飲食店でよくあるトラブル事例と対策|押さえたい初動と対応方法

従業員にクレームを伝える客

飲食店では、料理に対するクレームや衛生面の指摘、スタッフ対応への不満、会計・予約時の問題など、さまざまなトラブルが起こります。小さな行き違いが口コミやSNSで広がり、客離れにつながることもあるので、対処法を押さえておくことが重要です。本記事では初動対応のポイントを始め、飲食店でよくあるトラブル事例と対策を紹介します。

目次

【基本】飲食店のトラブル初動5ステップ

どんなトラブルでも、最初の「初動」でその後の展開は大きく変わります。内容ごとの細かい対応はあとで考えるとして、まずは次の5ステップを共通ルールとしてスタッフ全員で共有しておきましょう。

STEP1:相手の話は最後まで聞く

途中で言い訳や説明を入れず、相手の話を最後まで聞きましょう。「はい」「そうでしたか」と短くあいづちを打ちながら、表情も含めて“しっかり聞いています”という姿勢を示します。

STEP2:「事実」と「感情」を整理してメモする

お客様からクレームが入った、または店内でトラブルが起こった際、現場に責任者がいるとは限りません。状況を伝えられるよう、「いつ/どこで/誰が/何をしたか(事実)」「どう感じたのか(怒り・不安・失望など)」を分けてメモしておくよう共有しましょう。

STEP3:まずはお詫びと共感を伝える

「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」「せっかく来ていただいたのに、このような状況になってしまい失礼いたしました」とお詫びを先に伝えると、相手の気持ちが落ち着きやすくなります。

STEP4:「いま何をするか」を短く宣言する

すぐに判断できない内容は、「状況を確認して、◯分後にあらためてご説明いたします」など、“確認に行く・いつ戻るか”をはっきり伝えます。場所がレジ前や入口など目立つ場合は、「よろしければこちらのお席でお話を続けさせてください」と少し落ち着ける位置へ案内しましょう。

STEP5:方針と引き継ぎを明確にする

交換・一部返金・席移動など、その場で対応できる範囲を伝えたうえで、「この先の対応は店長より説明させていただきます」「本日の内容は責任者に共有し、再発防止まで進めます」と、誰が・どこまで対応するかをはっきり示しましょう。

飲食店トラブル│料理・品質に関する問題

料理に関するトラブルは不満が高まりやすく、口コミやSNS投稿にもつながりやすい領域です。異物混入や提供ミスなど、代表的なトラブルと具体的な対処法を見ていきましょう。

トラブル例①異物の混入が見つかった

【事例】
金曜日のディナータイム、4名グループに提供したパスタの上に、長い髪の毛が1本付着していました。お客様の1人が料理を撮影しながら「これ、どういうことですか?」と声を上げ、周囲のテーブルも振り向く状況に。

【解決策】
まずは料理をすぐ下げて謝罪し、その場で交換・返金の方針を簡潔に提示します。そのうえで、伝票・座席・時間を記録し、混入経路(仕込み/盛り付け/配膳)を振り返ります。

また、「異物混入時の初動フロー」を簡単な手順書にしてバックヤードに掲示しておくと、誰が対応しても落ち着いて動きやすくなります。

トラブル例②注文と異なる料理を提供してしまった

【事例】
ランチタイムに来店した2名様が「ハンバーグセット(ライス)」と「生姜焼きセット(ライス大盛)」を注文。しかし、実際には「唐揚げセット」と「生姜焼きセット(ライス普通)」を提供してしまい、お客様から「頼んだものと違いますよね?」と指摘が入ったケースです。

【解決策】
まずはミスを認めて謝罪し、「正しい商品をすぐにお持ちします」と交換対応の意思を明確に伝えましょう。そのうえで、伝票・ハンディ・口頭復唱のどこでズレたかを確認し、類似メニューの名前やサイズ表記の見直し、提供前のダブルチェックなどの仕組みで、今後の取り違えを防ぎます。

飲食店トラブル│衛生・安全に関する問題

店内の衛生状態や害虫の目撃など、衛生・安全に関するトラブルは、お客様の健康とお店の信用に直結します。「この店は大丈夫か」と思われないための考え方と予防策を押さえておきましょう。

トラブル例③店内の衛生状態を指摘される

【事例】
テーブルのベタつきや床の汚れ、グラスの曇りなどを見たお客様から「この店、大丈夫?」という不安の声が上がります。直接クレームにならなくても、無言で二度と来てもらえなくなるパターンも多く、気づきにくい売上ダウン要因になります。

【解決策】
開店前・ピーク前・閉店後の清掃チェックリストを作成し、「誰が・いつ・どこを・どう確認するか」を明確にします。入口・トイレ・テーブル周りなど、忙しい時間帯でも最低限対応すべき箇所を決め、汚れを見つけたスタッフがすぐに動けるよう優先順位を共有しておきましょう。

トラブル例④害虫が出没した

【事例】
座席近くで害虫を目撃したお客様が驚いて椅子を引き、「いま虫がいましたよね」とスタッフを呼び止めました。その様子を近くのお客様も見ており、店内はざわついた空気に。

【解決策】
まずは見つけてくれたことへのお礼と謝罪を伝え、席の移動や料理の作り直しなど、その場でできる対応を提示しましょう。同時に、発見場所・時間帯などを記録し、侵入経路やゴミ置き場、ドアの開閉状況、排水溝周りの状態を点検します。必要に応じて専門業者に相談し、定期的な防虫・防鼠対策をルール化することも重要です。

飲食店トラブル│提供・オペレーションに関する問題

提供遅延やオーダーミスなど、オペレーション上のトラブルは、回転率だけでなく信頼にも影響します。忙しい時間帯でもブレない提供体制をつくるためのポイントを紹介します。

トラブル例⑤提供の遅さに対するクレーム

【事例】
満席になった際、キッチンのオーダーが集中して料理の提供が30分以上遅れてしまいました。お客様から「もう30分以上待っているんですが」と声が上がり、その会話を聞いた周囲のテーブルでも不満そうな表情が見られる事態に。スタッフは「もう少々お待ちください」と繰り返すだけになり、お客様のイライラが募っていきました。

【解決策】
一定時間以上経過したテーブルには先に声かけを行い、「あと◯分ほどお時間をいただきます」と具体的な目安を伝えます。そのうえで、前菜やすぐ出せる一品を先に出す提案や、一部キャンセルの可否など複数の選択肢を用意します。

また、裏側ではピーク時のポジション配置や仕込み量、メニュー構成を見直し、「この人数ならここまでが限界」という基準をスタッフ全員で共有しておきます。

トラブル例⑥オーダーミス

【事例】
常連のお客様から「辛さ控えめで」と頼まれていたカレーを、通常の辛さで提供。ひと口食べたお客様が「これ、前より辛いですよね?」と指摘し、スタッフが確認すると注文時のメモに「辛さ控えめ」の記載が抜けていました。その後、作り直しでキッチンがさらに混み合い、他のテーブルへの提供も遅れてしまいました。

【解決策】
まずはお客様の前でミスを認め、すぐに作り直すことを伝えましょう。オペレーションの観点では、注文時の復唱、オーダーシステム上での注意喚起(アレルギーや辛さ調整の入力欄)、厨房との共有方法など、ミスが起こりやすいポイントごとにルールを見直します。

飲食店トラブル│接客に関する問題

接客トラブルは、内容以上に「どう対応されたか」が記憶に残るものです。スタッフの態度や説明不足が原因で「感じが悪い店」と思われないよう、言葉の選び方と説明のタイミングを見直していきましょう。

トラブル例⑦スタッフの態度に関する指摘

【事例】
注文を取りに行ったスタッフの対応が素っ気なく、お客様から「さっきの人、感じ悪くないですか?」と名指しでクレームが入ります。忙しさから目線を合わせない、返事が小さいなど、本人に悪気はなくても「態度が悪い」と受け取られるケースは少なくありません。

【解決策】
クレームを受けたら、まずは責任者が前に出て謝意とお詫びを伝え、「ご指摘ありがとうございます」と向き合う姿勢を示します。その場でスタッフを叱責するのではなく、裏に下がったタイミングで事実確認と振り返りを行い、表情・声のトーン・言葉遣いのロールプレイを通じて改善につなげましょう。

トラブル例⑧店舗側の説明不足に対する指摘

【事例】
週末の夜、2時間制のコースを予約していたグループに対し、入店時に時間制の説明をしないまま案内。ラストオーダーの時間を迎えてから「そろそろお時間です」と伝えると、「そんな話は聞いていない」と強い口調で返され、会計時にも「時間制だと知っていたら別の店を選びました」と不満を表明されました。

【解決策】
席料・時間制・ラストオーダーなど、誤解が生まれやすいルールは、入口の掲示・メニュー表記・予約サイトの文言・口頭説明の4つをそろえて一貫した案内を徹底します。特に口頭説明は、スタッフ全員が同じフレーズで言えるようにトークスクリプトを用意し、新人研修や朝礼で繰り返し確認しておくと良いでしょう。

飲食店トラブル│会計・料金に関する問題

誤請求や説明のない席料・チャージなど、会計・料金に関するトラブルは、金額以上にお店への信用を損ないます。代表的なケースと、誤解やミスを防ぐための仕組みづくりを確認しておきましょう。

トラブル例⑨頼んでいない料理が入っているとの指摘

【事例】
会計時にレシートを確認したお客様から、「この一品は頼んでいません」と指摘を受けました。確認すると、隣のテーブルの注文が誤って打ち込まれていたことが判明。すぐに訂正はしたものの、「気づかなかったらそのまま払っていましたよね」と不信感を示されてしまいます。

【解決策】
指摘を受けたら、まずは謝意とお詫びを伝え、その場で伝票と注文履歴を一緒に確認します。ミスが判明した場合は速やかに訂正・返金を行い、原因が席番号の取り違えなのか、入力ミスなのかを切り分けましょう。

また、会計前に注文内容を読み上げて確認する運用や、複雑な会計時にダブルチェックをする仕組みを取り入れると、トラブル防止効果が高まります。

トラブル例⑩席料・チャージ料への不満

【事例】
カウンター席で軽く飲食をされたお客様が、会計時に初めて「席料」の項目を見て、「これは何の料金ですか?」と質問されました。スタッフが「当店ではお通し代として…」と説明すると、「それなら最初に説明しておいてください」とトーンが強くなり、最後は不機嫌な様子で退店。数日後、「説明のないチャージがあった」との口コミが投稿されました。

【解決策】
席料・チャージ料を設定している場合は、「いくら・いつ・何に対して発生するのか」をシンプルな言葉でまとめ、入口の掲示やメニュー、オンライン上の店舗情報に必ず明記しましょう。

さらに、入店時や最初の注文時に「当店はお一人様◯◯円の席料を頂戴しております」と一言添えることで、このようなトラブルを最小限に抑えられます。

飲食店トラブル│予約・席に関する問題

予約が入っていない、待ち時間や案内順への不満など、予約・席まわりのトラブルは、楽しみにしていた気持ちを一気に冷ましてしまいます。飲食店では、複数の予約経路を安全に扱うための工夫が必要です。

トラブル例⑪予約が取れていない

【事例】
お客様が「◯時に予約している○○です」と来店したにもかかわらず、台帳や予約システム上に名前が見当たりません。確認している間に待ち時間が伸び、「ちゃんと管理しているのか」と不信感が高まります。

【解決策】
まずはお詫びとともに、空席状況に応じて「すぐご案内」「少しお待ちいただく」「別時間・別店舗の提案」など現実的な選択肢を提示します。その後で、予約経路ごとに管理方法を見直し、受付ルートをできるだけ絞り込むことが重要です。

トラブル例⑫待ち時間が長い/案内順が不公平

【事例】
満席時に順番待ちリストで案内していたところ、2組目に名前を書いたお客様が、3組目の方が先に案内された様子を見て「後から来た人が先に入っていますよね?」と指摘。実際には席の空き状況と人数の関係で前後したものの、説明が十分でなかったため「順番を無視された」と感じさせてしまいました。

【解決策】
受付時に「おおよその待ち時間」を分単位で案内し、順番待ちリストや整理券番号の表示など、見える形で進行状況を示します。予約優先の場合は、「ご予約のお客様を優先してご案内しています」などとシンプルに説明できるようにしておきます。

飲食店トラブル│お客様同士の問題

酔客同士の口論や宴会の騒音など、お客様同士のトラブルは「店が管理できているか」を問われる場面です。安全と公平感の両方を守りながら、早めに火種をおさえる対応をとりましょう。

トラブル例⑬酔ったお客様同士の口論・ケンカ

【事例】
金曜の夜、カウンター席とテーブル席のそれぞれのグループが、会話の内容をきっかけに言い合いに発展。周囲のお客様は食事を中断して様子を伺うようになり、店内全体が緊迫した雰囲気になりました。

【解決策】
スタッフ一人で対応しようとせず、複数名で距離を取りながら声をかけます。「他のお客様もいらっしゃいますので、お声のボリュームを少しお控えいただけますか」と冷静に伝え、それでも収まらない場合は責任者が退店を検討します。

また、状況が危険と判断されるときは、ためらわず警察やビル管理者に相談する体制を整えておきましょう。

トラブル例⑭他の席の騒音に対するクレーム

【事例】
奥のテーブル席で行われていた10名ほどの宴会グループが盛り上がり、乾杯のたびに大きな声が響きました。隣の2名席のお客様から、「うるさくて会話ができません」と苦情が入ります。

【解決策】
「特定のお客様が迷惑だ」と伝えるのではなく、「店からのお願い」として「店内混雑のため、お声のボリュームを少しだけお控えいただけますか」などとお知らせします。事前に大人数グループの席位置を入口から離す、子ども連れの多い時間帯を想定してテーブル配置を工夫するなど、レイアウト面の予防策も有効です。

飲食店トラブル│スタッフ・内部に関する問題

新人の接客ミスや金銭管理の不備など、スタッフ・内部の問題は、表に出る飲食店トラブルの土台になりやすい領域です。属人化を減らし、誰が入っても一定の品質を保てるようにする仕組みづくりを意識しましょう。

トラブル例⑮新人の接客ミス・クレーム対応ミス

【事例】
新人スタッフが慣れないクレーム対応で動揺し、「でも」「しかし」と言い訳から話し始めてしまい、相手の怒りをさらに大きくしてしまいました。先輩にバトンタッチする頃には感情がこじれており、収拾に時間がかかるパターンです。

【解決策】
新人には「まずは共感とお詫びを一言」「判断が難しい内容はすぐ責任者にパス」という、シンプルな初動ルールを教えます。具体的なフレーズ例を用意してロールプレイを行い、「こう言われたらこう返す」という型を身体で覚えてもらうことで、現場での負担を軽減できます。

トラブル例⑯金銭管理(レジ差異・会計ミス)

【事例】
レジ締めのたびに数百円〜数千円の差異が発生し、原因が特定できない状態が続きます。その結果、「誰かがレジ操作を誤っているのではないか」「もしかして不正があるのではないか」と、スタッフ同士の間にモヤモヤした空気が生まれてしまいました。

【解決策】
取消・値引き・返金処理が発生した際の記録ルールを明確にし、一定金額以上の処理は責任者が必ず立ち会うようにします。また、混雑時の会計を一人に集中させず、担当を分けてダブルチェックできる体制も整えましょう。

飲食店でよくあるトラブルを把握し、対策を講じよう

飲食店のトラブルは、料理・衛生・接客・会計・予約・お客様同士のトラブル・内部と、さまざまな場面で起こります。しかし、よくあるパターンをあらかじめ知り、初動と対応の基準を決めておけば、大きなクレームや炎上を防ぐことは十分可能です。自店で起こりやすいトラブルから優先順位をつけて、マニュアルと教育に落とし込み、現場で回る仕組みへと整えていきましょう。

なお、飲食店のトラブルは売上に直結する重要な問題です。もし「満足な人員を配置できず、トラブルへの対応が難しい」「悪い口コミが増えてしまい、売上が厳しい」といった悩みを抱えている場合は、一度閉店しリスタートするのも一案でしょう。

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この記事を書いた人

2018年からWebライターとして活動。活発な女の子をワンオペで育てる新米ママライターです。仕事と育児に日々奮闘中!読みやすく分かりやすい文章を心がけています。

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