居酒屋を経営する上で、多くのオーナーが気になるのが「利益率」です。売上があっても利益が思うように残らなければ、長期的な経営は難しくなります。
本記事では、居酒屋の平均的な利益率から具体的な計算方法、さらに明日から実践できる改善策までを整理しました。経営者が押さえておくべき重要なポイントを分かりやすく解説していきます。
居酒屋の平均的な利益率はどのくらい?

居酒屋経営を健全に続けていくためには、まず業界全体の平均的な利益率を知っておくことが欠かせません。
- 業界平均:個人経営の「宿泊業・飲食サービス業」における年間営業利益率は9.6%
- 理想水準:飲食店経営で理想的とされるのは10~15%
- 高収益:高収益モデル目標は20%前後
現実の数値とはやや差がありますが、物価上昇や人件費の増加といった環境要因を踏まえると、まずは10%を超えることをひとつの目標に据えるのが現実的です。
また、居酒屋は業態的な特徴から利益率を高めやすい側面があります。客単価が比較的高く、原価率の低いドリンク類の注文が中心となるため、適切な経営を行えばほかの飲食業態よりも高い利益率を確保しやすいです。
一般的に経営が良好といえる居酒屋の営業利益率は10%以上です。実際に、効率化やドリンク比率の高さを武器に15〜25%を実現している店舗も多数あります。
さらに、居抜き物件活用やオペレーション支援を組み合わせれば、初期投資回収を早めつつ20%超の営業利益を目指すことも可能です。
ただし、これらはあくまで参考値にすぎません。大切なのは、自店舗の現状を正確に把握し、改善を積み重ねていくことです。
居酒屋の利益率を計算する方法
利益率を正しく算出するためには、まず「利益」とは何を指すのかを理解しておくことが大切です。飲食店経営においてとくに重要なのが「粗利益」と「営業利益」の2つです。
- 粗利益:売上高から「売上原価(食材費など)」を差し引いた利益
- 営業利益:粗利益から「販管費(人件費・家賃・光熱費など)」を差し引いた利益
ここでは、それぞれの意味と計算方法を詳しく見ていきましょう。
粗利益
粗利益とは、売上高から商品の仕入れ原価(売上原価)を差し引いた利益のことです。「粗利」や「売上総利益」と呼ばれることもあります。
計算式は次のとおりです。
粗利益 = 売上高 - 売上原価
たとえば、1,000円で販売したハイボールの原価が200円であれば、粗利益は800円になります。さらに粗利率は「粗利益 ÷ 売上高 × 100」で求められ、このケースでは80%です。
居酒屋における売上原価とは、料理やドリンクにかかる材料費のことを指します。粗利益は、その商品単体でどれだけ利益を生み出しているかを示す、非常に重要な指標です。
営業利益
営業利益とは、粗利益からさらに「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いた利益のことです。販管費には、人件費や家賃、水道光熱費、広告宣伝費など、日々の店舗運営に必要な経費が含まれます。
計算式は次のとおりです。
営業利益 = 粗利益 - 販管費
営業利益は、店舗の実際の収益力を示す最も重要な指標のひとつです。売上がいくら大きくても、経費がかさめば営業利益は小さくなってしまいます。つまり、店舗経営の健全性を判断するうえで欠かせない数字といえるでしょう。
固定費
営業利益を構成する経費のなかで、売上の増減に関わらず一定額が発生するものを「固定費」と呼びます。
主な固定費には以下のような項目があります。
- 家賃・地代
- 正社員の人件費
- リース料
- 減価償却費
- 保険料
固定費は売上が落ち込んだ時期でも必ず発生するため、経営上の大きな負担となります。とくに家賃は固定費のなかでも割合が大きく、店舗の立地選びや契約条件は慎重に検討する必要があります。
変動費
一方で、売上の増減に応じて金額が変わる費用を「変動費」といいます。
主な変動費には以下のようなものがあります。
- 食材費
- アルバイト・パートの人件費
- 水道光熱費(使用量に応じた部分)
- 販促費
- 包装材費
変動費は売上と連動するため、売上が伸びれば費用も増加し、逆に売上が落ちればある程度抑えることができます。この特徴を理解しておくと、経営改善の際に柔軟な調整がしやすくなります。
利益率
最終的な利益率は、次の式で算出します。
利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
実際の数字で比較してみましょう。
A店(月商300万円) | B店(月商250万円) |
営業利益:30万円 利益率:10% | 営業利益:37.5万円 利益率:15% |
この場合、売上高だけを見るとA店の方が大きいように見えます。しかし利益率で比較するとB店の方が優れており、実際に手元に残る現金も多くなります。その結果、より安定した経営が可能になるのです。
このように、売上の絶対額だけでなく「利益率」に注目することで、経営の健全性を正しく判断できるようになります。
利益率以外で居酒屋経営者が押さえておくべき指標
利益率は大切な経営指標ですが、それだけを見ていては不十分です。あわせて管理すべき重要な指標が2つあります。
- 損益分岐点:赤字と黒字の境界となる売上高
- FL比率:食材費(Food)+人件費(Labor)の割合
損益分岐点
損益分岐点とは、売上と経費が等しくなる売上高のことです。この水準を下回ると赤字、上回ると黒字となる「最低ライン」を示します。
計算式:損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 – 変動費 ÷ 売上高)
たとえば、固定費が80万円、変動費が120万円、売上高が200万円の店舗の場合:
80万円 ÷ (1 – 120万円 ÷ 200万円) = 200万円
この店舗は月商200万円を下回ると赤字になることがわかります。
損益分岐点を下げるには固定費の削減が最も効果的です。とくに家賃は大きな要素となるため、出店時の立地選びや賃料交渉が重要になります。
もし現在の立地での利益率改善に限界を感じている場合、初期投資を抑えられる居抜き物件への移転もひとつの選択肢となります。
FL比率
FL比率とは、Food(食材費)とLabor(人件費)の合計が売上に占める割合のことです。飲食店経営で最も重視される指標のひとつです。
計算式:FL比率 = (食材費 + 人件費) ÷ 売上高 × 100
一般的に、FL比率は60%以下に抑えることが理想とされています。
内訳としては:
- F(食材費):30%前後
- L(人件費):30%前後
FL比率が高い場合、仕入れ原価が高すぎるか、人員配置に無駄があることを示しています。定期的にチェックし、適正水準を維持することが利益率向上につながります。
小規模店舗では、より厳しい管理が必要な場合があります。オーナー自身の人件費を考慮すると、FL比率を55%以下に抑える必要があることもあります。
居酒屋の利益率を向上させるには?
利益率を向上させるためには、以下の4つのアプローチを組み合わせることが重要です。
- コストを見直して削減する:食材費・人件費・光熱費・家賃の最適化
- 売上アップ戦略を練る:客単価や回転率の向上、魅力的なメニュー作り
- 集客・宣伝を強化する:SNS活用やデリバリー導入で新規顧客を獲得
- オペレーションを改善する:営業時間やスタッフ配置を見直し、効率化を推進
1.コストを見直して削減する
まず着手すべきは、無駄なコストの見直しです。固定費・変動費の両面から改善に取り組みましょう。
食材費
食材費の削減は、品質を維持しながら進める必要があります。
【具体的な施策】
- 食品ロスの徹底削減
- 在庫管理システムの導入
- 仕入れ先の見直しと価格交渉
- メニュー数の絞り込みによる食材集約
- 旬の食材を活用した季節メニューの展開
とくに重要なのは食品ロスの削減です。廃棄食材はそのまま利益の損失につながるため、適正な発注量の管理と、残り食材を活用したメニューの工夫が効果的です。
人件費
人件費の削減は、サービス品質の低下や従業員のモチベーション低下を招かないよう注意が必要です。
【具体的な施策】
- 来客数に応じた適正な人員配置
- オペレーション効率化による作業時間短縮
- モバイルオーダーやセルフレジの導入
- 従業員のマルチタスク化による生産性向上
単純な人員削減ではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールの活用により、少数精鋭での効率的な店舗運営を目指しましょう。
水道光熱費
エネルギーコストの削減も継続的な利益改善につながります。
【具体的な施策】
- LED照明への切り替え
- 省エネ型厨房機器の導入
- 電力・ガス会社の料金プラン見直し
- 営業時間外の節電徹底
家賃
家賃は毎月発生する固定費のなかでも大きな割合を占めるため、経営を左右する重要な要素です。無理のない水準で設定することが、安定した経営には欠かせません。
とくに居抜き物件を活用すれば、初期投資や工期を大幅に抑えられるだけでなく、早期に営業を開始できるため、家賃負担の期間も短縮できます。
2.売上アップ戦略を練る
コスト削減と並行して、売上の拡大にも取り組む必要があります。
客単価の向上
客単価アップは利益率向上に直結する重要な施策です。
【具体的な施策】
- 数種類のコース料理設定
- 追加注文を促すサービス向上
- 「プラス○○円で飲み放題」などの付加価値提案
- 期間限定メニューによる価格設定の工夫
- おすすめメニューの積極的な紹介
とくに、高単価商品を自然に注文してもらえるような接客スキルの向上が重要です。
回転率の向上
限られた席数で売上を最大化するには回転率の改善が不可欠です。
【具体的な施策】
- オーダーから提供までの時間短縮
- オペレーション効率化による待ち時間削減
- 混雑時の時間制導入
- テーブルレイアウトの最適化
- 立ち飲みスペースの活用
1~2人客が多いのに4人掛けテーブルばかりでは効率が悪くなります。客層に合わせたテーブル構成の見直しも効果的です。
魅力的なメニュー作り
メニュー構成は売上と利益率の両方に大きく影響します。
【ポイント】
- 店舗コンセプトに合致したメニュー開発
- SNS映えする視覚的な魅力
- 季節感のある旬の食材活用
- スピード提供可能な料理の充実
- 期間限定メニューによる話題性創出
「集客商品」と「高収益商品」
利益率を最適化するには、戦略的なメニュー構成が重要です。
【集客商品:原価率は高めでも集客力のある商品】
- 生ビール(乾杯の定番)
- 人気の刺身盛り合わせ
- 話題性のある限定メニュー
【高収益商品:利益率の高い商品】
- ウーロンハイ・緑茶ハイ(原価率10~15%)
- 枝豆(原価率15%程度)
- ポテトサラダ(原価率20%程度)
- 焼酎系のドリンク
集客商品で顧客を惹きつけ、高収益商品も合わせて注文してもらうことで、全体の利益率を適正水準に保つことができます。
3.集客・宣伝を強化する
いくらよい商品・サービスを提供していても、お客様に知られなければ売上にはつながりません。
SNSの活用
現代の集客において、SNSの活用は必須といえます。
【効果的な活用方法】
- Instagram:料理・ドリンクの魅力的な写真投稿
- X(旧Twitter):リアルタイムな情報発信
- TikTok:若年層向けの動画コンテンツ
- Googleマップ:MEO対策による地域検索対応
費用をかけずに継続的な情報発信ができるため、積極的に活用しましょう。
大手デリバリーサイトの活用
コロナ禍以降、テイクアウトやデリバリーの需要は定着しています。
【導入メリット】
- 新たな収益源の確保
- 雨天時や平日の売上補完
- 新規顧客の開拓
手数料は発生しますが、固定費の回収や認知度向上につながる投資として検討する価値があります。
4.オペレーションを改善する
日々の業務効率化は、人件費削減と顧客満足度向上の両方を実現します。
営業日・営業時間の見直し
売上データを分析し、収益性の低い時間帯の営業を見直すことも重要です。
【検討時のポイント】
- 曜日別・時間帯別の売上分析
- 人件費と売上のバランス
- 深夜営業の費用対効果
- 定休日の設定見直し
無理な営業時間の延長よりも、効率的な時間帯に集中する方が利益率は向上します。
スタッフのオペレーションの見直し
従業員の作業効率向上は、人件費削減と顧客満足度の両立につながります。
【改善施策】
- 作業手順の標準化とマニュアル整備
- モバイルオーダーシステムの導入
- セルフレジによる会計時間短縮
- 厨房機器の配置見直し
- 従業員教育の充実
とくに、注文から提供までの時間短縮は、回転率向上と顧客満足度向上の両方に効果があります。
こちらの記事では、居酒屋の開業について解説しています。
費用の目安や成功させるポイントも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ

居酒屋の利益率は業界平均で約9.6%となっていますが、適切な経営指標の管理と継続的な改善により、10~15%の利益率確保は十分可能です。
重要なのは、利益率の正しい計算方法を理解し、損益分岐点やFL比率といった指標を定期的にチェックすることです。そして、コスト削減、売上向上、集客強化、オペレーション改善の4つの視点から、バランスよく改善に取り組むことが大切です。
また、開業時の初期費用を抑えるには居抜き物件の活用が効果的です。既存設備を活かすことで投資を大幅に削減でき、開業準備期間の短縮にもつながります。居抜きの物件探しには、専門サービス「居抜きの神様」の利用がおすすめです。
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