初心者必見!飲食店の座席の目安と計算方法・選び方を解説

飲食店の開業を検討されている方にとって、座席数の設定は大きな課題のひとつです。座席数は売上規模や回転率に直結し、店舗経営の成否を左右する重要な要素となります。

座席の種類を正しく理解し、適切な算出方法を把握したうえで、効果的にレイアウトを設計することができれば、収益性と顧客満足度を両立した店舗運営に近づくことが可能です。

本記事では、飲食店の座席数について「基本的な考え方」から「実践的な設計ポイント」まで解説します。

目次

飲食店で使用する座席の種類

飲食店に設置される座席は、主に次の4種類に分類できます。

  • カウンター席
  • テーブル席
  • ボックス席
  • 個室

それぞれの座席には特性があり、適した客層や利用シーンが異なります。採用する座席の種類や比率は、店舗の雰囲気や顧客満足度だけでなく、売上や回転率といった経営指標にも直結します。

まずは基本となる4タイプの座席を正しく理解し、自店のコンセプトやターゲット戦略に合致する組み合わせを設計することが重要です。

カウンター席

カウンター席は、一人や少人数の顧客を迎えるのに適した座席として、多くの飲食店で取り入れられています。厨房に面して配置することで、調理の様子を演出できる点も大きな特徴です。とくに小規模店舗においては、限られたスペースを有効活用し、回転率を高める手段として有効です。

【カウンターの高さ一覧表】

種類高さの目安特徴適した業態
ローカウンター70~75cm落ち着いた雰囲気を演出高級店、客単価アップを狙う店舗
ミドルカウンター85~90cm標準的で幅広く対応可能多様な業態に対応
ハイカウンター100~105cm回転率を重視できる居酒屋、立ち飲み、短時間利用

一人あたりに必要なスペースの目安は、大衆居酒屋なら50~60cm、高級店なら80cm程度です。お客様同士の距離が近い場合は、椅子間隔の調整やパーティションの設置により、快適性を維持しながら効率的な座席配置が可能です。

とくにカウンター席は、限られたスペースで効率的に座席数を確保できる有効な手段です。回転率の向上にも寄与するため、小規模店舗を計画する事業者にとって導入価値の高い座席形態といえます。

テーブル席

テーブル席は複数人での食事に適しており、飲食店における主力の座席形態です。とくにレイアウトや組み合わせの柔軟性が高く、幅広い業態で活用されています。

主な種類は次の4つです。

種類特徴適したシーン・効果
長方形テーブル席もっとも一般的な形。人数調整がしやすい2~6人の利用に対応可能。幅広い業態で活躍
丸テーブル席顔を見合わせやすく会話が弾む中華料理店やカフェなど、団らんを重視する店に最適
コーナーテーブル席店舗の角地を活用できるデッドスペースを解消し、省スペース化に有効
ソファーテーブル席高級感があり居心地がよいゆったりした滞在を求める顧客やファミリー層向け

さらに可動式テーブルを導入すると、客数に合わせて席を調整したり、テーブルを連結して大人数に対応したりすることが可能です。貸切パーティーの際には、テーブルや椅子を一時的に撤去して広い空間をつくることもできます。

一方で、テーブル席は広いスペースを必要とするため、設置できる席数に限りがあります。また、奇数グループの利用時には、空席が出やすい傾向があります。これらを踏まえて、他の座席とのバランスを考慮したレイアウト設計が望ましいでしょう。

ボックス席

ボックス席は、長椅子にテーブルがセットになった席で、ゆったりとくつろげる空間を演出できます。ファミリーレストランや焼肉店、カフェなど幅広い業態で採用されています。

ボックス席の最大の魅力は、プライベート感の演出です。ファミリー層や女性グループなど、ゆっくりと食事を楽しみたい客層に高い人気があります。椅子の背もたれが高く設計されることが多く、隣席からの視線を気にせず食事できる環境を提供します。

さらに通路側に目隠しを設置すれば半個室のような空間を演出できます。

ただし、ボックス席のみで構成すると少人数客の利用時に空席率が高まりやすく、結果として回転率の低下を招くリスクがあります。したがって、カウンター席やテーブル席と組み合わせることで効率性と快適性をバランスさせる設計が重要となります。

個室

個室はほかの座席と比べてもっとも高いプライベート空間を提供する座席です。特別な食事や高級層をターゲットとした業態に適しています。

個室には以下の3つの種類があります。

種類特徴適したシーン・効果
完全個室壁と扉で完全に仕切られた空間最高レベルのプライバシーを提供。接待や重要な商談に最適
半個室壁の上部やドアがない設計適度な開放感を保ちながらプライベート感を演出。カジュアルな記念日利用に向く
掘りごたつ個室和食店向けの伝統的なスタイル日本の伝統的な食事スタイルを提供。和の雰囲気を重視する店に人気

ただし、個室は設置に広いスペースを要し、必然的に座席数が減少します。回転率も低くなりがちなため、客単価とのバランスを慎重に検討する必要があります。設置費用もほかの座席より高額になる点も考慮しましょう。

テーブル席との組み合わせにより、個室の特別感をより際立たせる戦略も効果的です。

飲食店の座席の目安と計算方法

適切な座席数の決定は、飲食店経営成功の重要な要素です。3つの主要な計算方法を理解し、店舗に最適な方法を選択しましょう。

計算の前提として、厨房とダイニングフロアの面積比率を理解することが不可欠です。業態別の目安は以下のとおりです。

  • 高級レストラン(厨房30~40%、ダイニング60~70%):フルサービスで調理時間が長い業態
  • 一般的な居酒屋(厨房20~30%、ダイニング70~80%):標準的な調理工程の業態
  • ラーメン店・カフェ(厨房10~20%、ダイニング80~90%):調理工程が簡単で回転率重視の業態

1坪当たりの座席数を軸に計算する

もっともオーソドックスな計算方法です。「客席坪数×1坪当たりの座席数」で算出します。

1坪当たりの座席数目安は、業態により異なります。

  • 高級店:1.5~1.7席(ゆったりとした空間演出)
  • 一般店:2席(標準的な配置)
  • 回転率重視店:2.5~2.7席(効率的な配置)

具体的な計算例を見てみましょう。全体10坪で厨房面積比20%のカフェの場合は、以下のとおりです。

  • 客席坪数=10坪×80%=8坪
  • 座席数=8坪×2席=16席

重要な注意点として、エントランス、通路、トイレなどの共用スペースも考慮する必要があります。実際の客席配置可能エリアは、計算値より少なくなることを念頭に置きましょう。

従業員の人数を軸に計算する

座席数を設定する際の代表的な基準は「スタッフの人数×10席」とされています。たとえばスタッフ3名の場合、30席程度が適正規模と考えられます。

より柔軟な考え方として「スタッフ1人当たり5~10席」という幅を持った設定も有効です。これは提供するメニューの内容や接客方針によって必要な人員負荷が変動するためです。

ここで留意すべきは、スタッフ数とサービス品質・人件費とのバランスです。人員が不足すれば接客やオペレーションの質が低下するリスクがあり、過剰であれば人件費負担が利益を圧迫します。

最適な人員配置を前提とした座席数の設計こそが、持続的な収益性確保のポイントです。

店舗の売上を軸に計算する

「目標売上÷客単価÷回転数」で算出する方法です。

たとえば、目標売上50,000円、客単価1,000円、回転数2回転の場合は以下のとおりです。

例)50,000円÷1,000円÷2回転=25席

ただし、この計算式だけでは不確定要素が多く、正確性に限界があります。より精度を高めるため、客席稼働率を考慮した計算が重要です。

改良された計算式は「客単価×座席数×客席稼働率×回転数」です。客席稼働率は一般的に60~70%程度とされています。

例)客単価1,500円×20席×70%×2回転=42,000円(日売上)

このように、客席稼働率を考慮することで、売上シミュレーションの精度は大きく向上します。

さらに、計算を行う際には出店エリアの特性調査も欠かせません。たとえば、一人客が多い立地か、グループ利用が中心かを把握することで、より現実的な稼働率を設定することができます。

こちらの記事では、飲食店開業について解説しています。
開業に必要な準備や資金も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

飲食店の座席を配置する際のポイント

座席配置は売上、顧客満足度、オペレーション効率に直接影響する重要な要素です。4つの重要ポイントを理解し、最適な配置を実現しましょう。

バランスよく配置する

多様な客層に対応できるバランスの取れた座席配置は、安定した店舗経営の基盤となります。そのためには、各座席タイプが「滞在時間」と「回転率」に与える影響を理解することが欠かせません。

  • カウンター席:滞在時間が短く、回転率が高い
  • テーブル席・ボックス席・個室席:滞在時間が長く、回転率が下がりやすい

実務においては、以下のような運用が効果的です。

  • 1~2名の客はカウンター席に案内し、回転率を確保
  • グループ客にはテーブル席やボックス席を提供し、顧客満足度を向上

この使い分けにより、デッドスペースを抑え効率的な客席利用を実現できます。

客単価を上げる

座席数の拡大が難しい場合、売上維持・拡大の有効な手段は客単価の向上です。経営判断に直結する具体的な施策は次のとおりです。

  • セットメニューの充実
  • 食べ比べ・飲み比べメニュー
  • 原価率の低いメニュー開発

また、居抜き物件を活用すれば、初期投資における内装費を大幅に抑制しながら、質の高い空間を確保できます。余剰資金をメニュー開発やサービス改善に振り向けることで、客単価向上につながる戦略的な投資配分が可能となり、経営の安定性と収益性を同時に高められます。

回転数を上げる

とくに客単価の低い業態では、回転率の向上が利益確保の重要な要素となります。

回転率改善は、顧客の待機時間をいかに短縮するかにあります。注文から料理提供までの時間を短縮するためには、食券システムの導入、ピークタイム限定メニューの採用、入店待ちの段階での事前オーダー受付などが有効です。

加えて、効率的なバッシング(退店後の片付け)も欠かせません。スムーズな声かけ、スタッフ間の円滑な連携、そして顧客に不快感を与えない配慮との両立が求められます。

さらに、セルフオーダーシステムやテーブル会計システムを導入することで、オペレーション効率化とスタッフ負担軽減を同時に実現できます。

ただし、これらのシステム導入にはランニングコストがともないます。人件費削減効果や業務効率化の効果と比較し、利益改善につながる投資かどうかを見極めることが不可欠です。

店内のレイアウトも意識する

レイアウトは顧客満足度と店舗運営効率の双方に直結する重要な要素です。

顧客動線の確保が最優先です。入店から座席、トイレ、会計、退店までのスムーズな流れを実現することで、快適な食事体験を提供できます。同時に、スタッフが料理提供やバッシングを効率的に行える動線確保も重要です。

プライバシーと圧迫感のバランス調整も必要です。テーブルや椅子の詰めすぎは圧迫感を生み、顧客満足度を損ないます。適切な間隔確保により、リピーター獲得につながる居心地のよさを演出しましょう。

コンセプトをレイアウトに反映させることで、競合との差別化も実現できます。店舗の特色を空間デザインに落とし込み、記憶に残る店舗を目指しましょう。

狭小店舗では、デッドスペースの有効活用が重要です。角地には長方形テーブルやコーナーテーブルを配置し、スペース効率を最大化しましょう。

コロナ禍対応については、農林水産省のガイドラインに準拠した配置が必要です。

  • テーブル間隔1m以上の確保
  • カウンター席のパーティション設置
  • 真正面配置の回避
  • グループ間の距離確保

これらの対策は感染症対策としてだけでなく、顧客の安心感向上にもつながる重要な取り組みです。

飲食店で使用する座席の選び方

座席選びは、店舗の成功を左右する重要な決定です。3つの主要な観点から、最適な選択を行いましょう。

店舗の雰囲気

座席の選定にあたっては、まず店舗コンセプトとターゲット層を明確にすることが大切です。座席配置は、顧客体験だけでなく、収益構造や運営効率にも直結するため、戦略的な判断が求められます。

回転率を重視するカフェやラーメン店では、カウンター席を中心としたレイアウトが効果的です。一人客の入れ替わりがスムーズになり、限られた面積でも効率的な収益確保が可能となります。

一方で、滞在時間を重視する高級店や接待需要のある店舗では、完全個室の配置が適しています。特別感を演出できるため、高単価設定と顧客満足度の向上につながります。

もっとも重要なのは「ターゲット層が何を求めているのか」を徹底的に調査・分析することです。顧客ニーズに基づいた座席設計こそが、開業成功を実現するためのポイントとなります。

店内のスペース

限られた面積をどう使うかは、店舗経営の収益性を左右します。理想はデッドスペースをつくらない配置です。とくに角地は空きやすいため、コーナーテーブル席や長方形テーブルを設置して有効活用するとよいでしょう。

小規模な店舗では、カウンター席を中心に構成することで、座席数と回転率を同時に高められるケースも少なくありません。図面を丁寧に検討し、最大限の座席確保を目指すことが大切です。

ただし、席数を増やすだけでは逆効果になることもあります。通路幅や座席間隔が狭すぎると圧迫感が生まれ、顧客満足度を損ないます。席数と居心地、その両方を両立させるバランスが求められます。

予算

座席にかかる費用は開業時の初期投資に直結するため、予算に応じた現実的な選択が欠かせません。費用を抑える場合には、テーブル席とカウンター席の組み合わせが有効です。シンプルな構造で設置コストを抑えつつ、多様な客層に対応できます。

一方、個室席は設置費用が高く、広い面積を必要とします。さらに回転率の低下要因にもなるため、開業時の導入は慎重に検討すべきです。

リスクを抑える方法としては、段階的な投資が挙げられます。まずはテーブル席を中心にスタートし、経営が軌道に乗った段階で個室を増設する戦略を取れば、資金負担を分散できます。

また、テーブル席はレイアウト変更がしやすいため、開業後に市場の反応を見ながら配置を調整することも可能です。柔軟性を活かした設計により、初期投資を最小限に抑えながら将来の展開に備えることができます。

まとめ

飲食店の座席選びは、売上や集客、顧客満足度に直結する重要な要素です。カウンター・テーブル・ボックス・個室といった座席の特性を理解し、スタッフ数や売上目標などを基準にした計算方法を用いることで、自店に適した座席数を算出できます。

配置においては、バランス、客単価向上、回転率向上、レイアウトの4つのポイントを意識し、店舗コンセプトに最適な選択を行いましょう。

飲食店開業を成功させるためには、初期投資の効率化も重要な要素です。居抜き物件を活用すれば、座席や内装工事の費用を抑えつつ、最小限の改装で理想的な店舗を実現できます。

居抜きの神様」では、独占・未公開物件を多数取り扱い、座席計画から物件選びまで、開業準備を総合的にサポートしています。効率的で収益性の高い店舗づくりを目指す方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

居抜き物件のことなら「居抜きの神様」に任せるのじゃ

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