インターネットが普及した現代においても、看板は通行人の目に留まり、来店に直結する最重要の販促ツールです。とくに居酒屋のように夜間営業が主体となる業態では、繁華街の中で埋もれることなく、遠くからでも存在を認知させる工夫が欠かせません。
本記事では、店舗経営の知識がない方でも実践できる、目立つ看板デザインの具体的なポイントを詳しく解説します。デザインの基本から看板の種類、フォントの選び方まで、開業準備に役立つ情報を網羅的にお届けします。
居酒屋の看板を目立つ見た目にする重要性

看板は、お店の存在を知らせる案内板としての役割と、通行人を惹きつけて来店につなげる販促ツールとしての役割を持っています。
立地そのものが良くても、看板がなければ通行人に認知されません。2階以上、または地下に店舗を構える場合はなおさらでしょう。
認知されなければ、いくら料理が美味しくても来店にはつながりません。
看板は単なる装飾ではなく、新規顧客を獲得し続けるための投資と考えるべきです。
照明を暗くする場合
居酒屋や大衆系料理店では、照明を明るくすることが集客の鉄則です。内装がよく見え、入りやすい雰囲気を演出できるためです。
オーセンティックバーやコンセプトバーなど、あえて照明を暗くして高級感や特別な雰囲気を演出する戦略を取る店舗も存在しますが、デザインとの一貫性が求められるハイリスクな選択といえるでしょう。
この場合、金属素材を使った高級感のある看板や洗練されたネオンサインなど、コンセプトに合致した質の高いデザインが必須となります。
照明の事例
居抜き物件を活用した成功事例として、「酔っ手羽 池袋西口店」をご紹介します。
この店舗は、以前韓国焼肉店だった居抜き物件を引き継いでオープンしました。最大の成功要因は、既存の厨房設備を上手に活用し、初期投資を大幅に抑えながらスピード開業を実現したことです。焼肉店の重厚な内装をそのまま活かしつつ、木材を基調とした親しみやすい和風デザインに統一することで、居心地の良い空間を低コストで作り上げました。
看板戦略においても、池袋駅西口という好立地を最大限に活かし、夜間でも高い視認性を確保しています。内装が見える明るさを保ちながら、通行人の目を引くデザインで存在感をアピールしています。
さらに、長時間営業(平日14時から翌朝8時)や日替わりイベント、コストパフォーマンスに優れた価格設定がしっかり伝わる看板であることもポイントです。
看板を目立たせる以外に大切なポイント

看板は、通行人の注意を引く(Attention)だけでは不十分です。興味を持たせ(Interest)、来店意欲を高める(Desire)ための工夫が必要です。ここでは、看板デザインを決める際に考えるべき4つの重要なポイントを解説します。
コンセプト
看板はお店の「名刺」です。通行人が一目見ただけで、どんな雰囲気の居酒屋なのかを理解できるデザインが理想的です。
ターゲット顧客の趣味嗜好を深く理解し、店舗のコンセプトを明確に表現しましょう。和風の大衆居酒屋であれば木材と毛筆書体、モダンなダイニングバーであれば金属素材とゴシック体といったように、素材とデザインの一貫性が重要です。
地域密着型の居酒屋を目指すなら、その地域の雰囲気に溶け込みつつも、独自性を失わないバランス感覚が求められます。コンセプトが曖昧だと、ターゲット顧客に「自分向けの店」と認識してもらえず、せっかくの集客チャンスを逃してしまいます。
看板の素材
素材選びは、長期的なコストとお店のイメージを左右する重要な要素です。
木製看板は温かみがあり、和風の居酒屋や親しみやすい雰囲気を演出するのに適しています。一方、金属製看板(ステンレス、アルミ、真鍮など)は耐久性が高く、高級感や洗練された印象を与えます。
居抜き物件を活用する場合、既存の外装や内装に合わせた素材を選ぶことで、統一感を保ちながらコストを抑えることができます。元の店舗の雰囲気を活かしつつ、看板だけで新しいコンセプトを伝えることも可能です。
素材によってメンテナンスの頻度も変わります。屋外に設置する看板は風雨にさらされるため、耐候性を考慮した素材選びが長期的なコスト削減につながります。
色のバランス
色使いは、看板の視認性と食欲増進効果に直結します。
居酒屋の看板には、食欲をそそる暖色系(赤、オレンジ、黄色)をメインに使用するのが定石です。これらの色は遠くからでも目立ちやすく、「美味しそう」という印象を与える効果があります。
ただし、色を詰め込みすぎるのは逆効果です。情報量が多くなると一つひとつの要素が小さくなり、結果的に読みにくくなってしまいます。
夜間の視認性を最大化するには、背景と文字の明度差(コントラスト)を意識しましょう。黒地に白文字、濃紺地に黄色文字など、明暗のメリハリがはっきりした配色は、暗い時間帯でも遠くから認識できます。また、周辺の景観や競合店の看板と色が被らないよう、事前に現地調査を行うことをおすすめします。
わかりやすさ
看板において最も重要なのは「シンプルで読みやすい」ことです。
通行人が看板を目にするのは、ほんの一瞬です。徒歩でゆっくり歩いている人でも、数秒程度しか視線を向けません。この短時間で「何屋さんか」を伝える必要があるため、情報を絞り込むことが不可欠です。
とくに居酒屋の場合、お客様の多くは既にお酒を飲んだ後に看板を目にします。酔客でも一瞬で理解できるよう、文字数を減らし、フォントサイズを大きくしましょう。
アルファベットのみの店名は避けるべきです。読めない、意味が分からない看板では、通行人は素通りしてしまいます。必ずカタカナ表記を併記するか、日本語のみで表記することをおすすめします。
また、読みにくい装飾的なフォントも、遠くからの視認性を損ないます。
「あれもこれも伝えたい」という気持ちは理解できますが、情報量を増やすほど効果は下がります。伝えたいメッセージを1つか2つに絞り、それを力強く訴求する方が、はるかに高い集客効果を生みます。
実用性
看板には、来店のハードルを下げる実用的な役割もあります。
多くの通行人が入店を躊躇する理由のひとつが「予算感がわからない」ことです。スタンド看板やメニューボードを活用し、看板メニューの価格や代表的な飲み物の価格を明示することで、お客様の不安を解消できます。
「生ビール○○円」「手羽先3本○○円」など、具体的な価格を提示すると、「このくらいなら入ってみよう」という心理的なハードルが下がります。これはAIDMAモデルのDesire(欲求喚起)にも通じる重要な要素です。
価格表示以外にも、「本日のおすすめ」「期間限定メニュー」など、新鮮な情報を定期的に更新できるスタンド看板は、リピーターの来店動機にもなります。
居酒屋に最適な看板の種類

看板には「認知」「業態認識」「来店促進」という3つの役割があります。それぞれの役割に最適な看板の種類を理解し、効果的に組み合わせることが重要です。
ファサード看板
ファサード看板は、店舗の正面に設置される「お店の顔」であり、それゆえにデザインの質が集客効果に直結します。すべての居酒屋にとって必須の看板と言えるでしょう。
ファサード看板では、店名、ロゴ、ショルダーネーム(「大衆居酒屋」「和風ダイニング」などの業態名)を表示し、お店の第一印象を決定づけます。
照明には、内照式(看板内部に照明を内蔵)、外照式(外部から照明を当てる)、非照明式の3種類があります。夜間営業が主体の居酒屋では、内照式または外照式が推奨されます。LEDライトを使用すれば、電気代を抑えながら高い視認性を確保できるでしょう。
ネオン看板
ネオン看板は、集客とSNS拡散効果を最大限に高める戦略的ツールです。
従来のガラス管を使ったネオンサインは、導入コストが比較的安い一方で、設置に特殊な資格が必要であり、消防機関への届け出も必要でした。しかし近年普及しているLEDネオンサインは、これらの規制がなく、安全性が高いことに加えて、デザインの自由度も格段に向上しています。
カラフルで目立つデザインや、コンセプトを象った独自性の高いデザインは、通行人の目を引くだけでなく、SNSでの拡散効果も期待できます。とくに若者をターゲットとした「ネオ居酒屋」や「コンセプトバー」では、ネオン看板が店舗の世界観を演出する重要な要素となります。
LEDネオンは導入コストも抑えられ、電気代も安いため、長期的なコストパフォーマンスに優れています。
袖看板
袖看板は、建物の壁面から垂直に突き出した形状の看板です。「突き出し看板」とも呼ばれます。
遠くを歩く通行人に対して「何屋さんか」を伝えるための看板であり、とくにビルテナントや路地裏、2階以上の階にある店舗には必須です。人は歩く際に正面を向いているため、進行方向に対して直角に設置される袖看板は、自然と視界に入りやすい特徴があります。
店名だけでなく「居酒屋」「焼鳥」などの業態をシンプルに明記することで、業態認知の効果が高まります。夜間に点灯する内照式タイプを選べば、暗い時間帯でも高い視認性を維持できます。
ただし、袖看板の設置には屋外広告物法や建築基準法、道路交通法などの法規制が関わる場合があります。設置前に必ず自治体や警察に確認を取りましょう。
スタンド看板
スタンド看板は、通行人の目線に最も近い位置に設置できる看板です。
来店を促す具体的な情報(メニュー、価格、お得情報)を掲載するのに最適です。A型看板、T型看板など形状はさまざまですが、共通しているのは「内容を自由に変更できる」という柔軟性です。
手書きのメニューボードは、温かみがあり親しみやすい印象を与えます。季節のメニューや日替わりメニュー、割引キャンペーンなど、鮮度の高い情報を日々更新することで、リピーターの来店動機を作ることができます。
ただし、スタンド看板を公道に設置する場合、道路交通法や各自治体の条例で規制されていることがあります。設置場所、高さ、幅などの基準を事前に確認し、警察に注意されることのないよう注意しましょう。
タペストリー
タペストリーは、壁面に吊り下げるビニールや布製の看板です。
物件の制約で他の看板が設置できない場合や、初期コストを抑えたい場合に有効な選択肢です。ターポリンという耐光性・耐水性の高い素材を使用すれば、屋外でも使用できます。
季節のメニューやイベント情報など、新鮮な情報を柔軟に伝える用途に優れており、取り外しも容易なため、短期間のキャンペーンにも適しています。
タペストリーは耐久期間が比較的短く、半年から1年ほどで新しいものに交換した方が良いとされています。定期的な交換が必要な消耗品であることを理解した上で、コストと効果のバランスを考慮して活用しましょう。
居酒屋に最適な看板のフォント
フォントは、看板の印象形成と視認性に大きく関わります。ターゲット層やコンセプトに合わせた書体を選ぶことで、集客効果を高めることができます。
明朝体
明朝体は、線の太さに強弱があり、縦線が太く横線が細い書体です。
高級感や上品な印象を与えるため、オーセンティックバーや落ち着いた雰囲気のダイニングバーに適しています。繊細で洗練されたイメージを演出したい場合に効果的です。
ただし、居酒屋のように活気や視認性が求められる場所では注意が必要です。線が細くなることで、遠くから読めなくなるリスクがあります。明朝体を使用する場合は、太めの明朝体を選ぶか、メニューの説明文など補足的な役割に留めることをおすすめします。
メインの看板には視認性の高い書体を使い、サブ情報に明朝体を使うという使い分けが効果的です。
ゴシック体
ゴシック体は、線が均一で視認性が最も高いフォントです。
力強く、インパクトがあり、遠くからでもはっきりと読めるため、メッセージを強力に伝えたいメインの看板に最適です。カジュアルな居酒屋からビジネス向けのダイニングバーまで、幅広い業態に対応できる汎用性の高さも魅力です。
とくに、夜間の視認性を重視する居酒屋では、ゴシック体を第一選択肢として検討すべきです。太めのゴシック体は存在感があり、繁華街の中でも埋もれにくい特徴があります。
丸ゴシック体
丸ゴシック体は、ゴシック体の角を丸くした書体です。
柔らかく親しみやすい印象を与えるため、女性をターゲットとした居酒屋や、アットホームな雰囲気を重視する店舗に適しています。ポップで楽しい印象もあるため、若い世代向けの「ネオ居酒屋」や「カジュアルダイニング」でもよく使われます。
視認性もゴシック体に近く、優しい雰囲気と読みやすさを両立できるバランスの良い書体です。
毛筆書体
毛筆書体は、筆で書いたような和風の書体です。
伝統的で活気ある雰囲気を演出したい居酒屋に最適で、和風ダイニングバーや大衆酒場など、日本の食文化や伝統を前面に出したい店舗で効果を発揮します。
食欲増進効果があり、日本の伝統的なイメージを連想させる力があります。力強い筆致は、元気で活気のある店内の雰囲気を想起させ、「賑やかに飲み食いしたい」というお客様の心理に訴えかけます。
ただし、装飾的すぎる毛筆書体は読みにくくなる可能性があるため、可読性とのバランスを考慮して選びましょう。
こちらの記事では、居酒屋の開業について解説しています。
開業の手順や必要な備品・資格も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ
居酒屋の看板は、単に目立つだけでなく、お店のコンセプトを明確に伝え、来店意欲を高める工夫が必要です。素材選び、色のバランス、わかりやすさ、フォントの選択など、一つひとつの要素が集客効果に直結します。
看板の種類も、ファサード看板、ネオン看板、袖看板、スタンド看板、タペストリーなど、それぞれに異なる役割があります。これらを効果的に組み合わせることで、認知から来店までの導線を作ることができます。
開業にあたって初期投資を抑えたい方には、居抜き物件の活用が非常に有効です。既存の設備や内装を引き継ぐことで、看板を含めた初期コストを大幅に削減でき、スピード開業が可能になります。本記事で紹介した「酔っ手羽 池袋西口店」のように、居抜き物件の強みを活かしながら効果的な看板戦略を組み合わせることで、オープン初日から高い集客を実現できます。
「居抜きの神様」では、以前の店舗の設備を引き継いで低コストで開業できる居抜き物件を数多く取り扱っています。他では紹介されていない独占物件も掲載していますので、飲食店の開業を検討している方はぜひ一度ご相談ください。理想の立地で、費用対効果の高い開業を実現するお手伝いをいたします。

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