成功しているバーの共通点は、事前準備の徹底です。物件探しから資格取得、各種届出、資金調達まで、開業には多くの準備が必要です。
とくに、限られた資金でのバー開業はリスクをともないます。内装費の追加や届出の不備による開業延期といった想定外の出費は、小資本の事業者にとって致命的になりかねません。だからこそ、開業前の今このタイミングで、必要な資格・届出・資金計画・手続きの流れをすべて整理しておくことが重要です。
本記事では、バー開業に必要な資格や届出、初期費用や運転資金の目安を解説します。また、法令違反を防ぐ注意点や資金を抑えるためのポイントなども紹介するため、バー開業の第一歩として、ぜひ参考にしてください。
バーの開業に必要な資金
「何年くらい貯金すれば開業できるのか?」「いくらくらい借りれば足りるのか?」といった疑問を明確にするためにも、開業にかかる資金を知っておく必要があります。たとえば、一般的な規模のバーをオープンするには、最低でも500万円前後の資金が必要です。
さらに、立地や広さ、内装へのこだわりが増すと、1,000万円を超えるケースも珍しくありません。ここでは、バーを始める際に必要な初期費用と運転資金について、具体的な内訳と金額の目安を紹介します。
初期費用
バー開業に向けて、まずは初期費用の目安を把握することが大切です。初期費用には、物件取得費、内装・外装・設備工事費、什器・備品購入費が含まれます。
まず、物件取得費には、保証金・敷金・礼金・前家賃などが含まれ、一般的には家賃の6ヵ月〜10ヵ月分が必要とされています。
また、内装・外装・設備工事はカウンターや照明、トイレなどを作る工事で、顧客の居心地を決める重要な要素です。デザインにこだわるほど費用は増えますが、居抜き物件を活用すると工事費を抑えられます。
ほかに、営業に欠かせないのが什器や備品の購入です。イスやテーブル、冷蔵庫、製氷機、グラスなどが該当します。中古品の活用によりコストを抑えつつ、質の高い備品をそろえられます。とくに、グラスは割れやすいため、多めに準備しておくと安心です。
運転資金
バー開業を現実的に考え始めた今、もうひとつ忘れてはならないのが運転資金の準備です。初期費用ばかりに意識が向くと、開業後に資金が不足し「オープンできたけれど、運営が続かない」といった事態に陥るリスクもあります。
店舗は始めてからが本番です。そのため、軌道に乗るまでの期間を支える資金が不可欠です。運転資金には、家賃・光熱費・人件費・仕入れ費・広告宣伝費・消耗品費などが含まれます。なかでも家賃は立地によって差が大きく、予算への影響も大きくなります。
また、ストローや紙ナプキンなどの使い捨て消耗品は意外とコストを圧迫するため、資金を見積もる際は注意が必要です。
目安としては、開業後3ヵ月〜6ヵ月分の運転資金の確保が理想とされます。店舗の規模やスタッフ数、場所によって異なりますが、たとえば、月の運営費が50万円の場合は150万円〜300万円程度が必要です。
バーの開業に必要な資格と届出
バーを開業するには、法律で定められた手続きが必須です。手続きを怠ると営業許可が下りず開業が遅れるだけでなく、営業停止処分を受けるリスクもあります。トラブルを未然に防ぐためにも、事前に必要な手続きを正しく理解しておくことが重要です。
必要な資格
フードやお酒を提供するバーでは、食品衛生責任者と防火管理者(防火責任者)の2つの資格が必須です。どちらも法律で義務付けられており、顧客の安全性を確保するための基本的な備えとなります。いずれも数時間〜1日の講習で取得できるため、スケジュールに余裕のあるうちに取得しましょう。
必要な資格
フードやお酒を提供するバーでは、食品衛生責任者と防火管理者(防火責任者)の2つの資格が必須です。どちらも法律で義務付けられており、顧客の安全性を確保するための基本的な備えとなります。いずれも数時間〜1日の講習で取得できるため、スケジュールに余裕のあるうちに取得しましょう。
食品衛生責任者
バーでお酒と軽いフードを提供する際、必要になるのが食品衛生責任者の資格です。食品衛生法に規定される営業者は、食材の扱いや衛生管理に関する基本的な知識がある食品衛生責任者を、各店舗に1人以上配置しなければなりません。多くの場合、オーナー自身が取得します。
また、食品衛生責任者は、衛生管理計画の策定や衛生管理の点検、食品事故への対応などを担います。どのような状況でも安全にお酒やフードを提供するうえで大切な存在です。
食品衛生責任者の資格は、専用の養成講習会を修了することで取得可能です。たとえば、東京都内では都内各地で講習が行われており、1日約6時間の講習を受け、テストに合格することで資格を取得できます。受講料は12,000円(当日現金払い)で、受講後すぐに修了証がもらえます。
なお、すでに調理師や栄養士の資格を保有している方は、講習を受ける必要はありません。食品衛生責任者の資格は、飲食店営業許可の取得に必要なため、開業準備の早い段階で取得しておくと安心です。
出典:東京都保険医療局「食品衛生責任者」(https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/law/sekininsya.html)
出典:一般社団法人東京都食品衛生協会(https://www.toshoku.or.jp/training/)
防火管理者
バーを開業する際は「防火管理者」の資格も忘れてはいけません。収容人員が30人以上の建物では、消防法により防火管理者の選任が義務付けられており、お客様の安全を守るために欠かせない資格です。
防火管理者は、火災を防ぐためのルール作りや避難方法の整備などを行う役割を担います。安心して過ごせる店づくりのためにも、開業前に準備しておきましょう。
資格は、管轄の消防署などが行う講習を1〜2日受けるだけで取得可能です。建物の規模や用途に応じて「甲種」「乙種」があり、費用は7,000〜8,000円程度です。オンライン講習にも対応しているため、忙しい準備期間中でも取得しやすいです。
出典:東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p04.html)
出典:一般財団法人日本防火・防災協会「防火・防災管理講習」(https://www.bouka-bousai.jp/hp/lec_info/guide_bouka.html)
必要な届出
バーを開業するためには、役所へいくつか届出が必要です。届出のタイミングは開業日の前後に行うものが多く、忘れると営業許可が下りず、オープンが遅れてしまうこともあります。トラブルなく営業初日を迎えるためにも、以下の手続きを忘れずに進めておきましょう。
飲食店営業許可
バーでお酒と一緒に軽いフードやおつまみを出す場合は、営業前に飲食店営業許可を保健所から取得する必要があります。食品衛生法で定められた必須の許可のため、飲食店営業許可の手続きをクリアしなければ開業できません。
申請には、店舗の設備がわかる図面や、食品衛生責任者の資格証などが必要です。内装工事を始める前に、まずは設計図を持って保健所に相談しておくとスムーズです。
工事が終わると保健所の現地検査があります。営業者の立ち会いが必須で、基準をすべて満たす場合に営業許可証が交付されます。一方、不備がある場合は修正後、再検査となるため注意が必要です。また、申請費用は地域によって多少異なるため、管轄の保健所に確認が必要です。
参考:東京都保健医療局「食品関係営業届出の手引き」(https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyokatodokede/files/todokede_tebiki202503.pdf)
開業届
バーを個人で開業する場合、オープンから1ヵ月以内に税務署へ開業届を提出する必要があります。提出方法は、窓口への持参のほか、郵送やe-Tax(オンライン)でも可能です。
また、節税を考える場合は、青色申告承認申請書もあわせて提出するのがおすすめです。青色申告が認められると、最大65万円の控除などの税制優遇が受けられます。
ただし、提出には期限があります。
・1月1日〜15日に開業した場合:その年の3月15日まで
・1月16日以降に開業した場合:開業日から2ヵ月以内
期限を過ぎると、その年は青色申告が使えなくなるため注意が必要です。税負担を減らすためにも、早めに準備を進めましょう。
出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm)
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm)
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm)
防火管理者選任届出
防火管理者の資格を取得したあとは、実際に誰を防火管理者に任命したかを消防署に正式に届け出る必要があります。
提出先は、店舗の住所を管轄する消防署です。提出時には、防火管理講習の修了証や避難訓練の計画書などもあわせて必要です。
提出期限は明確に決まっていませんが、選任した際は遅延なく届け出ることが求められています。そのため、営業開始前までに完了させるのが理想です。
出典・東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出書 / 消防計画作成(変更)届出書」(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_02/001.html)
深夜酒類提供飲食店営業開始届
夜12時以降も営業を続けてお酒を提供する予定がある場合は、深夜酒類提供飲食店営業開始届を警察署へ提出する必要があります。
ただし、東京都の一部エリアのように、住宅密集地では条例により深夜営業が制限されている場合もあります。そのため、バーを開業する際は、そもそも深夜営業が可能かどうかの確認が事前に必要です。
参考:東京都例規集「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」(https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00002214.html)
特定遊興飲食店営業許可申請
バーでダンスフロアを設ける、DJイベントや生演奏を行う、あるいはゲーム機を設置して営業する場合は、都道府県の公安委員会に特定遊興飲食店営業許可の申請が必要です。
このような遊興要素や演出を取り入れたいと考えている場合は、自分の店舗が「特定遊興飲食店」に該当するかどうかを事前に必ず確認しておきましょう。計画段階で確認しておくことで、開業後のトラブルを避けられます。
参考:e-gov「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122)
バーを開業するまでの流れ

バーの開業を本気で考え始めたときは、物件探しや人材の確保など、さまざまな準備が必要になります。まず何をすべきかを見極めるためにも、全体の流れを知っておくことが大切です。
ここでは、開業の流れをわかりやすく解説します。理想のバーを実現するために、一歩ずつ着実に準備を進めていきましょう。
1.バーのコンセプトを決定する
理想のバーを形にするためには、どのような店舗にしたいかを明確にすることが大切です。たとえば、バーには以下のようにさまざまなコンセプトのものがあります。
- オーセンティックバー:落ち着いて本格カクテルを楽しめる大人空間なバー
- スタンディングバー:低価格で気軽に立ち寄れるカジュアルなバー
- ダイニングバー:食事にも力を入れた、料理を楽しめるバー
- 映画バー:映像とお酒を楽しめる趣味全開なバー
「誰に来てほしいか」「どう過ごしてもらいたいか」を考えると、店舗のコンセプトが自然と固まってきます。最初に軸を決めておくことで、物件選び・内装・メニューなどあらゆる判断に一貫性がうまれます。
2.店舗物件を探す
理想のバーを実現するには、イメージに合った場所を見つけることが大切です。以下のように、ターゲット層が来やすい立地を選ぶことで、集客力の向上につながります。
・気軽に立ち寄れるスタンディングバー:駅近や繁華街の人通りが多い場所
・静かで隠れ家的なオーセンティックバー:路地裏や住宅街でも魅力的
・仕事帰りに寄ってもらいたい:オフィス街やターミナル駅の近く
店舗物件を探す際は近くにオフィスや住宅、学校があるか、夜に人が集まるエリアかを確認しましょう。また、競合が密集すると差別化が難しくなるため、周囲に似たコンセプトのバーが多いかも確認が必要です。
3.資金を調達する
資金を調達する際は、必要な費用を明らかにしたうえで資金の調達方法を決めるとスムーズです。開業資金としては、物件取得費や内装・設備工事費、人件費などを含め、500万円〜1,000万円程度が見込まれます。
開業資金の調達は、20%程度を自己資金で用意し、残りを融資で補うケースが一般的です。自己資金以外の調達方法には、公的融資や金融機関の融資、助成金などが挙げられます。
ただし、借入金が多すぎると返済負担により経営を圧迫するリスクがあります。自己資金とのバランスを考え、売上予測や運転資金の確保も踏まえた現実的な資金計画を立てましょう。
4.資格取得・届出を行う
開業準備の段階で「いつ・何を・どこに」届け出るかを把握しておくと、手続きに関するトラブルを避けられます。
以下が、バーの開業に必要な資格・届出の一覧です。
必要な資格・届出名 | 必要なタイミング | 所管機関 |
食品衛生責任者 | 開業前 | 保健所 |
飲食店営業許可 | 開業前 | 保健所 |
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書) | 開業後1ヵ月以内が目安 | 税務署 |
防火管理者(防火管理者選任届出) | 開業前になるべく早めに | 消防署 |
深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 営業開始の10日前まで | 警察署 |
特定遊興飲食店営業許可 | 開業前 | 都道府県公安委員会 |
期限付きの手続きもあるため、取得までのスケジュールは早めに確認しておきましょう。
5.お酒の仕入れ先を決定する
バー経営では、お酒の仕入れ先選びが店の個性を大きく左右します。お酒の種類や品質、価格はもちろん、納品の頻度や支払い方法、注文の柔軟さも事前に確認しましょう。
とくに、小さなバーでは大量仕入れが難しいため、少量から対応してくれるかどうかが重要です。近年では、オンラインで注文できる業者も増え、お酒の種類や費用を比較しやすい環境が整っています。試飲会に参加して味を確かめながら、自分のお店に合うお酒を選ぶのもおすすめです。
地元のクラフトビールや限定酒を取り入れれば、他店と差をつけることも可能です。お店のコンセプトやお客様に合わせたこだわりの一杯を提供するために、仕入れ先選びはじっくり進めましょう。
6.スタッフを募集する
バーをスムーズに運営するには、信頼できるスタッフの存在が欠かせません。接客やドリンク作り、片付けに至るまで人手が必要です。
スタッフの募集はSNSや求人サイト、知人の紹介など複数の方法を組み合わせると効果的です。面接ではスキルだけでなく、人柄や顧客と自然に会話できるかも重視しましょう。お酒の知識があり、好印象な接客ができるスタッフは、常連客獲得につながります。
バーを開業できる物件の種類
物件選びは立地と同じくらい、理想のバーづくりに影響するポイントです。初期費用をできるだけ抑えたいのか、内装にこだわりたいのか、それとも早くオープンしたいのか、自分の優先順位によって選ぶべき物件タイプが変わります。
ここでは、バー開業でよく選ばれる「居抜き物件」「スケルトン物件」「リース物件」の特徴を紹介します。理想のお店づくりの参考にしてください。
居抜き物件
居抜き物件とは、前のテナントが使用していたカウンターや冷蔵庫、照明、トイレなどの設備がそのままの状態で残っている物件です。一から内装を作るより費用を抑えられ、予算が限られていても開業しやすいのがメリットです。希望する設備が整った掘り出しものの物件に出会えることもあります。
たとえば、2024年に東京都江東区の門前仲町にオープンしたワインバー「alternative,(オルタネイティブ)」は、元美容室の居抜き物件を活用しています。内装や設備をうまく再利用し、初期費用を大幅に抑えました。
浮いた予算は、独自の空間づくりやクラシックワインのセレクションに使い、落ち着いた隠れ家のような雰囲気を演出しています。
「大きな工事は予算的に難しいけれど、できる範囲で自分の好きな空間をつくりたい」という方には、こうした居抜き物件の活用がおすすめです。
「江東区門前仲町に隠れ家的バー「alternative,」がオープン!
クラシックワインと美容室居抜きで成功した店舗の魅力」

スケルトン物件
スケルトン物件とは、内装がすべて取り除かれた状態で、コンクリートの壁や床がむき出しになっている物件です。そのため、照明の位置からカウンターの高さ、間取りまで、ゼロから設計できます。
一方、スケルトン物件は設備が何もない状態からのスタートなため、電気・水道・ダクト工事など、内装工事に多額の費用と時間がかかります。開業までにじっくり準備期間を取れること、予算配分に余裕を持てることが利用のポイントです。
「自分だけの世界観を形にしたい」「妥協せずに作り込みたい」方におすすめです。
リース物件
リース物件とは、内装やバーに必要な設備がすでにそろっており、すぐに営業を始められる物件です。建物は大家と賃貸契約を結び、設備はリース会社と別の契約をします。そのため、設備は自由に売却・交換できず、数年単位の契約が一般的です。
途中で解約すると違約金が発生するケースもあるため、事前の確認が欠かせません。家賃は高めでも、手間なく開業できる点を考慮すれば、費用対効果の高い選択といえます。
準備にあまり時間が取れない方や、初期費用をできるだけ抑えたい方には、リース物件がおすすめです。
バーの開業時に契約する物件の選び方

物件選びは、バーの集客やランニングコストに影響する大切なポイントです。立地や設備、契約内容によっては、顧客が集まらない、予想外の修理費がかかるといったトラブルが起こることもあります。希望する物件で本当に開業できるかどうかを見極めるために、ぜひ参考にしてください。
立地条件
バーへの集客は物件の立地条件が大きく影響します。いくら内装やお酒の種類が良くても、そもそも人が来ない場所ではその魅力が伝わりません。
たとえば、駅の近くや人通りが多い場所は集客しやすいのがメリットです。オフィス街や飲食店が多い通り沿いの場合は、通りすがりの方も立ち寄りやすくなります。ただし、その分家賃は高くなる傾向にあるため、毎月の費用と売上の見込みをよく考えて選びましょう。
また、立地は必ずしも目立つ場所である必要はありません。どのような顧客に来てほしいかを明確にさせて、その人たちが自然に訪れたくなる場所を選ぶことが大切です。たとえば、静かにお酒を楽しんでもらいたい場合は、落ち着いた住宅街や人通りが少ないビルの地下も検討しましょう。
機能性や設備の状況
バーを運営する際は、スタッフにとって動きやすいレイアウトや、使い勝手の良い設備を整えることが重要です。たとえば、調理や接客の動線が悪い場合や設備が古い場合は、作業効率が下がり、売上にも悪影響を与えかねません。
また、営業許可を取るためには保健所の基準を満たす設備が必要です。手洗い用のシンクや温度管理ができる冷蔵庫、食材を保存する棚など、必要な設備がそろっているかも必ず確認しましょう。
参考:厚生労働省「営業許可種及び設置基準の解説」
(https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000706467.pdf)
階数と看板の位置
初めて来る顧客が迷わず店舗を見つけられるかどうかは、集客に大きく影響します。そのため、物件の階数や看板の見やすさに注意しましょう。
たとえば、1階の物件は通行人の目に留まりやすく、気軽に立ち寄ってもらいやすいのがメリットです。一方、2階以上や地下の物件は、目線に入りにくいため、店舗を見つけてもらうための工夫が必要です。
とくに、バーでは隠れ家的な雰囲気や非日常感を出したい場合に、あえて2階や地下を選ぶことも多々あります。その場合は、エレベーターの有無や建物周辺から物件までの導線を事前に確認しておきましょう。
また、看板の設置場所やサイズ、夜間のライトアップの有無も重要です。とくに夜営業のバーでは、明るく目立つ看板が店の存在を知らせる大切な広告になります。
契約条件
物件を契約する際は、物件の契約内容を入念に確認しましょう。安易な契約は、のちに契約トラブルや余計な出費に発展するおそれがあります。
具体的には、毎月の家賃や共益費が自分の収支に無理なく合っているかを見極めることが大切です。また、契約期間や更新料、保証金・敷金の金額、返金条件も必ず確認しましょう。
さらに、退去時の原状回復の範囲、深夜営業の可否などの禁止事項も、契約書に書かれていることが一般的です。自分が目指すバーの営業スタイルとの相性を判断するためにも事前に把握することが重要です。
バーの開業に関するQ&A
基本的な知識を身につけた今、次はいよいよ開業に向けて動き出す段階です。しかし、実際に準備を始めてみると「これって必要?」「どのタイミングでやるの?」といった疑問がいくつも出てくるものです。
ここでは、バーを開業する際によくある疑問を一問一答形式でわかりやすく解説します。準備の不安を解消し、スムーズにバーの開業を進めるためにも、ぜひご活用ください。
バーを経営するメリットは?
バー経営の一番の魅力は、自分の理想の空間を自由につくれることです。たとえば「好きなお酒をそろえたい」「落ち着いた雰囲気にしたい」「自分らしい接客をしたい」といった希望を、そのまま店舗づくりに活かせます。
また、バーは客単価が高めで食材の無駄も少ないため、飲食業のなかでも利益を出しやすいのもメリットです。常連客がつくと、少人数でも安定した経営が可能です。
さらに、バーにはさまざまな職業や年齢層の顧客が訪れます。毎日の営業を通じて新しい人脈が広がり、思わぬチャンスが舞い込むこともあります。自分のペースで働きつつ好きなことを仕事にできる自由さも、バー経営ならではの魅力です。
ビールグラスにはどんな種類がある?
ビールグラスには、定番のピルスナーグラスからチューリップグラス、IPAグラスなど多種多様な種類があります。
同じビールでも、注ぐグラスによって味わいや香りの印象が大きく変わります。たとえば、キリッとした味わいが特徴のピルスナーには、細長いピルスナーグラスが定番です。のど越しの良さや泡立ちの美しさを引き立ててくれます。
香りを楽しむエール系のビールには、飲み口がすぼまった形状のチューリップグラスがおすすめです。アロマをしっかり閉じ込め、飲むたびに香りが口いっぱいに広がります。
濃厚なスタウトには、くびれのあるグラスがぴったりです。コクのある味わいや香りをしっかりと堪能できます。
ビールの特徴に合わせたグラス選びにより、ビールの味わいをより引き立てられます。顧客に最高の一杯を届けるためにも、グラス選びにこだわってみましょう。
こちらの記事では、ビールグラスの種類について解説しています。
び方のポイントも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

バーの内装デザインの決め方は?
バーの内装デザインを決める際は、まず店舗のコンセプトを明確にし、照明やカウンターなどの各種設備のデザインを検討します。
内装デザインはバーの印象に大きく影響し、照明の色やカウンターの素材、イスの座り心地など、細かい部分が居心地の良さを左右します。
しかし、限られた予算ですべてにお金をかけるのは困難です。そのため、顧客が長く過ごすカウンターや照明には十分に投資し、ストックルームなどあまり目に触れない場所はDIYや中古品を活用してコストを抑えましょう。
とくに、照明は店舗の雰囲気をつくる大切なポイントです。たとえば、少し暗めで温かみのある光を使うと、落ち着いた空間を演出できます。どこを顧客にアピールしたいかを検討し、メリハリのある内装を目指しましょう。
こちらの記事では、バーの内装デザインについて解説しています。
集客アップにつながるポイントや費用を抑えるコツも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

ビールの資格にはどんなものがある?
ビールに関する資格には目的やレベルに応じてさまざまな種類があります。
- ビアアドバイザー:ビールの種類や歴史、注ぎ方などを幅広く学べる
- ビアテイスター:香りや味の違いを見極めるスキルが身につく
- ビアコーディネイター:ビールと料理の相性に特化し、ペアリング提案ができる
バーでは、お酒に合う軽いつまみを出すことも多いため、とくにペアリングの知識があるとメニューの質がぐっと上がります。
ビールのほか、ワインや日本酒など酒類に関する資格は、店舗の個性を打ち出すうえでの強みになります。専門的な知識やテイスティングのスキルを活かして「お酒に詳しい店」としてアピールでき、リピーターの獲得にもつながります。
バーは風営法の対象となる?
バーの大半は、風営法の適用対象です。たとえば、バーでは深夜0時以降も営業することが多いため、深夜酒類提供飲食店の届出はほぼ必須です。客の隣に座ってお酒を注ぐ、または会話をするホステス的な行為がある場合も、風営法の対象になります。
また、照明を10ルクス以下にして暗くしすぎる、5㎡以下の個室を設けると、風営法上の規制に抵触する可能性があります。ほかには、ダーツやDJブースなど顧客に遊興をさせるための設備を導入する場合は、特定遊興飲食店営業の許可が必要です。
開業後にトラブルにならないよう、計画段階から法律を意識して準備を進めましょう。
出典:e-GOV「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条」
(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122#Mp-Ch_1)
こちらの記事では、風営法について解説しています。
違反しないためのポイントも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

まとめ

夢のバー開業、その第一歩は「物件選び」です。居抜き物件・スケルトン物件・リース物件のどれを選ぶかによって、集客力・コスト・法令対応などに大きな影響を与えます。
なかでも「居抜き物件」は、すでにバーとして使われていた店舗を活用できるため、内装費を抑えられるのが魅力です。照明や間取りなどが風営法の基準に沿っている可能性も高く、営業停止処分のリスクを減らせます。また、過去に営業実績があるため、立地としてのポテンシャルも見えやすいというメリットもあります。
ただし注意が必要なのは、以前の店が風営法に違反していた場合、その状態を引き継いでしまうリスクもある点です。だからこそ、物件選びには専門知識を持つ信頼できるパートナーが欠かせません。
居抜きの神様では、飲食店向けの小型物件を中心に取り揃え、バー開業に特化した物件を豊富にご用意しております。独自の情報ルートで集めた独占未公開物件も掲載しております。
開業支援のプロが、あなたの理想やプランに合った物件探しを全力でサポートいたします。無駄なく、失敗せず、自分らしいバーの実現に向けて、今こそ一歩を踏み出しましょう。
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