居酒屋を開業する際、料理やサービスの質だけでなく、外観デザインも重要です。外観は通行人やSNSを通じて、第一印象を決める大切な要素です。どんなに料理が美味しくても、外観が魅力的でなければお客様は足を運びません。
本記事では、初心者でも失敗しない外観デザインの考え方を解説し、低予算で効果的に集客する方法を紹介します。
居酒屋で外観が重要視される理由
居酒屋経営において、外観デザインは単なる「見た目」ではありません。集客力や売上に直結する重要な要素です。ここでは、外観が重視される理由を3つの観点から解説します。
店舗の第一印象を決めるため
外観はお店の「広告塔」として重要な役割を果たします。通行人やネットで店舗を見つけた人が最初に目にするのは、その外観です。
第一印象は強く記憶に残ります。インパクトのある外観であれば、一度見ただけで「行ってみたい」と感じてもらえます。逆に、印象に残らなければ、どれだけ良い料理を提供していても、お客様の選択肢にすら入らない可能性が高いです。
インターネット検索が主流の今、外観写真が来店の決め手になることも少なくありません。また、SNSで「映える」外観は、無料で宣伝してくれるお客様を生むこともあります。
外観は店舗の顔であり、強力な集客ツールのひとつなのです。
店外から店内の雰囲気をつかんでもらうため
初めて訪れる居酒屋では、お客様は「雰囲気」「価格」「混雑具合」などに不安を感じます。外観から店内の様子が見えることで、これらの不安を軽減できます。
ガラス面積を広くしたり、扉を開放的にデザインすることで、店内の活気や清潔感、混雑状況が確認でき、安心感を与えます。また、繁盛している店には自然と引き寄せられるため、集客にも効果的です。
ただし、高級志向や隠れ家的な雰囲気を求める場合は、店内の一部だけ見せる手法が特別感を演出します。
店舗の魅力や独自性を伝えられるため
外観デザインは、店舗のコンセプトやメニューを視覚的に伝える重要な手段です。
たとえば「高級志向」の居酒屋なら、落ち着いた色調の外壁と洗練された看板で上質な雰囲気を演出し「大衆志向」の居酒屋なら、明るい照明や赤提灯で賑やかさを表現できます。
また、料理のジャンルも外観で伝えることが可能です。沖縄料理ならシーサーや琉球ガラス、和食なら木材や暖簾を使うことで、ターゲット顧客にアピールできます。
競合店が多い地域では、独自性を外観で表現することが差別化の鍵となり、お客様に「自分の好みに合った店かも」と感じてもらえます。
人気のある居酒屋の外観に共通する特徴
実際に集客に成功している居酒屋には、外観デザインにおける共通点があります。これらを理解し、自店舗に取り入れることで、より多くのお客様を惹きつけることができます。
インパクトがある
通行人の視線を引きつけるためには、インパクトのある外観が必要です。ここでの「インパクト」とは、派手さだけでなく、個性的でコンセプトに調和したデザインです。ユニークな看板や照明、目を引く色の組み合わせが効果的です。
照明はとくに重要で、夜間営業の場合、遠くから目立つ明るさと温かみのある光が集客力を高めます。周囲に配慮し、住宅街では暖色系で調整しましょう。
季節感のある装飾やコンセプトに合ったオブジェを配置することで、差別化を図り、興味を引くことができます。
コンセプトを感じさせる
人気店の外観は、店舗のコンセプトが明確に伝わるデザインです。お客様は外観を見るだけで、店の雰囲気や体験をイメージできます。
高級居酒屋なら、洗練された素材（石材や高級木材）を使い、シンプルで上質なデザインで特別感を演出します。大衆居酒屋では、明るい照明や活気のある色使い、豊富な情報提示で賑やかさと入りやすさを表現します。
料理のジャンルに合わせた素材選びも重要です。和食なら木材や竹、イタリアンバールならレンガや金属素材を使うことで、外観が料理の世界観と一致し、期待に応える店づくりができます。
清潔感がある
清潔感は居酒屋の外観で最も重要な要素です。どれだけデザインが優れていても、汚れた外観ではお客様は足を踏み入れません。
外観がきれいだと、店内の衛生状態や料理の品質に対する信頼感が生まれます。一方、汚れた外壁や乱雑な入口は、不安を与え、入店のハードルを上げます。
清潔感を保つためには、日々のメンテナンスが重要です。外壁や看板の清掃、照明の点検、入口周辺の整理整頓など、細部にまで気を配りましょう。とくにエントランス部分は念入りに清掃し、汚れを落としやすい素材（タイルやレンガなど）を選ぶと、メンテナンスが楽になります。
安心感がある
清潔感に加え、安心感を与える外観デザインは集客力を高める重要な要素です。安心感とは、お客様が「ここなら入っても大丈夫」と感じる雰囲気のことです。
オレンジや暖色系の色は人に温かみと安心感を与えるため、外壁や照明にこれらの色を使うと親しみやすい印象を作れます。緑色も安心感を与え、植栽や緑色の装飾で自然な温かみを演出できます。
店内の様子が外から見えることで、入店前の不安を解消できます。ガラス面を広く取り、店内を見せることで、「賑わっている」「怪しくない」という安心感を提供できます。
木製のドアや植栽など、自然素材を使うと癒しと親近感を与え、入りやすい印象を強めます。
情報を提示している
人気の居酒屋は、外観から積極的に情報を発信しています。通行人やネット検索で店を見つけた人が、入店を判断するために必要な情報を外から確認できるようにしているのです。
具体例としては、料理の内容や価格を入口付近のメニュー看板やディスプレイで明示することが挙げられます。流動客は価格が不透明だと入店をためらう傾向があるため、こうした情報提供は集客力に直結します。
「本日のおすすめ」や「ハッピーアワー」などのお得情報も、入店の動機になります。また、手書きの看板で店の温かみを伝えると親近感が湧きやすくなります。
営業時間や定休日、席の種類も見やすい場所に掲示すると、安心して入店を決めやすくなります。
居酒屋の外観を決める際のポイント
ここからは、実際に外観デザインを決める際の具体的なポイントを解説します。これらのポイントを押さえることで、集客力の高い外観を実現できます。
市場調査をする
外観デザインを考える前に、市場調査が不可欠です。ターゲット層やポジションを明確にし、競合との差別化を図りましょう。
調査項目は、店舗周辺の環境、競合店の外観、お客様の動線です。周辺の年齢層や職業、通行人の多い時間帯を把握することで、ターゲットが絞れます。
競合店の外観を分析し、自店舗との違いを見つけることが重要です。同じコンセプトの店が多い場合、異なるアプローチで印象に残る外観を作れます。
お客様の動線も確認しましょう。駅からの経路や視認性をチェックすることで、看板の配置や外観の見え方が明確になります。
外壁の配色や素材にこだわる
外壁は店舗の印象を大きく左右する重要な要素です。コンセプトに合った配色と素材を選ぶことで、理想的な雰囲気を作れます。
和風なら木質系や土壁風、暖色系の落ち着いた色が適しています。モダンな雰囲気なら、金属系素材やコンクリート調、シックな色（グレーやブラック）が良いでしょう。
配色はコンセプトやターゲット層に合わせて選びましょう。高級志向ならダークトーン、カジュアル志向なら明るい色を選ぶと効果的です。
メンテナンスしやすい素材を採用する
素材選びでは、デザイン性、耐久性、コストのバランスを考慮することが大切です。とくに飲食店では、汚れやすい環境に合わせて、メンテナンス性を重視する必要があります。
【各素材のメリット・デメリット】
| 素材 | メリット | デメリット |
| タイル | 汚れが付きにくく、水洗いで簡単に清掃できる | 初期費用が高いことがある |
| サイディング | メンテナンス性が高く、長持ちする | デザインに制約がある場合も |
| 木質系 | 温かみがあり、自然な雰囲気を演出できる | 定期的なメンテナンスが必要 |
| 金属系 | 耐久性があり、現代的なデザイン | 初期費用が高い |
飲食店では油煙や雨による汚れが付きやすいため、メンテナンスしやすい素材を選ぶことで、長期的に美観を保ちつつコストを抑えることができます。
エントランス部分には、タイルを使うことをおすすめします。耐久性が高く、汚れも簡単に拭き取れるため、日々の清掃がスムーズです。とくにお客様が最も近くで見る場所であるため、清潔さを保つ素材選びが重要です。
また、色選びもメンテナンス性に影響します。グレーやブラウン、アイボリーなどの中間色は、汚れが目立ちにくく、きれいな印象を保ちやすいです。
照明の色味や光量を調整する
照明は外観の印象を大きく変える力があります。とくに夜間営業が中心の居酒屋では、照明の使い方が集客力に大きく影響します。
一般的に、
- 約6000K ： 昼光色（青みのある強い光）
- 約5000K：昼白色（緑を感じる自然な光）
- 約3000K ：電球色（オレンジ系の暖かい光）
とされており、色温度によって演出効果が大きく変わります。
たとえば、居酒屋の入口周辺には温かみのある電球色が最適です。これにより、歓迎感を与え、入店の心理的ハードルを下げることができます。
一方、外の看板に使われる内照照明では、電気効率の面から電球色が選ばれることはほとんどありません。たとえば、居酒屋の看板では効率を重視して昼光色が使われることが多い傾向があります。
また、厨房では集中力を高める効果のある昼光色が使われることが多いです。
また、業種によっても照明の色選びは変わります。たとえば肉屋では、ディスプレイに昼白色を当てることで、肉の赤みが引き立ち、より鮮やかで美味しそうに見えます。
単純に赤色を足すと「赤色かぶり」が起きて全体的に赤くなってしまい、かえって肉そのものの赤みが埋もれてしまいます。そのため、補色である緑色を使うことで、赤色かぶりを避けながら肉の赤みを効果的に引き立たせることができます。
光量はコンセプトに合わせて調整しましょう。店内と外観の照明が調和していないと、お客様に違和感を与えてしまいます。たとえば大衆酒場では明るめの照明で活気を、落ち着いた雰囲気を求める場合は抑えめの光量に設定します。
ただし、照明の設計には専門的な知識が必要なため、プロに相談するのがもっとも確実な方法です。
エントランスや看板を工夫する
エントランスは「お店の顔」として、お客様に強い印象を与える重要な部分です。コンセプトを視覚的に表現し、たとえば和風居酒屋なら暖簾や格子戸、沖縄料理店ならシーサーや琉球ガラスを使うと効果的です。
ガラス戸を使ったエントランスは、店内の様子を見せながらも、メニューや価格情報を表示できるため、一石二鳥です。お客様は外から店内の雰囲気と価格帯を同時に確認でき、入店の判断がしやすくなります。
看板はメイン看板と補助看板を使い分け、店名とコンセプトを伝え、入店のきっかけになる情報を提供します。手書きの看板は、温かみを伝え、記憶に残りやすいツールです。
内装とコンセプトを統一する
外観デザインがどれだけ魅力的でも、店内に入った際に「思っていたのと違う」とお客様が感じてしまえば、リピーター獲得にはつながりません。外観と内装のコンセプトを統一することは、顧客満足度を高め、再来店を促すために重要です。
たとえば、高級感のある外観に大衆居酒屋風の内装や、カジュアルな外観に堅苦しい内装は、違和感を生み出し、居心地が悪い空間となります。
色使い、素材、照明、装飾などで一貫性を持たせることで、コンセプトが統一され、信頼感とブランド価値が高まります。これにより、お客様の満足度が向上し、リピーター獲得につながります。
こちらの記事では、居酒屋の開業について解説しています。
開業の手順や必要な備品・資格も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
居酒屋の外観は、単なる見た目ではなく、集客力と売上に直結する重要な要素です。店舗の第一印象を決め、コンセプトや独自性を伝え、安心感を与えるデザインは、成功する居酒屋経営の基盤となります。清潔感や情報提示、インパクトなどをバランスよく取り入れ、ターゲット層に響くデザインを実現しましょう。
外観デザインを考える際は、市場調査から始め、外壁、照明、エントランスを戦略的に設計します。外観と内装のコンセプトを統一することで、リピーター獲得につながります。
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