居酒屋の経営は難しい?閉店しやすい飲食店の特徴と対応策

近年、居酒屋の閉店が全国的に増加しています。飲食業界全体が厳しい状況にある中で、生き残るためには経営の見直しや明確な戦略が欠かせません。本記事では、居酒屋の閉店が増加している背景や閉店に至る店舗の特徴、そして事業を継続するための具体的な対策について解説します。
居酒屋の経営は難しい?閉店が増加する背景
居酒屋の閉店には複数の要因が絡んでおり、どの店舗にも起こり得るリスクと言えます。まずは、なぜ居酒屋の閉店が増えているのか、その背景から見ていきましょう。
飲食業界の現状と居酒屋の廃業率の高さ
飲食業界はかねてから競争が激しく、新規参入が多い一方で廃業率も高い傾向があります。帝国データバンクの調査によると、2024年に倒産した居酒屋(酒場、ビヤホール)は212件とのこと。コロナ禍だった2020年の189件を上回り過去最多を更新、かつ全体の倒産件数894件のうち約23%を居酒屋が占めていることを踏まえると、居酒屋業界がいかに厳しい状況にあるかがわかります。
※出典:帝国データバンク│「飲食店」の倒産動向調査(2024年)
居酒屋経営の難しさと競争の激化
居酒屋を経営する上で、特に大きな壁となるのが「立地選び」と「競合店の多さ」です。駅前や繁華街など人通りの多いエリアは家賃も高額で、売上が安定しなければすぐに赤字に転じてしまいます。一方で、家賃を抑えようと人通りの少ない立地を選んだ場合、集客が困難になるケースも。
また、居酒屋業界は参入障壁が比較的低いため、新規出店が相次ぎ競争が激化しています。大手チェーンとの価格競争に巻き込まれたり、SNSで人気を集めた新興ブランドに客を奪われたりすることも少なくありません。
さらに、慢性的な人手不足も居酒屋の経営を圧迫する要因です。アルバイトの確保が難しく、スタッフ教育にまで手が回らないままサービスの質が低下してしまうケースも見られます。
こうしたさまざまな要素が重なり経営が不安定になった結果、閉店という判断に至る居酒屋が増加しています。

閉店してしまう居酒屋の特徴4つ
閉店してしまう居酒屋には共通点があるとされます。ここでは、ありがちな4つの特徴を紹介します。
1. 立地選びに失敗している
居酒屋経営において、立地は成功の鍵を握る重要な要素です。しかし、人通りが少ない場所や住宅街の奥まった立地など、集客が難しいエリアを選んでしまうと安定した売上を確保することは困難です。
また、繁華街や駅近といった立地でも、家賃が高すぎて利益を圧迫してしまうケースもあります。開業時は集客力を重視するあまり、収益性とのバランスを見誤ってしまうことも少なくありません。
立地の選定は「目立つ場所」や「人通りの多さ」だけでなく、「ターゲット層との相性」や「周辺店舗との競合状況」まで含めて慎重に判断する必要があります。
2. メニューの魅力が不足している
他店との差別化ができていない居酒屋はリピーターがつきにくく、集客に苦戦します。特に、料理の味や価格設定に明確な強みがなければ、「近くのチェーン店でいいや」とお客様が流れてしまう原因になります。
また、原価を抑えることばかりに目が向いてしまい、質の低いメニューを提供してしまうと悪い口コミが広がり、新規顧客の獲得も難しくなります。
最近の傾向では、写真映えやSNSでの拡散を意識したメニュー開発も重要です。ただ美味しいだけではなく、話題性や季節感、地域性といった付加価値が求められています。
3. 経営計画や費用管理が甘い
仕入れ原価や人件費、光熱費など、日々の支出をきちんと管理できていない居酒屋は黒字経営が難しくなります。特に、月ごとの収支バランスを把握せずに運営を続けていると、売上が好調でも思わぬ赤字に陥るリスクがあります。
また、売上が減少しているにも関わらず過剰な仕入れや広告費をかけてしまうなど、見通しの甘い経営も閉店につながる要因の一つです。これでは資金繰りが悪化し、あっという間に閉店せざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。
4. サービスの質が低い
お客様がリピートするかどうかを決める大きな要因が、接客サービスの質です。どれだけ料理が美味しくても、スタッフの態度が悪かったり、オーダーミスが多かったりすると、「また来たい」とは思ってもらえないでしょう。
また、スタッフの離職率が高い店舗では新人教育が追いつかず、サービスの品質が不安定になります。加えて、従業員のモチベーションが低下している職場では笑顔や丁寧な対応が失われ、居心地の悪い空間になってしまうこともあります。
サービスの質を維持・向上させるには、日頃の声かけや定期的な研修を通じてスタッフ全体の意識を高める取り組みが必要です。

居酒屋の閉店を防ぐための具体的な対策
居酒屋の閉店を回避するには、日々の経営において具体的な対策を講じることが不可欠です。経営を安定させ、長期的な成功を目指すためのポイントを紹介します。
店舗のコンセプトを明確にする
成功する居酒屋は明確なコンセプトを持っているものです。例えば「地元食材を使った創作料理」や「昭和レトロな雰囲気の店内」など、他店と差別化できる特徴を打ち出すことで、顧客の記憶に残りやすくなります。
コンセプトが曖昧だとターゲット層が定まらず、集客やメニュー開発にも影響を及ぼします。開業前はもちろん、既存店でも定期的にコンセプトの見直しを行い、市場のニーズに合った方向性を検討しましょう。
メニューの差別化と品質向上を図る
他店との差別化を図るには、独自性のあるメニュー開発が重要です。例えば、季節限定メニューや地域の特産品を取り入れた料理は話題性があり、リピーターの獲得につながります。
また、価格と品質のバランスを考慮し、コストパフォーマンスの高いメニューを提供することで、顧客満足度を高めることができます。定期的にメニューの見直しを行い、時代のトレンドや顧客の嗜好に合わせたラインナップを心がけましょう。
経営計画の見直しと費用管理を徹底する
安定した経営を維持するには、綿密な経営計画と費用管理が欠かせません。月次の収支計画を作成して売上や経費の動向を把握することで、早期に問題点を発見し、対策を講じることが可能です。特に仕入れ原価や人件費、光熱費などの固定費を定期的に見直し、無駄な支出を削減する努力が求められます。売上が減少している場合には、広告宣伝費やイベント費用の見直しも検討しましょう。

スタッフ教育とサービスの向上に努める
顧客満足度を高めるには、スタッフの接客スキルやサービス品質の向上が重要です。定期的な研修を実施し、接客マナーや商品知識を習得させることで、サービスの一貫性と質を維持できます。
また、スタッフ同士のコミュニケーションを促進し、チームワークを強化することで、働きやすい職場環境を整えられます。サービスの質が向上すれば顧客のリピート率が高まり、経営の安定につながるでしょう。
スタッフのモチベーションを維持する
スタッフのモチベーションを維持することは、サービス品質の向上や離職率の低下に直結します。適切な評価制度や報酬体系を導入し、努力や成果を正当に評価することで、スタッフのやる気を引き出せるでしょう。
また、キャリアパスの提示やスキルアップの機会の提供も長期的な勤務の促進につながるため、安定した人材確保が期待できます。
地域とのつながりを大切にする
地域密着型の経営は、居酒屋の安定した集客に効果的です。地元のイベントへの参加や、地域の食材を活用したメニューの提供は、地域住民との信頼関係の構築に貢献します。
また、地域の情報誌やSNSを活用して店舗の情報を発信すると、認知度の向上にもつながります。
居酒屋をやむを得ず閉店する場合の手続きと注意点
経営努力を重ねても、やむを得ず閉店を決断する場合があります。その際には、法的な手続きや関係者への対応を適切に行うことが求められます。ここでは、居酒屋の閉店時に必要な手続きや注意点を解説します。
居酒屋の閉店時に必要な届け出と手続き
居酒屋を閉店する際には、以下のような届け出や手続きが必要です。
- 保健所:食品営業許可の廃止届の提出
- 警察署:深夜酒類提供飲食店営業の廃止届の提出(該当する場合)
- 税務署:個人事業の廃業届出書や、法人の解散届出書の提出
- 年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク:従業員の雇用保険や社会保険の手続き
- 公共機関:電気・ガス・水道などの契約解除の手続き
これらの手続きは、閉店日までに余裕を持って行うことが重要です。提出期限や必要書類は各機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
書面による解約通知
賃貸契約を解除する際には、契約書に記載された期間内に書面で解約通知を行う必要があります。一般的には、1~3ヶ月前までに通知することが求められます。解約通知が遅れると余分な家賃が発生する可能性があるため注意が必要です。解約通知は内容証明郵便で送付することで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
店舗の原状回復と居抜き売却の選択
店舗を退去する際は原則として原状回復工事を行い、借りた当時の状態に戻す必要があります。しかし、設備や内装をそのまま引き継ぐ「居抜き売却」を選択することで、原状回復の費用を抑えることが可能です。
居抜き売却には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
<メリット>
- 原状回復工事の費用を削減できる
- 設備や内装を有効活用できるため、買い手が見つかりやすい
- 売却による収入を得られる
<デメリット>
- 買い手が見つからない場合、時間がかかる可能性がある
- 設備の状態や内装のデザインによっては評価が下がることがある
居抜き売却を検討する際は専門の業者に相談し、適切な価格設定や売却方法を検討しましょう。
従業員や取引先への対応
居酒屋の閉店が決定したら、速やかに従業員や取引先に対して連絡を行います。従業員には解雇通知や退職手続きに関する説明を行い、必要に応じて再就職支援を提供することが望ましいでしょう。
取引先には、契約解除の通知や未払い金の清算について誠意を持って対応することが重要です。信頼関係を損なわないよう、口頭だけでなく文書でも通知を行いましょう。誠実な対応をすることで、将来的な再出発の際にも良い関係を維持しやすくなります。
リース契約の清算
閉店に伴い、厨房機器やPOSレジなどでリース契約を結んでいた場合は速やかに契約内容を確認し、解約手続きに入る必要があります。リースは基本的に中途解約ができない契約形態が多く、残りの契約期間分の費用が請求されることも少なくありません。
そのため、閉店が決まった段階でまずリース会社に連絡し、契約の終了条件や清算金額を確認しましょう。場合によっては、設備を第三者に譲渡する形でリース契約を引き継げるケースもあるため、居抜き売却を検討している場合はリース会社との交渉が重要になります。リース物件を返却する際には、損傷の有無や付属品の有無など、原状回復の責任についても確認しておきましょう。
レンタル品の返却
居酒屋の店舗では、業務用冷蔵庫や食器洗浄機、制服などをレンタルしているケースが多いですが、閉店時には返却が必要です。まずは契約書を確認し、返却期限や返却場所、破損時の補償内容などの条件を確認しましょう。返却の遅延や破損があると追加請求の可能性もあるため、状態をよく確認し、なるべく早めに手続きすることが大切です。レンタル品の管理リストを作っておくと、抜け漏れなくスムーズに進められます。
公共機関(電気・ガス・水道)へ連絡
居酒屋の閉店が決まったら、電気・ガス・水道といったライフラインの解約手続きも忘れてはなりません。閉店日が決まり次第、各サービス会社に使用停止の連絡を入れ、最終の検針や立ち合いの日程を調整しましょう。
特に水道やガスは安全面の確認のため、立ち合いが必要になる場合があります。使用停止日までの料金は日割りで請求されることが一般的ですが、未払いがあると後日督促を受けることもあるので注意が必要です。
借入金がある場合は金融機関へ報告
店舗運営にあたって融資を受けていた場合、閉店が決まった時点で金融機関への報告が必要です。借入の契約内容に応じて、返済方法やスケジュールの見直し、または残債の一括返済が求められることもあります。連絡が遅れると金融機関との信頼関係が損なわれ、今後の融資に影響を与えるおそれもあるため注意しましょう。
また、居抜きで店舗を売却できれば、その資金を返済に充てることもできるので、状況に応じて売却と同時に金融機関へプランを提示するのも有効です。

徹底したリスク管理で居酒屋の閉店を回避しよう
居酒屋の閉店には、開業前の準備不足や顧客満足度の低下といった複数の要因が絡んでいます。しかし、こうしたリスクは事前に情報収集と計画をしっかり行い、日々の経営に対策を講じることで回避しやすくなります。
また、やむを得ず閉店を決断する場合は、原状回復や居抜き売却などの選択肢を知っておくことで、コストを抑えた撤退も可能です。居抜き売却ならスケルトン状態に戻す必要がなく、造作・備品をそのままの状態で売却できるので、手元に資金が残る可能性が高まります。その資金を元手に新たなビジネスを始めるのも良いでしょう。
「買取の神様」では、居抜き物件の買い取りはもちろん、飲食店の閉店・撤退に関するご相談や、無料査定にも丁寧に対応します。居酒屋の閉店を考えている方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
コメント