飲食店を開業する場合、食品衛生責任者の配置が義務付けられています。こじんまりした雰囲気のよいカフェから、大規模なレストランにいたるまで、飲食店を開店する際には一律必要となります。
今回は食品衛生責任者について解説するとともに、取得方法も紹介していきます。どんなことができる資格なのか、どんな人が持つべきなのかについても触れていくので、ぜひ目を通してください。
食品衛生責任者とは
はじめに、食品衛生責任者の役割と、そのほかの資格との違いについて見ていきます。これから取得を検討している方は、しっかりチェックしていきましょう。
主な役割
主な役割として、食品衛生を守る責任があることが挙げられます。食品を保管・管理する設備の衛生状態を確認・維持したり、不衛生なところがあれば改善したりします。
たとえば、冷蔵庫の性能・機能が老朽化により低下している場合、食品衛生責任者は経営者に買い替えを提案しなくてはなりません。また、長年使ったまな板やその他の調理器具は細かいキズがつき雑菌が繁殖しやすいため、新調するよう提案するのも役割です。
また、食材の加熱のチェックや、鮮度などの状態をチェックすることも含まれており、食品に関する衛生面全般を管理すると考えてもよいでしょう。
そのほか、働くスタッフの健康管理も役割のひとつです。体調不良のスタッフは休んでもらうよう指導し、手洗いや清掃のチェックを行うために管理表を作成することもあります。よく飲食店のトイレに清掃チェック表があるのは、この衛生管理のためのものです。
こうした衛生管理ができていないと、食中毒など、営業停止になりうる事態を引き起こす可能性が出てきます。
そうなればお店の信用や経営にも影響するため、専門知識を備えた有資格者が責任をもって管理する必要があります。加えて、法律を守る意味でも、飲食店には必ず食品衛生責任者を1名設置しなければなりません。
食品衛生管理者との違い
食品衛生責任者とよく似たものに、食品衛生管理者というものがあります。食品衛生管理者は、食品の製造や加工をする工場で必要な資格であり、製造・加工の過程でとくに衛生に配慮が必要な食品・添加物に対し、衛生管理を行う役割を担う国家資格です。
同じ会社でも、製造・加工をする施設ごとに食品衛生管理者を置かなければならないと食品衛生法で定められており、選任した日から15日以内に、設置や変更の届け出を都道府県知事・保健所に届け出ることになっています。
単に食品の衛生管理を行うだけでなく、各所への届け出が必要な、重要かつ責任あるポジションといえるでしょう。また、とくに衛生上の考慮が必要な食品は、次のように食品衛生法施行令第13条で決められています。
- 全粉乳(その容量が1,400グラム以下である缶に収められるものに限る)
- 加糖粉乳
- 調製粉乳
- 食肉製品
- 魚肉ハム
- 魚肉ソーセージ
- 放射線照射食品
- 食用油脂(脱色又は脱臭の過程を経て製造されるものに限る)
- マーガリン
- シヨートニング及び添加物(法第十一条第一項の規定により規格が定められたものに限る)
食品衛生責任者の上位資格のため、食品衛生管理者の資格を保有していれば、両方の役割を担当できます。
食品衛生責任者の資格に関して
食品に関する重要な資格だけに、1度取得すれば一生ものの資格として使えるのか、定期的な更新が必要なのか気になるところです。
また、転勤で県外に出たときに、変わらず資格を提示できるのでしょうか。ここでは、食品衛生責任者の資格について解説していきます。
更新は必要?
食品衛生責任者の資格は、更新や有効期限・資格の失効はありません。ただし都道府県によっては、取得から数年経過している場合、実務講習の再受講が必要な場合もあります。これは、食品に関する最新情報を習得する目的があり、国では定期的な再受講を推奨しています。
受講費用はおおむね10,000円程度です。休憩時の飲食費用も考えて、少し多めの費用を用意しておくとよいでしょう。詳細な受講スケジュールなどは、各都道府県に問い合わせて確認することをおすすめします。
どこでも有効?
平成9年以降に取得した方は、取得した都道府県以外のエリアでも有効な資格です。現在は実務講習の時間が全国で統一されたため、1度取得してしまえば、全国どこでも活用できます。
ただ、再受講する際は自治体により若干条件が異なるので、事前に確認をおすすめします。どのエリアに住んでいても受講できる自治体もあれば、市内に職場があることを条件としている自治体もあるからです。
実務講習は国から各自治体にガイドラインが配布されていて、合計6時間以上の講習が必要です。6時間以上といっても1日で修了可能な内容となっています。テキストが配布されるので、それに沿って進めていけば、とくに問題なく取得できるでしょう。
食品衛生責任者の取得方法
食品衛生責任者の資格を取得するには、どんなステップがあるのでしょうか。また、優遇措置などがあるのかも気になります。ここでは、資格の取得方法について紹介していきます。
食品衛生責任者養成講習を受講する
これから食品衛生責任者となる場合は、各都道府県で実施する食品衛生責任者要請講習会を受講しなければなりません。主に、食品衛生学、食品衛生法、公衆衛生学を学び、最後に確認試験が行われます。
これらの講習は全部で6時間程度、費用は10,000円程度となっています。費用や講習会スケジュールは自治体で異なるので、余裕を持った確認が必要です。
一例として、東京都では一般社団法人東京都食品衛生協会が食品衛生責任者養成講習会を行っているため、問い合わせ窓口は一般社団法人東京都食品衛生協会となります。このように、自治体により講習実施団体が異なるので、事前に調べておくようにしましょう。
調理に関する免許を持っている場合は窓口に申請する
食品衛生責任者の資格において、次の免許や資格を保有する方は、講習が免除になります。
- 調理師
- 製菓衛生師
- 栄養士
- 船舶料理士
- 医師
- 歯科医師
- 薬剤師
- と畜場法に規定する衛生管理責任者
- と畜場法に規定する作業衛生責任者
- 食鳥処理衛生管理者
- 食品衛生管理者又は食品衛生監視員の資格要件を満たす免許や資格を保有する人
このほかにも免除になる免許や資格があり、自治体によって免除を認める内容が異なります。たとえばふぐの調理の免許では、自治体により免除対象・対象外がわかれています。
また、平成9年より前に食品衛生責任者を取得した人は、講習免除の対象外となるので注意が必要です。平成9年以降に食品衛生責任者の資格を取得する人は、上記の免許や資格を保有している場合、各自治体の所定の窓口に申請すれば講習が免除されます。
飲食店の開業には防火管理者も必要
飲食店を開業する際は、食品衛生責任者を1名設置しますが、そのほかにも防火管理者の設置が必要です。防火管理者とは、営業する建物内での火災発生防止および、火災が起きた際に被害を最小限にとどめ速やかに避難させるための資格です。
消防計画を作成し、定期的な消火設備の点検・整備や、定められた消火訓練・避難訓練を実施するのが主な役割です。
飲食店における防火管理者は、客席が30席以上ある場合に選任が必要です。資格を取得するには防火管理者講習を受講しなければならず、甲種と乙種の2種類があり、営業する建物の規模や収容人数でいずれかの講習を受講します。
開業予定の飲食店が、たとえば隠れ家的小規模カフェで、収容人数が30人に満たない場合は、防火管理者を選任しなくても問題ありません。
そのほか、飲食店開業にあたって必要不可欠とされるものは数多くあります。なかでも重要な、事業計画書についてこちらの記事で解説しています。
【まとめ】食品衛生責任者の役割
今回は、食品衛生責任者について紹介しました。飲食店を経営する場合、食品の安全と衛生、設備や調理器具の管理など、責任を持ってやらなければなりません。当たり前のようでも、万が一食中毒が発生すれば営業停止などの処分を受け、お店の信用も失うことになります。
お客様が安心して来店できるよう、衛生面の管理は責任を持って取り組みたいところです。これから開業予定の方は、早めに講習を受けて食品衛生責任者を取得しておきましょう。
また、飲食店は店舗の立地や収容人数など、資格取得以外にもたくさんの準備が必要です。もしも、物件を探しているなら市場に出回っていない物件をチェックしてみませんか。
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