パートは閉店を理由に解雇できる?30日前の解雇予告や必要な手続きを解説

解雇予告通知書

店舗の閉店を決断したとき、お店を支えてくれたパートを解雇できるのか、どのように伝えれば良いのかと悩む経営者も多いでしょう。閉店に伴ってパートを解雇する場合でも、原則として30日前までの解雇予告が必要です。

本記事では、閉店を理由にパートを解雇できる条件や、法律で定められた解雇予告のタイミング、必要な手続き、トラブルを避けるための注意点を解説します。パートへの配慮を忘れず、適切に閉店を進めるための参考にしてください。

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目次

閉店を理由にパートを解雇できる?法的な位置づけ

閉店・廃業を理由にパートタイム労働者を解雇する場合、一般に「普通解雇」の一種である「整理解雇」として扱われます。

パートタイム労働者も含めて従業員の解雇には、大きく分けて「懲戒解雇」と「普通解雇」の2種類があります。「懲戒解雇」とは、業務上の横領やパワハラ、セクハラなど従業員が企業秩序に違反し、店の信頼や利益を著しく損ねる行動をとった場合に店側から雇用契約を解除することを指します。

一方、「普通解雇」とは、病気などの従業員側の事情や店の都合で雇用契約を終了させるものです。このうち、経営悪化や事業縮小、店舗閉鎖など、従業員本人に原因がない経営上の理由で行う解雇を「整理解雇」といいます。

ただし、閉店が決まったからといって、必ず解雇が認められるわけではありません。整理解雇が有効かどうかは、次に解説する4つの要素を踏まえて判断されます。

閉店でパートを解雇できる条件|整理解雇の4つの判断要素

パートタイム労働者も含め、従業員の整理解雇を行うにはいくつかの条件を満たす必要があります。労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされています。

参照:厚生労働省「労働契約法」

1. 人員削減の必要性があるか

整理解雇を行うには、人員を削減しなければならない経営上の理由が必要です。経営上の理由には、経営状況の悪化や閉店などが当てはまります。ただし、店舗移転など閉店しても事業自体は存続する場合には注意が必要です。配置転換できる可能性があるので、単純な解雇は認められないケースもあります。

2. 解雇回避のための努力をしたか

解雇を避けるために、経営者として可能な範囲で対応したかも、整理解雇の判断要素の一つです。

努力項目には、新規採用の停止や希望退職者の募集、配置転換、出向の検討などが挙げられます。閉店する場合でも、他店舗へ配置転換できる可能性はないか、関連会社へ紹介できないかなど、解雇以外の方法を検討した経緯や結果を記録しておきましょう。

3. 解雇対象者の選定に合理性があるか

一部のパートタイム労働者を整理解雇する場合は、誰を解雇対象とするかについて合理的な選定基準が求められます。例えば、勤続年数や仕事における能力、扶養家族の有無などです。

閉店により全員を解雇する場合でも、閉店作業のために一部のパートタイム労働者を残す際には、その選定基準を明確にしておきましょう。

4. 解雇手続きに妥当性があるか

解雇の手続きを適切に行うことも重要です。パートタイム労働者に解雇の必要性や理由を丁寧に説明し、解雇時期や条件について誠実に交渉しましょう。法律で定められた解雇予告期間を守ることも重要です。

一方的に通告するのではなく、パートタイム労働者に解雇の必要性や時期などを十分に説明し、必要に応じて協議を行いましょう。

有期契約のパートは閉店を理由に契約期間の途中で解雇できる?

有期契約のパートタイム労働者は、原則として契約期間の満了まで雇用することが前提です。期間の定めがない契約と比べて、契約期間の途中での解雇は厳しく判断されます。

契約期間の途中で解雇するには、労働契約法第17条1項に定める「やむを得ない事由」が必要です。閉店が「やむを得ない事由」に当たるかは、閉店に至った経緯や配置転換の可能性など、個別の事情を踏まえて判断されます。

閉店という理由だけで、契約期間の途中での解雇が認められるとは限らない点に注意しましょう。

参照:厚生労働省「労働契約法」

閉店でパートを解雇する際に必要な手続き

パートタイム労働者を解雇する場合は、原則として労働基準法で定められた解雇予告の手続きが必要です。解雇日の30日前までに本人へ通知し、解雇日と閉店に伴う解雇であることを丁寧に説明しましょう。解雇予告のタイミングと通知書の書き方を解説します。

解雇予告のタイミング(30日前までの通知が原則)

労働基準法第20条には「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない」と定められています。解雇予告は少なくても30日前までに行うのが原則です。

30日の期間は、解雇予告をした日の翌日から起算します(土日祝日や会社の休日も含む)。解雇予告の規定は、原則としてパートタイム労働者にも適用されます。

30日前に解雇予告できない場合、不足日数分の「解雇予告手当」を支払う必要があります。例えば、10日前に予告した場合、支払うべき解雇予告手当は平均賃金の20日分です。

参照:厚生労働省「労働基準法」

解雇予告通知書の書き方

解雇予告通知は口頭でも可能ですが、後日のトラブルを避けるために書面で行いましょう。解雇予告通知書の書き方に正式な決まりはありませんが、一般的には下記の項目を含めます。

記載すべき内容

  • 通知書のタイトル(「解雇予告通知書」など)
  • 発行日(手渡す日もしくは発送日)
  • 従業員の氏名
  • 解雇日(退職日)
  • 解雇理由(「店舗閉鎖に伴う事業廃止のため」など)
  • 会社名・代表者名・押印
  • 受領確認欄

解雇予告通知書はパートタイム労働者に直接手渡しし、受領印をもらうのが望ましいです。郵送する場合は、配達証明付きの内容証明郵便など、送付した内容や配達の事実を確認できる方法を利用しましょう。

閉店でパートを解雇する際の注意点

法的トラブルを避け、パートタイム労働者との良好な関係を保ちながら閉店を進めるには、法的要件を守るのはもちろん、誠実な態度で向き合うことが大切です。

法的要件を守って解雇手続きを進める

閉店に伴うパートタイム労働者の解雇は、労働基準法を遵守して進める必要があります。特に重要なのが、労働基準法第20条で定められた解雇予告の義務です。原則として30日以上前に予告するか、30日に満たない場合は解雇予告手当を支払います。

解雇予告も解雇予告手当の支払いも行わずにパートタイム労働者を解雇した場合、労働基準法に反するとみなされ、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。

解雇予告はできるだけ書面で記録を残す

解雇予告は口頭だけで済ませず、通知書を作成して書面に残しておきましょう。口頭での通知だけでは、「いつ」「何を」伝えたかの証明が難しいです。解雇予告をした日と解雇日の認識にズレが生じると、解雇予告手当の有無などに影響することもあります。あわせて受領印やサインなど従業員が受領した証拠を残すことも大切です。

誠実な態度で向き合い、丁寧に説明する

解雇はパートタイム労働者にとって、生活に影響を与える恐れのある行為です。トラブル防止のためにも、パートタイム労働者に誠実に対応しましょう。閉店までの経緯や理由を正直に説明し、パートタイム労働者の不安や質問に丁寧に答えます。特に長年働いてくれた人たちには、これまでの感謝を伝え、できる限りの配慮を示すことが、円満な閉店につながります。

 閉店でパートを解雇した後に必要な手続き

閉店した店舗が社会保険や雇用保険の適用事業所だった場合、パートタイム労働者の解雇後にいくつかの手続きが必要です。期限内に正確に処理できるよう、事前に確認しておきましょう。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出

パートタイム労働者が健康保険・厚生年金保険に加入している場合、被保険者資格喪失届を提出します。

項 目 概 要
提出先管轄の年金事務所または事務センター
提出期限解雇日の翌日から5日以内
必要書類健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
資格確認書(交付されている場合)

有効期限内の資格確認書が交付されている場合は、本人・被扶養者分を回収し、資格喪失届に添付します。回収できない場合は、「健康保険資格確認書回収不能届」を提出します。なお、マイナ保険証として利用しているマイナンバーカードを会社が回収する必要はありません。

雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書の提出

パートタイム労働者が雇用保険に加入している場合は、雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。離職票の交付を希望する場合は、あわせて離職証明書も提出します。なお、59歳以上の離職者は、本人の希望の有無にかかわらず離職証明書の提出が必要です。

項 目 概 要
提出先管轄の公共職業安定所(ハローワーク)
提出期限解雇日の翌日から10日以内
必要書類雇用保険被保険者資格喪失届
離職証明書

公共職業安定所から離職票が交付されたら、パートタイム労働者に渡してください。離職票は失業等給付の受給手続きなどに必要な書類です。

源泉徴収票の交付

退職時には、その年の1月1日から解雇日(退職日)までの給与について源泉徴収票を交付します。

項 目 概 要
交付期限解雇日から1ヵ月以内
交付方法本人に直接交付(郵送も可)

源泉徴収票は、パートタイム労働者が次の就職先で年末調整を受ける際や、自分で確定申告をする際に必要です。紛失を防ぐためにも早めに交付しましょう。

給与所得者異動届の提出

パートタイム労働者の住民税を給与天引き(特別徴収)していた場合、市区町村に異動届を提出します。

項 目 概 要
提出先パートタイム労働者が居住する市区町村
提出期限解雇日の翌月10日まで
記載内容異動理由、普通徴収への切替または一括徴収の選択

普通徴収か一括徴収かは、退職した月によって異なります。住民税は前年度分の税金を、翌年6月から翌々年5月にかけて後払いをする仕組みです。1月から4月に退職した場合、前年度分の残り(退職した月から5月の支払い分まで)を一括徴収されます。5月に退職した場合は、これまでどおり最後の給与から徴収されます。解雇日(退職日)が6月から12月の場合は、退職者自身で翌年5月までの住民税額の納付を一括徴収にするか普通徴収にするかを選択できます。

提出が遅れると、パートタイム労働者に納税通知書を送付できず、督促状が送られる場合もあります。速やかに手続きを進めましょう。

解雇理由証明書・退職証明書の交付(請求された場合)

パートタイム労働者から請求があった場合は、解雇理由証明書や退職証明書を遅滞なく交付する必要があります。請求がなければ、交付する必要はありません(労働基準法22条)。

 概 要
解雇理由証明書解雇予告をした日から解雇日(退職日)までの間に請求された場合、解雇理由を記載
退職証明書退職後に請求された場合、使用期間や業務の種類、賃金、退職の事由などを記載

記載するのは、パートタイム労働者が請求した事項のみです。解雇理由を記載する場合は、実際の理由と一致する内容を具体的に記載しましょう。

閉店でパートを解雇する際のよくある質問

閉店に伴うパートタイム労働者の解雇では、法律上の手続きや支払いの扱いなど、経営者が迷いやすいポイントがあります。閉店時に多く寄せられる質問と対応方法を紹介します。

Q1. 閉店が急に決まり、30日前に解雇予告できません。どうすれば良いですか?

A1. 不足日数分の「解雇予告手当」を支払うことで対応します。

労働基準法第20条では、使用者が従業員を解雇する際、少なくとも30日前にその予告をしなければならないと定めています。30日前までの予告ができない場合、不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う義務があります。

即日解雇の場合は、原則として30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。ただし、解雇予告手当を支払えば解雇そのものが必ず有効になるわけではありません。

Q2. パートにも解雇予告手当や有給休暇は適用されますか?

A2. 原則として正社員と同様に適用されます。

パートタイム労働者も正社員と同様に労働基準法の保護対象です。解雇の30日前までに予告できない場合、パートタイム労働者に対しても原則として解雇予告手当を支払う義務が生じます。

またパートタイム労働者でも、「雇い入れから6ヵ月以上継続勤務」「全労働日の8割以上出勤」という条件を満たせば有給休暇が付与されます。未消化の有給休暇がある場合は、退職日までの取得希望に対応します。

なお、パートタイム労働者が有給を消化した場合でも、その日数によって解雇予告手当の金額が変わることはありません。

Q3. 解雇予告通知書は何を書いて、どう渡せば良いですか?

A3. トラブル防止のため、必要事項を明記した書面を手渡しして「受領サイン」をもらいましょう。

解雇予告通知書には、以下の情報を明記します。

  • 通知書のタイトル(「解雇予告通知書」など)
  • 発行日(手渡す日もしくは発送日)
  • 従業員の氏名
  • 解雇日(退職日)
  • 解雇理由(「店舗閉鎖に伴う事業廃止のため」など)
  • 会社名・代表者名・押印
  • 受領確認欄

口頭での解雇予告も可能ですが、後日「聞いていない」「日付が違う」といったトラブルになることもあるため、必ず書面を残しましょう。メールやLINEでの通知は避け、直接会って手渡すことが望ましいです。どうしても対面が難しい場合は、配達証明付きの内容証明郵便などを利用しましょう。

【チェックリスト】閉店時のパート解雇での確認事項

□ 30日前までに予告した、または予告手当を支払ったか
□ 解雇理由を明確にし、書面で通知したか
□ 有給休暇の残日数を確認し、取得希望に対応したか
□ 雇用保険・健康保険の喪失届を提出したか
□ 感謝の言葉を添えて、誠意ある説明を行ったか

閉店時のパート解雇は適切な手続きと誠意ある対応で進めよう

閉店に伴う解雇は、パートタイム労働者の生活に直結する重大な決定です。労働基準法に基づき、30日前の予告または解雇予告手当の支払いを適切に行い、解雇予告通知書を交付します。何よりも、感謝と誠意をもって丁寧に伝えることが、円満な退職と良好な関係を保ったままでの閉店につながります。

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この記事を書いた人

元システムエンジニア、ライター歴10年のアラカン主婦です。楽しみは成人した娘とのカフェ巡り。娘に流行のスィーツを教えてもらってます。顧客サポートやマニュアル作成の経験を活かした分りやすい記事を目指しています。

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