居酒屋の経営が「難しい」といわれる理由、潰れる店・勝ち残る店の特徴を解説
居酒屋は飲食店の中でも特に競争が激しく、経営が「難しい」といわれています。せっかく開業しても潰れてしまう店も多い一方、長年地域の人々に愛されて勝ち残っている店もあります。 この記事では、居酒屋の経営が「難しい」といわれる理由を紹介し、潰れる店の特徴や勝ち残る店の特徴を解説します。
居酒屋とは
居酒屋とは日本式の大衆向け飲み屋のことで、日本酒やビール、酎ハイといったアルコール飲料や料理を提供する飲食店です。その規模は個人経営の小さな店から、全国展開する大型チェーン店まで多岐にわたります。提供される料理は焼き鳥や海鮮など多種多様。お酒を飲まない人でも比較的安価で楽しめ、会社員の飲み会や友人同士の集まりなど幅広く利用されています。
現在は少なくなっていますが、かつては店の前に赤い提灯を掲げたり、縄のれんを下げたりしていた店が多く、それらは居酒屋の象徴とされてきました。そこから「赤提灯」「縄のれん」と呼ばれることも。近年は、観光客にも人気があり、日本の食文化を気軽に体験できる場所として注目されています。
居酒屋の経営は難しい?
居酒屋を含む飲食業界は開業のハードルが低く新規参入しやすい反面、廃業率も高い業種です。中小企業庁のデータによると、「宿泊業・飲食サービス業」は他の業種に比べて開業率(6.9%)も廃業率(5.0%)も最も高いことが明らかになっています。
一般的に飲食店は開業から3年以内で約70%が廃業、5年で約80%が廃業、10年では90%以上が廃業といわれています。飲食業界の競争は非常に激しく、その厳しさは他の業種と比較しても突出しています。
居酒屋の経営が「難しい」といわれる理由
ここからは、居酒屋の経営が「難しい」といわれる理由を具体的にみていきましょう。なぜ居酒屋の廃業率が高いのかを理解し、対策を講じることが長く経営を続けられるカギになります。
競合が多い
居酒屋をはじめ飲食店の店舗数は多く、競合が多いことが理由のひとつです。
飲食店は基本的に「食品衛生責任者」の資格があれば誰でも開業可能で、新規参入のハードルは低いといえます。そのため多くの店舗がひしめき合い、競争が激化する傾向に。特に居酒屋は他店との差別化が難しく、価格競争に陥りやすいという特徴があります。「安くておいしい」は当たり前で、価格を上げることが難しいのが現状です。
料理の味やお店のコンセプトなど、他店にはない魅力がなければ長く存続するのは難しいでしょう。
売上が安定しない
飲食店は人件費や原材料費の割合が大きく、さらに環境変化が利益に与える影響が大きいため、利益が安定しないという課題があります。飲食店の利益率は10%程度、他業種に比べて低いといわれています。
例えば、雨天など悪天候が続くと客足が減り、1日の売り上げに大きく影響します。また感染症が流行した際には、多くの飲食店が営業自粛を余儀なくされ、大きな打撃を受けました。このように売上の予測が立てにくく、安定性に欠けることが、経営を難しくする理由のひとつです。
初期費用や運用コストが大きい
飲食店を開業するには、店舗物件にかかる費用、内装や設備、厨房機器の購入など、多くの初期費用が必要です。開業後は家賃や人件費、光熱費、食材費といったコストが毎月発生します。なかでも人件費と食材費は売上変動の影響を受けやすく、常に変動費として意識し管理する必要があります。
開店当初は、初期費用を回収し、毎月の運営コストを支払う必要があるため、経営が軌道に乗るまでには時間がかかるのが一般的です。開店当初から順調に利益が出れば良いですが、思うように売り上げが出ない可能性もあるでしょう。初期費用を抑える工夫や、資金計画をしっかり立てることが、経営の安定につながります。
労働時間が長く、経営者の負担が大きい
飲食業界では、昼営業、夜営業、仕込みと労働時間が長くなりがちです。さらに経営者は、店舗運営だけではなく、経営戦略の策定、人材管理、経理業務といった多岐にわたる業務をこなす必要があります。
常に「どうすればお客様が来てくれるのか?」「どうすれば利益を上げられるのか?」を考え続けなければなりません。そのため、経営者には十分な休息時間も確保しにくいのが現状です。
できるだけ早い段階でしっかりと休息の取れる環境を整えることも、居酒屋の経営を続ける上で重要なポイントです。
人材が不足している
居酒屋ははじめ飲食業界は、休日が少なく、長時間労働になりがちなのに給与水準が低いといったイメージが根強く、人材の確保が難しい業界とされています。さらに、研修期間が短く、従業員の離職率も高いことから、慢性的に人手不足に悩まされている店舗も少なくありません。
居酒屋では「安くておいしい」が当たり前とされており、人件費を上げることは難しいとされていますが、給与が良くても労働環境が悪ければ離職率は高く一方です。人材の育成と労働環境を整えることが重要です。
潰れる居酒屋の特徴
続いては経営がうまくいかずに閉店してしまう居酒屋の特徴について解説します。潰れるお店の特徴を知ることで、自身の経営に活かせるでしょう。
立地が良くない
居酒屋経営にとって、立地条件は非常に重要です。立地が悪いと、どれほど良い料理やサービスを提供しても、顧客は来てくれません。具体的には、以下のような立地条件は集客に苦戦する傾向にあります。
- 人通りが少ない:人目につきにくく、新規顧客の獲得が難しい
- 競合店が多い:競争が激しく、自店の魅力が埋もれてしまう
- 駐車場がない、駅から遠い:アクセスが悪く、顧客が来店しにくい
- ターゲット層と合わない:例えばオフィス街にファミリー向けの居酒屋など
メニューに魅力がない
メニューは、顧客がお店を選ぶ上で重要な要素です。メニューに魅力がないと、リピーターの獲得は難しいでしょう。以下のようなメニューでは顧客を飽きさせてしまい、特にチェーン店との競争で不利になってしまう可能性があります。
- 価格帯と料理の質が見合わない:「コスパ」が低く、顧客の満足度が低くなる
- メニューのバリエーションが少ない:毎回同じメニューで飽きてしまう
- 競合店との差別化ができていない:他の店と似たようなメニューばかりでは自店を選ぶ理由がない
- 季節感や地域性がない:新鮮味を感じられない
メニューは、常に改善を重ね、顧客のニーズに合わせたものを提供することが大切です。
サービスの質が良くない
料理がおいしくても、サービスの質が低いと顧客は不満を持つでしょう。以下のようなサービスになっていないか、チェックしてみてください。
- 料理の提供に時間がかかる:顧客は待ちくたびれてしまう
- 店員の接客態度が悪い:横柄な態度や無愛想な接客では、顧客を不快な気持ちにさせる
- お店の雰囲気が悪い:清潔感のない店内や活気のない雰囲気は、顧客の満足度を下げてしまう
- 予約システムが不親切:電話予約しか受け付けていないなど、予約しにくいと顧客は来店を諦めてしまう
顧客が快適に過ごせるよう、常にサービスの改善を心がけることが大切です。店内の清掃や接客方法などを見直し、顧客を第一としたサービスを提供しましょう。
資金計画が明確ではない
居酒屋経営において、資金計画は非常に重要です。どんぶり勘定で経営をしていると、いつの間にか赤字になっていた、ということも少なくありません。以下のような場合は、資金計画が甘いといえます。
- 損益分岐点を把握していない:固定費をカバーするために、いくらの売上が必要なのかを把握していない
- 外的要因への対策を講じていない:天候不順や感染症の流行など、売上に影響を与える外的要因への対策を考えていない
- 経営計画や費用管理が不十分:固定費や仕入れ費用の増加に対して、売上が追い付かない
- 初期費用を抑えられていない:開業時の資金不足が、経営を悪化させる原因になっている
- 無駄なコストを見直していない:売上が上がっているにも関わらず、無駄な費用や資金繰りの悪化で利益が上がらない
資金計画をしっかり立て、無駄なコストを見直すことが経営を安定させるために重要です。
居酒屋の経営を長く続けるには?勝ち残る居酒屋の特徴
潰れる居酒屋がある一方で、長く勝ち残っている居酒屋もあります。居酒屋経営を長く続けるポイントは、コンセプトの明確化、集客に力を入れること、お金の動きの理解、従業員のモチベーション向上です。さらに改善しつづけることも大切。それぞれを解説します。
コンセプトを明確にする
居酒屋を長く経営するためには、コンセプトの設定が欠かせません。勝ち残る居酒屋は、明確なコンセプトを持っています。コンセプトとは、お店の方向性やテーマを具体的に示すもの。お店の個性であり、事業の根幹となるもので、ターゲットの絞り込みにもつながります。
コンセプトが不明確だと、どのようなシチュエーションで利用できる店なのかが伝わらず、集客が難しくなるでしょう。コンセプトが明確であれば、店の外装や内装、メニュー、接客方法などに統一感が生まれます。顧客満足度を高め、リピーターの獲得につながります。
競合店との差別化を図るためには、ざっくりとした方向性を決めるだけでなく、さらに独自性を深掘りし、「この店ならでは」の強みを打ち出すことが重要です。コンセプトを明確にすることは、長期的な繁盛店になるための第一歩です。
集客に力を入れる
居酒屋を長く経営するためには、集客に力を入れることも不可欠です。競争の激しい飲食業界。料理がおいしいだけでは顧客は集まりません。
- オンライン集客:ホームページ、SNS、グルメサイトなどを活用し、お店の情報を発信して新規顧客を獲得する
- オフライン集客:チラシ、店頭のディスプレイ、地域イベントへの参加などを通し、地域住民にアプローチする
- リピーター戦略:ポイントカード、会員制システムなどを導入してリピーターを増やす
- 口コミ戦略:顧客に満足してもらい、良い口コミを広げてもらう
集客戦略は自店に合った方法を見つけ、継続的に行う必要があります。
お金の動きを理解する
居酒屋に限らず、経営するにおいてお金の流れを理解することは非常に重要です。良いサービスやメニューを提供しても、収支バランスが悪ければ利益は望めません。以下にポイントをまとめます。
- 開業前の資金計画:自己資金、借入額、初期投資の回収期間などを明確にする
- 日々の売上とコストの管理:売上、原材料費、人件費、光熱費などを常に把握する
- FLコストの理解:食材費(Food cost)と人件費(Labor cost)を合計したFLコストを把握し、適切なバランスを保つ
- 損益分岐点の把握:損益分岐点を知ることで、売上目標を設定しやすくなる
お金の動きを理解することで、目標の売上高を設定し、適切なコストをかけることが可能になります。
従業員のモチベーションを向上させる
居酒屋の経営には、従業員のパフォーマンスが大きくかかわってきます。動線を改善するなど働きやすい環境を整え、マニュアルの整備や適切なトレーニングを行い、適切な報酬を提供することで、従業員のモチベーションを高められます。
従業員が「長く働きたい」と思える職場環境を作ることで、サービスの質を維持しやすくなり、結果としてお客様満足度の向上につながります。
継続的に改善する
勝ち残る居酒屋は、現状に満足することなく常に改善を続けています。
- 顧客要望の把握:アンケートやサイトの口コミなどを通して顧客の意見や要望を把握し、サービスに反映させる
- メニューの改善:季節ごとにメニューを更新したり、顧客の意見を反映させたりしてメニューを改善する
常に改善を続けることで、お客様の満足度を高め、競争の激しい居酒屋業界で生き残ることができるでしょう。
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