飲食店の値上げで閉店を防ぐには?客離れを抑えるポイントや価格の決め方を解説

食材費や人件費などの上昇により、値上げを検討する飲食店が増えています。一方、客離れや閉店につながらないか不安な方もいるでしょう。本記事では、値上げを検討するタイミングや価格の決め方、客離れを抑えるポイント、閉店を防ぐための経営改善策を解説します。
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飲食店の経営環境が厳しくなっている背景
飲食店を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。帝国データバンクによると、2026年上半期の飲食店の倒産は473件で、前年同期の458件を上回り、上半期として過去最多となりました。
ただし、この数字は負債1,000万円以上の法的整理を対象とした「倒産」の件数です。自主的に営業を終了する閉店や廃業まで含めた数字ではないため、混同しないよう注意しましょう。
※参考:帝国データバンク│「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)
食材や原材料の価格が高騰している
食材や飲料などの仕入れ費用は、飲食店を営業するうえで欠かせないコストです。仕入れ価格が上昇しても販売価格を据え置けば、同じ商品を同じ数だけ販売しても、1品あたりに残る利益は少なくなります。
売上が大きく変わっていなくても、原価の上昇によって利益が減っている可能性があるため、従来の価格設定で採算が取れているか確認することが大切です。
人件費や光熱費などの負担が増えている
飲食店では、食材費だけでなく、人件費や水道光熱費などの負担も増えています。従業員の賃金や電気・ガス料金などが上昇すると、店舗運営にかかるコストが膨らみ、利益を確保しにくくなります。
こうしたコストの増加は、飲食店がメニューの値上げを検討する背景の一つです。また、増加したコストを販売価格に十分反映できなければ、収益が圧迫され、経営が厳しくなる可能性があります。
コスト上昇分を十分に価格転嫁できない
コストが上昇すれば、販売価格への転嫁が必要になる場合があります。しかし、値上げによる客離れや競合店との価格差を考えると、増えたコストをすべて価格へ反映するのは簡単ではありません。
帝国データバンクの2026年7月調査では、コスト上昇分のうち販売価格などへ反映できた割合を示す価格転嫁率は、全業種平均で39.9%でした。一方、「飲食店」は28.7%で、全業種平均を下回っています。
したがって、飲食店の倒産増加を「値上げしたから」と単純に捉えることはできません。食材費や人件費などが上昇するなかで、必要な価格転嫁を十分に行いにくい状況も、収益を圧迫する要因の一つと考えられます。
※参考:帝国データバンク│価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)
飲食店は値上げすると客離れする?
値上げを検討するとき、「価格を上げたら顧客が来なくなるのではないか」と心配する経営者は少なくありません。実際に価格が変われば、利用頻度や注文するメニューなどに影響する可能性はあります。
一方、値上げをしたからといって、必ず客離れが起こるとは限りません。顧客が店舗を選ぶ際は、価格だけでなく料理の品質や接客、利便性などさまざまな要素が判断材料になります。
重要なのは、顧客が支払う価格に対してどの程度の価値を感じられるかです。価格だけを引き上げて料理やサービスの品質が低下すれば、以前より割高だと感じられる可能性があります。反対に、料理やサービスの品質を維持し、値上げの背景をわかりやすく伝えることで、顧客の理解を得やすくなる場合もあります。
「値上げ=客離れ」と決めつけず、対象となる商品や価格、顧客への伝え方、店舗が提供する価値などを総合的に考えましょう。

飲食店が値上げしないまま営業を続けるリスク
値上げによる客離れだけでなく、価格を据え置くことにもリスクがあります。増加したコストを店舗側だけで負担し続けると、収益が悪化する可能性があるためです。
利益が減少して資金繰りが悪化する
仕入れ費や人件費などが増えているにもかかわらず販売価格を据え置けば、売上高が変わらなくても利益は減少します。利益が十分に残らない状態が続けば、仕入れ代や家賃、給与などの支払いに必要な資金にも影響しかねません。
売上だけで経営状況を判断せず、原価や経費を差し引いたあとにどの程度の利益が残っているのか把握することが重要です。
商品やサービスの品質低下につながる可能性がある
価格を維持するために、食材費や人件費を削減する方法もあります。しかし、過度なコスト削減には注意が必要です。
食材の質や量を変更したり、人員を減らしたりすれば、料理の品質や提供スピード、接客などに影響する可能性があります。価格が変わっていなくても、顧客が以前より価値が低下したと感じれば、利用頻度などに影響することも考えられます。
コスト削減では、店舗の価値に影響しにくい無駄と、料理や接客など維持すべき部分を分けて考えましょう。
飲食店が値上げを検討するタイミング
値上げは「周囲の店舗も値上げしたから」といった理由だけで決めるのではなく、自店舗の数字をもとに判断することが大切です。
原価率や利益率が悪化している
まず確認したいのが、メニューごとの原価と利益です。食材の仕入れ価格が上昇すれば、以前と同じ価格で販売していても粗利が少なくなります。
各メニューの販売価格と原価を確認し、どの程度の利益を確保できているのか把握しましょう。日本政策金融公庫も、食材や酒類などの価格が高騰する状況では、それぞれのメニューの原価計算を行うことが重要だとしています。
ただし、適切な原価率は業態やメニュー構成などによって異なります。「原価率が○%を超えたら必ず値上げする」と一律に判断せず、自店舗の収支をもとに検討しましょう。
人件費や光熱費などの経費が増えている
値上げの判断では、食材原価だけでなく店舗全体の経費も確認します。
たとえば、原価率が前年とほぼ変わっていなくても、人件費や水道光熱費などが増えれば、最終的な利益は減る場合があります。家賃や広告宣伝費、決済手数料なども含め、営業に必要な支出を整理しましょう。
売上高と原価、経費、利益を継続的に比較することで、どの費用が経営を圧迫しているのか把握しやすくなり、値上げが必要かどうかを判断する材料になります。
仕入れやコスト削減だけでは対応できなくなっている
価格を改定する前に、仕入れ方法や発注量、食品ロス、人員配置など、改善できる部分がないか確認することも大切です。
一方、コスト削減だけで上昇分を吸収しようとしても、削減できる費用には限界があります。食材や人員を削りすぎれば、商品・サービスの品質にも影響しかねません。
店舗運営を見直しても必要な利益を確保できない場合は、コスト削減だけで対応するのではなく、販売価格そのものを見直すことも検討しましょう。
飲食店の値上げ価格を決める方法
値上げが必要だと判断したら、次は「何を、いくら値上げするのか」を決めます。感覚だけで価格を変更するのではなく、店舗の数字を確認しながら検討しましょう。
メニューごとの原価と利益を確認する
まず、各メニューの販売価格、食材原価、粗利、販売数などを整理します。
たとえば、注文数が多くても1品あたりの利益が少ない商品もあれば、販売数は少なくても十分な利益を確保できている商品もあります。売れているかどうかだけではなく、店舗全体の利益にどの程度貢献しているかを見ることが大切です。
ここでは前述した「値上げが必要か」という判断から一歩進み、商品ごとの収益性を比較して、どの商品を価格改定の対象とするのかを検討します。
一律ではなくメニューごとに値上げを検討する
値上げをするからといって、すべてのメニューを同じ金額・割合で引き上げる必要はありません。原価の上昇幅や粗利、販売数などを確認し、価格改定が必要な商品を選びます。集客につながっている看板商品については、価格変更が顧客に与える影響も考慮しましょう。
また、利益を確保しやすいメニューを充実させたり、複数の商品を組み合わせたセットを用意したりする方法もあります。個々の商品の採算だけではなく、メニュー全体で必要な利益を確保できる価格設定を検討することがポイントです。
値上げ後の利益をシミュレーションする
値上げ幅を決める際は、価格を変更した場合の売上や利益を事前に試算します。
飲食店の売上予測としては、客単価や座席数、回転数などを用いて考える方法があります。値上げ後の客単価を設定し、客数や回転数が変化した場合も想定して複数のパターンを計算してみましょう。
たとえば、「客単価は上がるものの客数が減る場合」と「客数を維持できた場合」を比較します。特定の値上げ率を正解と考えるのではなく、自店舗で必要な利益を確保できる価格を検討しましょう。
客離れを抑えながら飲食店が値上げするポイント
値上げを実施するときは、店舗側の収益だけでなく、顧客が価格変更をどのように受け止めるかも考える必要があります。
値上げするメニューを慎重に選ぶ
値上げする商品を決める際は、収益性だけでなく顧客からの人気も確認しましょう。特に看板商品や頻繁に注文される商品は、顧客が以前の価格を把握している場合もあり、価格変更に気づかれやすい商品です。店舗にとっての役割も踏まえて、値上げするかを判断します。
価格帯の異なる商品を用意するなど、予算に応じて顧客が選択できるメニュー構成にする方法もあります。原価・利益だけではなく、顧客への影響も考慮して検討しましょう。
値上げの理由を顧客に伝える
価格だけが突然変わると、顧客が戸惑う可能性があります。値上げする場合は、店頭や公式サイト、SNSなど、自店舗に合った方法で価格改定について知らせましょう。
原材料費や人件費などの上昇、料理やサービスの品質を維持するための価格改定であることなど、背景をわかりやすく伝えることも大切です。必要以上に長く説明するのではなく、価格を変更する時期や対象商品などとあわせ、顧客が理解しやすい内容にまとめましょう。
価格以外の価値も見直す
値上げ後も顧客に選んでもらうには、支払う価格に見合った価値を感じてもらうことが重要です。料理の味や見た目、メニューの魅力、接客、提供スピードなど、自店舗が顧客から評価されているポイントを改めて確認しましょう。
値上げするからといって、新たなサービスを無理に追加する必要はありません。これまで支持されてきた商品やサービスの品質を維持し、価格改定後も利用したいと思ってもらえる店舗づくりを意識することが大切です。
値上げ後の客数・客単価・利益を確認する
値上げは、実施したら終わりではありません。価格改定後の結果を数字で確認しましょう。比較したいのは、客数、客単価、売上、粗利、利益、メニューごとの販売数などです。値上げ前後でどのように変化したのかを確認します。
客数が減っただけで「値上げに失敗した」と判断するのは早計です。客数が多少減っても、客単価や粗利が上昇し、店舗全体で必要な利益を確保できている場合もあります。
反対に、客単価が上昇しても利益がほとんど改善していなければ、原価や経費、メニュー構成などを再確認する必要があります。一定期間の結果を比較し、必要に応じて価格やメニューを調整しましょう。
値上げだけに頼らず閉店を防ぐための対策
値上げは収益改善策の一つですが、それだけですべての経営課題が解決するとは限りません。仕入れや店舗運営、売上のつくり方などもあわせて見直しましょう。
メニュー構成や仕入れを見直す
メニューごとの販売数や利益を確認し、注文が少ない商品や利益を確保しにくい商品が多い場合は、メニュー構成を整理します。
仕入れ先や発注量を確認することも重要です。必要以上の発注や作りすぎによって廃棄が増えれば、その分だけ食材費の負担も大きくなります。日々の販売状況を確認しながら、品質を維持できる範囲で仕入れや在庫の無駄を減らしましょう。
固定費や店舗運営の無駄を削減する
店舗運営にかかる支出を洗い出し、改善できる部分がないか確認しましょう。
たとえば、来客が少ない時間帯まで営業していないか、客数に対して人員配置が適切かなどを確認します。曜日・時間帯別の売上や客数を把握すれば、営業時間やシフトを見直す判断材料になります。
ただし、人員を減らしすぎて料理の提供が遅れたり、接客の質が低下したりすれば、店舗の魅力を損なう可能性があります。削減額だけを見るのではなく、営業への影響まで考慮しましょう。
客単価や集客方法を見直す
売上を改善するには、来店客数を増やすだけでなく客単価を高める方法もあります。
セットメニューやコース、追加注文につながる商品など、自店舗に適した方法を検討しましょう。単品で値上げするだけではなく、複数の商品を組み合わせて顧客が選びやすい価格帯をつくる方法もあります。
また、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の再来店も重要です。顧客から評価されている商品やサービスを把握し、再び利用したいと思ってもらえる店舗づくりにつなげましょう。
資金繰りを早めに確認する
経営状態を判断するときは、売上や利益だけでなく、実際に手元にある資金も確認しましょう。家賃、給与、仕入れ代、借入金の返済など、今後必要になる支払いを整理し、資金がどの程度残るのか確認します。帳簿上で利益が出ていても、入金と支払いのタイミングによっては手元資金が不足する場合があるためです。
経営改善策の効果が出るまでには時間がかかる場合もあります。手元資金が少なくなってから対応を始めると、営業継続だけでなく閉店に必要な費用を確保することも難しくなる可能性があります。
値上げやコスト削減、集客改善などに取り組んでも赤字が続いている、今後の支払いに必要な手元資金が減っている、改善策の効果が出るまで営業を続ける余力が乏しいといった場合は、営業継続だけにこだわらず、店舗売却を含めた今後の選択肢を早めに検討しましょう。
経営改善をしても営業継続が難しい場合は早めに店舗売却を検討する
値上げやコスト削減、集客改善などに取り組んでも赤字が続き、手元資金も減少している場合は、閉店や店舗売却も選択肢として検討しましょう。改善策を続けるための資金的な余力が少ない状態で営業を続けると、撤退時に必要な費用まで確保できなくなる可能性があります。
賃貸店舗を閉店する際は、契約内容によって原状回復が必要となり、内装の解体や厨房設備の撤去などに費用がかかる場合があります。撤退費用を抑える方法の一つが、内装や設備などを残したまま次の事業者へ引き継ぐ「居抜き売却」です。条件が整えば、原状回復の負担を抑えたり、造作の売却代金を得たりできる可能性があります。
ただし、居抜き売却には貸主の承諾が必要です。また、賃貸借契約の内容や設備の所有関係などによっては売却できない場合もあります。営業継続が難しいと感じた段階で、手元資金が尽きる前に契約内容を確認し、店舗売却を含めて今後の方針を検討することが大切です。

値上げと経営改善を早めに検討して閉店リスクに備えよう
飲食店では食材費や人件費、光熱費などの上昇が経営を圧迫しています。客離れを恐れて価格を据え置き続けることも利益を減らす要因になり得るため、自店舗の原価や経費、利益を確認し、必要に応じて価格改定を検討しましょう。
値上げだけでなく、メニューや仕入れ、固定費、集客方法などを見直すことも重要です。それでも営業継続が難しい場合には、店舗売却も選択肢の一つです。「買取の神様」では、飲食店の居抜き売却について相談を受け付けています。店舗の売却や撤退費用についてお悩みの方は、早めにご相談ください。
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