店舗閉店のため退職してもらう方法|配置転換・退職勧奨・解雇の進め方と注意点

飲食店の閉店を決断したときに、従業員にどう対応すればいいか迷われる方も多いのではないでしょうか。閉店時の対応には配置転換・退職・解雇があり、円満にお店をたたんで次のステップへ進むためには、適切な対応が欠かせません。店舗閉店のため退職勧奨や配置転換をする方法や、注意点について解説します。
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店舗閉店のため退職・配置転換を進める3つの選択肢
お店をたたむことが決まった際は、従業員への対応が一番の課題になります。具体的な対応としては、別の店舗へ移ってもらう配置転換、話し合いで辞めてもらう退職勧奨、最終手段として解雇という方法があります。 店舗閉店のため退職勧奨や配置転換をする詳細や注意点、手続き方法について解説していきます。

店舗閉店のため配置転換をする場合の対応
配置転換は、従業員の雇用を守りながら組織の体制を整えるための手段となります。 今の店舗がなくなっても他の場所で活躍してもらうことで、長年培ったスキルを無駄にせずに済みます。 制度の基本や拒否されたときの向き合い方、必要な書類の渡し方について見ていきましょう。
配置転換(配転)とは?
配置転換(配転)とは、同じ会社の中で働く場所や職務の内容を長期間にわたって変更することを指します。 例えば、ある居酒屋のチェーン店において経営不振で店舗が閉まる場合に、スタッフを別の店舗へ異動させることがこれにあたります。
長く働いたスタッフにはスキルも蓄積しているため、閉店するからといってすぐに辞めてもらうのではなく、まずは他の場所で働けないかを検討することが大切です。飲食業界は人材不足も深刻化しているため、配置転換は会社と働く人の双方にとってメリットのある選択肢と言えるでしょう。
配置転換を従業員が拒む場合の対応
従業員が配置転換を受け入れられないと主張した場合は、まず労働契約や就業規則の内容、配置転換の必要性、従業員が受ける生活上の不利益などを確認する必要があります。勤務地や職種を限定する合意がある場合など、本人の同意なしに配置転換を命じられないケースもあるため、個別の事情を踏まえて対応しましょう。
経営側は配置転換する理由や待遇などを説明した上で、丁寧に事情を聞く姿勢が欠かせません。過去の裁判例でも、他の店舗への配置転換を検討・提示していなかったことを理由に、解雇が無効と判断されたケースがあります。
【配置転換を従業員に説明する際のポイント】
- 配置転換が必要な理由
- 配置転換後の勤務場所や職務内容
- 配置転換後の賃金、手当、労働時間、休日などの待遇
- 配置転換後の通勤経路や通勤所要時間
従業員が疑問に思う点をしっかり説明し、理解を得ながら進める姿勢がトラブルを防ぐ鍵となります。
配転命令通知書の交付方法
配置転換を行う際は、新しい勤務地や業務内容、異動日などを従業員へ明確に伝えましょう。法律上、配置転換のたびに「配転命令通知書」の交付が一律に義務付けられているわけではありませんが、後の認識違いを防ぐためにも書面で通知しておくと安心です。
なお、2024年4月からは、労働契約の締結時や有期労働契約の更新時に、就業場所・業務について「変更の範囲」を明示することが必要になっています。
書面を交付することで「言った言わない」の水掛け論を防ぎ、会社の決定を書面による記録として残すことができます。手渡しが基本ですが、難しい場合は記録が残るメールや書留郵便を利用する方法もあります。
また、新しい職場への異動に伴って賃金や労働時間などの労働条件を変更する場合は、労働契約や就業規則の内容を確認し、必要に応じて本人の合意を得たうえで進めましょう。正しい手続きを踏むことで、スタッフも安心して新しい環境での一歩を踏み出すことができるようになります。
店舗閉店のため退職勧奨をする場合の対応
店舗閉店のため退職勧奨することは、会社から従業員に対して「辞めてほしい」とお願いをする行為であり、合意の上で契約を終わらせる方法です。 解雇に比べてトラブルになりにくいメリットがありますが、進め方を間違えると法的なリスクを負うことにもなりかねません。アルバイトや正社員といった雇用の形に合わせた配慮や、最後に取り交わすべき書類の重要性を理解しておくことが重要です。
退職勧奨とは?
退職勧奨はあくまでも、会社から従業員への「働きかけ」であり、本人に辞めることを検討してもらうプロセスです。 強制的に辞めさせる解雇とは異なり、最終的には本人の意思による同意が必要となります。閉店に伴って人員を整理したい場合は、「今後の身の振り方を考えてほしい」と提案し、納得してもらった上で辞めてもらいます。
裁判所は、不当な圧力をかけない範囲での説得であれば適法と認めていますが、しつこく迫りすぎると違法になるリスクもあります。お互いが納得して、別々の道を歩むための準備期間として位置づけるのが理想的です。
アルバイト・パートに退職勧奨をする場合
アルバイトやパートのスタッフに対しても、正社員と同様に誠意を持った話し合いを行うことが大切です。まずは閉店の日程を早めに伝え、その日までの給与の支払いや有給休暇の消化について話し合いましょう。学生や主婦など、それぞれに生活の事情があるため、次の仕事を見つけるための猶予を与える配慮が喜ばれます。
閉店日までの期間が短い場合は、解決金などを退職条件として提示し、合意を目指す方法もあります。解決金の支給は法律上の義務ではなく、金額や条件は個別に話し合って決めます。厚生労働省の相談窓口には、アルバイトの雇い止めや退職に関する相談が多く寄せられており、注意を怠るとトラブルが表面化しやすい部分です。たとえ短い時間の勤務であっても、一人の大切な労働者として尊重する姿勢を忘れてはいけません。

正社員に退職勧奨をする場合
正社員に退職を勧める際には、生活基盤への影響が大きいため、より手厚い補償やサポートを検討するのが一般的です。 面談にてただ辞めてほしいと言うだけではなく、これまでの貢献に感謝しつつ、特別退職金の支給や再就職の支援などを文書に記載し提案するのがポイントです。
【文書に記載する退職条件の一例】
- 特別退職金・解決金の支給
- 未消化の年次有給休暇の取り扱い
- 再就職の支援
- 退職日や退職理由
退職金や解決金の支給は法律上の義務ではありませんが、退職勧奨は本人の同意が前提となるため、条件を提示して納得してもらうのが一般的です。条件なしで話が進まず解雇に踏み切った結果、不当解雇として争われるケースもあります。退職金や解決金の額はケースバイケースですが、賃金の数か月分を目安に提示するケースが見られます。
話し合いの場では感情的にならず、「なぜ閉店しなければならないのか」という経営上の理由を、データとともに丁寧に説明しましょう。本人が拒否し続けている場合には無理に押し切るのではなく、一旦持ち帰ってもらって考える時間を与える柔軟さも必要です。将来にわたって良好な関係を保てるよう、最大限の敬意を払って進めていくことが経営者の役割です。
退職勧奨する際の注意点
店舗閉店のため退職勧奨を進める上で最も注意すべきは、相手が「強要された」と感じるような言動を避けることです。 一度に何時間も個室に閉じ込めたり、一日に何度も呼び出したりする行為はパワハラとみなされる可能性が高くなります。大声を出して威嚇したり、人格を否定するような言葉を使ったりすることも絶対にあってはいけません。
過去の裁判例でも、面談の回数や時間が社会通念上の限度を超えた場合に、慰謝料の支払いが命じられたケースがあります。1回の面談は長時間にならないようにし、本人が拒否している場合に何度も呼び出すことは避けましょう。
退職勧奨後、従業員に考える時間を与えるのもポイントです。即断を迫ると、強要された印象が生まれやすくなります。提案した退職条件を受けられる期限を定め、期限を過ぎた場合は条件が適用できない旨を伝えて、決断を促しましょう。
退職合意書の締結方法
双方が退職に合意したときには、その内容を「退職合意書」という形でしっかりと書面に残します。退職合意書を作成しておくことで、後々「不当解雇だ」と訴えられるリスクを大きく下げられます。合意書には退職日や退職に至った経緯、解決金や未払い賃金の支払い方法などを具体的に記載します。また「清算条項」として、この書類に書かれた内容以外には、お互いに何の請求もしないという約束を盛り込むのが定石です。
例えば会社への誹謗中傷をしないことや、秘密保持の義務についても触れておくとより安心です。書類は2通作成してそれぞれが署名捺印し、双方が1通ずつ保管するようにしましょう。
閉店による退職は「会社都合」と判断されることもある
店舗の閉店によって事業所が廃止され、それに伴って離職した場合や、会社からの退職勧奨に応じて離職した場合は、雇用保険上の特定受給資格者に該当することがあります。特定受給資格者に認定されると、自己都合退職とは異なり給付制限がなく、年齢や雇用保険の被保険者期間によっては所定給付日数も長くなります。
なお、離職理由の最終的な判定はハローワークが行います。離職証明書には閉店や退職勧奨に至った経緯を正確に記載しましょう。
店舗閉店のため解雇する場合の対応
退職勧奨にて合意が得られない場合や、配置転換が不可能な場合には解雇という手段が検討されます。しかし解雇は労働者の生活を奪う行為であるため、法律によって厳しく制限されています。特に経営上の理由による「整理解雇」を行う際には、満たすべきハードルがあることを知っておきましょう。
解雇とは?
解雇とは従業員の同意を得ることなく、会社側から一方的に労働契約を解除する行為を指します。これは非常に強力な権利であるため、適当な理由で行うことはできず、客観的に見て納得できる理由が必要です。
たとえ店が閉まるからといっても、それだけで自動的に解雇が許されるわけではない点に注意が必要となります。労働基準法では少なくとも30日前に予告をするか、予告をしない場合には30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが義務付けられています。
例えば、「明日からお店を閉めるから今日で解雇だ」とする場合には、即座に解雇予告手当を支払わなければなりません。これをおろそかにすると、後から不当な手続きとして訴えられる原因を作ってしまいます。解雇はあくまでも、他のすべての手段を尽くした後に残された、最終手段であることを肝に銘じておきましょう。
解雇権濫用法理とは?
日本では「解雇権濫用法理」という考え方が労働契約法第16条に定められており、会社が自由に解雇することを厳しく制限しています。これは客観的に合理的な理由があり、かつ社会の常識に照らして相当だと認められない限り、解雇は無効になるというルールです。
つまり「社長が気に入らないから」や「少し仕事が遅いから」といった理由での解雇は、裁判になればまず認められません。閉店による解雇の場合でも、なぜその人でなければならなかったのか、なぜ今解雇なのかが問われることになります。
裁判所は労働者の権利を強く守る傾向にあるため、経営者は常に「これは濫用ではないか」と自問自答する必要があります。実際に解雇が無効になると、辞めた後の期間の給与を遡って支払わなければならない(バックペイ)という、大きな経済的損失を招きます。解雇は非常にリスクが高いため、「できる限りしない」と認識しておいたほうがよいでしょう。
整理解雇の4要素とは?
会社の経営上の理由によって人員削減を行うための解雇を「整理解雇」と呼びます。整理解雇が有効かどうかは、主に以下の4つの要素をもとに総合的に判断されます。
- 人員削減の必要性
- 解雇回避努力の義務
- 人選の合理性
- 手続きの妥当性
第一に「人員削減の必要性」があり、お店を閉めなければならないほどの差し迫った経営上の理由があることです。第二に「解雇回避努力の義務」で、役員の報酬を削ったり配置転換を検討したりと、解雇を避けるために最善を尽くしたかが問われます。
第三に「人選の合理性」であり、誰を解雇するかを決める基準が、公平で納得感のあるものでなければなりません。複数の店舗を運営している場合は、閉店する店舗のスタッフだけを対象にすると人選の合理性を否定されることもあるため、会社全体で検討した経緯を残しておきましょう。
そして第四に「手続きの妥当性」で、従業員や労働組合に対して十分な説明を行い、誠実に協議したかというプロセスが重要視されます。
整理解雇の有効性は、これら4つの要素を踏まえて個別の事情から総合的に判断されます。閉店はやむを得ない事情ですが、それでも働く人の立場を考えて努力をした形跡を残しておくことが不可欠です。繰り返しになりますが、解雇は最後の手段として行使し、解雇する前に必ず弁護士や専門家に相談しましょう。
店舗閉店のため退職勧奨や配置転換をする方法を押さえよう
飲食店を閉店する際の従業員への対応は、経営者の大切な仕事です。まずは配置転換によって雇用を継続できないかを検討し、それが難しい場合には退職勧奨などの方法を検討しましょう。解雇を行う場合も、必要な手続きや条件を確認し、従業員へ十分に説明しながら進めることがトラブル防止につながります。店舗閉店のため退職勧奨や配置転換をする方法を知り、スムーズに次のステップへと進みましょう。
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