美味しいお酒と料理を提供する居酒屋は、さまざまな顧客に楽しんでもらえるように、多種多様な業態で経営しています。メニューをはじめ、外装や内装、スタッフの制服など、工夫できるポイントは豊富です。
しかし、アイデアを推し進めるだけでは、愛される居酒屋にはできません。居酒屋経営を長く続けるには、個性のあるコンセプトが重要です。今回はこれから居酒屋を経営する方に、コンセプトの決め方やコツなどを紹介します。
居酒屋のコンセプトが重要な理由
居酒屋には、気楽に楽しめる立ち飲み居酒屋、リーズナブルな価格設定の大衆居酒屋、落ち着いて会話を楽しめる個室居酒屋、テーマパークのような雰囲気を大切にしている居酒屋、地方の郷土料理と地酒を提供する居酒屋など、さまざまな種類があります。
末永く愛される居酒屋を経営するためには、コンセプトが不可欠です。飲食業界のなかでも居酒屋はコンセプトが多様化しており、ライバルも多いです。経営する居酒屋の魅力を分かりやすく伝えなければ、顧客は来店する価値を感じません。
また、コンセプトを決めることで、提供するメニューや値段、立地、店内の雰囲気などを効率的に決められるでしょう。
居酒屋のコンセプトを決める方法
居酒屋経営を成功させるには、コンセプトが左右すると言っても過言ではありません。コンセプトを明確にせず着手してしまうと、第一印象と実際の店内の雰囲気が一致しなかったり、立地の割に価格が高すぎて悪いギャップが生まれたりする可能性があります。
コンセプトを決める際は、アイデアを出すことから始めます。アイデアは、あくまでコンセプトを決める要素のひとつです。一方コンセプトはアイデアからもう一歩踏み込み、顧客が居酒屋に足を運ぶ理由に直結します。
居酒屋のコンセプトを決める際は、自分のみで考えるだけでは不十分です。アイデアのヒントになる情報を集めたり、明確な手順を定めたりすることで、適切なコンセプトが円滑に決められます。
飲食業界のトレンドや動向を調べる
飲食業界のトレンドや動向を調べることで、コンセプトのヒントが得られます。実際に飲食店や居酒屋へ足を運ぶほか、テレビや雑誌、インターネットなどの幅広いメディアを利用することでも情報収集が可能です。
メディアで話題を集めていたり、注目度が高かったりするお店には、必ず成功に至ったセオリーがあります。ひとつでも多くの学びを得るためには、多くの成功事例に触れることが重要です。
出店予定地にどんなお店、メニューが繁盛しているか確認する
立地に応じて、狙える客層は異なります。たとえばオフィス街ならサラリーマンやOL、大学が近いエリアなら学生層など、目指すコンセプトに大きな影響を与えます。
既存の居酒屋の人気メニューも確認しておきましょう。学生がリーズナブルにお腹いっぱい食べられる山盛りオードブル、女性客の注目を集めていそうなSNS映えのするカクテルなど、客層に合わせて人気メニューの傾向も絞られていくでしょう。
また、居酒屋や飲食店だけでなく、他業界のお店もチェックすることも有効です。たとえばアパレルやエステ、美容室など、一見居酒屋とは関係ないお店にこそ意外なアイデアが眠っている可能性があります。
7W2Hを意識する
コンセプトを決めるには「7W2H」の考えを用います。7Wは「Why・When・Where・What・Who・Whom・Which」2Hは「How・How much」を指しており、5W1Hより細分化してお店の目標を決めていく考え方です。
ひとつずつ詳細に考えることで、店づくりの主軸となるコンセプトをしっかりと確立できます。ブレずに居酒屋の方向性を決められることはもちろん、斬新な経営戦略や新たな発想を生むことにもつながります。
Why:なぜ
「Why」は、なぜ居酒屋を開業するのかといった目的を掘り下げる工程です。開業は、曖昧な動機のまま進めていくと必ず壁にぶつかります。
現在の動機が「お酒が好き」「楽しい場所をつくりたい」といった精密さに欠けるものなら、なぜお酒が好きなのか、なぜ楽しい場所をつくりたいのかと自問自答していくと求める答えに近づけるでしょう。
「地方で口にした地酒がおいしかったから」「出張で立ち寄った居酒屋でとてもよいおもてなしを受けたから」など、自分が居酒屋に求める価値や顧客が来店する動機となる回答を導きだせます。
When:いつ
「When」は、いつ居酒屋を開業するのかといった時期を掘り下げる工程です。開業のフローは決して少なくありません。
コンセプトを決める事前準備のあと、物件探しから申し込み、引き渡しまでに約2か月、内装や外装工事で最長約2か月、工事から引き渡しまで約1週間と年単位の見通しが必要です。物件や人材を確保できてから動くのでは、計画が破綻しやすくなります。
大型物件や居酒屋の建物を1から建てる場合は、数年単位の計画になる可能性もあります。着実に居酒屋開業に向けて進めるためにも、受け身の姿勢ではいけません。明確な開業日を決めることで、物件探しや人材確保に本気で打ち込めるでしょう。
Where:どこで
「Where」は、どのエリアで居酒屋を開業するのかといった場所を掘り下げる工程です。立地条件は、居酒屋開業において重要な役割を担っています。
居酒屋といえば、仕事帰りなどでフラッと立ち寄れる点も大きな魅力です。気楽さがアピールできるにもかかわらず、駅から遠かったり、車でしか行けなかったりするアクセスでは、顧客は立ち寄りにくいと感じてしまいます。
また、提供予定のメニューや価格帯を考慮して、想定する客層に合うエリアを検討しましょう。最寄り駅から徒歩何分かかるか、どんな年齢層の人物が何の目的で利用するエリアなのか、交通手段は何かといったイメージで、ターゲットを具体的に考えることが大切です。
What:なにを
「What」は、居酒屋でどんなメニューを提供するのかといった具体的な設定を掘り下げる工程です。内容や値段はもちろんですが、料理やお酒、ソフトドリンクの種類や数も考えます。
料理や酒のこだわり、魅力を知ることはコンセプトを決める観点でも重要です。どのような調理法でコストや保存期間を把握するほか、どこの産地で原価率はいくらになるかといった数字も考えながら、想定する客層に応じて明確に検討していく必要があります。
Who:だれが
「Who」は、居酒屋経営を誰と一緒にやるかといった人材について掘り下げる工程です。居酒屋経営をたったひとりで進めていくことはできません。
お店の規模に合わせて雇う社員とアルバイトの人数を決めたり、ホールと調理を分担したり、居酒屋の雰囲気と照らし合わせて外見、年齢、性格などをイメージしましょう。
Whom:だれに
「Whom」は、開業する居酒屋において、どのような客層をターゲットにするのかを掘り下げる工程です。たとえば、30代の会社員で1人当たりの支払いは約4,000円まで、仕事終わりに立ち寄れる18時オープン、ラストオーダーは翌朝に響かない23時など、具体化します。
客層が浮かび上がってくると出店エリアや値段も決めやすくなるため、曖昧になっていた項目を明確にすることが可能です。
Which:どれを
「Which」は開業する居酒屋において、どのメニューを目玉にするか検討する工程です。定番のドリンクとフードのセットメニューをはじめ、ランチメニュー、平日限定メニュー、女子会メニューなどを考えます。
目玉メニューのポイントは、顧客から質問された際に「なぜウリにしているのか」を答えられるかです。居酒屋の顔とも言えるメニューをしっかり生み出せるように、食材の産地、値段、SNS映えする見た目などをコンセプトと一緒に練っていきましょう。
How:どのように
「How」は居酒屋開業後に、どのように経営していくかを決める工程です。また、お店の宣伝といった広報活動を考えることも含まれます。
広報活動は、お店のアピールポイントをキャッチコピーとして言語化するほか、宣伝方法、広告の打ち方なども検討する必要があります。アピールポイントが明確になれば、メニューやお店の名前を決める際にもコンセプトの主軸が定まっていくでしょう。
How much:いくらで
「How much」は、居酒屋を開業するための資金やメニューの値段を決めていく工程です。開業資金とは、工事にかかる費用や店舗を構えた場所に応じた家賃などが該当します。
家賃はランニングコストなので、出費のなかでも巨額です。出店エリアや店舗の規模によって、大幅に変わってくるコストのため、下調べは徹底的に行いましょう。
提供するメニューの各値段は、原価、仕入れ先、顧客の回転数などを計算することで算出できます。1日の想定売上が出ることで、競合店と比較しながら戦略を練ることが可能です。
コンセプトを決める際のコツ
コンセプトを決める方法はひとつではありません。さまざまな手法や工程がありますが、段階的に進めることでコンセプトを明確にしていけます。
順番が変わることや同時進行することもありますが、大まかな流れを把握するだけでも十分です。順を追って考えることが、コンセプトを上手く決めるコツです。
開業の動機を言語化する
最初のステップは、なぜ居酒屋を開業するのかを言語化し、その情熱や考えを整理することです。例えば、自分の店を持つことなどの夢や、地方の美味しい食材を広めたいという目的があるでしょう。
言語化のポイントは、自分の経歴を振り返ることです。老舗料亭で働いていた、バーで働いていたといったキャリアも、動機に直結している可能性があります。
また「なぜ」を繰り返していくことも言語化に効果的です。なぜ居酒屋なのか、なぜ今開業したいのか、なぜこのエリアの出店を検討しているのかといった掘り下げも、開業の動機を見つけやすくします。
開業の動機が明確になると、資金繰りでも便利です。開業資金の融資や借入は開業の動機を説明する場面が想定されるため、必ず準備しておきましょう。
自分の得意分野を把握する
自分の得意分野を把握することは、顧客に提供する価値を考えることにつながります。たとえば日本酒に詳しくなれたり、実家のような安心感のある接客が受けられたりといった魅力です。
顧客に魅力を感じてもらえる価値を見つけるには、自分の得意分野から探すのが効率的です。もともと日本酒が好きだったり、ホスピタリティに関する勉強や資格を取得していたりといった強みは、有利にはたらきます。
コンセプトシートを活用する
顧客に提供できる価値が言語化できたら、開業の動機と一緒にコンセプトへ落とし込むことが可能です。7W2Hでコンセプトの基盤も固まっているため、コンセプトシートを用いて要素整理を進めていきましょう。
コンセプトシートはテンプレートを配布しているWebサイトもありますが、手書きでも作成可能です。最初に紙の中心に基本となるコンセプトを書き、周辺は居酒屋を構成する要素で囲みます。
立地、物件、客層、想定される来店の動機、接客やサービスの内容、目玉となるメニュー、値段、内装、外装、支払い方法、宣伝や広報に分けて記入してみましょう。文章形式ではなく、箇条書きで端的に記入したほうがわかりやすくまとめられます。
設計したコンセプトを何度も見直す
設計したコンセプトを何度も見返すことは、コンセプトの致命的な欠陥を防ぎます。なかでも開業の動機とコンセプトにズレがないかといった確認は極めて重要です。
開業の動機とコンセプトで整合性がとれていない場合は、開業準備を進めるにあたって理想と現実のギャップになるおそれがあります。また、コンセプトとはお店から顧客に向けたメッセージです。
きちんと言葉として伝わるか、イメージを抱いてもらえるかの観点が抜けていると、お店の価値や魅力が伝わらない可能性があります。理想の居酒屋を全体としてとらえるだけでなく、分野ごとに見返すことで矛盾にも気付きやすくなるのがコンセプトシートの利点です。
知見のある人に見てもらうこともひとつの方法です。適宜修正を加えながら試行錯誤し、よりよいコンセプトを目指して磨きをかけていきましょう。
こちらの記事では、小さな居酒屋経営について解説しています。経営の注意点や必要な費用も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
居酒屋を開業するには、物件確保から内装、外装工事まで諸々の初期費用がかかります。のちにかかる経営費用を考えると、コストは可能な限り抑えておきたいです。
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