【飲食店の閉店準備ガイド】必要な手続き&店舗を高く売るポイント

閉店の看板を下げる人

飲食店を閉店する際には、事前にしっかりとした準備が必要です。閉店準備は、法律に基づく手続きや契約の解消、従業員への対応など、多岐にわたります。特に重要なのは、店舗物件の解約通知や従業員への解雇通知です。トラブルを避け、スムーズに閉店を進めるためには、早めに必要な手続きを行うことが求められます。本記事では、閉店準備に必要な手続きや費用を抑える方法について詳しく解説します。

目次

閉店を決めたらすぐにやるべき3つのこと

閉店を決定したら、最初に行うべきは関係者への通知と解約手続きです。これらの対応が遅れると、追加の費用やトラブルが発生する可能性があります。

1. 店舗物件の大家・不動産会社へ解約通知を行う

店舗物件の賃貸契約には、「〇ヵ月前に解約を伝える」といった解約予告期間が定められているのが一般的です。この期間を守らずに解約を申し出ると契約違反となり、違約金が発生する場合があります。通常の賃貸契約は1ヵ月前が多いですが、飲食店舗物件の場合は3~6ヵ月前に通知と決められていることがほとんどです。契約書を確認し、適切なタイミングで大家や不動産会社に解約通知を行いましょう。

なお、解約通知を出しても家賃は実際の解約日まで発生します。

2. 従業員に解雇通知を行う

従業員を雇用している場合、閉店に伴う解雇は避けられません。解雇する場合には、原則として30日前までに解雇予告を行う必要があります。これを守らない場合は、解雇予告手当として30日分の給与を支払う義務が生じます。

従業員には、閉店の理由や今後の対応について丁寧に説明し、誠意を持って接することが重要です。円満な解雇を目指し、早めにコミュニケーションを取りましょう。

3.取引先や常連客に閉店を知らせる

仕入れ業者や常連客など、日頃からお世話になっている相手にも、適切なタイミングで閉店の連絡を行いましょう。これにより、未払い金の整理や商品の返品など、スムーズな関係解消が可能となります。

【閉店準備】行政機関への必要な手続き

飲食店を閉店する際には、さまざまな行政機関に対して必要な手続きを行う必要があります。これを怠ると法律違反になる可能性があるため、正確に対応しましょう。

保健所

飲食店の営業許可を受けている場合、保健所に「廃業届」を提出する必要があります。この手続きにより、営業許可証の無効化が正式に行われます。廃業届の提出時には、営業許可証の返納も併せて行います。

手続きには店舗名や所在地などの基本情報を記載した書類が必要です。提出期限は廃業日から10日以内のことが多いですが、詳細は地域の保健所に事前に確認してください。

警察署

深夜に酒類を提供するために「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を警察署に提出していた場合は、閉店にあたり「廃止届出書」を提出する必要があります。風俗営業許可を取っていた場合は、「返納理由書」とともに営業許可証の返納も必要です。

どちらも法律に定められており、提出期限は廃業日から10日以内です。手続きが遅れると30万円以下の罰金が科せられる可能性があるので注意しましょう。

消防署

閉店時には「防火・防災管理者選任(解任)届出書」の提出が必要です。これにより、開店時に選任した防火・防災管理者の解任が完了します。提出期限は定められていませんが、解任が決まったら速やかに届け出るようにしましょう。

税務署

税務署には以下の書類を提出します。

書類の種類該当するケース提出期限
個人事業の開業・廃業等届出書個人事業主廃業日から1ヵ月以内
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書従業員を雇用している場合廃業日から1ヵ月以内
所得税の青色申告の取りやめ届出書所得税の青色申告をしている場合青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日まで
事業廃止届出書課税事業者廃業後、速やかに

税務署への手続きは正確性が求められるため、不安な場合は税理士に相談すると良いでしょう。

労働基準監督署

従業員を雇用していた場合、「労働保険確定保険料申告書」を労働基準監督署に提出し、労働保険の清算を行います。これには給与支払いの最終記録や残業記録が必要になるため、事前にデータを整理しておきましょう。提出期限は事業の終了日から50日以内です。

公共職業安定所(ハローワーク)

雇用保険に加入している従業員がいる場合は、ハローワークに対して次の書類を届け出ます。

書類の種類提出期限
雇用保険適用事業所廃止届事業所を廃止した日の翌日から10日以内
雇用保険被保険者資格喪失届被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内
雇用保険被保険者離職証明書労働者が離職した翌々日から10日以内

各種書類は窓口で受け取る他に、ホームページから印刷することも可能です。

日本年金機構(年金事務所)

従業員が雇用保険や健康保険に加入していた場合は、年金事務所に対して次の書類の提出が必要です。

  • 雇用保険適用事業所廃止届の事業主控(コピー)
  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届

提出期限は廃業日から5日以内と短いので、あらかじめ従業員の保険加入状況を確認しておきましょう。

【閉店準備】店舗設備・備品の処分

閉店準備の一環として、店舗内の設備や備品を処分する必要があります。これらを適切に処理することで、不要なコストを削減できます。

厨房機器や備品の売却・処分

厨房機器や備品は専門業者に買取を依頼することで、現金化できる可能性があります。複数社に見積もりを依頼し、最も条件の良い業者を選ぶのがおすすめです。売却が難しい場合でも、リサイクル業者や自治体の回収サービスを利用して適切に廃棄しましょう。

リース品の返却手続き

リース契約中の機器や備品がある場合は、契約内容を確認してリース会社に返却手続きを行います。この際、違約金や残債務が発生する場合もあるため、契約書を確認しておきましょう。

【閉店準備】公共料金・サービスの解約手続き

店舗の運営を停止する際には、電気・ガス・水道などの公共料金や、サービス契約を解約する手続きも重要です。これを怠ると、不必要なコストが発生する可能性があります。

電気・ガス・水道の解約

電気・ガス・水道の解約は、各契約先の窓口に連絡することで手続きが可能です。解約を申し出る際には以下の情報を準備しておくとスムーズです。

  • 契約者名および契約番号
  • 店舗の住所
  • 解約希望日

解約日には設備の確認作業が必要になる場合もあるため、日程調整を早めに行うことをおすすめします。

電話・インターネット回線の解約

固定電話やインターネット回線の契約も、閉店時に解約手続きを行う必要があります。解約の際には、違約金や解約手数料が発生する可能性があるため、契約書の内容を確認しましょう。

サブスクリプションサービスの確認

クラウド型会計ソフト、POSレジサービス、店舗運営管理ツールなど、サブスクリプション契約のサービスも忘れずに解約しましょう。これらの解約手続きはサービスごとに異なる場合が多いため、契約内容を確認し、適切に手続きを行います。未使用期間が残っている場合は返金を受けられるケースもありますので、契約時の条件を確認しておきましょう。

閉店に伴う費用と資金管理

閉店にはさまざまな費用がかかります。これらを正確に見積もり、適切に管理することが重要です。

原状回復費用

賃貸物件の場合は、閉店後に原状回復の義務があることが一般的です。原状回復とは店舗を契約時の状態に戻すことで、いわゆる「スケルトン工事」を意味します。費用は修繕箇所や物件の広さによって異なりますが、坪あたり数万円から10万円以上することもあります。

閉店にかかるその他の費用

その他の費用として以下が挙げられます。

  • 未払いの公共料金
  • 在庫商品の廃棄費用
  • リース契約の解約違約金
  • 廃業手続きに伴う専門家への依頼費用(税理士や弁護士など)

事前に必要経費を洗い出し、予算を確保しておくことが重要です。

資金繰りと残債務の整理

閉店時の資金不足が懸念される場合、金融機関や専門家に相談することを検討してください。店舗備品の売却や、債務整理のサポートを受けることで、負担を軽減できる場合があります。閉店準備の期間中にできる限りの資金確保を行い、債務を整理する計画を立てましょう。

閉店費用を削減するなら「居抜き売却」がおすすめ

店舗の閉店を検討している方には、居抜き売却の活用がおすすめです。居抜き売却であれば原状回復工事が不要なので、閉店費用を抑えられます。居抜き売却の概要とメリット、注意点を説明します。

居抜き売却とは

居抜き売却とは、店舗の内装や設備、什器などを撤去せず、そのままの状態で次の借り手や買い手に引き継ぐ方法です。これにより、原状回復工事(スケルトン工事)を行う必要がなく、コストや手間を削減できます。

買い手からしても、飲食店の運営に必要な設備や器具が揃っているので、営業開始までにかかる期間を短縮できる、初期費用を抑えられるといったメリットがあります。つまり、居抜き売却は売り手・買い手の双方がWin-Winの契約形態です。

居抜き売却のメリット

居抜き売却には、主に費用面のメリットがあります。どんな利点があるのか詳しく見ていきましょう。

原状回復工事費用をカットできる

原状回復工事では造作や設備などの解体が必要なので、多額の費用がかかります。店舗の広さによっては数百万円の費用が必要になることもあるでしょう。その点、居抜き売却では工事が不要なので、工事費用をまるまる節約できます。

解約予告期間中の賃料を削減できる

居抜き売却を選択して買い手が見つかった場合、造作一式の引き渡し時に新店舗が賃貸契約を結びます。解約予告期間は、貸主の収入維持や次の入居者探しなどを目的に設けられているため、次の借り手と契約を結んだ時点で旧オーナーの賃料支払義務はなくなります。数ヶ月分の賃料を支払わずに済めば、閉店にかかる費用をぐっと抑えられるでしょう。

閉店のギリギリまで営業できる

居抜き売却では原状回復工事が不要なので、閉店のギリギリまで営業できます。通常は退去までに解体工事をするため、その間は営業できません。さらにその期間も賃料が発生するので、オーナーに金銭的負担がのしかかります。居抜き売却を選び、閉店間際まで営業を続ければ収益を上げることができます。

居抜き売却の注意点

居抜き売却には複数のメリットがある反面、注意が必要な点もあります。事前に知っておきたい注意点を説明します。

契約内容によっては居抜き売却が認められない

契約書に「造作譲渡不可」の文字がある場合、それは居抜き売却NGを意味します。また「原状回復」と書かれている場合も、居抜き売却は難しいかもしれません。そのような契約内容で居抜き売却をしたい場合は、貸主に交渉することで許可が下りる可能性があります。交渉は個人でするのではなく、居抜き売却を扱う業者に依頼するのがおすすめです。

買い手が見つからないと赤字経営が続く

居抜き売却は原状回復工事が不要なのはメリットですが、内装や設備がそのままなので買い手は同業者に限られます。そのため、買い手が見つかるまでに時間がかかるケースも。赤字経営で買い手が見つかるまで営業を続けると、負債が増え続ける点には注意が必要です。買い手が見つからない場合には、居抜き売却を諦めた方が良いケースもあります。

店舗の状態が売れやすさを左右する

居抜き売却では、引き継ぐ設備や内装の状態が悪いと買い手にとっての価値が下がり、売れにくくなります。営業中は適切なメンテナンスや清掃を行い、良好な状態を保つことが大切です。

居抜き売却を成功させるポイント

居抜き売却で買い手を見つけ、さらに高く売るには工夫が必要です。成功のために意識したいポイントを説明します。

設備や内装を点検・メンテナンスしておく

居抜き売却を考えたときは、エアコンや厨房機器が故障していないか、電球は切れていないか、壁紙はきれいかなど、設備や内装の点検は必ずしておきましょう。不備が見つかった箇所はメンテナンスしておくと、買い手が見つかりやすくなったり、高値で売却できたり、契約後のトラブルを防げたりと、居抜き売却をスムーズに進められます。

店舗はきれいな状態を保つ

店内はもちろん、店外の様子も買い手からの印象を大きく左右するポイントです。来客者の目につきやすい窓やドア、床、店舗前などは常にきれいな状態を保つと、買取希望者に好印象を与えられます。

リースの残高を確認する

店舗設備の中にリースがある場合は残高を確認しておきましょう。買い手にリース契約を引き継いでもらう方法もありますが、旧契約者が連帯保証人にならなくてはいけないケースがあるので注意が必要です。可能であれば居抜き売却の収益からリース残高を返済し、買い手に所有権を譲渡する方法が良いでしょう。

居抜き売却専門の業者に依頼する

居抜き売却を成功させるためには、専門業者に依頼することが効果的です。専門業者は市場動向に詳しく、適切な買い手を見つけるサポートをしてくれます。複数社に相談し、力になってくれそうな業者を選びましょう。

閉店準備は余裕を持って取り組もう!居抜き売却も検討しては

飲食店の閉店準備は法的手続きや従業員対応、契約解除など多岐にわたります。特に店舗物件の解約通知や従業員への解雇通知は早期に行うことが重要です。また、行政機関への届出や設備の処分、公共料金の解約も欠かせません。費用削減を考えるなら、居抜き売却を検討するのも一つの方法です。閉店をスムーズに進めるために、準備を整えて早めに対応しましょう。

「買取の神様」では、飲食店の閉店や移転をお考えのオーナー様に向けて居抜き売却のご相談を承ります。弊社では、一般的な不動産会社で発生する仲介手数料や企画料は不要です。また、グループ会社で10業態100店舗以上の開業および経営経験があり、どのような物件でも柔軟に対応可能です。無料での相談と査定も行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

2018年からWebライターとして活動。活発な女の子をワンオペで育てる新米ママライターです。仕事と育児に日々奮闘中!読みやすく分かりやすい文章を心がけています。

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