厨房が暑い場合の対策は?熱中症を防ぎ作業効率を上げるコツ

厨房が暑い場合のリスクには、従業員の体調不良や生産性の低下、食品の品質劣化があります。対策としては、ユニフォームを涼しい素材に変えることや、スポットクーラーの設置、エアコンの増強などが有効です。厨房が暑くなる原因と暑さを放置するリスク、快適な環境を保つための対策を紹介します。

目次

厨房の温度が上がりやすいのはなぜ?

飲食店の厨房が暑くなりやすい理由には、調理に火を使う、熱がこもりやすい構造をしているといった事情があります。従業員が常に立ち仕事で動き回ることや、ユニフォームの通気性が悪いことも、厨房が暑く感じられる原因のひとつです。

調理のために火を扱うから

厨房の温度が上昇する最大の要因は、調理のために火を扱うことです。ガスコンロやフライヤー、オーブン、グリルといった調理器具は、常に高温を発し、厨房の温度を上げてしまいます。特に、中華のように強火を多く使う店舗では、室温が30℃を超えることも珍しくありません。

調理中の熱気は、天井や壁に反射してこもりやすく、気づかないうちに体温が上昇します。「いつもより汗が止まらない」「息苦しい」と感じたら、体が危険信号を出しているサインです。火を使う時間を分散させたり、加熱機器の配置を見直したりすることで、作業中の温度を下げることができます。

熱がこもりやすい構造をしているから

多くの厨房は、熱や煙、臭いを排出するために排気ダクトを備えていますが、「排気ダクトがあっても熱が抜けにくい」という声は多く聞かれます。排気設備が油汚れなどで目詰まりすると、熱気や水蒸気がうまく排出されず、室内にこもってしまうためです。

給気と排気のバランスが悪いと、エアコンの冷気まで排気によって吸い出される「ショートサーキット現象」が起こり、冷却効果が低下してしまうことも。こうした厨房の構造や換気設備の状態が、厨房をより暑くしているケースもあります。

立ち仕事で動き回るから

立ち仕事で動き回ることも、厨房が暑いと感じやすい原因のひとつです。熱源の近くを移動したり、食洗機のスチームを浴びたりすることで、体感温度はさらに上がります。

特に調理のピークタイムには複数のスタッフが動き回り、熱を発する調理器具に囲まれながら作業することになります。この状態が続くと、知らず知らずのうちに熱中症リスクが高まります。

帽子やエプロンを着用するから

厨房で働く従業員は、衛生管理のために帽子やエプロン、コックコートといったユニフォームを着用しますが、素材によっては体温の放熱を妨げる原因になります。特にコックコートは、耐熱性のある厚手の素材でできていることが多く、体温や湿気を閉じ込めてしまうことがあります。

帽子に関しても、毛髪の混入を防ぐために目の細かい生地を使用すると、通気性が悪くなり、頭部に熱がこもる原因に。近年では、通気性の高いメッシュ生地を部分的に使用したり、肌に触れたときに涼しく感じる接触冷感素材を取り入れたりした作業服も登場しています。

厨房が暑い場合のリスク

厨房の暑さを放置すると、従業員が熱中症にかかる、生産性が低下する、食品の安全性に問題が出るなどのリスクが発生します。厨房が暑い場合のリスクを詳しく見ていきましょう。

従業員が熱中症にかかる

高温多湿になりがちな厨房の環境は、従業員の熱中症リスクを著しく高める要因となります。厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、調理場の温度は25℃以下に保つことが望ましいとされていますが、夏場はこの基準を維持しにくいかもしれません。

熱中症は、めまいや吐き気だけでなく、重症化すると意識障害や死亡に至る可能性もある重大な労働災害です。特に、作業に集中して水分補給を怠ったり、厚手のユニフォームで熱がこもったりすると、熱中症のリスクが増大します。

食材が傷みやすくなる

厨房の温度が高いと、食材が傷みやすくなるリスクも招きます。食中毒の原因となる細菌の多くは、20℃から45℃の温度帯で最も活発に増殖すると言われています。これは、まさに夏場の厨房の室温と重なる危険な温度帯です。

WHOによる食品衛生の国際的な基準でも、冷たい食品は5℃以下、温かい食品は60℃以上に保ち、「危険温度ゾーン(5℃~60℃)」に置かれる時間を最小限に抑えることが求められています。

特に仕込みや盛り付け中に、食材が暑い場所に長時間放置されると、急速に細菌が増殖し、食中毒発生のリスクが跳ね上がります。食品の安全性を確保するためには、厨房内の適切な温度管理が欠かせません。

生産性が低下する

過酷な暑さの中で長時間作業を続けると、従業員の体力が消耗し、生産性の低下を引き起こします。熱中症の初期症状であるめまいやだるさは、作業スピードの低下を招き、料理の提供時間が遅れる、オーダーミスをするといった問題に発展します。さらに、暑い環境で働かざるを得ない状況は、従業員のモチベーションを下げ、離職率を上昇させてしまう可能性もあるでしょう。

快適な職場環境の整備は、従業員の福利厚生だけでなく、サービスの質を高めることで顧客満足度の向上にもつながります。

厨房が暑い場合の対策7選

厨房の暑さ問題は、従業員の健康を守り、事業を維持するために重要な課題です。熱中症を防ぎ作業効率を向上させる、具体的な対策を7つ紹介します。

①涼しい素材の作業服や空調服を着用する

手軽にできる暑さ対策として、作業服の素材を涼しいものに変更する方法があります。コックコートは耐熱性を重視するあまり、通気性が低く熱がこもりやすいのが難点です。

例年の猛暑に対抗するため、最近では通気性や吸汗速乾性の高い素材を用いた作業服の導入が進んでいます。特にポリエステルなどの化学繊維は、汗をすばやく吸収し蒸発させる性質があり、体温の上昇を抑える効果が期待できます。

さらに、近年注目を集めているのが空調服です。空調服は、服に内蔵されたファンが外気を取り込み、服の中で空気を循環させることで、汗を気化させて涼しさを生み出します。食品衛生を考慮したファン付きのコックコートも開発されており、体感温度を大きく下げる手段となるでしょう。

②こまめに水分と塩分を補給する

熱中症を予防する基本的な対策は、こまめな水分と塩分の補給です。厨房のような高温多湿な環境では、自覚がないままに大量の汗をかき、体内の水分と塩分が失われます。喉の渇きを感じた時点では、すでに脱水が始まっていることが多いため、喉が渇く前に水分を摂ることが重要です。

厚生労働省は、休憩時間以外にもこまめに水分補給タイムを設けることを推奨しています。水だけでなく、発汗によって失われる塩分やミネラルを補給できるスポーツドリンクや塩分タブレットを、冷蔵庫や作業場所の近くに常備しておくと便利です。

③冷却グッズを活用する

作業服や水分補給といった対策に加えて、冷却グッズを活用すると暑さを和らげることができます。首元や脇の下など、太い血管が通っている部分を冷やすと、体全体の温度を下げるのに有効です。

水に濡らして首に巻く冷却タオルや、冷却ベストなども手軽に導入できるアイテムです。特に、空調付きや保冷剤を入れるタイプの冷却ベストは、熱源に近い場所での作業に効果を発揮します。

他には、冷蔵庫や製氷機で冷えた飲料や氷、濡れたタオルを用意し、休憩中に体の表面を冷やすなど、身近なものを活用する方法もあります。

④スポットクーラーやサーキュレーターを設置する

厨房全体をエアコンで冷やすのが難しい場合、スポットクーラーやサーキュレーターを設置するのもおすすめです。熱源の近くや、洗い場といった温度が上がりやすい場所に、ピンポイントで冷風を送ることができます。

スポットクーラーは局所的な冷却に優れており、移動可能なタイプを選べば、作業内容やレイアウトの変更に合わせて柔軟に対応可能です。サーキュレーターは空気を循環させることで、熱がこもるのを防ぎ、室内の温度ムラを解消するのに役立ちます。

ただし、スポットクーラーの排熱を室内に放出するタイプは、かえって厨房全体の温度を上げてしまうため、熱気を外部に排出するタイプを選ぶなどの注意が必要です。

➄業務用エアコンを増強する

根本的な厨房の暑さ対策として、業務用エアコンの能力を増強する方法もあります。厨房は、火の使用による発熱量が大きいため、通常の店舗用エアコンでは冷房能力が不足しがちです。油煙や水蒸気も多いため、エアコン内部のフィルターが目詰まりしやすく、冷房効率が低下しやすいという特徴もあります。

厨房専用に設計された耐油性・防錆性に優れたエアコンへの入れ替えや、既存のエアコンに加えて、能力の高い機種を増設することを検討してみるのも良いでしょう。エアコンを入れ替える以外に、作業者に冷風が直接当たるように設計し直したりする事例もあります。

費用はかかりますが、従業員の健康維持と生産性向上の観点から、検討する価値は十分にあります。

⑥調理器具やダクトの点検を行う

厨房の暑さは、調理器具や換気設備であるダクトの不具合や汚れが原因となっていることも。ガスコンロやフライヤーの老朽化や性能の低下により、必要以上に熱を発生させているケースもあります。オーブンなどの断熱材が劣化している場合も、外部への熱漏れが大きくなります。

さらに、排気ダクトやグリスフィルターに油汚れが溜まると、排気能力が低下し、熱気や煙が室内にこもりやすくなります。ダクト内部の油汚れは、火災の原因にもなりかねないため、1~3年おきの定期的な点検が欠かせません。

調理器具や排気ダクトの点検・メンテナンスを専門業者に依頼することで、設備の本来の性能を引き出し、厨房内の温度上昇を防ぐことにつながります。

⑦従業員同士で体調管理のために声をかけ合う

従業員同士で体調管理のために声をかけ合うことも、熱中症を防ぐうえで重要なポイントです。熱中症は、自分自身で客観的な判断をするのが難しいケースも多く、周囲が異変に気づくことが重症化を防ぐ鍵となります。

「休憩は取れているか」「水分は十分か」「顔色が悪くないか」といった声かけを、忙しい時間帯や熱源の近くで作業する従業員に対して積極的に行いましょう。管理者が1人ひとりの体調を常に把握するのは難しいため、チーム全体で互いの健康を守り合う意識を持つことが大切です。

加えて、具合が悪くなった際の応急処置や報告方法もマニュアル化し、従業員に周知しておくと安心です。

厨房が暑い問題を解決した事例

厨房の暑さは多くの飲食店経営者を悩ませる問題ですが、適切な対策を講じることで、従業員の働きやすさと生産性を向上させた事例は存在します。一例として、ある焼き鳥店では、業務用エアコンを稼働させても厨房が全く冷えないという問題に直面していました。

調査した結果、排気ダクト内部が油で汚れており、排気がうまくできていなかったことが判明します。業者に依頼して排気ダクトの清掃を行った結果、劇的に厨房内の温度が改善しました。

別のケースでは、空調能力の高い厨房専用エアコンに交換するとともに、スポットクーラーを作業スペースに設置し、局所的な冷却を強化したことで、従業員から「作業が格段にしやすくなった」と好評を得ています。

これらの事例から、厨房の暑さ対策は設備の点検・清掃、作業者に合わせた局所冷却など、複数の対策を組み合わせるのが有効と言えます。

厨房が暑い場合の原因を知り、適切に対策しよう

厨房の暑さ対策は、従業員の健康や食品の安全、生産性を守るうえで欠かせません。厨房が暑いと感じる場合、ユニフォームの素材や設備の不具合など、原因を正しく理解し、適切な対策を講じる必要があります。今日からできる工夫を取り入れて、快適で安全な厨房環境を整えていきましょう。

もし、店舗の構造的な問題や設備の老朽化により、暑さ対策が難しいと感じるなら、現在の物件を売却し新店舗に移転する方法もあります。店舗設備をそのまま引き渡す「居抜き売却」であれば、原状回復工事の費用が不要となり、売却時のコストを抑えることが可能です。

「買取の神様」では、飲食店の居抜き買取を専門とする不動産会社として、首都圏・東海・関西・九州エリアでの店舗売却をサポートしています。厨房の設備や内装を適正に評価し、スムーズな売却を実現できるようお手伝いしますので、移転や売却を検討される場合はお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

首都圏在住・ライター歴7年。東京近郊の食べ歩きが趣味です。路地裏にあるような穴場の名店を見つけると嬉しくなります。元マスコミ勤務の経験を活かし、正確で読みやすい情報提供を心がけています。

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