「ラーメン屋を開業したいけど、利益がどれくらい残るのか分からない」と一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。飲食店の経験があっても利益の仕組みを理解していなければ、人気のラーメン屋を経営できません。
この記事では、ラーメン屋の利益率の目安から、売上・原価・経費など収支の内訳まで詳しく解説します。さらに、利益率改善のポイントも紹介するため、事業計画に役立つ具体的な数字を把握できます。ぜひ最後までお読みください。
ラーメン屋の利益率の目安はどのくらい?

飲食業全体の平均的な利益率は5~8%とされ、10%を超えると優良な水準といわれます。ラーメン屋はスープ・麺・具材など材料費の割合が高く、居酒屋のように利益率の高いお酒で売上を補うことが難しい業態です。
一方で、少ない席数でも顧客の回転率を高めることで売上を増やせるのが強みです。効率的なオペレーションを確立した人気店になれば、20%を超える高い利益率を達成することも可能です。そのため、ラーメン屋は比較的利益率を伸ばしやすい業態といえます。
こちらの記事では、ラーメン屋の開業方法について解説しています。
未経験から繁盛店を作る全9ステップも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

ラーメン屋の「売上・原価・経費・利益率」とは?

ラーメン屋の経営を理解するには、基本的な会計用語を知っておく必要があります。
「売上」とは、ラーメンを提供して得られる金額の合計です。たとえば、1,000円のラーメンが100杯売れた日の売上は100,000円となります。
「原価」は、スープ・麺・チャーシューなどラーメンを作るためにかかる材料費です。
「経費」は店舗運営にかかるコスト全般で、人件費・家賃・水道光熱費・消耗品費などが含まれます。
そして、売上から原価と経費を差し引いたものが「利益」です。利益が売上に対してどれくらいの割合を占めるかを示した指標が「利益率」です。
ラーメン1杯にかかる原価と原価率の相場
ラーメン屋の利益率を大きく左右するのが原価です。ここでは、ラーメンの原価内訳と相場を解説します。
ラーメンの原価の内訳
ラーメン1杯の原価は、主にスープ・麺・具材で決まります。適切なバランスを保てるかで、お店の利益だけでなく、ラーメンの味も決まります。
スープ
スープの原価は「材料原価」と「光熱費」の2つに大別されます。従来は材料費が主要コストでしたが、2024年以降の燃料費高騰により、光熱費の比重が急激に増加しています。スープ1杯あたりの原価は以下のとおりです。
スープタイプ | 材料原価 | 光熱費(ガス・電気) | 実質総原価 |
鶏ガラ+野菜系(澄まし) | 50〜100円 | 10〜20円 | 60〜120円 |
豚骨(濃厚・長時間炊き) | 80〜150円 | 30〜60円 | 110〜210円 |
魚介ダブルスープ | 100〜180円 | 20〜40円 | 120〜220円 |
特濃白湯・高級店系 | 150〜200円 | 40〜80円 | 190〜280円 |
2024年から2025年にかけて、都市ガス料金は約15〜20%、電気代は約25%上昇しました。業務用ガス料金は1㎥あたり200〜300円程度となり、長時間の炊き込みが必要な豚骨系スープを提供する店舗では、光熱費だけで1杯あたり30〜60円のコストが発生しています。
とくに深刻なのは、スープウォーマーや冷蔵・冷凍設備の稼働コスト増加です。これまで「隠れコスト」として軽視されがちだった光熱費が、経営を圧迫する主要因となっています。
麺
麺の原価は仕入方法によって変わります。多くのラーメン店では製麺所から麺を仕入れており、原価は1玉(150g程度)あたり約140円が目安です。
一方、豚骨ラーメンで主流の細麺は1杯あたりの麺量が120g程度と少ないため、原価は約120円に抑えられます。
さらにコストを下げる方法として、店内で麺を打つ自家製麺があります。初期投資として製麺機が必要ですが、小麦粉から作るため1玉あたりの原価を下げることが可能です。
具材
具材の原価は、トッピングの内容で変動します。1杯分のラーメン具材別・原価目安は以下のとおりです。
- チャーシュー1枚 約20〜30g:30〜50円
- メンマ(しな竹)約20〜30g:10〜20円
- ネギ刻み5〜10g:5〜10円
- のり全形1/4〜1/2枚程度:5〜10円
- 味玉(半玉)約25〜30g:15〜25円
- その他(ナルト1枚、もやし30gなど):5〜10円
最も高価な具材はチャーシューで、バラ肉を使用することが多く、自家製か業務用スライスかによって価格に差が生じます。味玉は多くの店舗で自家製で作られており、1個あたりでは30〜50円程度のコストがかかる場合もあります。
メンマは業務用袋入りを使用するケースが一般的で、のりは業務用焼き海苔が使われることが多いです。ネギは青ネギか白ネギかによってやや価格差があり、その他の具材については使用頻度や量によって大きく異なります。
シンプルなラーメンの場合、チャーシュー1枚、ネギ、メンマ、のりを使用した基本的な構成では60〜90円程度の原価となります。一方、味玉やチャーシュー2枚などの追加具材を含む場合は、100〜150円程度まで原価が上昇します。
このように、ラーメンの具材原価は具材の種類や調達方法、使用量によって幅広い価格帯となっています。
🍖 ラーメン具材別・原価目安(1杯分)
具材 | 内容量の目安 | 原価(円) | 備考 |
チャーシュー | 1枚(約20〜30g) | 30〜50円 | バラ肉使用が多い。自家製か業務用スライスかで変動あり |
メンマ(しな竹) | 約20〜30g | 10〜20円 | 業務用袋入りメンマを使用するケースが多い |
ネギ | 刻み5〜10g | 5〜10円 | 青ネギか白ネギかでもやや差あり |
のり | 全形1/4〜1/2枚程度 | 5〜10円 | 業務用焼き海苔を使用 |
味玉(半分) | 半玉(約25〜30g) | 15〜25円 | 自家製が多いが、業務用もあり。1個あたり30〜50円程度 |
その他(ナルト、もやし等) | ナルト1枚、もやし30gなど | 5〜10円 | 使用頻度や量により大きく異なる |
シンプルなラーメン(チャーシュー1枚、ネギ、メンマ、のり)→ 60〜90円
追加具材込み(味玉、チャーシュー2枚など)→ 100〜150円
原価率の計算方法
原価率とは、売上高に対して仕入れ原価がどれくらいの割合を占めるかを示す指標で「原価率(%)=仕入れ原価÷売上高×100」により算出できます。
ラーメン屋の原価率は、一般的に30~35%が平均的な相場です。理想は30%以下に抑えることですが、食材にこだわるあまり35%を超えてしまうと利益の確保が厳しくなります。
たとえば、1,000円のラーメンに対して原価が280円だった場合、原価率は「280円÷1,000円×100=28%」となります。
ラーメン屋の経費の例
ラーメン屋の経営では、店舗運営にかかる経費を正確に把握する必要があります。経費は大きく分けて、固定費と変動費があります。
固定費
固定費は毎月の支出額がある程度決まっているため、事前の資金計画に組み込みやすいのが特徴です。
しかし、一度決まると簡単には削減できない項目も多いため、開業時の物件選びや人員計画は慎重に行いましょう。
人件費
人件費は、従業員に支払う給料・賞与・福利厚生費などで、大きな割合を占める経費のひとつです。
一般的に、20~30%が人件費の目安とされています。小規模店舗であれば低く抑えられますが、従業員を雇う場合は人件費が膨らまないようコントロールが重要です。
地代家賃
経営を安定させるには、地代家賃を売上目標の10%以内に収めるのが理想とされています。たとえば、月の売上目標が300万円の場合、家賃が30万円以下の物件を探しましょう。
店舗とは別に駐車場を借りる場合は、駐車料金も考慮する必要があります。
水道光熱費
ラーメン屋を経営するうえでの水道光熱費は、5%ほどが目安です。出店エリアのインフラを事前に確認し、契約するガス会社や電力会社を比較してコストを削減しましょう。
また、営業中はこまめに火を消す、節水を心がけるなどの地道な努力も長期的に見れば効果的です。
その他
上記以外にもインターネット回線や電話などの通信費、券売機や製麺機などをリースで導入した場合のリース料が発生します。
また、店舗や厨房設備などの高額な資産は、法的に定められた耐用年数に応じて費用計上する減価償却費も考慮しておきましょう。見落としがちなコストも事前に洗い出しておけば、より正確な収支予測が可能になります。
変動費
変動費は、月の売上高・仕入量・宣伝などに応じて変わる経費です。日々の営業努力によってコントロールしやすい費用であり、利益率改善に影響します。
原料費
原料費は、前述したスープ・麺・具材などの材料費のことです。会計上、原料費は売上の増減に比例して変動するため「変動費」に分類されます。
毎日の売上予測の精度を高め、適切な量の食材を仕入れることで廃棄ロスを減らし、原料費を最適化しましょう。
広告宣伝費
新規顧客やリピーターの獲得に広告宣伝活動は欠かせません。広告宣伝費には、グルメサイトへの掲載料・チラシやポスターの印刷代・SNS広告の出稿費用・オープン時のキャンペーン費用などが含まれます。
全体の2~3%が目安ですが、開業当初や新メニューの投入時などで予算が増える場合もあります。費用対効果を常に検証し、どの広告が集客につながっているか見極めましょう。
消耗品費
消耗品費は、割り箸・紙ナプキン・おしぼりなどが挙げられます。また、テイクアウト用の容器や袋、厨房や店内の清掃に使う洗剤やスポンジ、ゴミ袋なども含まれます。
ひとつの単価は安いですが、積み重なると大きな金額になるため、まとめ買いや必要最低限の使用でコスト削減に取り組みましょう。
その他
その他の変動費は、厨房の冷蔵庫や空調設備などの修繕費や、定期的なメンテナンスにかかる費用です。
毎月発生するわけではありませんが、万が一の事態に備えて予算の一部を確保しておきましょう。
利益率をシミュレーションしてみよう
ここでは、ラーメン屋の利益率をシミュレーションしていきます。
家賃比率をベースに売上目標を立ててみる
まずは、家賃比率10%をベースに売上目標を立てましょう。
家賃比率10%とは、月の売上に対して家賃が占める割合を10%以内に収めることです。経営リスクを抑えながら、安定した利益を出しやすいのが10%とされています。
たとえば、家賃が月23万円だった場合、月の売上目標は230万円となります。月25日営業とすると、1日あたり92,000円の売上が必要です。また、客単価を1,000円と設定した場合、1日あたり92人のお客様に来ていただく必要があるとわかります。
売上目標に占める原価と経費を計算してみる
月の売上目標が定まったら、達成するためにかかる原価と経費を計算します。解説してきた各費用の目安となる比率を使って、具体的な金額を算出しましょう。
- 売上高:2,300,000円
- 原価:759,000円(33%)
- 人件費:690,000円(30%)
- 地代家賃:230,000円(10%)
- 水道光熱費:115,000円(5%)
- その他経費:115,000円(5%)
上記のシミュレーションから、月の総コストは1,909,000円です。もちろん、これらの比率はあくまで目安であり、実際の運営で変動します。
残った利益から利益率を計算する
最後に、算出した売上目標と総コストから、手元に残る利益と利益率を計算します。
- 月の利益=売上高-総コスト
- 2,300,000円-1,909,000円=391,000円
上記の391,000円が手元に残る利益です。ここから借入金の返済や税金を支払います。次に、利益から利益率を算出します。
- 利益率=利益÷売上高×100
- 391,000円÷2,300,000円×100=約17.0%
シミュレーションでは、利益率17.0%という飲食店の平均を上回る結果となりました。これは、家賃比率10%を達成できた場合の理想的なモデルです。
ラーメン屋の利益率を上げるポイント
ラーメン店の平均的な利益率は5〜8%ほどで、10%を超えると「よい」と評価されます。一方で、原価率が高い業態のため、利益率を20%以上に引き上げるには工夫が必要です。
ここでは、ラーメン屋の利益率を向上させるポイントを詳しく解説します。
回転率を上げる
ラーメン屋は、滞在時間が短く回転が速いのが強みです。いかに多くのお客様に、短い時間で満足していただけるかが勝負となります。
オペレーションを効率化する
ラーメン屋の回転率を上げる基本は、調理と接客のスピードアップです。まず、入り口に券売機を設置すれば、注文受付と会計業務を同時に完了でき、ホールスタッフの負担を削減できます。
スープやチャーシューなどの仕込みは営業前に終わらせ、注文が入ったら麺を茹でて盛り付けるだけにしておきます。厨房内の動線を徹底的に見直し、なるべく移動せずに調理できるレイアウトを組むことも重要です。
メニューを絞り込む
メニューは思い切って看板ラーメン数種類に絞り込みましょう。メニューが増えるほど調理工程が複雑になり、提供時間は遅くなります。
たとえば、基本のメニューは醤油ラーメンと味噌ラーメンに絞り、トッピングでバリエーションを出す戦略が有効です。オペレーションが単純化され、提供スピードが上がります。
店内導線を最適化する
入店から退店までの流れをスムーズにするのも、回転率向上に不可欠です。ラーメン屋の顧客層には、ひとり客が多いため、カウンター席を中心としたレイアウトにすると効率的に席へ案内できます。
テーブル席は家族連れやグループ客に対応できますが、滞在時間が長くなる傾向があるため、最小限にとどめましょう。
客単価を上げる
ここでは、ラーメン屋で客単価を上げる方法をご紹介します。
トッピングの種類を増やす
トッピングの種類を増やせば、客単価の向上につながります。定番のチャーシュー増しや味付け玉子だけでなく「全部のせ」のようなお得感のあるセットや、メンマ・のり・白髪ネギなど100円前後で追加できるトッピングを充実させましょう。
お客様が自分の好みに合わせて自由にカスタマイズできる楽しさを提供すれば、満足度と客単価の両方が期待できます。
サイドメニューを増やす
ラーメンと一緒に注文したくなるサイドメニューも客単価アップに効果的です。定番の餃子や唐揚げはもちろん、ラーメンのスープと相性のよいミニチャーシュー丼なども有効です。
とくに、餃子やご飯ものは原価率を比較的低く設定しやすいため、利益率の改善にもつながります。ランチタイムには「ラーメン+半チャーハンセット」のようなお得なセットメニューを用意すれば、注文率を高められます。
原価率を下げる
利益を増やすには、売上を増やすだけでなく支出を減らすのも大切です。ここでは、ラーメン屋で原価率を下げる方法をご紹介します。
食材の廃棄を減らす
食材の廃棄は利益の損失につながります。食材の廃棄を防ぐには、過去の売上データや天気予報などから来客数を予測し、必要な量だけ食材を仕入れましょう。
また、チャーシューの切れ端を賄いやサイドメニューの丼に活用したり、野菜の皮や芯でスープの出汁を取ったりと、食材を使い切る工夫も必要です。
オーバーポーションをしない
オーバーポーションとは、規定量よりも多く食材を盛り付けることです。サービス精神からやってしまいがちですが、常態化すると原価率を圧迫する原因となります。
オーバーポーションを防ぐために、1杯あたりのスープ・麺・具材の量をグラム単位で定めマニュアル化しましょう。
仕入れコストを見直す
食材の仕入れ価格を1円でも安くできれば、その分が利益になります。まずは取引業者に、価格を交渉しましょう。仕入れ量を増やす代わりに単価を下げてほしいなど、相手にもメリットのある提案をすれば、うまくいく可能性が高まります。
また、現状の仕入れ価格が適正かを確認するために、複数の業者から見積もりを取ることも重要です。業者を変更する手間はかかりますが、同じ品質の食材をより安く仕入れられる業者が見つかれば原価率を下げられます。
人件費を下げる
経費で大きな割合を占める人件費は、スタッフの満足度を下げない範囲で無駄をなくし、効率的に人員を配置できれば利益率を改善できます。
時間帯に応じてシフト管理を最適化する
人件費削減のために、シフト管理を最適化しましょう。まず、過去の売上データを分析し、曜日や時間帯ごとの客数を正確に把握します。
そのうえで、ランチタイムのような忙しい時間帯には十分な人員を配置し、お客様が少ない時間帯には最低限の人数で運営できるようシフトを作成します。
天候やイベントなども客数に影響するため、常に最新の情報を加味してシフトを調整する柔軟性も必要です。
複数の雇用形態を使い分ける
人件費を下げるには、複数の雇用形態を使い分けるのも有効です。スープの仕込みや店舗管理などの業務は正社員に任せ、ピークタイムには短時間勤務が可能なパートやアルバイトスタッフを配置しましょう。
これにより、必要な時間帯に効率よく人員を配置しながら人件費をコントロールできます。また、ライフスタイルに合わせた働き方を提供できれば、従業員の定着率向上にもつながります。
まとめ

ラーメン屋は、回転率の向上・客単価アップ・原価や経費の徹底した管理などで、利益率10~20%を目指せます。まずは売上目標を立て、達成に向けたアクションを実行しましょう。
しかし、ラーメン屋の開業には1,000万円以上の資金が必要になるケースも多く、大きな負担となります。開業資金を少しでも抑えるためには、内装や厨房設備がすでに整っている居抜き物件の活用がおすすめです。
居抜きの神様は、ラーメン屋に最適な居抜き物件の情報を多数掲載しています。サイトには掲載されていない未公開物件もご紹介可能なため、コストを抑えてラーメン屋を開業したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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居抜き物件を活用した開業をご検討中の方は、ぜひ一度ご覧ください。
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