飲食店の二毛作における営業許可はどうすべき?2つのパターンを解説

飲食店の二毛作における営業許可はどうすべき?2つのパターンを解説

二毛作とは、ひとつの畑で時期を分けて、別の作物の栽培・収穫を行うことです。飲食店での二毛作ビジネスとは、ひとつの店舗で、時間帯や曜日によって営業業態を変えることを指します。

たとえば、週末だけ異なる看板で営業するケースや、夜と昼でまったく違う営業スタイルの展開をするケースもあります。こうした営業スタイルの場合、営業許可はどのように取得するべきなのでしょうか。

この記事では、飲食店の二毛作ビジネスにおける営業許可について、2パターンを紹介します。二毛作ビジネスをご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

飲食店の二毛作ビジネスパターン

飲食店の二毛作は、近年地方・都市部を問わず人気が高まっています。では、飲食店の二毛作ビジネスには一体どのようなパターンがあるのか、この章で詳しく解説します。

既存店舗の営業許可で運営する

飲食店の二毛作ビジネスパターンのひとつ目は「既存店舗の営業許可」を利用する方法です。すでに取得している営業許可を生かすため、スピーディーに開業できる点が強みです。

後日参入する店舗は、既存店舗から雇用される形で店長やオーナーとなることも多くあります。将来的には独立を目指しており、修行するためにこうした業務形態で経営に挑戦するケースから、テストマーケティングのために実施されているケースも散見されます。

また、新たに二毛作として参入する方は、営業許可証の都合で独自の屋号を持つことは難しく、夜営業や週末営業のみ運営する責任者となります。副業として夜に飲食店をやりたい方にもおすすめの方法です。

営業許可を複数取得して運営する

2つ目は「営業許可を複数取得する」ケースです。こちらはひとつ目とは大きく異なり、ひとつの店舗を複数のオーナーで運営することになります。たとえば、昼はオーナーAがイタリアンを、夜はオーナーBがバーを営業するイメージです。

この場合はそれぞれが営業許可を取得し、飲食店には欠かせない「食品衛生責任者」も別々に取得する必要があります。手間はかかりますが、各々異なる屋号を持つことができ、営業を切り替える際は看板も取り替えるケースもあります。

飲食店営業許可証の取得に関して

飲食店営業許可証の取得に関して

飲食店を経営していくにあたっては、営業許可証の存在を欠かすことはできません。飲食業をして店舗を開業する際には、許可証を取得していないと「無許可営業」となり、懲役や罰金が科せられる可能性もあります。

そこで、この章では飲食店に欠かせない営業許可証について取得費用や期間、取得までの流れについてわかりやすく解説します。

取得費用

飲食店の営業許可は「保健所」に申し出ることになります。開業予定の地域を管轄する保健所で取得しますが、申請時に手数料を用意しておく必要があります。

この費用は地域や業種によって異なっていますが、おおよそ2万円以内に収まることが一般的です。たとえば、東京都新宿区の場合、新たに飲食店営業の許可を取得する際は18,300円の手数料が必要になります。

取得期間

営業許可証がなければ飲食店営業を開始できないため、開店前に各種書類を用意し、準備を終えておく必要があります。申請が順調に進んだ場合、約2~3週間ほどで営業許可を取得できるでしょう。

しかし、他店の開業などが込み合っていたり、申請書類に不備があったりすると取得が遅れるおそれがあります。スムーズに営業を開始するためにも、早めに申請要件や書類を整え、営業許可証を取得することが大切です。

取得の流れ

営業許可証を取得する場合、以下の流れを参考に準備を進めましょう。申請費用もあわせてチェックすることがおすすめです。

①管轄の保健所へ事前に相談する

申請開始後の不備を防ぐためにも、管轄の保健所へ事前相談することがおすすめです。営業許可には細かい要件があり、それらをクリアする必要があります。工事を予定している場合、問題なく開業できるか図面を必ずチェックしてもらいましょう。

② 管轄保健所へ申請する

書類を整えて、店舗所在地を管轄する保健所へ申請を行います。必要書類はおもに、食品衛生責任者の資格証明書や店舗の見取り図などです。

書類準備や申請にサポートが必要な場合は、行政書士や専門業者に申請を依頼することも可能です。書類の作成を代行してくれるため、開業に追われている方も安心でしょう。別途報酬などの支払いが必要になりますが、法的なサポートを受けられるメリットがあります。

③ 保健所による検査を受ける

開業予定の店舗は、保健所による立入検査を受ける必要があります。証明や厨房内、手洗いやトイレなど、細かい項目を確認されます。

 ④許可証の取得

検査で問題がなければ営業許可証が取得できます。許可証は、店舗内の見やすい場所に必ず掲示しておかなければなりません。

詳しくはこちらでも解説していますので、ご確認ください。

二毛作ビジネスのメリット 

二毛作ビジネスのメリット 

二毛作ビジネスが今注目を集めている理由には、4つのメリットが挙げられます。以下で詳しく解説します。

昼と夜で業態を大きく変えられる

二毛作ビジネスのメリットひとつ目は「昼と夜で業態を大きく変えられる」という点です。たとえば、ランチに主軸を置いている飲食店の場合、夜間の売上低迷に苦戦するケースもあるでしょう。

しかし二毛作ビジネスによって、夜間はバーや居酒屋に業態を変えることもできます。通常であれば、突然新しい業種へ方針を変更すると既存顧客が戸惑い、離れてしまうリスクがありますが、夜間のみ異なる業種にすることでこれまでのユーザーを遠ざけにくくなります。

異なる客層を開拓できる

二毛作ビジネスではまったく違う業種を展開できるため、これまで関心を持ってもらえなかった客層にもアプローチできます。

たとえば、男性客の多い居酒屋を夜間に営業している場合、昼の業態ではスイーツや喫茶を扱うことで、お酒を飲まない方や女性客も気軽に立ち寄れるようになります。

業態を変えることで、これまで店舗に立ち寄ることのなかったユーザー層からの認知度が上がり、相乗効果で昼夜両者の売上もアップが期待できます。

マーケティングテストができる

マーケティングテストができる

居酒屋業界では、同じ店舗で和食と洋食の2店舗を同時に運営し、二毛作ビジネスを展開している事例が多く見られます。実際に、洋食をメインに提供しながらも、和食を少し楽しみたいというニーズに応える店舗も存在します。これは特に100席以上の大規模な居酒屋でよく見られる手法です。

この二毛作のメリットは、「この地域でどちらの業態が成功するかをテストできる」点にあります。片方の業態が成功した場合、もう片方の看板を下ろし、その業態に専念することも可能です。

さらに、この手法を用いることで、新規顧客層の開拓や、売上の最大化を図ることができます。たとえば、和食と洋食の二毛作によって、昼は主にビジネスマンやオフィスワーカー向けにランチメニューを提供し、夜はカジュアルにディナーを楽しみたいファミリー層やカップルをターゲットにすることが可能です。このようにターゲット層を時間帯で分けることで、効率的に収益を上げることができます。

また、現状の飲食店が不振に陥っている場合でも、出店地域でどの業態が集客に効果的かを確認するために、ゴーストレストラン形式で二毛作を行うことも有効な手段です。これにより、リスクを抑えつつ、新たな業態の可能性を探ることができます。特に、オンラインデリバリーサービスを活用したマーケティングテストは、初期投資を抑えつつ、実店舗を持たないでニーズを探ることができる点で注目されています。

売上を伸ばせる

これまで扱っていなかった業種に参入すると、上記で述べたように「新たな顧客・ニーズ」を創出できる可能性が高まります。これまであまり売れていなかったメニューも、相乗効果で売り上げが上がるケースも珍しくありません。

これまでとは違ったスタッフ・オーナーが、別業種の営業をすることで集客率が上がり、売上を伸ばせることもあります。とくに、既存の飲食店に伸び悩みがある場合や、周囲の新規出店攻勢に悩まされている場合は、二毛作によって他店と差別化を図れることで売上が上がりやすくなります。

​食材ロスを​軽減できる

​食材ロスを​軽減できる

イタリアンとバーなど業種が異なっていても、同じ飲食店であればある程度食材を共有できる可能性があります。これまで食材ロスがあった場合、二毛作営業によってこれらを減らし、全体的な利益率の向上につながるケースもあるでしょう。

昨今は物価高のため、飲食業界では食品の仕入れが重い負担となっており、こうした損失をできる限り削減する工夫が求められます。また、食材ロスの発生は、仕入れたものが無駄になるだけではなく、廃棄コストが発生することも大きな課題です。

とくに都市部では、住居から出るゴミに比べ、事業者系ゴミ回収が高額なエリアもあるでしょう。しかし、二毛作ビジネスを賢く活用することで、食材ロスを利益に変え、ゴミ収集に関するコストも軽減できます。

二毛作ビジネスのデメリット

二毛作ビジネスのデメリット

新しい飲食店の可能性を切り拓く二毛作ビジネスですが、これから挑戦するにあたって把握しておきたいデメリットもあります。この章では、4つの視点からデメリットを解説します。

共倒れのリスクがある

どのようなビジネスでも、顧客がいなければ利益は生まれません。異なる時間帯や曜日に新規出店する二毛作では、円滑に集客できるようにわかりやすい広告を打ち、既存店舗でのリピーターにも周知を促すなど、さまざまな工夫を行う必要があります。

しかし状況次第では軌道に乗らず、2店舗とも利益が思うように生まれない「共倒れ」の状況になる可能性があります。とくに、飲食店は業種によって客層もメニューもまるで異なるため、慎重に出店を検討するべきでしょう。

長時間労働になる可能性がある

二毛作ビジネスを始める際は、後から出店する2店舗目で働く責任者を確保する必要があります。所謂「雇われ店長」がこれにあたります。

しかし、とくに既存店舗の営業許可のみで二毛作ビジネスを始める場合、思うように責任者が雇用できなかったときは、両店舗間で店長業務を兼任せざるを得ないケースも考えられるでしょう。

そうした場合、飲食店に欠かせない仕込みから営業、閉店作業まで、長時間労働をこなさなければ経営できないおそれがあります。飲食店は重労働になりがちであるため、このような状況は大きな負担が圧し掛かります。

トラブルに発展する可能性がある

トラブルに発展する可能性がある

ひとつの店舗で複数の経営者が飲食店を経営する場合、思わぬミスやトラブルが店舗全体の印象に影響するトラブルにつながるおそれがあります。夜はバー、昼はカフェを営業する別店舗だった場合、バーの客層やイメージが昼の営業に影響をおよぼすおそれがあるのです。

同じオーナーならトラブルも把握できているため問題は少ないですが、複数のオーナーがいる場合は情報共有が行き届かず、トラブルが大きくなる可能性もあります。

また、ひとつの設備を複数の経営者が利用するため、設備をめぐる問題が起きることもあります。冷蔵庫の使い方や光熱費の分担など、細かい取り決めをしなければトラブルに発展する可能性もあります。

二毛作で飲食店をする場合は、設備面のシェアにおけるルール作りも必須と言えるでしょう。

人材確保のハードルが上がる

昼夜で異なるコンセプトの業種を営業する場合、マニュアルも異なるため、多くの人材を確保できなければ営業が難しい場合があります。昼の飲食店は主婦や学生などを確保しやすいですが、夜に働ける人材は限られます。

とくに夜間営業に従事できる労働者は法律で年齢制限が設けられているため、昼とは違った人材を確保する必要があります。実際に二毛作営業をする際には、人材確保も早期に視野に入れるべきでしょう。

とくに現在はさまざまな業界が人材確保に苦戦しているため、ビジネスを始める前に十分検討し、計画的に進めることが重要です。

二毛作ビジネスを成功させるには

二毛作ビジネスを成功させるには

二毛作ビジネスは注目度が高いものの、上記で紹介したようにデメリットもあります。では、円満に経営を進め、二毛作ビジネスを成功させるためには、一体どのような工夫をするとよいでしょうか。

需要と利益を重視して業態を選ぶ

需要と利益を重視して業態を選ぶ

飲食店の二毛作ビジネスを成功させるためには、需要と利益を重視することが大切です。たとえば、以下のような工夫をしてみるとよいでしょう。

ビジネス街にある飲食店は、昼にランチ需要があります。一方で、夜間はビジネス街から労働者が退勤し、住民も元々少ないエリアのため、飲食店の需要は減少します。

しかし、帰りに少しアルコールを楽しめるようなバーや、同僚と立ち寄りたくなる飲食店には潜在的な需要があるでしょう。

需要を見誤ると利益が生まれないため、経営を維持しにくくなります。まずは、どのような業種で二毛作営業をすると利益につながるのか、慎重に検討しましょう。

昼と夜の違いをきっちりと打ち出す

昼と夜の違いをきっちりと打ち出す

二毛作ビジネスは「昼と夜」に明確な違いがあると集客効果が高くなります。昼の顧客は、夜も同じ業務形態だと関心を持ってくれない可能性がありますが、まったく違う提供内容で営業していると関心を持って足を運んでくれる可能性が高まります。

また、高級路線の和食店を経営している場合は、新規店舗ではリーズナブルにランチを楽しめる定食屋などにしてみることもおすすめです。一度足を運んだことがあると、既存スタイルの営業中にも暖簾をくぐってくれる可能性が高くなるでしょう。

可能な限り追加コストを抑える

可能な限り追加コストを抑える

二毛作のメリットは、ひとつの店舗で売上の構成から、客層の違いを確認できる点にあります。なるべく設備や人材のコストは押さえ、可能な限り今ある枠組みを生かして営業することで、経営全体のコストが高くなることを防げます。

マニュアル作りや設営にコストがかかってしまいそうな場合は、既存の飲食店を生かした店作りを意識し、フランチャイズの導入で出店コストを抑えることも検討しましょう。

美味しさを追及する

飲食店の経営は、やはり味が鍵を握っています。新規出店時は関心が高く「まずは訪ねてみよう」という新規顧客を獲得できますが、美味しくなければリピートはしてもらえません。味にこだわり、美味しいメニューを用意することでリピーターが生まれ、経営も安定します。

また、食品ロスを意識し過ぎると昼夜のメニューが似すぎてしまうこともあるでしょう。同じ食材を生かしつつ、まったく異なるメニューを用意できると、昼夜いずれの営業も人気を獲得しやすくなります。

既存スタッフで対応可能な仕組みをつくる

二毛作を成功に導くためには、既存スタッフで対応可能な仕組みをつくることも大切です。たとえば、近年は、無人や少人数経営の持ち帰り餃子やスイーツの販売店も増加しており、テナントの有効活用として注目されています。

既存スタッフで注力できるように二毛作を始めれば、人材確保が難航しても経営に大きなダメージは起きにくいでしょう。オーナーがひとりで働き続け、過労になってしまうリスクも避けられます。

二毛作では今ある資源を有効活用することが大切です。無理な経営をするのではなく、安定経営を目指しましょう。

二毛作ビジネスに限らず、飲食店経営では利益率をしっかり計算することが重要です。こちらの記事では、利益率の計算方法と押さえるべきポイントを解説します。

開業するなら居抜き物件がおすすめ

今から飲食店の二毛作への進出を検討している方は、どのような物件を探すとよいでしょうか。安定した経営を目指すためには、出店コストを極力発生させないことが大切です。そこで、開業時におすすめの居抜き物件について解説します。

居抜き物件とは

飲食店経営では、居抜き物件に注目が集まっていることをご存じでしょうか。居抜き物件とは、前に使用していた店舗の設備や内装などがそのまま残されている物件を意味します。

自分好みの飲食店にはしにくくなりますが、厨房設備などを新設する必要がありません。また、居抜き物件は購入・賃貸のいずれも新規物件より安い傾向があり、経営コストを圧縮する効果があります。

居抜き物件のメリット

居抜き物件のメリット

居抜き物件を活用するメリットには、以下の2点が挙げられます。

内装や厨房をそのまま利用できる

内装や厨房をそのまま利用できるため「すぐに開業できる」というメリットがあります。設備の無い状態から新規開業を目指す場合、間取りを保健所側に確認しながら工事をする必要があります。

しかし、すでに飲食店としての実績がある場合は保健所も把握しやすく、営業開始まで迅速に進みます。

前店舗の知名度を引き継げる

居抜き物件はすでに「飲食店であった」と周囲に知られている物件です。そのため、新しく出店する際にも、前の店舗の知名度を引き継ぐことができます。

業種は異なっていても、新しくオープンすると「ここは飲食店だった」と知っている方が立ち寄ってくれることも少なくありません。広告などの経営コストを下げる効果もあるため、メリットは大きいと言えるでしょう。

具体的な居抜き物件の探し方を解説している記事はこちら

まとめ

今回の記事では、飲食店における二毛作について、営業許可を中心に詳しく解説しました。現在飲食店の展開では、ひとつの店舗で2つの業種が展開する二毛作に注目が集まっています。

経営を成功させるためには、まずはコスト面に注目し、利益率アップを目指すことがおすすめです。現在開業を検討している、出店しやすい物件を探しているという方は、コスト節約に効果的な居抜き物件に注目してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

居抜き物件のことなら「居抜きの神様」に任せるのじゃ

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