カフェを開業するには、厨房機器や客席の家具、運営に必要な備品など、多くの設備をそろえる必要があります。また、営業許可を取得するために、保健所の基準を満たすものを選ばなくてはなりません。
この記事では、カフェ運営に必要な設備や備品の具体的なリストを紹介しています。さらに、失敗しない備品選びのポイントや、保健所の設備要件についても詳しく解説しています。
カフェ開業に必要な厨房設備

カフェを開業するには、まず営業許可を取得する必要があります。審査の際、厨房設備が保健所の基準を満たすことが求められます。
シンク
洗いものや調理に必要なシンクですが、基本的には2槽式のシンクか、食器洗浄機と1槽シンクを組み合わせたものが必要です。東京都の場合、2槽式シンクのサイズは、幅45cm、奥行き36cm、深さ18cm以上が目安です。
もし食器洗浄機を設置するなら、1槽シンクでも問題ありません。ただし、自治体ごとにシンク設置の必要な要件は異なるため、詳細は所轄の保健所にお問い合わせください。
冷蔵庫・冷凍庫
カフェには、食材を閉まっておける適切なサイズの冷蔵庫や冷凍庫が必要不可欠です。とくに規定サイズはありませんが、取り扱う食材の量を考えて容量を選ぶことが大切です。
また、食材の衛生管理のためにも、冷蔵庫には温度計の設置が必要です。もし温度計が付いていない場合は、別途購入して取り付ける必要があります。
製氷機
カフェでは製氷機が必須といえます。とくに夏の時期は氷の消費量が増えます。氷不足を防ぐため、少し余裕を持った容量の製氷機を選ぶことがポイントです。
家庭用と業務用がありますが、1日に訪れるお客様の人数を基準に考えるとよいでしょう。来店人数が30人以下であれば家庭用の製氷機でも対応できます。30人を超える場合は、25kg以上の氷を作れる業務用モデルの導入をおすすめします。
ガスレンジ・ガステーブル
ガスレンジとガステーブルは、どちらもガスを使う調理器具ですが、少し大きさや機能面が異なります。ガステーブルとは、ガスコンロが内蔵されているもので、一般的には2口、3口と多口のコンロがついており、コンパクトなタイプが多く見られます。一方、ガスレンジは、ガスコンロとコンベクションオーブンが一体になったものです。
また、店舗のガスが都市ガスかプロパンガスかによって選ぶモデルが異なるため、事前確認が必要です。
食器棚
食器棚は扉付きのものを選ぶ必要があります。ホコリや汚れ、虫の侵入を防ぎ、食器やカトラリー、厨房道具を清潔に保つために必要です。
食器棚にはガラス戸や引き戸などさまざまな種類があり、サイズ展開も豊富です。収納する食器の種類や量をあらかじめ計算し、設置スペースを考慮したうえで選ぶとよいでしょう。
手洗い場
衛生管理を徹底するため、従業員専用の手洗い場を設置する必要があります。調理用のシンクを手洗い場として兼用することは認められていません。
手洗い器のサイズは、幅36cm×奥行28cm以上が目安です。手洗い器の付近には、手指の消毒装置も設置する必要があります。
作業台
作業台は、長時間使用するため、快適に作業が行える高さ選びが重要になります。理想的な高さは「身長÷2 + 5cm」とされていますが、最も確実なのは、実際に作業台に立って確認することです。
一般的には、家庭用キッチンテーブルと同じ約80cmの高さがよく使われています。作業台にはさまざまな種類があり、主に収納付きと収納なしタイプ、調理台スノコ板付きタイプがあります。

給湯器
飲食店の営業許可を取得するには、給湯器の設置が必要です。給湯器には「号数」という単位があり、1分間に水温+ 25℃のお湯を何L供給できるかを示しています。たとえば25号の給湯器なら、1分間に25Lのお湯を供給できるという意味になります。
号数は、給湯の使用量に合わせて選ぶとよいでしょう。一般的なカフェでの目安として、28号または32号の給湯器が適しています。
換気扇
カフェの厨房には、換気扇の設置が必須です。結露による水滴が食品に落ちてしまうと、衛生管理上のリスクにつながるためです。結露を防ぎ、カビの発生を抑えるためにも適切な換気が求められます。
Wi-Fi・電源
カフェでは、Wi-Fi環境や電源の準備も大切です。最近は、業務の効率化を目的に、キッチンディスプレイやキッチンプリンターなどのPOSシステム連動機器を導入する店舗が増えています。これらの機器を使うには、タブレット端末や安定したWi-Fi環境、電源が必要です。
お客様が利用するカフェのホール設備

カフェのホールは、お客様が過ごす空間です。設備の選び方次第で、店舗全体の印象や居心地が大きく変わります。おしゃれさだけでなく、快適さや利便性も考慮することで、リピーターにつながる魅力的なホールを作りましょう。
テーブル・椅子・ソファ
カフェの席数を決めることは、売上や回転率に大きく影響するため、コンセプトや経営方針に沿って慎重に考えましょう。客席は2人席が便利なためおすすめです。2人席は1人でも利用でき、複数人で利用する際にはテーブルをつなげて使えます。
また、家具はできるだけ業務用を選びましょう。業務用家具は耐久性や耐傷性が優れており、長く使えるというメリットがあります。デザイン性と実用性を両立させて、快適な空間を作りましょう。
カウンター
カウンターは、テーブルと作業台の高さの差によって、お客様が受ける印象が大きく変わる部分です。主に、ハイカウンターとローカウンターがあります。
ハイカウンターは高級感があるため、バーのような非日常感を演出したいときにおすすめです。ローカウンターは、リラックスした空間を作り出し、さまざまなお客様がゆっくりと食事を楽しめます。
店舗のコンセプトに合わせて、最適なカウンターを選びましょう。
照明
照明は、清掃や作業がしやすい明るさを備えている必要があります。たとえば、東京都では飲食店の客席の照度を50ルクス以上とする基準が設けられています。
50ルクスとは、エレベーター内と同程度の明るさです。参考までに、一般的な事務作業に必要な明るさは、300ルクスほどとなっています。客層やコンセプトに合わせて選んでみてください。
冷暖房設備<
快適さが重視されるカフェでは、冷暖房設備はほぼ必須の設備です。冷暖房設備の種類は、主に埋め込み型、壁掛け型の2種類です。
埋め込み型は、天井に埋め込むタイプのため、店内のインテリアを邪魔しません。一方、壁掛け型は、設置が簡単で、工事費用を抑えられるのが特徴です。ただし、設備がむき出しのため、デザイン的に目立ちやすいのがデメリットといえます。
空気清浄機
必須ではありませんが、空気清浄機を使うことで店内の空気がきれいになり、より快適な空間を作れるため、多くのカフェで導入されています。とくに、においやウイルス対策を重視するカフェにはおすすめです。
新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症対策としても役立つとされ、お客様に安心感を提供できます。
音響設備
BGMはお客様の居心地に大きく影響するため、音響設備の選定にはこだわりましょう。必要な機器はスピーカー、アンプ、オーディオプレイヤーです。
スピーカーには以下の3種類あります。
天井埋め込み型
天井に埋め込むタイプで、見た目がすっきりしてインテリアの邪魔をしない。
据え置き型
壁や棚、床に設置するタイプで、サイズやデザインのバリエーションが豊富。
ペンダント型
天井から吊り下げるタイプのスピーカーで、デザイン性が高いのが特徴。
店内の雰囲気に合わせて音響設備を選び、心地よい空間を演出しましょう。
トイレ
飲食店を営業し、客席を設ける場合、お客様が利用できるトイレの設置が義務付けられています。トイレは調理場に影響を与えない場所に配置し、使いやすい構造にすることが重要です。
また、トイレ専用の手洗い場の設置も必須です。とくに女性のお客様にとって、清潔で快適なトイレは店舗選びに関わってくる部分です。清潔感があり、使いやすい空間を整えることで、店舗全体の印象も向上します。
こちらの記事では、カフェをおしゃれにする内装アイデア8選について解説しています。デザインのポイントについても取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
カフェの運営を支える備品一覧

カフェをスムーズに開業するには、事前に必要な備品をリストアップし、計画的にそろえることが大切です。準備を怠ると、次々と備品を追加購入し、予算オーバーになる可能性があります。
調理道具
カフェで使用する調理道具には、コーヒーマシン、計量カップ、鍋、フライパン、お玉、包丁、まな板などがあります。必要な道具は、提供するメニューによって異なるため、メニューを決めてから選ぶのがベストです。
また、調理道具は頻繁に使用するため、あまりに価格が低すぎるものは避けましょう。耐久性や使いやすさを重視して選ぶことが大切です。
食器
食器の色や形は、カフェの印象を決定づける要素です。店舗のコンセプトに合わせたものを選ぶことで、統一感のあるおしゃれな空間を演出できます。
食器は使っているうちに劣化や破損が避けられないため、予備を用意しておくことが大切です。よく使う食器は、席数の1.5倍ほどそろえておくと安心です。一方で、使用頻度が低いものは、席数の2分の1〜3分の1程度でも十分でしょう。
また、補充しやすいものを選ぶのがポイントです。高額すぎるものや、在庫切れになりやすいものは避け、継続的に購入できるものを選びましょう。耐久性や耐傷性に優れた食器を選べば、長く使えてコストパフォーマンスも向上します。
保存容器
カフェでは、コーヒー豆の鮮度を保ち、美味しいコーヒーを提供するためにも保存容器を用意しておく必要があります。コーヒー豆の保存袋には、主にキャニスターと保存袋の2種類があります。
キャニスターは、ガラスや陶器、ステンレスなど種類が豊富なのが特徴です。ガラス製を選べば、外から豆の残量を確認しやすくなります。ただし、密閉性が高くないため、長期保存には不向きです。
保存袋は、アルミバッグと、冷凍保存が可能なフリーザーバッグの2種類があります。コーヒー豆を入れてもかさばらず、収納しやすいのが特徴です。密閉性が高く、新鮮な状態で長期保存が可能です。
会計機器
個人経営の小規模カフェなら、手計算での会計も可能ですが、会計機器を導入することで業務効率が向上します。とくに混雑時のスムーズな対応や売上管理のしやすさを考えると、レジの導入はおすすめです。
レジには、主に以下の3種類があります。
- レジスター:会計計算のみに対応した最もポピュラーなタイプ。
- POSレジ:売上管理や在庫管理などの分析ができる高機能レジ。規模の大きい店舗向け。
- アプリ型POSレジ:タブレットやスマートフォンにアプリをインストールして使用する。
会計機器の導入にはIT導入補助金を活用できる場合もあります。
電話・パソコン・タブレット
カフェを運営するうえで、電話・パソコン・タブレットは欠かせないツールです
- 電話:予約受付や問い合わせ対応のほか、仕入れ業者や取引先との連絡手段として必要。
- パソコン:ネット予約の管理、ECサイトやブログの運営、売上管理・会計処理、チラシやメニュー表の作成など、さまざまな業務に活用できる。
- タブレット:POSレジやオーダー管理システムの操作に使われ、業務の効率化に役立つ。
カフェの設備を準備をする際のポイント

カフェの設備を選ぶときは、開業前だけでなく、開業後の運営を見据えて計画的に準備することが大切です。事前に入念に検討することで、無駄な出費を防ぎ、快適で魅力的な店舗を作れます。
動線を邪魔しないサイズか確認する
設備を選ぶ際は、動線を邪魔しないかサイズかを確認しましょう。どんなに優れた設備を導入しても、動線が悪ければスタッフ同士がぶつかりやすくなり作業効率が低下します。提供スピードが遅くなってしまうため、お客様の満足度にも悪影響を与えかねません。
店内のスペースに適したサイズ、配置など、動線を考慮することで、スタッフが作業しやすい環境を整えられます。まずは店のスペースに合う設備を選び、そのうえでメニューを考えるようにしましょう。
予算を抑えるなら居抜き物件を活用する
予算を抑えたい場合は、居抜き物件の活用を検討してみましょう。居抜き物件とは、内装や厨房設備などがそのまま残っている物件のことです。
新しく厨房設備をすべてそろえると、たとえば10坪ほどのカフェの場合、約250万円必要です。ローンを組んで資金を調達する方法もありますが、開業後に返済が必要となり、経営がうまくいかない場合にはリスクが高くなります。
ただし、居抜き物件なら既に厨房設備が整っている場合もあります。こうした物件を賢く選ぶことで、設備にかかる費用を大幅に削減可能です。
中古品も選択肢として考えられますが、使用感があり、故障リスクや保証がない場合もあります。開業資金を抑えるためにも、厨房設備が既に備わった居抜き物件を検討してみましょう。
居抜き物件専門のサイト「居抜きの神様」では、非公開や独占物件も多く取り扱っております。興味のある方は、ぜひ一度ご確認ください。
まとめ

カフェを開業するためには、まずは保健所の基準を満たす厨房設備が必要です。調理スペースや食材の保管場所はもちろん、シンクや換気設備も基準に沿った設計が求められます。
また、ホール設備は、デザイン性と機能性を考慮することで、リピーターの獲得につながります。照明や家具、BGMなども工夫し、コンセプトに沿った空間設計を行いましょう。
しかし、こうした設備や備品の準備には多くの費用がかかります。開業資金を抑える方法として、居抜き物件を検討してみてはいかがでしょうか。
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こちらの記事では、カフェを開業するための手順について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
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