【飲食店向け】事業計画書の書き方と作成する際のポイントを解説

2023.08.05

▼監修者情報
税理士法人 丸木公認会計士事務所 パートナー / 公認会計士・税理士 丸木 章道

新しく自身の飲食店を開く場合、新規開店と運営のプランを可視化したものに、事業計画書があります。これは、事業者がどのような考えで、どういったお店をオープンさせて、どうやって営業していくのかを具体的に計画した証明になります。

金融機関から融資を受ける場合も含めて、どのような見通しを立てているのかが客観的にわかる計画書であるため、丁寧に作られていればいるほど信用につながるでしょう。どのように事業計画書を書くとよいか、書き方及び作成のポイントについてお話していきます。

目次

事業計画書とは

事業計画書とは、新たな事業を開始する際に作成する計画書です。主な目的は、事業の目標やビジョン、戦略、マーケット分析、財務計画などの明確化と可視化です。

具体的には、創業の動機や経営者の略歴、取扱商品やサービスの内容とそのセールスポイント、取引関係となる仕入れ先や顧客の見通し、資金調達方法から収益見込みなどまで、詳細に記載します。

事業計画書は、一般的には経営者や起業家が事業の方向性を明確にし、資金調達や投資家の説得、ビジネスパートナーとの共有を目指すために使用されます。また、運営にあたって将来の展望やリスク管理のための指針としても機能し、経営戦略を実行するための道筋を示します。

具体的な情報を盛り込みつつ、読みやすくて理解しやすい文章で作成することにより、自身のビジネスプランが魅力的であるとビジネスパートナーへアピールできるでしょう。

事業計画書が必要な理由

飲食店の事業計画書は、経営の基盤を構築し、継続的な成功への道筋を描く重要なツールです。そのため、計画書にはビジョンや目標、市場調査、財務計画、マーケティング戦略などが含まれます。

これにより、事業の方向性を明確にし、投資家や金融機関からの支援を得ることも可能です。綿密な計画を立てて作成できれば、事業の安定性や成長性を高め、飲食店ビジネス成功への確かな道を切り開けます。

アイデアやプランを客観視するため

事業計画書でアイデアやプランを客観視して見直すには、市場調査と競合分析を通じ、自身の計画が市場の需要や競争状況に適合しているか、客観的な評価が必要です。

またフレームワークのひとつであるSWOT分析を用いて、アイデアやプランの強みと弱み、機会と脅威を明確にし、リスクとチャンスを把握してもよいでしょう。

外部の専門家やアドバイザーの意見やフィードバックを取り入れ、より客観的な視点からのアドバイスを受けることも大切なポイントです。さまざまなアイデアやプランを具体的な目標や戦略に落とし込み、計画が実現する可能性を検証します。

必要となる資金を明らかにするため

事業計画書では、資金明示もポイントです。的確な資金計画は、事業の安定性と成長性を確保するために欠かせません。

まず開業費用を詳細に洗い出し、建物や設備、装飾、設備購入、初期在庫など、あらゆる初期コストを明示します。

次に、ランニングコストを見積もりましょう。人件費、光熱費、賃貸料、広告宣伝費、食材調達費など、安定した継続運営にあたって必要な経費を計算していきます。

資金調達手段では、自己資金やローン、クラウドファンディングのような周囲へのプレゼンテーションなども検討しながら、リスク管理や返済計画も立てていきます。

創業融資を受けるため

飲食店の開業には、一般的に高額の準備資金を用意しなくてはなりません。自己資金を蓄えておくのはもちろん、日本政策金融公庫や銀行から創業融資を受ける必要も出てくるでしょう。

こうしたビジネスパートナーから創業融資を受けるには、事業計画書の提出が必要不可欠です。開業時はその事業としての実績がない状態のため、金融機関に対し信頼性のあるプランを可視化した書面を提示しなければなりません。

事業計画書の書き方

事業計画書は、まず自分がどんな飲食店を開きたいのかビジョンを明らかにし、開業の目的や目標を定めるとよいでしょう。

事業者が開業にいたるまでの経歴や経験、行ってきた開業準備の内容から、経営が開始されてからの見通しなど、説得力がある内容を書かなければなりません。明確で簡潔な文章、適切な数字やデータの記載を十分留意して書き進めていきましょう。

創業の動機

創業の動機として、なぜその事業を始めるのか明確に記述しましょう。さらに、競合分析や市場の成長性評価を行い、始めようとしている事業の持続性や、成功する可能性をアピールする必要があります。

創業の動機は、事業計画書の中心的な要素であり、投資家やパートナーに対して自身の情熱や熱意を伝えるための重要なカギとなります。

経歴

経歴の記述ポイントは、事業内容と関連性の深い経験や専門知識を強調します。飲食店であれば、過去の職務経験や関連する資格などが含まれます。リーダーシップや経営能力、チームビルディングのスキルもアピールポイントとなるでしょう。

さらに、業界や市場のトレンドに関する知識や、洞察力を強調することも重要です。また、人脈や業界内での関係性も記載し、ビジネスチャンスやパートナーシップの可能性を示します。

経歴の記述は、自身の専門性や実績を明確にし、事業計画の信頼性を向上させるための要素となります。

商品・サービス

商品やサービスの記述ポイントでは、提供するメニューの特徴を明確に説明します。これには、顧客ニーズに対する解答の独自性および、競合優位性のアピールなどが含まれます。

次に、商品やサービスのターゲット市場や顧客セグメントを定め、それに基づいたマーケティング戦略を示します。価格設定やプロモーション手法なども具体的に記述しましょう。

さらに、提供するメニューの調理プロセス、品質管理なども説明します。こうした商品やサービスの記述は、市場の需要と提供する価値を明確に示し、事業計画の成功に不可欠な要素となります。

従業員

従業員を雇用するのであれば、店舗業務に従事する従業員の人数を正確に記載しなくてはなりません。これには、家族で経営する場合の家族従業員も含まれます。

雇用を予定している従業員数と、家族従業員、パート従業員の人数をそれぞれ書きましょう。法人の場合は、常勤役員の人数を明記する必要があります。

取引先

取引先には、食材など原材料の仕入れ先のほか、来店する一般顧客も含まれます。仕入れ費用の支払い方法や支払い条件を取引先ごとに明記するとともに、一般顧客からの売り上げの回収方法も記載しましょう。

具体的な取引先の記述は、信頼性と安定性を示すだけでなく、戦略的なパートナーシップの構築を示し、事業計画の成功に寄与する重要な要素となります。

必要な資金と調達方法

資金調達ではまず、必要な資金の詳細を明確に提示しましょう。開業費用、運営費用、設備投資など、必要な費用の内訳を具体的に記載し、なぜ資金が必要なのか明らかにします。

次に、資金調達の計画とその方法について説明します。たとえば、自己資金の投入、銀行融資、投資家からの資金調達、助成金や補助金の利用など、予定している資金調達方法を具体的に示すとよいでしょう。

また、資金調達のタイミングやスケジュールも重要となります。利益率や返済計画、収益予測などを示し、資金提供者に対する返済能力や、収益性をアピールします。また、資金調達にともなうリスクや対策についても述べ、リスク管理の計画を示します。

資金調達の記述は、計画の信憑性や財務健全性を示し、事業計画の実現可能性を裏付ける重要な要素となります。

借り入れ状況

住宅や車のローンをはじめとした、銀行など金融機関からの借り入れ状況を具体的に明記します。借り入れ先、金額、返済計画、利息率、償還期間などを記載しましょう。

重要なポイントとして、これから始めようとしている事業に直接関係のある借り入れではなく、あくまで事業者の個人的な借り入れ内容についての記述が求められます。

事業の見通し

事業の見通しに関する記述ポイントは、まず、市場の現状と将来予測について説明します。市場の規模や成長率、トレンドや動向などを明示し、事業の位置づけを示します。

競合他店の存在や、比較した場合の自店の強みや独自性を明確に示し、差別化戦略の具体的な計画を述べます。また、ターゲット市場や顧客ニーズ、顧客の購買パターンなども詳細に分析しましょう。

さらに、売上予測や収益性の見通しを示します。売上の見込みや収益の予測、利益率や成長率などを明確に記述し、具体的な数字を示すことが重要です。

事業計画書の作成ポイント

重要なアピールポイントとして、市場のニーズやトレンドに即したビジネスの独自性をアピールしましょう。自店のメニューやサービスが、どのように顧客へ価値をもたらすのかを明示します。

次に、競合との差別化ポイントをより明確にします。競合他店と比較しながら、強みや優位性を明確に示し、なぜ顧客が自店を選ぶべきなのかを訴求します。

さらに、財務的な側面での魅力をアピールしましょう。収益性や成長性の見通し、投資回収期間、利益率などを具体的に示し、投資家や財務機関に対して魅力的なビジネスモデルであることを訴えます。

内容をしっかりと詰めて計画へと盛り込められれば、将来性を訴求するための要素となり、ビジネスパートナーの関心を引く重要な役割を果たします。

自店の強みを理解する

強みを効果的に表現するためのポイントは、具体性を重視しましょう。自店の強みがどのように他店と異なるのか、自店の強みが競合他店と比べてどれほど優れているのか、明確に差別化して具体的に明示していきます。

たとえば、専門知識を要するメニューや独自の創作メニューの提供、経験豊富なスタッフ、他店にない内装などを挙げることで、強みを具体化します。

次に、強みの効果やメリットを明確に伝えます。自店に来店することによって、顧客にどのような価値や利益をもたらすのかを具体的に示し、その効果を強調します。顧客満足度の向上や効率化、コスト削減など、強みがもたらす具体的な利点を示すことが重要です。

要点を押さえてわかりやすく記載する

要点をわかりやすく伝えるためには、以下のポイントに注意しましょう。まず、明確な目的を設定します。計画で何を目的としているのか、読む人に伝わるよう明確にします。

次に、シンプルな言葉と構成を使います。難解な文章であることと、伝わりやすい文章であることはイコールではありません。専門用語や複雑な文言は避け、明朗な言葉と文体で記述します。論理的な構成をつけ、項目ごとに要点をまとめましょう。

また、冗長な表現や繰り返しを避け、必要以上に長々とした文章にならないよう注意しなくてはなりません。詳細に、かつ要点を押さえて、必要な情報を的確に組み込んだ内容が望ましいでしょう。

数字の整合性が取れている

数字の整合性を確保するためには、現実的で正確なデータを収集しましょう。市場調査や競合分析などを通じて、信頼性の高いデータを入手します。

次に、数字の統一性を確保します。同じ期間や同じ単位での比較ができるように、すべての数字を一貫した基準でまとめます。

計算ミスや誤った数値を避けるため、計算式や数式を丁寧にチェックしましょう。さらに、予測や予測モデルを使用する場合には、その根拠や前提条件を明示します。数字の整合性を確認するために、複数の人にレビューしてもらうことも有効です。

融資を受けるまでの計画を立てる

融資を受けるまでの計画を立てる方法では、目標金額と必要な期間を明確に設定します。どれくらいの資金が必要で、いつまでに必要なのかを具体的に定めましょう。そのうえで、融資をお願いする適切な金融機関を選定します。

また、必要な資金を調達するための具体的な手段を確認していきます。日本政策金融公庫による創業融資や銀行融資、政府補助金、投資家などを含めて、適切な資金調達手段を選び、それに基づいて計画を進めましょう。

最後に、融資申請書の作成と提出を行います。具体的な将来の見通しなども詳細に記載し、金融機関に提出しましょう。融資申請後は、審査結果を受けて必要な修正や追加の対応を行い、必要な手続きを進めていきます。

自己資金がない場合、飲食店は開業できるのでしょうか。手元資金が少なくても開業できる方法6選をこちらの記事で紹介します。

創業融資用のテンプレートを使う

創業融資用のテンプレートを利用すると、構成に迷わず書き進められます。一般的な事業計画書の構成に沿って計画書作りができ、ビジネスプランの内容、市場における同業種分析やお店の経営における財務計画など、一連の流れで何を書けばよいかが明確になります。

一般的に広く用いられるテンプレートとして、日本政策金融公庫の書式があります。また、インターネット上でもプロによって作成されたテンプレートを見つけられるでしょう。

こうしたテンプレートには、適切なフォーマットとデザインが組み込まれています。各項目の記入スタイルや配置などが整然と統一されているため、プロフェッショナルな印象を与えることができます。

項目は、一般的に必要な内容がまとまっています。経営者のプロフィール、市場調査、競合分析や財務予測など忘れることなく記入でき、融資審査に必要な情報をしっかりと伝えられます。

ただし、テンプレートはあくまで基礎となるものであり、個別のビジネスに合わせてカスタマイズする必要があります。自店の特徴やビジョンを反映させながら、テンプレートにて間違いのないように作成していきましょう。

代行サービスを利用する

より確実に融資を受けられるように取り組みたい場合、代行サービスの利用を検討するのもよいでしょう。代行サービスは、事業計画書の作成において、専門知識と豊富な経験を持っています。

ビジネスの要素や財務データの分析、市場調査、その他さまざまな分析などをスムーズに行うノウハウがあり、プロフェッショナルな視点から事業計画書を作成できます。

代行サービスでは、多くの経験を持つプロの手によって、融資を通してもらうための事業計画書を作成できます。適切な情報の提供や財務データの整合性の確保、戦略的な説明などを行うことで、融資の成功確率を高められます。

ただし、代行サービスを利用する際には、信頼性のある業者を選ぶことが重要です。実績や評判を確認し、自身のニーズに合った代行サービスを選ぶ必要があります。

まとめ

どのように丁寧に事業計画書を作るかが、飲食店開業成功のカギを握ると考えて差し支えないでしょう。さまざまな視点による綿密な計画、魅力のある具体的なアイデアなど、それぞれをうまく融合させる必要があるため、一朝一夕で作れるものではありません。

自身の夢をしっかりと叶え、道半ばで諦めてしまわずに済むように、入念に具体性のある事業計画書作成が必要となります。そして、新規で開店するための物件の確保も当然欠かせません。

事業計画書を作成するにあたって、もしも物件探しから悩むようであれば、物件探しのプロに相談してみてもよいのではないでしょうか。居抜きの神様であれば、物件の出店から開店まで幅広いサポートを行っており、具体的な計画書を作成する第一歩を進められます。

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この記事を書いた人

居抜き物件のことなら「居抜きの神様」に任せるのじゃ

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