飲食店の廃業手続きはいつまでに何をする?流れと必要書類を徹底解説

「飲食店を廃業したいけれど、何から始めれば良いのか」と悩む方も多いでしょう。廃業する際は、税務署や自治体への届け出、賃貸契約の解約、従業員への通知など必要な手続きは多岐にわたります。この記事では飲食店の廃業手続きの流れを解説し、必要な書類やポイントを解説します。煩雑な手続きを整理し、計画的に進めるための参考にしてください。

目次

飲食店の廃業手続きとは

飲食店を廃業する際は、行政への届け出を行います。

飲食店は複数の法律により基準が定められ、開業時にさまざまな行政に届け出、認可を得て営業を行います。よって営業を停止する場合には、法律の定めに従って各機関へ届け出や許可証の返却といった手続きが必要です。手続きは、行政機関により期限が決まっているものもありますので注意してください。

飲食店の廃業手続きの流れ①関係各所への連絡・通知

ここからは、飲食店の廃業手続きの流れを紹介します。まずは銀行や取引先、従業員などに連絡をしましょう。店舗物件が賃貸の場合は不動産会社に解約の連絡、リース契約があればリース会社への連絡も必要です。

店舗物件管理会社への連絡

店舗物件を賃借している場合、賃貸契約の解約を物件の管理会社に連絡します。解約予告すべき期間は、賃貸借契約の内容により異なります。廃業を検討し始めた段階で、早めに賃貸借契約の内容を確認し、解約に向けたスケジュールを立てましょう。

管理会社への引き継ぎ方は、スケルトン物件か居抜き物件かで変わります。原状回復の工事が必要かどうかなど、合わせて管理会社に確認してください。

金融機関への連絡

取引のある金融機関に廃業する旨を連絡しましょう。融資を受けていて債務がある場合、廃業後も支払う義務があります。預金など資金があれば、その資産で返済します。資金が不足しているなら、債権者と交渉して支払期限の延ばしてもらえる可能性もあります。廃業により追加融資や返済期限など条件が変わるため、必ず金融機関に連絡してください。

従業員への通知

従業員を雇っている場合は、従業員へ廃業の通知が必要です。

廃業の際は従業員を解雇します。解雇に際して労働基準法では、解雇の30日以上前に「解雇予告通知」を書面で通知することが義務付けられています。30日未満で解雇する場合、不足日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支給することが必要です。トラブルを避けるためにも、廃業が確定した段階で従業員に通知するのが良いでしょう。

取引先への連絡

仕入れ先など、取引先にも廃業の連絡をします。仕入れ先とは継続しての契約していることが多く、廃業する場合の仕入れ価格や支払い条件が変わる可能性もあります。当初の仕入れに関する契約をよく確認し、廃業までの予定を伝えて、取引期間や仕入れ条件を調節しましょう。

リース契約している場合は、リース会社への連絡も必要です。飲食店では凍冷蔵庫や食洗器、ビールサーバー、おしぼりウォーマーなどリース品も多いでしょう。廃業にあたってリース品を返却し、残金を清算します。リース品の所有権はリース会社にあり、勝手に譲渡や売買はできません。店内のリース品の契約書を確認し、リース会社へ連絡し返却と精算を計画します。

他に得意先やお客様にも閉店の連絡が必要です。閉店の1〜2ヵ月前を目安に、店頭に貼り紙したり、手紙、メール、ホームページ、SNSを使ったりして伝えるのがおすすめです。

飲食店の廃業手続き流れ②行政への届け出

続いて各行政機関への届け出や必要な書類を解説します。従業員を雇っている場合など状況に応じて必要な手続きが変わりますので注意が必要です。あわせて手続きの期限も確認しましょう。

保健所

所轄の保健所へ「廃業届」を提出し、「飲食店営業許可書」を返納します。提出期限は地域により違いますが、廃業日から10日以内が一般的です。書類形式も保健所により異なるので、所轄の保健所で必ず確認してください。必要な書類は、保健所や自治体のホームページからダウンロード可能です。電子申請も可能なところもあります。書類記入をする際に必要な営業許可番号は「食品営業許可証」を確認しましょう。

税務署・税事務所

税務署には、以下の届け出が必要です。

  • 個人事業の開業・廃業等届出書
  • 給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書
  • (消費税の)事業廃止届出書

「個人事業の開業・廃業等届出書」は所轄の税務署へ廃業日から1ヵ月以内に提出します。廃業の届け出は都道府県税事務所にも必要ですが、届出書の名称や提出期限は異なることもあります。所轄の税事務所に確認してください。

「給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書」は、従業員を雇っていたり、家族が青色専従者だったりした場合に必要です。営業廃止日から1ヵ月以内に提出します。

所得税を青色申告していた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、青色申告をとりやめた翌年の3月15日までに提出しましょう。また消費税の課税事業者は、廃業後、速やかに「事業廃止届出書」の提出が必要です。

消防署

消防署には「防火管理者選任(解任)届出書」を提出します。30人以上の収容が可能な建物の場合、飲食店の開業時に防火管理者の選任届を提出していますので、廃業時に解任届の提出が必要です。防火管理者の解任日は、廃業日を記入してください。用紙は所轄の消防署でもらうか、行政のホームページからもダウンロード可能です。提出期限はありませんが、なるべく速やかに提出します。

警察署

「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出していた店舗は、警察署へ届け出が必要です。「廃止届出書」に廃止事由を記入し、廃業から10日以内に提出します。届出用紙は、警察署のホームページからダウンロード可能です。

風俗営業許可を受けている場合、返納理由書とともに営業許可証を返納します。期限は廃業日から10日以内に返納が一般的。詳細は所轄の警察署に確認してください。返納を怠ると罰則の対象になる恐れがありますので、注意が必要です。

公共職業安定所(ハローワーク)

雇用保険に加入していた場合は、以下を公共職業安定所(ハローワーク)に提出してください。

  • 雇用保険適用事業所廃止届
  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書

「雇用保険適用事業所廃止届」は廃業日から5日以内に手続きをし、控えのコピーを年金事務所に提出します。「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」は廃業の翌日から10日以内です。「雇用保険被保険者離職証明書」は3枚複写式の専用用紙が必要なので、公共職業安定所の窓口で受け取って提出するか、電子申請(e-Gov)を使って提出しましょう。

日本年金機構(年金事務所)

雇用保険や健康保険、厚生年金保険に加入していた場合、以下を廃業日から5日以内に所轄の日本年金機構に提出します。

  • 雇用保険適用事業所廃止届の事業主控(コピー)
  • 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届

「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」は、日本年金機構のホームページからダウンロードします。提出は郵送または窓口に持参します。オンラインでの申請可能です。提出期限が5日と短いため、前もって保険の加入状況を確認しておきましょう。

労働基準監督署

雇用保険または労災保険のいずれかの労働保険に加入している場合、「労働保険確定保険料申告書」の提出が必要です。この際、年度当初の申告・納付(見込み)した概算保険料を精算します。確定保険料が納付済みの概算保険料より多ければ、差額を納付します。申告書が見つからない場合には、所轄の労働基準監督署からもらいましょう。

提出期限は事業の廃止又は終了の日から50日以内。所轄の労働基準監督署の他に所轄の都道府県労働局、日本銀行(本店、支店、代理店及び歳入代理店)で提出できます。

行政への届け出(まとめ)

各種届け出について、提出日を時系列にまとめました。提出日や届出書の名称は、地域により異なることがありますので、管轄の行政機関に確認してください。

提出期日種類と提出先
特になし
(速やかに提出)
防火管理者選任(解任)届出書(消防署)
事業廃止届出書(税務署)
廃業日から5日以内雇用保険適用事業所廃止届(公共職業安定所)
雇用保険適用事業所廃止届の事業主控(年金事務所)
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届(年金事務所)
廃業日から10日以内廃業届・飲食店営業許可書(保健所)
廃止届出書・返納理由書(警察署)
廃業日の翌日から10日以内雇用保険被保険者資格喪失届(公共職業安定所)
雇用保険被保険者離職証明書(公共職業安定所)
廃業日から1ヵ月以内個人事業の開業・廃業等届出書(税務署)
廃業届(税事務所)
給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書(税務署)
事業の廃止
または終了日から50日以内
労働保険確定保険料申告書(労働基準監督署)
翌年の3月15日所得税の青色申告の取りやめ届出書(税務署)

飲食店の廃業手続き流れ③店舗の原状回復・ライフラインの解約

店舗物件に関する手続きも必要です。賃貸利用時の原状回復工事やガス・電気水道といったライフラインの解約について説明します。

店舗の原状回復工事

店舗物件を賃貸で利用していた場合、退去時に原状回復工事が求められることがあります。原状回復工事とは入居時の状態に戻すための工事。内装や設備を取り除き、スケルトン状態に戻すのが一般的です。契約内容によっては、スケルトンに戻した後の仕上げ工事までを含む場合も。

退去時のトラブルを防ぐためには、賃貸借契約書を確認し、原状回復が必要な範囲を事前に把握しておくことが大切です。物件の管理者やオーナー、工事業者の立会いのもと、原状回復の範囲を明確にして進めるのが良いでしょう。

ライフラインの解約

ガス・水道・電気といったライフラインは、契約会社に電話で解約日を連絡して解約します。期日は特に決められていませんが、ガスは解約時に立ち合いが必要になる場合もあるため、早めに連絡する方が良いでしょう。ただし、物件の原状回復工事を行う際に水道を利用することがあります。水道の解約日は施工業者と相談してから決めましょう。

他にもインターネットの有線や後付けのテレビのアンテナなども忘れずに解約してください。

飲食店の廃業手続きを行う際によくある質問

最後に飲食店の廃業手続きに関してよくある質問をまとめます。スムーズに廃業手続きを終えるための参考にしてください。

廃業後の廃業届を出さない場合はどうなる?

廃業届を出さないことによる罰則はありませんが、税法上の問題が起こる可能性があります。

開業時に開業届を出したのに廃業時に廃業の届出をしない場合、税務署に事業を継続しているとみなされ、納税を求められる恐れがあります。税務署から確定申告の案内が送付されたにも関わらず、廃業したからと対応しなければ、税務署からの調査や無申告加算税や重加算税、延滞税などの追徴課税の対象になることも。

さらに、今後の青色申告受理に悪影響が起こる可能性もあります。正しく廃業届を出していないと、手続きにおける不備の履歴が残ります。将来、再び個人事業主として青色申告を行う際に不利になる可能性もあるので注意が必要です。

廃業届や各種届け出をスムーズに作成するには?

廃業届など各種届け出や手続きは、提出期限を意識して効率的に行うのがポイントです。それには、提出期限をスケジュール管理アプリやカレンダーに書き出して「見える化」するのが有効。届け出を忘れると罰金が科せられたり、追徴課税されたりすることも。万が一、予想外のトラブルが起こった際にも、期日を思い出してきちんと手続きができるような方策をとりましょう。

時間を節約するためには、各行政機関のホームページを利用するのがおすすめです。ホームページからは必要な用紙だけではなく、記入例や説明もダウンロードできて便利です。また電子申請できるものは、インターネット上で手続きをすませると手間を省けます。

疑問点や不明点がある場合は、それぞれの行政機関の窓口に確認し、二度手間にならないように不備のない届出書を提出するように心がけましょう。

廃業手続きにかかる費用はどれくらい?

廃業手続きにかかる費用は、店舗の規模や契約内容によりますが、一般的には以下のような内容が考えられます。

  • 賃貸契約終了日までの賃料
  • リースやレンタル品のレンタル料
  • 退去日までのガス、水道、電気費用
  • 閉店日までの従業員の給与
  • 設備の処分費用
  • 賃貸物件の原状回復が必要な場合は工事費 など

原状回復工事の有無や程度によって費用は大きく異なりますが、場合によっては100万円以上かかることもあります。原状回復工事が必要な場合、1坪あたり2~5万円程度の工事費がかかることが多いようです。解体そのものの費用の他に、廃棄物処理費用が必要なことも。設備や店舗を居抜き物件として売却することで、費用を抑えられる場合もあります。

飲食店の廃業手続きは、期限を意識しながら行おう

飲食店を廃業する際は、いくつもの届け出や手続きが必要です。特に行政への届け出を怠ると追徴金が発生したり、罰則の対象となったりすることもあります。飲食店の廃業手続きは、期限を意識しながら行いましょう。

「買取の神様」では飲食店の廃業に関する相談を承っています。造作や備品をそのまま売却できるため、閉店に伴う原状回復工事の削減ができ、造作譲渡金を得られるケースもあります。相談・査定は無料ですので、いつでもお気軽にお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

元システムエンジニア、ライター歴10年のアラカン主婦です。楽しみは成人した娘とのカフェ巡り。娘に流行のスィーツを教えてもらってます。顧客サポートやマニュアル作成の経験を活かした分りやすい記事を目指しています。

コメント

コメントする

目次