カフェ開業というのは、多くの方にとって人生の一大イベントです。夢の実現のために、オーナーとしては当然、店舗の見た目や雰囲気にこだわりを込めたいはずです。
とくに内装は、お客様の居心地やスタッフの働きやすさに直結する重要な要素といえます。そこで本記事では、カフェの内装について、基本の取り組みや具体事例、意識したいポイントを解説します。
カフェの内装デザインの基本

はじめに、カフェの内装デザインにおける基本の3項目を解説します。これらを丁寧に検討することが、お客様に選ばれる店舗作りの第一歩となります。
ターゲットを設定する
カフェの内装を考えるうえで、最も重要なのはターゲット設定です。開業する以上は「お客様に喜ばれるカフェ作り」を目指すものですが、あなたの店舗にとって、お客様とは具体的にどういう人でしょうか。まずは、理想の顧客像を明確にしましょう。
カフェのコンセプトを決める
カフェの内装では、ターゲット設定と同じくコンセプト設定も重要です。コンセプトは、店舗運営の軸となる考え方や方向性を意味し、お客様に提供する体験や価値につながります。
たとえばスターバックスの「サードプレイス」は、家庭でも職場でもない、自分らしく過ごせる第三の居場所を提供するという考え方です。この理念を実現するために、店内はナチュラルな色を基調とし、柔らかい色合いの照明を使うなど、内装にも一貫性を持たせています。
流行るカフェは、センスだけで内装をオシャレにしているのではなく、まず魅力的なコンセプトを持ったうえで、それとマッチするようデザインしています。内装を考える前にコンセプトを立て、店舗の方向性を決めておきましょう。
内装デザインのテイストを決める
ターゲット(誰に)とコンセプト(どんな体験や価値を)が定まったら、それらの考え方を表現できる内装を考えましょう。
内装といっても、ナチュラル・レトロ・和風・ポップ・インダストリアルなど、テイストはさまざまです。ときには、テイストの候補が複数挙がることもあります。その場合、導線や予算、近隣カフェとの差別化ポイントなどをあらためて検討しましょう。
内装のテイストでとくに大事なのは、店舗全体での統一感です。ホールと化粧室でテイストが異なったり、釣り銭受け皿や傘立てなどの小物が全体の雰囲気と合っていなかったりすると、カフェの魅力を伝えきれなくなります。細部まで一貫した内装デザインを心がけましょう。
こちらの記事では、カフェの開業について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
カフェをおしゃれにする内装アイデア8選

人気店から学ぶことは多くあります。客足が絶えない理由を内装デザインの面から分析すると、自分の店舗に活かせるポイントが見つかるはずです。以下に8つのアイデアを事例付きで紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
サスティナビリティーを意識したナチュラルデザイン
地球環境への配慮が重要視される昨今、店舗の内装にもサスティナビリティーが求められるようになりました。サスティナビリティーな内装とは、リサイクル性・省エネルギー性・耐久性が高く、環境負荷のかかりにくい素材や製品を用いた内装を指します。
ナチュラルやアンティークといったテイストと相性が良く、これらの様式では無垢材や植物、リサイクル品などを違和感なく溶け込ませることが可能です。
渋谷・代官山・恵比寿の中間程の「WOODBERRY BAKERY」は、ナチュラルで暖かみのある店構えです。柔らかい色合いの木材を使用した店内は「地球にも身体にも優しい焼き菓子とパン」というコンセプトとマッチしています。

懐かしさを感じるレトロな雰囲気を取り入れる
レトロテイストの内装は、過去の良さを再評価する近年の潮流に合致しており、SNS映えする空間としても注目されています。庶民的かつ人情味のある昭和レトロ、近代的で高級感のある大正レトロなどスタイルはさまざまです。
また、モノの経年変化が味になるという点で、経営を続ければ続けるほど内装の魅力が増していくのも、レトロデザインの強みといえるでしょう。
五反田にある「トゥジュール デビュテ」は、レトロに現代的テイストを取り込んだ好例です。クラシカルな什器や調度品、暗めの照明が調和し、店内にはノスタルジックな趣とともに、バーのような落ち着きと品格が漂います。

店内の至る所に猫!カジュアル×アニマルで愛らしく

かわいらしい動物を取り入れた内装は、女性や子どもからはもちろん、休日をゆったりと過ごしたい男性からも人気を集めています。
錦糸町のカフェ「ねこづき」は、満月を思わせるイエローに黒猫を描いた、愛らしい丸看板がお出迎えしてくれます。アクセントクロスや木材を組み合わせたカジュアルな店内の至る所には、猫の置物やイラスト、絵本が飾られており、愛らしくほっとする空間に仕上げられています。
また、人気メニューのパンケーキには、猫の焼き印が押されています。このように、内装とメニューのコンセプトを統一させるのも、人気店の工夫として挙げられます。

明るく楽しいポップなデザイン
パステルカラーを取り入れたポップな内装は、利用客に明るくポジティブな印象を与えます。気取らない空気感もあり、自然体で過ごしてもらえることも魅力です。
原宿の「旬゛喫茶 パンエス」は、コンテナハウスを組み合わせたコンパクトな店舗で、カラフルでかわいい内装が人気を博しています。フォトジェニックな内装を目当てに訪れる人も少なくありません。
内装に使う色は、明るくなるほど、そして種類が増えるほど無秩序で雑多な印象になりがちです。しかしパンエスは、色合いを優しく抑え、インテリアの数を絞るというメリハリによって、ハイカラな雰囲気まで感じさせます。

ヨーロピアンデザインのクラシカルで洗練された空間
ヨーロピアンデザインを取り入れた、クラシカルで洗練された内装は、高級感とスタイリッシュ感の両立を求めるカフェに最適です。アンティーク調の家具や装飾品、豪華な照明、重厚な木製カウンターなどを組み合わせると、格調高さが際立ちます。
代官山の「ミケランジェロ」は、このアイデアの好例です。「古き良きイタリアのカフェを再現」と公式に謳う通り、開放的な店内にはシックな家具類や調度品が整然と配置され、悠々とした大人のための空間が広がっています。
日頃の喧騒を忘れ、ゆったりと特別なひと時を過ごしたい人に選ばれる内装デザインです。

銭湯をカフェにリノベーション!落ち着く和の空間
和のテイストを取り入れたカフェは、日本人には馴染み深く落ち着く雰囲気を、インバウンド客には新鮮で非日常的な雰囲気をもたらします。
そんな和風カフェのなかでも、入谷の「rébon Kaisaiyu」は珍しい事例です。地元で愛された元銭湯をリノベーションした店舗で、他店にはないストーリーが息づいているのが特長です。
内装を見ると、天井や梁、柱時計などに下町の銭湯の面影が残っていて、どこか懐かしさを感じさせます。ナチュラルモダンなテーブルやチェアが、レトロな建物と自然に調和し、新旧の魅力が共存する店内に仕上げられています。
このようなデザインの工夫は、古民家や蔵のリノベーションにも活用できるでしょう。

シックでモダンな内装は大人デートにもぴったり
シックでモダンな内装は、スマートで気品あるムードを作り出します。モノトーンを基調にし、ビビッドカラーをわずかに取り入れるのがコツです。
事例として、表参道の「allée」をとりあげます。ここの内装は、茶褐色の壁とグレーのテーブル、サンドカラーのソファというモノトーンのインテリアが落ち着きを演出するなかで、真っ赤なカウンターチェアがアクセントとして映えています。小さな店舗ですが、巧みな色使いが店内に広がりをもたらしているのもポイントです。
内装の大枠は落ち着いた雰囲気にしつつ、小粋さも出したい場合には、同店の内装デザインが参考になるでしょう。

隠れ家カフェで特別感を演出
隠れ家カフェとは、日常の忙しさや騒がしさから解放されるような、プライベート感に富んだ店舗を指します。内装のテイストは、ナチュラルやアンティーク、ジャジーなど多岐にわたりますが、いずれも利用客がゆっくりできる落ち着いた雰囲気です。
銀座の「椿サロン」は、淡い白系の天井や柱、柔らかな暖色系の照明がリラックス感を醸し出す、まさに隠れ家のような穏やかなカフェです。ホール中央にはグランドピアノが置かれ、その存在が店内に高級感を添えています。
また、採光性の高い大きな窓や、ゆとりのある客席配置など、利用客が心地よく過ごせる工夫も凝らされています。

カフェの内装デザインのポイントは?

ここからは、おしゃれなカフェの内装を作るためのポイントを解説します。ご自身のカフェのイメージを膨らませながらご覧ください。
席数とレイアウトを計画する
お客様にとって居心地がよく、スタッフにとって作業がしやすい空間を実現するには、適切な席数とレイアウトが欠かせません。
席数は、一般的な飲食店の場合、客席スペース1坪(3.3㎡)につき1.5〜2席というのが目安です。席数が多すぎると店内が窮屈になり、少なすぎると売上確保が難しくなります。この席数を基準に、続けてレイアウトを検討します。
肝心なのは、お客様やスタッフの動線です。お客様が入口から席まで、そして席から化粧室やレジまで、スムーズに辿り着けるよう設計しましょう。同時に、通路幅を充分に確保するなどして、スタッフの迅速な対応をサポートする工夫も求められます。
このように、店舗の広さに合わせて席数を定め、お客様とスタッフの動きをシミュレートしながらレイアウトを決めるようにしましょう。
最新のトレンドを取り入れる
人々の関心を集めている価値観や様式、つまりトレンドを内装に取り入れると、現代風で洗練された印象を与えられます。お客様の記憶にも残りやすく、SNSでの自然な口コミ獲得にもつながります。
インテリアにおける2025年のトレンドは、温かみのあるナチュラルなデザインや、木と金属といった異素材を組み合わせたデザインです。情報過多で忙しい毎日のなか、ほっと一息つける空間が求められているといえるでしょう。
ただし、トレンドを追いすぎると、本来のコンセプトがぼやけてしまう可能性があります。トレンドを取り入れる際は、あくまでコンセプトを引き立てるためのものということを意識しましょう。
カラーと素材を選ぶ
内装のカラーと素材は、店舗の雰囲気だけでなく、お客様の居心地や食欲にも影響します。
たとえば、赤やオレンジは活気のある印象を与え、食欲を刺激するとされていますが、使い方によっては賑やかすぎる印象を与えてしまうのがネックです。青は涼しげで澄んだ空間を演出できる一方、食欲を減退させる効果も持っています。
また、同じ系統の色でも素材次第で印象が変わります。たとえば茶色系の場合、木はナチュラルで温かいイメージ、革はシックで高級なイメージという具合です。
最適なカラーと素材は、店舗のターゲットやコンセプトによってさまざまです。店舗運営の軸に沿った、一貫性のある選択を意識しましょう。
インテリアにこだわる
ソファやテーブル、窓といった目立つ部分だけでなく、装飾や小物のような細部にまでこだわることで、カフェ空間の質は格段に向上します。
たとえば、壁を華やかにするウォールデコレーションや、リラックス感を演出する観葉植物などは定番です。これらは入れ替えがしやすいため、季節やイベントに合わせて変化させるのもよいでしょう。
また、テーブルのメニュー表、チェアの足元の荷物かご、レジの釣り銭受け皿、出入り口の傘立てなど、小物もカフェの魅力を引き立てる要素です。店舗の世界観と合った品選びを行い、お客様の体験を盛り上げましょう。
照明で雰囲気を演出する
照明も、店内のムードを左右する要素の一つです。種類・明るさ・デザインの3つの軸で、店舗に合った照明を選びましょう。
種類の例は、天井埋め込みで空間をすっきりさせるダウンライト、天井から吊り下げて空間に立体感を持たせるペンダントライト、特定の部分をピンポイントに照らすスポットライトなどがあります。
照明の明るさは、照射対象1㎡あたりの照度を表す「lx(ルクス)」という単位で表され、カフェの場合は客席で300〜500lxが一般的です。また、光の色を示す色温度は、暖かみがあってリラックス効果のある低色温度が向いています。
種類と明るさを決めたら、デザインにも注目しましょう。曲線的なシェイプの照明で柔らかい雰囲気を出したり、シンプルなライン照明でスタイリッシュさを押し出したり、店舗のコンセプトに合わせた演出が可能です。
まとめ

今回はカフェの内装について、基本の取り組みや具体事例、意識したいポイントを解説しました。
たくさんのアイデアを得るために、できるだけ多くのカフェを訪問してみましょう。そして、訪れた店舗のコンセプトを考え、内装の設計思想にも思いを巡らせてみてください。自身のカフェでも使えるポイントが見つかるかもしれません。
また、忘れてはならないのが予算です。理想を追求するあまり、費用が膨らみすぎると計画そのものが難しくなります。
そこで、コストを抑えつつ魅力的な内装を実現する方法として、居抜き物件の活用も検討してみてはいかがでしょうか。前の店舗の設備を活かせば、工事費用を抑えられ、浮いた費用を内装に回せます。
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