居抜き物件のトラブルを回避するために覚えておきたいこと

居抜き物件のトラブル

新規事業を始める際には、居抜き物件は初期費用を抑えつつスムーズに開業できる魅力的な選択肢のひとつです。しかし、そのメリットとは裏腹に、契約後に思わぬトラブルに巻き込まれるリスクもあります。

素晴らしい居抜き物件を手に入れても、トラブルに対処できなければビジネスの成功は手に入れられません。そこで今回は、居抜き物件を利用する際に起こりうるトラブル例をもとに、解決策や開業する際のポイントを詳しく解説します。

目次

居抜き物件のトラブル例と対策

居抜き物件のトラブル例と対策
A nervous graphic engineer crouching next to printing machine with malfunction at printing shop.

居抜き物件でのトラブルを避けるには、具体的な事例と対策を知ることが大切です。それぞれを詳しく見ていきましょう。

契約に関するトラブル     

  居抜き物件の引き渡し時には、賃貸契約と造作譲渡契約の2つの契約を取り交わします。賃貸契約は、不動産オーナーと店舗(入居者)との間で締結される契約です。

一方、造作譲渡契約書は、前の借主と新しい借主との間で締結される契約で、前の借主が残した内装および設備を譲渡するためのものです。

たとえば貸店舗物件の契約には、通常、原状回復義務が含まれています。これは、店舗が退去時に物件を元の状態に戻す義務を意味します。造作譲渡契約書を作成する際は、こうした原状回復義務に関する取り決めも明らかにしておくことが望ましいでしょう。

契約時に契約内容や費用、手続きなどの確認が不十分だと、契約後にトラブルが発生しやすい傾向にあります。そのため契約時には、原状回復に関する費用や手続きを十分に確認し、明確な取り決めをしましょう。

話し合いが難航しそうな時は、仲介業者への依頼もおすすめです。別途手数料がかかりますが、複雑な話し合いにかかる時間や労力を省けるため、その分自分の事業に中できるメリットがあります。

内装や設備に関するトラブル

 居抜き物件では、前店舗が使用していた内装や設備を引き継ぐため、後で故障や不具合が発生する可能性もゼロではありません。トラブルを防ぐためには、契約前に内装や設備の状態を徹底的に確認し、具体的な取り決めを造作譲渡契約書に明記することが大切です。

その際、前店舗と新店舗が一緒に立ち会い、設備の状態や動作を丁寧にチェックすることをおすすめします。双方が納得したうえで引き渡しを行うことで、トラブルを未然に防げるでしょう。

とくに、排水管の詰まりは頻発するトラブルのひとつです。飲食店などであれば、食材や調理油が詰まりの原因となります。契約前に排水管の状態を十分に確認し、必要ならば高圧洗浄を検討しましょう。

廃棄物処理に関するトラブル

居抜き物件では、廃棄物が残っていないかしっかりと確認しましょう。なぜなら、前店舗が廃棄物を適切に処理せずに退去してしまうことで、後続の家主や次の店舗が廃棄物による悪臭や汚染への対応に追われるケースがあるからです。

同時に、廃棄物が処理されずに残っていると、次の店舗が処理費用を負担する可能性があります。トラブルを防ぐためには、契約前に内装や設備の状態を徹底的に確認し、具体的な取り決めを造作譲渡契約書に明記することが大切です。

契約書に廃棄物の処分に関する責任者や費用負担の割合、違反した場合の処置などを明確に定めておきましょう。

近隣住民とのトラブル

 店舗から発生する煙や騒音、不適切なゴミの処理などが原因で、近隣住民からクレームが寄せられるケースも少なくありません。居抜き物件自体のトラブルだけでなく、近隣住民とのトラブルも避けて通れない課題のひとつです。

とくに、住宅街に位置する飲食店の場合は、近隣住民とのトラブルが顕著になる可能性が高くなります。近隣トラブルから集客力に影響があり、結果として売り上げが低下してしまっては、店舗経営を続けていくことが困難になります。

大切なのは、事前に対処法を把握し、トラブルを未然に防ぐことです。トラブルを回避するには、前店舗が周辺住民からクレームを受けていなかったかなどの調査や、契約前に物件の管理規約を十分に確認することが重要です。

その際、町内会長など、エリア関係者にきちんと挨拶することも欠かせません。事前にヒアリングを徹底し、ルールや慣習などを把握することで、近隣住民とのトラブルを最小限に抑えられるでしょう。

開業するなら居抜き物件がおすすめの理由     

開業するなら居抜き物件がおすすめの理由     

 新しい店舗を開業する場合、経済的な利点や顧客獲得のしやすさなど、多くの魅力を持つのが居抜き物件です。居抜き物件とは、以前の店舗が使っていた内外装や設備がそのまま残されている賃貸物件のことを指します。

一方、スケルトン物件とは、前店舗が使っていた内外装や設備が撤去され、建物の骨組みだけが残された状態の賃貸物件です。スケルトン物件は自由度が魅力ですが、開業するなら居抜き物件がおすすめです。ここでは、その理由を詳しく見ていきましょう。

初期費用を抑えられるため

初期費用を抑えられるため

 新規オープン時、物件の敷金・礼金や家賃に加え、設備の購入や内装工事などに多額の費用がかかります。しかし居抜き物件であれば、前店舗の内装や設備がそのままの状態で残っています。

そのため、新たな設備購入や内装工事を行う必要がなく、初期投資額を大幅に抑えられます。初期投資を最小限に抑えてスムーズにオープンしたい場合には、居抜き物件が魅力的な選択肢となるでしょう。

ただし、前の店舗の使用状況や設備の状態によっては、修理やメンテナンスが必要な場合もあります。契約をする前に内見を行い、設備や内装の状態を詳しくチェックすることが重要です。初期費用を削減するメリットを享受しつつ、後悔のない開業を目指しましょう。

営業開始までの時間を短縮できるため

 新しい店舗をオープンするには、内外装の工事が欠かせません。しかし、スケルトン物件の場合は最低でも工事に1か月 はかかります。

工事中も賃料(空家賃)が発生するため、売り上げ発生までの期間が長引くことで店舗の利益を圧迫してしまいます。そのため、工事を早く終わらせたいと考える経営者は多いのではないでしょうか。

一方、居抜き物件では最小限の改装工事で済むことがほとんどです。なかでも、ガスや水道、空調などがそのまま使える物件であれば、工期を大幅に短縮できます。契約後すぐに店舗をオープンできるため、空家賃の発生を最小限に抑えられるでしょう。

前店舗の知名度を利用して集客できるため

 新規出店では、まず店の認知度を高める必要があり、広告宣伝に多額の費用がかかります。しかし、居抜き物件の場合は前店舗の知名度を引き継げるため、開店後すぐに既存の顧客を取り込める可能性が高くなります。

とくに前店舗が同業種だった場合、近隣住民や既存の顧客層が新店舗の存在を認知している可能性が高いです。まったく新しい場所にオープンするのに比べ、明らかに集客に有利な条件といえます。前店舗の知名度や評判を活用して、効率的な集客が期待できるでしょう。

ただし、前店舗の退店理由を慎重に確認する必要があります。たとえば、立地の問題や近隣トラブルなど、なにかしらのネガティブな要因で閉店に至った場合、その物件は避けるべきです。前店舗と同じ過ちを繰り返さないよう、事前のリサーチが重要になります。

開業後のイメージがしやすいため

開業後のイメージがしやすいため

 居抜き物件の最大の特徴は、前店舗が残した設備や内装がそのまま引き継げることです。新規出店とは異なり、開店後の店舗運営におけるイメージが具体的に描きやすくなります。

たとえば客席の配置や動線、厨房の広さなど、実際の物件を見ながら確認できます。同時に前店舗の運営実績を参考にできるため、開店後の課題や問題点をある程度予測し、効率的な準備が可能です。

来店客の動きやスタッフの動線など、実際の環境を確認しながら具体的なイメージが描けるのも大きなメリットです。事前に十分な現地調査を行えば、開業後のイメージがより明確になり、オープンまでの作業がスムーズに進められるでしょう。

物件が多く出回っているため

 現在、居抜き物件はスケルトン物件よりも多く出回っています。これにより、さまざまな物件を比較検討できるため、自分のイメージにぴったり合った物件に出会える確率が高まります。場合によっては、予想以上によい物件に巡り合うこともあるでしょう。

仮にカフェを開業したいと考えているなら、居抜き物件のなかに、すでにオシャレな内装が整ったカフェ風の店舗が見つかるかもしれません。また、設備が充実したレストラン用の居抜き物件なら、開業準備の手間も大幅に減らすことが可能です。

なお、よりよい物件と契約するためには、店舗のコンセプトやイメージを明確にしておくことが重要です。イメージに合った物件があれば、事前にリストアップしておきましょう。

また「広いキッチンは必須だが、内装は多少の修正が必要でも構わない」といった優先順位も事前に決めておくと、理想の物件を見つけた際に迅速に決断できます。

居抜き物件で開業する際のポイント

居抜き物件で開業する際のポイント

 居抜き物件で開業するには多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。成功を目指すためには、物件選びから設備のチェック、さらにはマーケティング戦略に至るまで、全体を見渡しながら準備を進めることが重要です。

前の店舗が退去した理由を調べる

居抜き物件で開業する際は、前の店舗の退去理由を確認することが重要です。

たとえば、前の店舗で騒音や悪臭といった問題が発生していた場合、新店舗のイメージに悪影響を与える可能性もあります。また、立地や周辺環境が集客に不利であったために移転した可能性も考えられます。

退去理由を調べるには、まず不動産会社に問い合わせてみましょう。すべての退去理由を教えてもらえるわけではありませんが、情報収集を試みる価値はあります。また、物件周辺を視察し、自分なりに環境や立地条件を確認することも大切です。

前店舗がネガティブな理由で退去していた場合は、その物件を再検討するか、内装の変更やイメージ刷新といった対策が求められるでしょう。

契約内容は書面で残す

開業時のトラブルを避けるには、口頭での説明だけに頼らず、すべての内容を書面で記録することが重要です。物件のオーナーとの賃貸借契約では、契約開始日、フリーレント期間、退去時の引き渡し条件などを詳細に確認し、書面に明記しておきましょう。

さらに、前店舗との間で取り交わす造作譲渡契約も欠かせません。造作譲渡契約書を作成することで、引き継ぐ設備の詳細や費用を明確にし、双方の認識を一致させられます。

どんなに細かい内容であっても曖昧にせず、すべての条件を明確に書面で残すことで、安心して開業準備を進められるでしょう。

リース契約の有無を確認する

前店舗が使用していた設備にリース契約が含まれている場合、契約を引き継ぐかどうかの判断を慎重に行う必要があります。なぜなら、リース料は長期的な経営コストに影響を与えるからです。

たとえば、前店舗から引き継いだ業務用冷蔵庫や調理機器がリース品であることを知らずに使用していると、リース会社からの突然の回収要求に直面する可能性があります。新規でリース契約を結び直すか、設備を返却して別の方法を考えることもひとつの方法です。

リース品の状態や契約条件を事前に確認し、経営に負担をかけないよう最善の策を講じましょう。

物件の状態や周辺環境を確認する

居抜き物件を契約する際には、提供される情報だけでなく、実際に物件を訪れて設備の状態や衛生面、隣接する店舗、周囲の環境を確認することが重要です。

たとえば、厨房の機器が古かったり、排水設備に問題があったりすると、後々の修理や更新にコストがかかる可能性があります。現物を見て使用感や購入時期を確認することで、予期せぬ出費を事前に把握できるでしょう。

また、物件周辺の状況も把握しておく必要があります。騒音や匂いなどの問題が近隣店舗から発生する場合、店舗運営に影響を与えてしまいます。

現地視察には時間と手間がかかりますが、将来のトラブルを未然に防ぐためには欠かせない作業です。ストレスなくスムーズに店舗を開くために、現地視察に積極的に取り組むことがおすすめです。

賃料や造作譲渡料を交渉する

賃料や造作譲渡料を交渉する
Handshake. Meeting of business people and working cooperation in the organization.

居抜き物件も家賃交渉は可能です。賃料はオーナーと、造作譲渡料は前店舗と交渉を行います。賃料を交渉する際は、まず近隣物件の価格相場を調査し、希望する物件の賃料が適正かどうかを確認しましょう。

オーナー側も長期間にわたって信頼できる店舗を望んでいるため、交渉はお互いにメリットがあるよう心がけることが大切です。その際、事業計画や過去の実績を活用して、交渉時に自身のビジネスの継続性や成功の可能性をアピールすることも重要です。

なお造作譲渡料は、居抜き物件に残された造作を自店が買い取る必要がある場合の費用です。たとえば、造作を無償で引き渡される場合は入居費用のみの支払いで済みますが、有償で引き取る場合には造作譲渡料がかかります。 

造作譲渡料を交渉する際は、前店舗の退去予定日が近づいているタイミングを狙うと効果的です。なぜなら、退去予定日が近づくと、次の店舗が決まらなければ原状回復工事が必要になるからです。そのため、造作譲渡料の値下げに応じてくれる可能性が高まります。

ただし、交渉のタイミングをあまりにも遅らせると、ほかの店舗に先に契約を進められるおそれがあるため注意が必要です。適切なバランスを保ちながら交渉を進めていきましょう。

綿密に資金計画を立てる

綿密に資金計画を立てる

開業には膨大な資金が必要です。飲食店を新規開業する場合、物件取得費や前家賃、備品や厨房設備の購入費など、少なくとも250万〜500万円 程度、内装や設備にこだわる場合は500万~1,000万円ほど確保しておく必要があります。

さらに、前店舗の設備が使い物にならない場合、新たに購入や修理をしなければなりません。また、居抜き物件では、レイアウトの自由度が限られているため、こだわりすぎると改装費用が嵩み、予算を超えてしまう可能性があります。

居抜き物件の最大の魅力は「初期費用の低さ」にあります。このメリットを最大限に活かすためには、過度にこだわらず、既存の店舗をどのように活用するかを考えることが重要です。

また、前店舗から引き継ぐ造作がある場合、造作譲渡料も考慮する必要があります。経営に不測の事態が発生しても対応できるように、しっかりとした資金計画を立てておくことで、想定外の支出に備えられるでしょう。

「0円物件」と呼ばれる無償譲渡物件があることをご存知でしょうか。こうした物件は無償で手に入れられるメリットがありますが、注意すべきデメリットも数多くあります。こちらの記事では「0円物件」の全容について解説していますので、ぜひお役立てください。 

近隣住民と良好な関係を築く

店舗開業に際し、周辺地域との良好な関係を築くことは極めて重要です。とくに、飲食店などは近隣住民との関係が事業の成功に直結します。

まず、店舗開業前には、前の店舗が近隣住民からの苦情を抱えていなかったかを確認しましょう。万が一、前の店舗が悪い印象を近隣住民に持たれていたら、イメージを引きずることはデメリットになります。前の店舗の印象を一新するには、お店の看板を大きく変えるなどの改装が必要です。

初期費用を抑えられるのが魅力の居抜き物件ですが、オーナーが変わったことを効果的に伝え、大幅なイメージアップを図るためには、こうした投資が欠かせません。

また、近隣のイベントにも積極的に参加し、周辺地域の住民とのコミュニケーションを大切にしましょう。近隣住民の声に耳を傾ける姿勢を示すことで、店舗と地域社会との間に信頼関係が築かれ、事業の持続性が高まります。

まとめ

居抜き物件を利用することで、開業の際に初期費用を節約できるメリットがあります。その一方で、開業準備や営業開始後には予期せぬトラブルが発生する可能性も少なくありません。物件の現状を柔軟に受け入れながら、そのメリットを最大限に活用することが求められます。

また、事前に起こりうるトラブルにきちんと対処することで集客や売り上げを伸ばし、利益を確保する鍵となります。

開業するなら、開業後のイメージがしやすく物件数も多い居抜き物件がおすすめです。「居抜きの神様」では飲食店の居抜き物件を豊富に取り揃えておりますので、居抜き物件をお探しの方はぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

居抜き物件のことなら「居抜きの神様」に任せるのじゃ

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