居抜き物件の退去時にも原状回復は必要?費用相場やメリット、注意点も解説

リフォームの見積もりをする人

飲食店を閉店する際、大きな負担となるのが原状回復工事です。通常、スケルトン状態に戻すことが求められますが、居抜き物件として撤去すればコストを抑えながら店舗売却が可能です。本記事では居抜き物件とは何か、退去時に原状回復は必要かどうかを解説し、費用相場やメリット・デメリット、注意点を紹介します。

目次

居抜き物件での退去とは

居抜き物件での退去とは、借りていた飲食店などの店舗を居抜きの状態で退去し売却することです。居抜きとは、以前入居していたテナントの内装や厨房設備、什器備品などがそのまま残った状態で売買または賃貸借されること。このように看板を変えるだけで、すぐに営業できる状態の店舗物件を居抜き物件(または居抜き店舗)といいます。

一方、建物から内装や設備をすべて撤去し、躯体のみを残した状態をスケルトン(物件)といいます。

賃貸借契約における退去時の原状回復と費用相場

一般に賃貸借契約では、退去時に原状回復が求められます。続いては、賃貸借契約における原状回復の基本的な考え方と、原状回復にかかる費用相場について解説します。

賃貸借契約における原状回復とは

原状回復とは、賃貸物件を退去する際に「借りる前の状態」に戻すことを指します。賃貸借契約では居住用・事業用を問わず、この義務が定められているのが一般的です。

飲食店の場合は壁紙や床の補修だけでなく、調理に必要な厨房機器も原状回復の対象で、工事費用は借主負担の場合が一般的です。契約内容によっては「スケルトン工事」として、内装や設備をすべて撤去しコンクリートむき出しの状態に戻さなければならない場合もあります。

原状回復の範囲や内容、費用負担の詳細は、賃貸借契約書の「明渡し・原状回復」の条文に記載されています。また「原状回復基準書」や「原状回復仕様書」という書面で、工事項目が指定されている場合もあります。退去を決めたら、すぐに契約書を確認しましょう。

原状回復にかかる費用相場

飲食店の原状回復工事(スケルトン工事)は、坪単価で見積もられるのが一般的です。

小規模店舗(30坪未満)

敷地面積が小さな小規模店舗の場合、1坪あたり4万円~6万円程といわれています。

カフェやバーといった調理設備や空調設備がコンパクトな軽飲食業は1坪あたり5万円が目安です。焼肉屋やラーメン屋など、調理設備や空調設備が大がかりな重飲食業は、原状回復工事の費用が高額になり、1坪4万円~6万円が相場です。

大規模店舗(30坪以上)

敷地面積が30坪以上と広く、キッチンや水回り、専用器具などが大規模の場合、1坪3万円~5万円程が相場です。

なお、同じ坪数でも、厨房機器の数・設備の重装備度合い・損傷の程度によって費用は変わります。専門業者に依頼し、店舗の状況を踏まえて見積もりを出してもらいましょう。早めに工事費用を確保しておくと安心です。

居抜き物件で退去するメリット・デメリット

居抜き物件として退去するには、退去時のコストを削減できる、撤退までの時間を短縮できる、売却益が期待できるといったメリットがある一方で、売却に時間がかかるケースや閉店計画が漏れてしまうといったリスクも伴います。居抜き退去のメリットとデメリットを解説します。

メリット1. 退去時のコストを削減できる

通常、店舗物件からの退去時には、スケルトン状態への原状回復工事が求められ、工事のための費用が必要です。工事費用は厨房設備などの造作によりますが、1坪あたり8万円~10万円が目安です。大型の設備を撤去したり、排気ダクト周辺の壁面を清掃したりする必要があれば、費用がさらに上乗せされることも。

居抜き物件での退去なら、内装や厨房設備を次の入居者に引き継ぐため、原状回復工事や設備処分が不要になり、退去時のコストを抑えられます。

メリット2. 退去までの期間を短縮できる

退去時に原状回復工事が必要な場合、工事期間の家賃も負担する必要があります。居抜き退去なら工事を省略できるので、閉店後すぐに物件の引き渡しが可能です。そのため、退去直前まで店舗を営業でき、空家賃を支払う必要がありません。さらに契約期間内ぎりぎりまでの営業が可能です。少しでも利益を上げたい飲食店オーナーにとって、営業期間を延ばせることは大きなメリットでしょう。

メリット3. 売却益が期待できる

居抜き物件での退去は、売却益(造作譲渡料)を得られる可能性があるのも大きなメリットです。

造作譲渡料とは、飲食店などの店舗を閉店する際に内装や設備を次の入居者に譲渡する対価として受け取るお金のこと。造作(ぞうさく)とは、飲食店の内装(壁、床、天井など)、厨房設備、エアコン、テーブルや椅子など、建物の骨組み以外に含まれる設備や什器を総称したものです。

新規に飲食店を開店したい買い手にとって、厨房設備や備品を最初から揃える必要がなく初期費用が抑えられる居抜き物件は人気があります。売却する店舗の需要が高いほど、多くの売却代金を得られるでしょう。原状回復工事や設備を処分する費用も抑えられるため、差額の利益を期待できます。

デメリット1. 売却に時間がかかる可能性がある

居抜き売却は買い手が見つかるまで退去できません。現状、赤字で営業している場合、買主が見つかるまで赤字が続くことになります。できるだけ早い売却を目指すのであれば、同業種の事業者から買い手を探すと見つかりやすいでしょう。

デメリット2. 閉店計画が漏れる可能性がある

居抜き売却では、買主を探すために不特定多数の人に告知されます。そのため、自ら閉店を予告する前に、スタッフや顧客に知られてしまうリスクがあります。意図せぬ形で閉店を知られることで双方の信頼関係が崩れ、スタッフの早期退職やモチベーションの低下といったトラブルにつながることも。

トラブルを避けるためにも、売却はできる限り水面下で進められるよう、情報の取り扱いについて業者と十分に話し合いましょう。

居抜き物件での退去の流れと手続き

円滑に居抜き物件で退去し、売却を進めるには、専門業者を利用するのが一般的です。ここでは、居抜き物件での退去を進めるための流れを紹介します。

1. 契約書を確認する

居抜き物件での売却を検討する際、まずは賃貸借契約書の内容をしっかり確認しましょう。その物件が居抜き売却に対応できるかどうかを把握します。主に確認すべき項目は、解約予告の期間、原状回復の取り決め、厨房機器などのリース契約の有無など。

特に注意すべきは、原状回復義務の内容です。「スケルトン状態で返却すること」が契約に盛り込まれている場合、そのままでは居抜き売却はできません。ただし、物件所有者(貸主)との交渉により、居抜き売却が認められるケースもあるので、早めに相談しておくことが大切です。

2. 専門業者へ相談・査定を依頼、売却価格を設定する

居抜き物件を専門とする不動産会社や買取業者に査定を依頼します。賃貸契約の内容で気になる項目があれば、相談しておくと安心です。査定では店舗の立地条件や内装、設備などを確認・調査し、価値や需要を割り出します。この査定結果をもとに売却価格を決めます。見積りと合わせて造作物の一覧も作っておくと良いでしょう。

3. 物件所有者(貸主)の許可を得る

賃貸物件では、物件の所有者(貸主)から居抜き売却の許可を得ることが必要です。借主や物件を管理している不動産管理会社へ連絡し、契約条件や退去に関わる事項を確認します。居抜き売却では賃貸借契約の引き継ぎが伴うので、事前の合意が重要です。

4. 専門業者と媒介契約を結び、買取希望者を募集する

居抜き物件の専門業者と契約を結んで買取希望者を募集します。募集を行う際には、賃貸借契約書の写しや店舗の平面図など資料の提出を求められることがありますので、準備しておきましょう。

5. 造作譲渡契約を締結する

買取希望者が見つかったら、専門業者と買取希望者にて物件の現地視察を行います。最終的に購入意思を確認し、造作譲渡契約(売買契約)を締結して正式に売買の手続きへと進みます。

この際、譲渡対象となる内装や設備について、売り手(現オーナー)・物件所有者(貸主)・買取希望者の三者間で認識の食い違いがないかを必ず確認しましょう。契約書には対象範囲や条件を細部まで明記し、全員が合意したうえで締結することが重要です。

6. 物件所有者との賃貸契約を解除する

売り手(現オーナー)は物件所有者と賃貸契約を解除し、物件所有者と買い手(新オーナー)との契約締結を調整します。

物件所有者との賃貸借契約を解除するのは、必ず造作譲渡契約が結ばれた後にしましょう。契約解除を先にしてしまうと、退去日までに時間がない中で思うように買い手とのスケジュールが組めずに退去がスムーズに行えないかもしれません。契約解除のタイミングには、十分に留意してください。

7. 店舗を引き渡し、代金を受け取る

契約内容に従い、店舗を引き渡します。不動産会社へ、鍵や取扱説明書などの必要書類を渡します。基本的には、入居のための鍵を渡した時点で引き渡し完了です。引き渡しが完了次第、売買代金を受領してすべての手続きが終わります。

居抜き物件での退去時の注意点

居抜き物件で退去する際は、トラブルを未然に防ぐために契約や設備をしっかり確認しておきましょう。最後に退去時に押さえるべき注意点を整理しました。

必ず物件所有者(貸主)から承諾を得る

飲食店の店舗を居抜き売却して退去するには、物件所有者からの承諾が必要です。一般住居に比べ飲食店は早い段階で解約予告が必要なので、余裕をもって物件所有者と交渉しましょう。飲食店側の売却準備を整えていても、物件所有者の承諾が得られなければ売却そのものが取りやめになってしまう可能性もあります。店舗の売却は借主の一存では進められないため注意が必要です。

リース設備の契約内容を確認する

店舗にリース契約中の設備が含まれている場合は、リースの契約期間や支払い残額を必ず確認しましょう。リース契約書を確認し、対象となる設備をしっかり把握して整理しておくことが大切です。

原則として、リース契約期間中は中途解約ができません。物件の買い手にリース契約を引き継いでもらう方法もありますが、旧契約者が連帯保証人にならなくてはいけない場合もあるので注意しましょう。可能であれば、居抜き売却の収益からリース残高を清算した上で買い手に所有権を譲渡する方法が望ましいでしょう。

内装・設備を事前に点検し、必要ならメンテナンスする

居抜き売却を検討する際は、壁紙や床の汚れ、エアコンや厨房機器の不具合など、内装や設備の状態を必ず点検してください。居抜き物件では、次の入居者がそのまま設備を引き継ぐので、売却後に故障や損傷が見つかるとトラブルに発展する恐れがあります。

事前に不具合を把握し、修理や交換などのメンテナンスを済ませておけば、買い手に安心感を与えられるだけでなく、高値での売却や契約後のトラブル防止につながります。

居抜き売却専門の業者に依頼する

居抜き売却を成功させるには、専門業者に依頼することが有効です。居抜き売却を行う際は、物件所有者に承諾を得たり、買い手と慎重に契約内容をすり合わせしたりしなければなりません。初めて居抜き売却を行う場合、確認不足から思わぬトラブルに発展してしまうことも。専門業者は市場動向に詳しく、適切な買い手を見つけるサポートをしてくれます。複数の業者に相談し、力になってくれそうなところを選びましょう。

飲食店の居抜き物件での退去なら「買取の神様」にお任せください

居抜き物件の退去時は、原状回復工事を不要になり費用を抑えられるなどのメリットがあるものの、事前の対策が不十分だとトラブルになる恐れもあります。設備の状態確認、リース品がないか所有権の明確化、物件所有者との交渉など、手順を一つ一つしっかりと行いましょう。事前にポイントを押さえ、専門業者と連携して準備を進めることが、スムーズな退去のための近道です。

「買取の神様」では、飲食店運営の経験を活かした専門的な店舗買取を行っており、300店舗以上の実績があります。管理会社や貸主との交渉も代行し、オーナー様が閉店業務に専念できるようサポートいたします。査定・相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

元システムエンジニア、ライター歴10年のアラカン主婦です。楽しみは成人した娘とのカフェ巡り。娘に流行のスィーツを教えてもらってます。顧客サポートやマニュアル作成の経験を活かした分りやすい記事を目指しています。

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