備品があった場合はすぐに確認し、対応を求めることが重要です。写真や動画で記録を残しておくと、後で証拠として使えます。
【居抜き物件】造作譲渡契約書のチェックポイント

ここでは、居抜き物件特有の造作譲渡契約書のチェックポイントを以下にまとめました。
| チェック項目 | 確認内容 |
| 譲渡対象物のリスト | 譲渡される内装・設備・備品の詳細なリストを作成し、現物と照合する |
| 設備の状態 | 各設備の動作確認を行い、故障や不具合がないか確認する |
| リース品の有無 | 譲渡対象にリース品が含まれていないか確認する |
| 造作代金 | 価格が適正か、相場と比較して確認する |
| 支払い方法と期日 | 一括払いか分割払いかなど、支払い期日を明確にする |
| 引き渡し期日 | いつまでに設備が引き渡されるか、開業スケジュールと合わせて確認する |
| 契約不適合責任 | 設備の不具合が見つかった場合、誰がどのように責任を負うか確認する |
| 保証期間 | 設備の保証期間がどれくらいあるか確認する |
| 貸主の承諾 | 造作譲渡について貸主の承諾を得ているか確認する |
開業後に設備に不具合が生じると、思いがけない出費で頭を悩ませることになりかねません。とくに冷蔵設備や換気設備などの主要機器に不具合が発生すると、営業を一時停止せざるを得ず、売上の損失につながります。
そのため、契約前に設備の状況について詳しく確認しておきましょう。
【居抜き物件】賃貸借契約書のチェックポイント

続いて、居抜き物件を借りる際に締結する賃貸借契約書のチェックポイントを以下にまとめました。
| チェックポイント | 確認内容 |
| 契約期間と更新条件 | 契約期間や更新料などの条件を確認する (定期建物賃貸借契約の場合は更新がないため要注意) |
| 家賃と共益費 | 月額家賃と共益費の金額・支払い期日・支払い方法を確認する |
| 敷金・保証金 | 預ける金額と返還条件、償却の有無を確認する |
| 原状回復義務の範囲 | 退去時にどこまで原状回復が必要か、費用負担の範囲を確認する |
| 使用目的の制限 | 許可される業種や営業時間の制限を確認する |
| 修繕の責任範囲 | 貸主と借主のどちらが修繕費用を負担するか確認する |
| 中途解約の条件 | 契約期間中に解約できるか、違約金の有無を確認する |
| 禁止事項 | 増改築や転貸など、禁止事項を確認する |
| 特約条項 | 通常の契約にない条件を確認する |
賃貸借契約書の内容に不安がある場合は、専門家に相談するのがおすすめです。契約前にしっかり確認しておけば、安心して店舗経営を始められるでしょう。
まとめ
居抜き物件を借りるには、「賃貸借契約書」と「造作譲渡契約書」の2種類の契約書を締結する必要があります。それぞれの契約書には異なるチェックポイントがあり、細かく確認しておかないと、開業後に思わぬトラブルが起こる可能性があります。
契約の流れを理解し、各項目で注意すべきポイントを把握しておくことで、安心して開業準備を進められるでしょう。契約書の内容に不安がある場合は、弁護士や行政書士などの専門家に相談すると良いでしょう。
また、居抜き物件を効率良く探すには、「居抜きの神様」の活用がおすすめです。
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