焼肉屋の経営は失敗しやすい?廃業率や年収、成功のコツを解説

焼肉屋の開業は魅力的に見えますが、実際には多くの店舗が数年以内に閉店しています。ただし失敗の理由を把握し、対策をすれば閉店を回避しやすくなります。本記事では、焼肉屋の経営に失敗しやすい理由や成功に導くコツ、閉店時の選択肢などを解説します。
焼肉屋の経営は失敗しやすい?
焼肉屋は飲食業界の中でも人気業態の一つですが、廃業率が高いことでも知られています。ここでは、まずその背景を市場規模や廃業率のデータから紐解いていきます。
焼肉屋の市場規模
焼肉業界は外食産業の中でも一定の地位を保ち、全国的に根強い人気を誇ります。日本フードサービス協会の調査(※)によると、2024年における焼肉業態の店舗数は前年比99.6%と減少したものの、売上高は前年比106.1%、客単価も前年比102.6%と好調です。焼肉業態は特に家族連れやサラリーマン層に支持されており、平日夜や週末を中心に安定した需要があります。
とはいえ、市場が大きいからといって、焼肉屋の経営が容易というわけではありません。競合の多さに加え、設備投資や運営コストの高さが経営を難しくする要因になっています。焼肉業界は外食産業の中で「参入はしやすいが、生き残りは厳しい」という構図が強い業態なのです。
※出典:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和 6 年(2024 年)年間結果報告」
焼肉屋の廃業率
焼肉業態の売上は好調な反面、倒産に追い込まれる店舗数は増加しています。帝国データバンクの調査(※1)によると、2024年度の倒産件数は55件と前年度の27件から倍増し、過去最多を記録したとのこと。
また、焼肉店を含む飲食業全体でも開業から1年以内に約30%、10年以内には約90%の店舗が廃業すると言われています。中小企業庁の調査(※2)を見ても、飲食店の廃業率が他業態より高いことが分かります。
焼肉屋は人気業態でありながらも、高い設備投資や激しい競争環境により廃業リスクが常につきまとうのが現実です。開業前に市場規模と廃業率の両面を把握しておくことが、経営成功への第一歩と言えるでしょう。
※1:帝国データバンク「「焼肉店」の倒産動向(2024 年度、速報)」
※2:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の現状 6.開廃業の状況」
焼肉屋の開業資金とランニングコスト
焼肉屋を開業するには、初期費用から運営資金まで資金面の計画が不可欠です。ここでは開業時に必要な費用や、月々のランニングコストの目安など、資金計画の重要性を解説します。
初期費用の目安
焼肉屋を開業する際に最も大きな負担となるのが初期費用です。一般的には1,000万円〜3,000万円が目安とされ、主に以下の項目に分けられます。
■物件取得費
保証金や敷金、仲介手数料などを含み、立地や物件規模により変動します。駅近や繁華街であれば保証金だけで数百万円かかるケースも珍しくありません。
■内装工事費
客席のレイアウトや厨房設備の設置、デザイン性を考慮した内装にかかる費用です。特に焼肉店は客席数に応じて排煙ダクトを設置する必要があるため、一般的な飲食店よりも工事費用が高くなります。
■排煙・換気設備
ともに焼肉店に不可欠な設備です。1台あたり数十万円〜100万円以上かかることもあり、全席分を導入すると大きな出費になります。
■厨房設備・什器
冷蔵庫や製氷機、ガスコンロ、グリルなどの導入費用。新品にこだわらなければ、リースや中古品を活用して費用を抑えることも可能です。
■その他備品・開業準備費
食器や調理器具、レジシステム、メニュー表の制作などの細かい出費も積み重なります。
焼き肉経営のランニングコスト
焼肉屋の開業後は、毎月のランニングコストが経営を左右します。主な項目は以下の通りです。
■家賃
立地条件により異なりますが、売上に対して10%以内が理想とされます。都心の好立地では月50〜100万円になることもあります。
■人件費
従業員の給与は売上の20〜30%が目安。シフト調整やピーク時の人員確保が利益率に大きく影響します。
■光熱費
焼肉店はガス・電気・水道代が高く、特にガス代は一般飲食店の2〜3倍に達することもあります。
■食材費
肉や野菜、調味料といった食材の原価率は仕入れルートやメニュー構成によって変動しますが、売上の30%前後が目安です。
これらを合計すると、毎月のランニングコストは売上の60〜70%を占めることが多く、利益を確保するには徹底したコスト管理が求められます。
焼き肉屋の運転資金を確保しないリスク
焼肉屋を開業する際、少なくとも半年分の運転資金を確保しておくことが推奨されます。開業直後は認知度が低く、売上が安定するまで時間がかかるためです。運転資金が不足すると、黒字化する前に資金ショートを起こし、黒字倒産に至るケースもあります。
実際、売上は伸びているのに資金繰りが間に合わず廃業する店舗は少なくありません。十分な運転資金の確保は、経営リスクを大幅に下げる重要な要素です。
焼肉屋経営は儲かる?年収の目安
焼肉屋オーナーの年収は600万円程度とされます。ここで、どれくらい儲かるのかをシミュレーションしてみましょう。
例えば、客単価が4,000円、1日50人の来店で月25日営業すると月商は500万円です。ランニングコストを70%と仮定すると営業利益は150万円、そこから借入返済や税金を差し引くと、オーナーの年収はおおむね500〜800万円程度となります。
ただし、この数字はあくまでモデルケースであり、立地・集客力・リピート率によって大きく変動します。損益分岐点を正確に把握し、客単価や回転率を戦略的に管理することが、安定した経営とオーナー収入の確保につながります。
焼肉屋を経営するメリット
焼肉屋の経営には高収益を期待できる要素が多くあります。ここでは、主なメリットを4つ紹介します。
幅広い年代から人気がある
焼肉は老若男女問わず人気が高く、ファミリー層から学生、会社員の宴会利用まで、幅広いターゲットを取り込めるのが強みです。さらに、記念日や飲み会といった特別なシーンでも選ばれやすく、集客しやすい業態と言えます。リピート率の高さも売上の安定につながる重要な要素です。
客単価が高い
一般的な飲食店に比べ、焼肉屋は客単価が高めです。肉やアルコールを組み合わせることで1人あたりの平均単価は3,000〜5,000円程度になることが多く、利益率の向上に直結します。特にコース料理や飲み放題プランを設けることで、客単価の底上げが可能になり、売上の最大化が期待できます。
フードロスが少ない
焼肉屋ではお客様自身がテーブルで調理するスタイルのため、調理済み食品を提供する飲食店に比べて廃棄ロスが少なく済みます。また、肉や野菜は冷凍・冷蔵保存が効きやすいため、在庫管理がしやすい点もメリットです。適切な仕入れ計画を立てることで、原価率を安定させ、経営の効率化が可能です。
人件費を抑えやすい
焼肉は調理工程がシンプルなため、厨房での高度な調理スキルが不要です。ホールスタッフもオーダーや配膳が中心となり、調理人を多く抱える必要がありません。その結果、人件費を抑えられるケースが多く、利益率を確保しやすくなります。
焼肉屋を経営するデメリット
焼肉屋の経営にはメリットがある反面、リスクや負担も存在します。主なデメリットを3つ紹介します。
食中毒のリスクがある
焼肉は生肉を扱うため、食中毒のリスクが常に伴います。特に加熱不足による細菌感染は店舗の信用問題にも直結します。そのため、厳格な衛生管理や従業員への衛生教育が欠かせません。万が一の事態に備えた保険やマニュアルの整備も必要です。
開業資金が高くなりやすい
焼肉屋は排煙設備や換気装置など特殊な設備投資が必須で、他の飲食業態に比べ初期費用が高額になりがちです。さらに、肉の仕入れには一定の資金力が求められ、十分な開業資金を確保しなければ経営が軌道に乗る前に資金不足に陥るリスクがあります。
労働時間が長くなりやすい
夜間営業が中心となる焼肉屋は、営業時間が長くなりがちです。仕込みや片付け作業も含めると、オーナーや従業員の労働時間は必然的に長時間化します。ワークライフバランスを保つには、シフト制の工夫やスタッフの教育体制の整備が不可欠です。
焼肉屋の経営に失敗する原因
焼肉屋は人気業態の一つですが、開業すれば必ず成功するわけではありません。ここでは、経営がうまくいかない主な要因を紹介します。
出店場所の選定ミス
立地は飲食店の売上を左右する最大の要因です。人通りが少ないエリアや駐車場が不足している立地では集客が難しく、固定客を獲得する前に経営が苦しくなることもあります。
特に焼肉屋は家族連れや宴会利用も多いため、交通アクセスや駐車のしやすさが重要です。周辺の競合店や人口動態を徹底的に調査することが欠かせません。
ターゲット選定ができていない
ターゲットが不明確なままでは、メニュー構成や価格帯が中途半端になりがちです。高級志向なのか、学生や会社員向けのコスパ重視なのかを明確にしないと、集客の軸がぶれてしまいます。ターゲットを定めることで、内装デザインやプロモーション施策、SNS発信の方向性も統一でき、集客効率が向上します。
原価管理が甘い
焼肉屋は食材原価が売上の30〜40%を占めることが多く、仕入れの工夫やメニュー設計が利益確保のカギです。原価率を把握せずに高価な食材を多用すると、売上があっても利益が残りません。安定した収益化には、原価率を意識したメニュー開発や仕入れルートの見直しが必須です。
サービス品質の低下
どれだけ味が良くても、接客態度が悪いとリピート客は増えません。特に焼肉屋は宴会や家族利用が多く、スタッフの気配りやスピード感が求められます。忙しさからサービス品質が下がると口コミ評価が落ち、集客に悪影響を及ぼします。スタッフ教育やマニュアル整備を怠らないことが重要です。
資金計画の甘さ
開業資金や運転資金の確保が不十分なまま開業すると、売上が安定する前に資金ショートを起こすリスクがあります。特に飲食店は黒字化までに時間がかかるケースが多いため、最低でも半年分の運転資金を確保する計画が必要です。
販促・リピート施策不足
新規集客だけに注力し、リピート対策を怠ると売上は安定しません。SNSやグルメサイトの活用、クーポンや会員制度の導入など、顧客の再来店を促す施策が必要です。また、開業初期は認知度が低いため、広告宣伝費の確保も重要な投資と言えます。
人材の定着・教育不足
スタッフの入れ替わりが激しいと、サービス品質や店舗オペレーションが安定しません。特に焼肉屋はピーク時の対応力が売上に直結するため、教育体制の整備と働きやすい職場環境づくりが求められます。離職率を下げる工夫が、長期的な経営安定につながります。
焼肉屋の経営を成功に導くコツ
焼肉屋の経営はリスクが多いとはいえ、正しい戦略と準備をすれば失敗を防げます。ここでは焼肉屋の経営を成功に導くコツを解説します。
ターゲットを明確に選定する
焼肉屋経営において最初に考えるべきは「誰に来てもらうのか」というターゲットの明確化です。ファミリー層、学生、会社員、富裕層など客層によって、立地・価格帯・内装デザイン・メニュー構成が大きく変わります。
例えば、ターゲットがファミリー層なら郊外の大型駐車場付き物件が、富裕層なら都心で高級感のある内装の物件が適しています。ターゲットがぼやけたまま開業すると、宣伝やメニューがちぐはぐになり、経営難に陥りやすくなるため注意しましょう。
競合との差別化を図る
焼肉屋は全国に多数あり、生き残るためには競合との差別化が求められます。差別化の方法は「価格」だけではありません。例えば希少部位や熟成肉の提供、地域産牛肉のこだわり、韓国式や炭火専門といったスタイルの打ち出しなどが挙げられます。
また、サービスの質や店舗体験も差別化要因になります。競合を徹底的に調査し、自店の強みを見極めて打ち出すことが、固定客の獲得や口コミ拡散につながり、失敗を避ける大きなカギとなります。
食材の品質は落とさない
コスト削減のために安価で品質の低い肉を使うと、客離れにつながるため注意が必要です。現代はSNSや口コミサイトの影響が強く、一度でも「肉が硬い」「味が落ちた」と評価されれば集客に大打撃を受けます。
むしろ仕入れを工夫して品質を保ち、他の部分でコストコントロールする方が長期的に成功につながります。内外装の装飾や過剰な広告費を削るなど、品質を犠牲にしない経営判断が必要です。
経営の知識を身につけ、利益を設計する
多くの焼肉屋が失敗する要因の一つは、利益設計の甘さです。売上が好調でも、原価率や人件費率、固定費を把握していなければ赤字に陥ります。経営者自身が会計や経営の知識を持ち、常に数値を分析して利益を確保できる体制を整えることが重要です。感覚的な経営に頼らず、数字に基づいた経営判断を行うことで、廃業リスクを軽減できます。
集客を仕組み化する
一時的な集客に頼るのではなく、継続的な集客を「仕組み化」することが成功への近道です。予約サイトや自社HPの活用に加え、リピート客を確保するためにLINEやメルマガでの情報発信を組み込みましょう。
また、SNSで料理写真やキャンペーンを発信し、口コミが自然に広がる仕組みをつくることも大切です。特に若年層はSNSをもとに飲食店を選ぶ傾向が強いため、積極的な発信は不可欠です。安定的に新規とリピーターを獲得できれば、焼肉屋経営の成功に近づきます。
「居抜き売却」なら焼肉屋の閉店費用を抑えられる!
万が一、焼肉屋の経営を続けられなくなった場合でも、閉店費用を抑える方法があります。それが「居抜き売却」です。居抜き売却とは、内装や設備をそのまま残した状態で店舗を売却する方法で、スケルトン工事(原状回復工事)を行わずに済むため、通常数百万円かかる閉店費用を大幅に削減できます。
居抜き売却の主なメリットは次の3つです。
- 撤退コストの削減:原状回復費用が不要になる。
- 売却益が得られる:店舗設備に価値がつけば買い手から売却益を得られる。
- 短期間で閉店可能:物件の引き渡しまでの時間を短縮できる。
売却の流れは、専門業者に相談 → 査定 → 売却先とのマッチング → 契約・引き渡しというシンプルなものです。経営が苦しい場合も、居抜き売却を活用すればリスクを最小限に抑え、次の一歩を踏み出しやすくなります。
焼肉屋の経営に失敗したときは撤退も一つの手
焼肉屋の経営で失敗を避けるためには、ターゲットの明確化、競合との差別化、品質維持、経営管理、集客の仕組み化といった基本の徹底が欠かせません。成功のコツを押さえれば、経営を軌道に乗せられるでしょう。
とはいえ、焼肉屋は失敗のリスクも高い業態です。経営難に陥ったときは一度撤退し、リスタートするのも一案です。撤退時は居抜き売却を選ぶと閉店コストを抑えられます。
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