内装工事の耐用年数と減価償却について|勘定項目別の耐用年数や計算方法

2023.10.02

飲食店の独立開業を考えるとき、どうしても気になるのが開業資金や修繕費など、お金のことです。独立開業時は、必要経費をできるだけ抑えたいのが経営者の本音です。

今回は、飲食店の経営に欠かせない内装工事や、設備投資の減価償却に関する基本的な知識を解説します。

減価償却の仕組みや計算方法を知っておくことで、財務分析やキャッシュフローに強い経営者になれます。これから飲食店の独立開業を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
 

目次

減価償却と耐用年数の関係

経営者にとって、避けて通れないのが減価償却です。また、減価償却の計算を知るうえで、耐用年数は必要不可欠です。

ここでは、減価償却についての詳しい解説や間違えやすい耐用年数と、耐久年数の違いについても説明します。

減価償却とは

減価償却とは、時間の経過につれて建物や設備、備品などの価値が減っていく考え方です。たとえば、車を200万円で購入した場合、購入した年に200万円を経費として計上するわけではなく、数年をかけて少しずつ経費として計上するルールがあります。これを減価償却といいます。

なぜこのような計上方法にするのかというと、このような高額な資産は、数年から十数年をかけて、長期に渡って使用するものです。この資産を取得した年に経費計上してしまうと、収益との対応関係がわからなくなってしまうからです。

耐用年数とは

耐用年数とは、資産の一般的な使用可能期間のことです。耐用年数は所有者が決められず、国税庁によって、それぞれの資産についての耐用年数が決められています。つまり、その資産を通常の用途用法で使用した場合の、予定されている期間のことを耐用年数と呼びます。

実際にどれくらい耐久性があるのかということではなく、あくまで資産価値を表す指標です。「耐用年数まで修繕しなくても大丈夫」というものではないため、注意が必要です。主な減価償却資産の耐用年数表は、国税庁のホームページで公表されています。

耐用年数と耐久年数の違い

ここで、間違えやすい耐用年数と耐久年数の違いについて理解しておきましょう。公的に定められた耐用年数とは違い、耐久年数とはメーカーや生産者の判断によって「この期間であれば問題なく使用できる」と公表している年数です。

どちらも近い意味で使用されますが、耐用年数は「公的に定められた期間」で、耐久年数は「メーカーや生産者が独自で定めた期間」という違いをしっかり理解しましょう。減価償却を計算するうえで、必要な数値は耐用年数です。

この耐用年数を理解し把握することで、減価償却の計算をスムーズに進められます。
 

内装工事に関する耐用年数

内装工事に関する耐用年数は、大きく「建物」「建物附属設備」「店舗内装用の器具・備品類」の3つの分類に分かれます。ただし、そのなかで耐用年数が細かく規定されているので、判断が難しい場合は必ず税理士に相談しましょう。

それでは、この3つの分類ごとの耐用年数を詳しく見ていきましょう。

建物

内装工事で造作されたものは、建物の構造物であるかないかに関わらず、造作をした建物の耐用年数が適用されます。建物の耐用年数は、用途・構造ごとに定められています。

飲食店としての耐用年数

【鉄骨鉄筋造・鉄筋コンクリート造の場合】

木造部分3割超え:34年

木造部分3割以下:41年

【木造・合成樹脂造】20年

【木骨モルタル造】19年

【れんが造・石造・ブロック造】38年

建物附属設備

建物附属設備とは建物に固着された設備のことで、建物の価値を上げたり、便利にしたりするうえで必要とされるものです。飲食店において欠かせない冷暖房(天井ビルトイン型)やガス設備、エレベーターやエスカレーターも、建物附属設備に該当します。

建物附属設備は、建物の耐用年数とは区分して適用されます。しかし、木造・合成樹脂、または木骨モルタル造の建物の付属設備については、建物と一括して耐用年数を適用可能です。

【アーケード・日よけ設備】

主として金属製のもの:15年

その他のもの:8年

【店舗簡易装備】3年

【電気設備(照明設備を含む)】

蓄電池電源設備:6年

その他のもの:15年

【給排水・衛生設備、ガス設備】15年

【昇降機設備】

エレベーター:17年

エスカレーター:15年

店舗内装用の器具・備品類

飲食店で使用される店舗内装用器具や備品類の耐用年数も、細部にわたり分類されています。代表的なものでいうと、電気機器やガス機器、パソコンや看板も含まれます。多くの器具や備品を取り扱う飲食店を経営する場合、これらの耐用年数をしっかりと把握することが重要です。

飲食店に必要な器具・備品類(抜粋)

【家具、電気機器、ガス機器、家庭用品(ほかに掲げてあるものを除く)】

電気冷蔵庫、電気洗濯機そのほかこれらに類する電気・ガス機器:6年

氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー(電気式のものを除く):4年

食事・厨房用品

陶磁器製・ガラス製のもの:2年

そのほかのもの:5年

【事務機器、通信機器】

パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く):4年

そのほかのもの:5年

【看板・広告器具】

看板、ネオンサイン、気球:3年
 

減価償却費の計算方法

減価償却の計算には、定額法と定率法の2つの方法が存在します。それぞれの計算によって、経費の計上方法が異なります。

原則、個人事業主は定額法、法人は定率法を利用することとなっています。この2つの計算方法がどのように違うのかを、それぞれ解説します。

定額法

定額法とは、毎年同額の償却費を計上する方法です。定額法のメリットは、計算が単純なので、将来の計画が立てやすいことです。また、定率法に比べて購入した初年度の減価償却費が少ないため、初年度に利益を残したい場合に有効です。

デメリットは、購入した年の節税効果が限られるという点です。法人が定額法を利用するには、届け出が必要だという点もデメリットのひとつです。

【計算方法】

取得価格×定額法の償却率=定額法の減価償却費

建物に関しては定額法を適用するようになっています。

(ただし、平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備と構築物の償却も定額法のみの適用となっています。)

定率法

定率法とは、初年度の減価償却費を高くして、年が経過していくにつれて償却費の額が減少していく計算方法です。

【計算方法】

取得価格(or未償却残高)×定額法の償却率=定率法の減価償却費
 

定率法は、早く費用化ができるというメリットがあります。売上がよい年に設備投資を行い、費用計算することで、節税メリットが大きなものになります。つまり、定額法とは違い、タイミングを見計らった設備投資ができます。一般的に、建物や建物附属設備以外は、こちらを選ぶことが多いです。

定率法のデメリットは、計算方法が複雑という点です。個人事業主が利用する場合は届け出が必要で、少ない人手で複雑な計算をしなければいけないこともデメリットです。

減価償却計算例

120万円の業務用車両(軽自動車)を購入した場合

軽自動車の耐用年数:4年

【定額法】

120万円を定額で4年間かけて支払っていくため、年間30万円の減価償却費を計上するということになります。

ただし、4年目(最終年)は1円を残して経費計上します。

※1円を残すのは、利用中の資産であるということを示すためです。

【定率法】

耐用年数が4年の場合

定率法償却率:0.500

改定償却率:1.000

保証率:0.12499(償却保証額:149,988円)

1年目:120万円×0.5=60万円

2年目:(120万円-60万円)×0.5=30万円

3年目:(60万円-30万円)×0.5=15万円

4年目の未償却残高は15万円です。これに定率法償却率0.5をかけると75,000円で、償却保証額である149,988円を下回ることになります。

以上のことから、4年目は1円を残して149,999円が減価償却費という計算です。

減価償却や耐用年数のほかにも留意すべきことに、税金関係があります。飲食店経営にかかる税金について、こちらで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

まとめ

今回は、減価償却や耐用年数に関する基本的な知識や計算方法について解説しました。飲食店経営において、減価償却の考え方は非常に重要です。

内装工事や設備の耐用年数を把握できれば、後々発生する設備投資や修繕に備えることができ、強い経営戦略を立てられるようになります。

また、あらかじめ資産の耐用年数を把握し、効果的な節税を実践することで、世界的なインフレが続くなかでも長く経営を続けることが可能です。

最近ではインターネット上のシミュレーションサイトや、オンライン会計ツールによって、手軽に減価償却の計算ができるようになっているため、ぜひ活用してみましょう。

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