小さな居酒屋の平均売上はいくら?計算方法や開業費を抑えるポイントを解説

小さな居酒屋を開業するにあたり、どれくらいの売上が見込めるのか気になる方も多いでしょう。

小さな居酒屋の経営を成功させるには、売上の計算方法や利益構造を正しく理解することが重要です。また、開業費を抑える方法を知っておくことで、資金繰りの不安を軽減し、健全な経営を実現しやすくなります。

この記事では、小さな居酒屋の平均売上や具体的な計算方法、利益の種類などについて詳しく解説します。開業費を抑える実践的なポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

なお、この記事は小さな居酒屋に焦点を当てています。居酒屋の売上や繁盛店の特徴について知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。

目次

小さな居酒屋の平均売上はいくら?

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査(2023年度)」によると、従業員が1〜4人の飲食店における「従業員1人あたり売上高」の平均値は897万5,000円です。

この数値を基に計算すると、働いている従業員が1〜2人の小さな居酒屋の場合、年間売上の平均値は約900〜1,800万円となります。1か月あたりに換算すると約75〜150万円、1日あたりでは約2.5〜5万円の売上が目安です。

ただし、この数値はあくまでも平均値であり、立地条件や営業形態、客単価などによって大きく変動します。

また、営業時間の長さも売上に影響します。昼夜両方で営業している店舗は、夜のみ営業している店舗と比較して売上が増える可能性が高いでしょう。

出典:日本政策金融公庫|小企業の経営指標調査(2023年度)

小さな居酒屋を経営するオーナーの年収は?

個人居酒屋経営者の年収の目安は約300〜1,000万円と幅広くなっています。これは、エリアや立地条件、経営規模によって大きく異なるためです。

たとえば、都心部の繁華街で営業する小さな居酒屋の場合、客単価が高く回転率も良いため、年収1,000万円以上を実現できるケースもあります。一方、郊外や住宅街で営業する居酒屋の場合は、集客が難しく、年収も300〜500万円程度にとどまることも少なくありません。

経営者の年収は、売上から経費を差し引いた営業利益に大きく左右されます。そのため、売上を増やすだけでなく、コスト管理を徹底することが年収を挙げるポイントとなります。

なお、小さな居酒屋経営者の年収についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

小さな居酒屋|売上の計算方法とモデルケース

小さな居酒屋の1日あたりの売上は、以下の計算式で求められます。

1日あたりの売上 = 客席数 × 回転率 × 客席稼働率 × 客単価

この計算式を理解することで、売上を増やすためにどの要素を改善すべきかが明確になります。

具体的に以下のモデルケースで考えてみましょう。

モデルケース

  • 客席数:25席

<昼営業>

  • 回転率:3回転
  • 客席稼働率:70%
  • 客単価:1,500円

<夜営業>

  • 回転率:2.5回転
  • 客席稼働率:70%
  • 客単価:4,000円

この条件での売上は、以下のようになります。

項目計算式数値例金額
ランチ売上客席数 × 回転率 × 客席稼働率 × 客単価25 × 3 × 0.7 × 1,5007.9万円
夜売上客席数 × 回転率 × 客席稼働率 × 客単価25 × 2.5 × 0.7 × 4,00017.5万円
1日あたり売上ランチ売上 + 夜売上7.9 + 17.525.4万円
1か月あたり売上1日あたり売上 × 30日25.4 × 30762万円
年間売上1か月あたり売上 × 12か月762 × 129,144万円

売上をさらに伸ばすためには、営業時間を延ばしたり、客単価を上げたりなどの工夫が必要です。

ここでは、計算式に含まれる各項目について詳しく解説します。

客席数

客席数とは、お店の席数の合計を指します。居酒屋の客席数は、店舗の面積と席の配置によって決まります。

一般的に、1坪(約3.3㎡)には約1.5〜2席の椅子とテーブルを設置することが可能です。ただし、店舗の面積すべてを客席として使えるわけではありません。

たとえば、10坪の居酒屋の場合、厨房・トイレ・通路などのスペースを差し引くと、実際に客席として使えるのはおよそ7坪程度です。座席の配置を工夫すれば、7坪でも10〜14席を設けられるでしょう。

客席数が多いほど売上も上げやすくなりますが、従業員の人数や調理能力とのバランスも考慮する必要があります。

小さな居酒屋を経営するメリットや注意点について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

回転率

回転率とは、1日に1席あたり何人の顧客が入れ替わったかを示す指標で、以下のように求められます。

回転率 = 1日の来客数 ÷ 客席数

たとえば、10席の居酒屋に1日で30人の顧客が来店した場合、回転率は「30人 ÷ 10席 = 3回転」となります。回転率が高いほど、限られた客席数でも多くの顧客にサービスを提供できるため、売上アップにつながります。

居酒屋の場合、通常は1.5〜3回転程度が一般的です。回転率を上げるには、予約管理を徹底し、空席時間を最小限に抑える工夫が必要です。

ただし、回転率を上げすぎると顧客の評価が低くなる可能性もあります。ゆっくりと食事を楽しみたい顧客のニーズにも配慮しながら、バランスの取れた運営を心がけましょう。

客席稼働率

客席稼働率とは、総座席数に対して実際に使われている客席の割合を示す指標で、以下のように求められます。

客席稼働率 = 実際に利用されている客席数 ÷ 総座席数 × 100(%)

たとえば、10席の居酒屋で平均7席が使われている場合、客席稼働率は「7席 ÷ 10席 × 100 = 70%」となります。客席稼働率が高いほど、店舗の収容能力を最大限に活用できているといえるでしょう。

一般的に、居酒屋の客席稼働率は60〜70%程度が目安とされています。客席稼働率を高めるには、予約システムの導入や効果的な集客施策が必要です。

また、曜日や時間帯によって客席稼働率は大きく変動します。金曜日や週末は稼働率が高くなる一方、平日は低くなる傾向があるため、平日の集客施策を強化することが重要です。

客単価

客単価とは、顧客1人あたりが支払う平均金額を指し、以下のように求められます。

  客単価 = 売上高 ÷ 来客数

小さな居酒屋の客単価は、一般的に3,000〜4,000円程度が目安です。客単価を上げるには、以下のような方法が効果的です。

  • メニューの価格設定を見直す
  • おすすめメニューを積極的に提案する
  • ドリンクの種類を増やす
  • コース料理を充実させる

ただし、客単価を上げすぎると顧客離れにつながる可能性もあります。競合店の価格帯やターゲット層のニーズを考慮しながら、適切な価格設定を行うことが大切です。

小さな居酒屋の利益構造と計算方法

居酒屋経営において、利益の種類は大きく分けて2つあります。それは「粗利(売上総利益)」と「営業利益」です。利益について詳しく理解しておかないと、売上が順調でも経営が安定しない事態に陥る可能性があります。

ここでは、それぞれの利益について詳しく見ていきましょう。

粗利(売上総利益)

粗利は、売上高から仕入原価を引いたあとに残る金額を指し、以下のように求められます。

粗利 = 売上高 − 仕入原価

また、粗利率は「粗利 ÷ 売上高 × 100(%)」で計算でき、売上に対する粗利の割合を示します。

たとえば、売上高が100万円で仕入原価が40万円の場合、粗利は「100万円 − 40万円 = 60万円」、粗利率は「60万円 ÷ 100万円 × 100 = 60%」となります。

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査(2023年度)」によると、従業員が1〜4人の飲食店における粗利(売上高総利益率)は61.6%です。

粗利率が高いほど、仕入れコストが抑えられていることを意味します。粗利率を高めるには、仕入先の見直しや食材ロスの削減、メニュー構成の最適化などが有効です。

ただし、粗利が高くても、その後に差し引かれる販管費が多ければ、最終的な営業利益は少なくなります。粗利と営業利益の両方を把握することが、健全な経営には不可欠です。

出典:日本政策金融公庫|小企業の経営指標調査(2023年度)

営業利益

営業利益は、粗利から仕入れ以外にかかる費用(販管費)を引いた金額で、以下のように求められます。

営業利益 = 粗利(売上総利益)− 販管費

販管費には、以下のような費用が含まれます。

  • 人件費
  • 家賃
  • 光熱費
  • 広告宣伝費 など

一般的に、飲食店では営業利益率10〜15%が目標値とされており、10%以上を維持できれば、経営が比較的順調であると判断できます。

なお、小さな居酒屋における主な経費の目安は以下のとおりです。

経費項目売上に対する割合備考
食材・酒類仕入れ費約30%高級店は35〜40%、居酒屋やラーメン店などは25〜30%が多い。
人件費約30%総人件費。
売上が下がると簡単に30%を超えるため、人件費管理と食材仕入れ費の管理が重要。
家賃約10%売上に対して10%以内が理想。
繁華街一等地では12〜15%になるケースもある。
光熱費約10%昨今の値上げで10%以内に抑えるのは難しくなっている。
宣伝費・雑費約10%居酒屋の場合、この費用を捻出できないと閉店のリスクがある。
経費の合計約90%

この例の場合、経費の合計が売上の90%を占めるため、営業利益率は10%となります。経費管理を徹底し、無駄なコストを削減することで、営業利益率を高められるでしょう。

営業利益が赤字のままだと、経営の継続が難しくなるため、早めに改善策を講じる必要があります。

小さな居酒屋の経営者が知っておくべき指標

居酒屋の経営を成功させるには、売上や利益以外にも重要な経営指標を把握しておく必要があります。ここでは、経営者が知っておくべき以下の2つの重要な指標について解説します。

  • 損益分岐点
  • FL比率

損益分岐点

損益分岐点とは、売上と経費が同額となり、利益がゼロのときの売上高のことです。損益分岐点は以下のように求められます。

損益分岐点 = 固定費 ÷ {1 −(変動費 ÷ 売上高)}

固定費とは、家賃やリース料など、売上に関係なく毎月一定額かかる費用のことです。変動費とは、食材費や消耗品費など、売上に応じて変動する費用のことです。

たとえば、以下の例で考えてみましょう。

  • 固定費:50万円/月
  • 変動費:30万円/月
  • 売上高:100万円/月

この場合、損益分岐点は「50万円 ÷ {1 −(30万円 ÷ 100万円)} = 約71.4万円」となります。

つまり、この例では月間売上が71.4万円を超えれば黒字、下回れば赤字です。損益分岐点を把握することで、最低限必要な売上目標が明確になり、経営計画を立てやすくなります。

FL比率

FL比率とは、売上高におけるFood(食材費)とLabor(人件費)の比率を示した指標です。FL比率は以下のように求められます。

FL比率 = 「(食材費 + 人件費)÷ 売上高 × 100」

たとえば、以下の例で考えてみましょう。

  • 食材費:30万円/月
  • 人件費:30万円/月
  • 売上高:100万円/月

この場合、FL比率は「(30万円 + 30万円)÷ 100万円 × 100 = 60%」となります。

一般的に、飲食店のFL比率は55〜60%が適正とされています。FL比率が60%を超える場合、食材費や人件費が高すぎる可能性があるため、見直しが必要です。

FL比率を改善するには、食材の仕入れ先を見直したり、シフト管理を最適化したりすることが効果的です。ただし、過度なコスト削減は料理の質やサービスの低下につながるため、バランスを考慮する必要があります。

小さな居酒屋の開業費を抑えるポイント

居酒屋を開業するには、まとまった資金が必要です。日本政策金融公庫総合研究所の「2024年度新規開業実態調査」によると、開業時の資金調達額の平均は1,197万円(借り入れ平均780万円、自己資金平均293万円)となっています。

なお、日本政策金融公庫によると、居酒屋の開業には以下のような資金が必要になります。

設備資金運転資金
・物件取得費(敷金・礼金など)
・内装工事
・電気工事
・厨房機器
・什器・備品
・看板工事
・食材・酒類仕入れ
・家賃
・人件費
・水道光熱費
・広告宣伝費
・消耗品費
・その他諸経費

出典:日本政策金融公庫|居酒屋の創業ポイント

開業費を抑えることで、資金繰りの負担を減らし、安定した経営がしやすくなります。

ここでは、開業費を抑えるポイントを以下の順に解説します。

  • 集客や広告宣伝を自分で行う
  • 国や自治体の助成金を利用する
  • 居抜き物件を活用する

なお、小さい飲食店を開業する流れについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

出典:日本政策金融公庫総合研究所|2024年度新規開業実態調査

集客や広告宣伝を自分で行う

集客や広告宣伝を外部に委託すると、月3〜15万円程度(年間で約36〜180万円)の費用がかかるケースもあります。開業当初は資金に余裕がないことも多いため、SNSの投稿やポスティングなどを自分で行えば、広告宣伝費を削減できるでしょう。

InstagramやX(旧Twitter)などのSNSは無料で利用でき、店舗の雰囲気や料理の写真を投稿することで、効果的に集客できます。定期的な投稿を続けることで、フォロワーが増え、リピーターの獲得にもつながります。

また、周辺地域へのチラシ配布も、低コストで地元の顧客にアプローチできる有効な手段です。開業記念の割引クーポンをつけることで、来店のきっかけを作れます。

広告宣伝は継続的に行うことが重要です。最初は自分でできる範囲から始め、売上が安定してから外部委託を検討すると良いでしょう。

国や自治体の助成金を利用する

国や自治体が提供する助成金や補助金を活用することで、開業費の負担を軽減できます。代表的な制度として、以下のようなものがあります。

IT導入補助金

POSシステムや予約管理システムなどのIT導入費用の一部を補助する制度です。補助額は最大で数百万円となることもあり、業務効率化に役立ちます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援する制度です。広告宣伝費や設備投資費用の一部が補助されます。

創業補助金

各自治体が独自に提供している創業者向けの補助金です。補助内容は自治体によって異なるため、開業予定地の自治体に確認しましょう。

助成金や補助金は申請手続きが必要で、審査に時間がかかることもあります。開業計画の段階で利用できる制度を調べ、早めに申請準備を進めることが重要です。

出典:IT導入補助金2025事務局|IT導入補助金制度概要
出典:全国商工会連合会|小規模事業者持続化補助金
出典:東京都産業労働局|創業助成金

居抜き物件を活用する

開業費を抑える効果的な方法は、居抜き物件を活用することです。居抜き物件とは、前テナントの内装や厨房設備がそのまま残っている物件のことです。

居抜き物件を利用すると、内装工事費を数百万円単位で削減でき、厨房機器の購入費用がかからないというメリットがあります。スケルトン物件と比べても、初期投資を半分以下に抑えられることも珍しくありません。

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まとめ

従業員が1〜2人の小さな居酒屋の場合、年間売上の平均値は約900〜1,800万円ですが、立地条件や営業形態によって大きく変動します。売上を正しく計算し、利益構造を理解することで、健全な経営計画を立てられます。

また、開業費を抑えるには、以下のポイントが効果的です。

  • 集客や広告宣伝を自分で行う
  • 国や自治体の助成金を利用する
  • 居抜き物件を活用する

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この記事を書いた人

宅地建物取引士。
不動産会社2社で勤務。不動産仲介や新築・リフォームの営業および現場管理、分譲工事のプロジェクトリーダーなどに従事。不動産・建築業界で培った経験を活かし、現在は不動産ライターとして記事の執筆や監修を実施。

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