【長堀橋】「酒パンつつみ」を独占取材|物件も見ずに「借ります」。居抜きで育てたパン飲み酒場

大阪・長堀橋にある「酒パンつつみ」。パンをアテに、ワインや焼酎などさまざまなお酒を楽しめる酒場です。店主は、大阪・岸和田出身の堤さん。

実は「酒パンつつみ」の始まりは、紹介された物件をまだ見てもいない段階での「借ります」のひと言でした。

大がかりな改装もせず、限りなく少ない初期費用で始めた最初の店。営業を続けながら少しずつ手を加え、現在は同じ建物内の別区画へと店を移しています。

なぜ、物件も見ずに決断できたのでしょうか。そこからどのように現在の「酒パンつつみ」ができていったのでしょうか。堤さんに、これまでの歩みと店づくりについてお話を伺いました。

本記事では、堤さんへのインタビューをもとに、物件を見る前の即決から、同じビルでの2度の居抜き、常連客がスタッフになった話まで、「酒パンつつみ」が育ってきた道のりを紹介します。

さらに、首都圏・関西エリアで数多くの居抜き物件を取り扱う「居抜きの神様」の視点から、「酒パンつつみ」の店づくりが支持される理由についても分析します。

長堀橋・南船場でパンとお酒を楽しめる店が気になっている方はもちろん、居酒屋や立ち飲み店など、飲食店の開業や出店を検討している方も、ぜひ参考にしてください。

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目次

【長堀橋】パンをアテに飲む南船場の酒場「酒パンつつみ」とは?

店が入る建物の外観

「酒パンつつみ」は、長堀橋駅からほど近い南船場のビルの2階にある、パンをアテにお酒を楽しめる酒場です。

まずは店の基本情報と立地、店内の雰囲気、メニューから見ていきましょう。

【基本情報】

店の入口
項目内容
店名酒パンつつみ
住所大阪府大阪市中央区南船場1丁目13-15 長堀三栄プラザ2階
アクセス大阪メトロ「長堀橋駅」から徒歩約3分
営業時間水・木・日:18:00〜24:00/金・土:18:00〜翌2:00
定休日月曜日・火曜日(ほか不定休あり)
電話番号なし(予約はInstagramのDMで受付)
設備全席禁煙・駐車場なし
Instagram@shupantsutsumi

※営業時間・定休日は変更となる場合があります。来店前に最新情報をご確認ください。
※2026年10月時点の情報

「酒パンつつみ」の立地と店内の雰囲気

大阪メトロ「長堀橋駅」から徒歩約3分。「酒パンつつみ」があるのは、オフィスやマンション、小さな飲食店が混在する南船場1丁目です。

店があるのは「長堀三栄プラザ」の2階。大きな窓のある店内にはカウンターのほか、窓に沿うようにつくられたL字型のベンチがあり、カウンターで立って一杯楽しむことも、腰掛けてゆっくりワインを飲むこともできます。女性の一人客も多いそうです。

「酒パンつつみ」のメニュー|パンをアテに楽しむ酒場メニューとドリンク

メニューには、「自家製タプナードバゲット付」550円(税込)、「ブルーチーズと粒あんのブルスケッタ」550円(税込)、「玉子焼きサンドイッチ」750円(税込)など、店名の通りパンを使った酒場メニューが並びます。

一方で、「水ナス生ハムサラダ」550円(税込)や「アサリのアジアン炒め」650円(税込)など、お酒と楽しめる一品料理も充実。生ビール、焼酎、日本酒、ジンなどドリンクの種類も幅広く、ワインは店内の冷蔵庫から好みの一本を自分で選べます。

【インタビュー】店主・堤さんが語る、縁と勢いと居抜きで育てた「酒パンつつみ」

なぜ「パン」と「酒」だったのか。話を聞いていくと、堤さんの生い立ちから現在の店までをつなぐ、一本の軸が見えてきました。

ここでは、堤さんの歩みを5つのエピソードに分けて紹介します。

  1. 物件も見ずに「借ります」。「酒パンつつみ」の始まり
  2. 「パンはめっちゃ好き」から生まれた酒場
  3. 同じビルで2度の居抜き。店をやりながら店をつくる
  4. 常連客6人がスタッフになった店
  5. 人との縁が、次の店と次の企画を生む

1.物件も見ずに「借ります」。「酒パンつつみ」の始まり

最初の「酒パンつつみ」。居抜きで営業を始めた当初(左)
営業しながら手を加えた後の店内(右)。
現在はこの場所で「コヨイモ」が営業しています。

大阪・岸和田出身の堤さんは、最初から飲食店一筋だったわけではありません。学校を卒業後は空港で働き、その後、菓子メーカーの営業職へ。一方で、20代の頃から30歳までには自分の飲食店を持ちたいと考えていました。会社を辞めたあとはパン屋やアジア料理店で働き、飲食店の現場も経験しました。しかし、料理人として何年も修業を重ねてから独立したわけではありません。

そんな堤さんに物件の話を持ちかけたのが、客としてよく通っていた飲食店の経営者でした。その方がデリバリーなどで使っていたスペースを使わなくなることになり、堤さんに声がかかったそうです。

そのときの返事が、「借ります」(堤さん)
驚くことに、まだ物件すら見ていない段階での即決でした。

ただ、何も考えずに飛び込んだわけではありません。紹介してくれたのは、堤さん自身が普段から通い、何店舗も店を営む姿を見てきた経営者。その人が勧める物件なら間違いないだろう、という確信がありました。

最初からすべてを整えるより、まず始めてみる。物件を引き継いだあとも、大がかりな改装はせず、使えるものをそのまま生かし、限りなく少ない初期費用で営業をスタート。その後、実際に店をやりながら必要なところへ少しずつ手を加えていきます。

ちなみに、最初の店から変わらず置いているのが焼酎です。パンと焼酎という組み合わせが気になり、「パンと焼酎って合います?」と聞いてみると、

「僕が好きなんで」(堤さん)

特別な理由があるわけではなく、もともと焼酎が好きで置き始めたそうです。

自分の店を持つなら、内装や設備を整え、できるだけ理想の状態までつくり込んでからオープンしたいと考える人も多いでしょう。しかし、最初の「酒パンつつみ」は、先に完成させてから始めた店ではありません。

信頼できる相手かを見極め、腹が決まれば迷わない。
そして、すべてを整えてからではなく、まず始めてみる。

堤さんの店づくりは、そんな決断から始まりました。

2.「パンはめっちゃ好き」から生まれた酒場

パンを使った料理の写真

「酒パンつつみ」の店名にもある「パン」。堤さんは父親がパン職人だったこともあり、幼い頃からパンが身近にある環境で育ちました。ただ、話を聞いていてそれ以上に伝わってきたのは、堤さん自身が本当にパンを好きだということです。

「パンはめっちゃ好きです。めちゃめちゃ好きです」(堤さん)

飲み歩いていた頃も、イタリア料理店などでバゲットやフォカッチャをソースにつけながらお酒を飲むのが好きだったそうです。パンを食事としてだけでなく、酒のアテとして楽しむ。そんな飲み方ができる専門店を、自分でもやりたいと思っていました。

地元・岸和田で昔から親しまれているパン「コーヒーランド」も、オープン当初から提供しています。南船場で、岸和田のパンを知ってもらえる一品でもあります。

とはいえ、最初から現在のメニューができ上がっていたわけではありません。

「最初は何を出していたんですか?」と尋ねると、バゲットやコーヒーランドなどパンを前面に出す一方、冷ややっこなども出していたそうです。現在はメニューもほぼ一新しています。

「最初なんかわけわからんかった」(堤さん)

こちらが「迷走時代があったんですね」と返すと、「今でもありますよ(笑)」(堤さん)

最初から完成したコンセプトがあったわけではありません。
それでも、自分が好きな「パン」と「酒」は変わらない。試し、変えながら、現在の形につながっています。

3.同じビルで2度の居抜き。店をやりながら店をつくる

改装前
工事中
完成後(現在の店内)

最初の「酒パンつつみ」と現在の「酒パンつつみ」は、実は同じ建物の中にあります。

1店舗目は大がかりな工事をせず営業を始め、店をやりながら手を加えていきました。
その後、同じ建物内に空いた現在の区画へ移転。こちらも元カレー店の居抜き物件でしたが、今度は店内の状態もあり、大きく手を入れています。

堤さんが現在の物件で気に入ったもののひとつが、大きな窓です。現在はその窓に沿うようにL字型のベンチがつくられています。

一方、入口の扉は以前からあったものを残し、色を塗って使用。少し色の入った古いガラスもそのまま生かしました。今ではなかなか手に入らないガラスだそうです。すべて新しくするのではなく、残したいものは残す。最初の店を実際に営業した経験を持ってつくった現在の店には、1店舗目とはまた違った選択が見えます。

さらに興味深いのが、移転後の1店舗目です。せっかく手を入れた場所だったこともあり、堤さんはすぐに手放さず、しばらく空家賃(営業していない区画の家賃)を払いながら残していました。

堤さんは以前、難波の繁盛店によく飲みに行っており、そこで働いていたご夫婦と顔見知りになりました。その後、「酒パンつつみ」にも足を運んでくれるように。二人がその店を辞めたことを知った堤さんが「ここで店をやらないか」と声をかけました。それをきっかけに、現在はその場所でご夫婦が「コヨイモ」を営業しています。

「コヨイモ」は、ジビエ料理と芋焼酎を楽しめる店。「酒パンつつみ」とすぐ近くにあるため、片方で飲んだあとにもう片方へ移るお客さんもいるそうです。

1店舗目を始め、営業するなかで手を加え、そこで得た経験を持って次の店へ移る。そして使わなくなった最初の店には、人との縁からまた新しい店が生まれました。

先の形をすべて決めてから進んだのではなく、経験を重ねるなかで次の形が生まれていく。堤さんの店づくりには、そんな流れがあります。

4.常連客6人がスタッフになった店

厨房

取材の中で、とりわけ驚いた話があります。「酒パンつつみ」では、常連客からスタッフになった人が6人もいるというのです。一人なら、ときどき耳にする話かもしれません。しかし、6人となるとなかなかありません。

では、どうやって常連客がスタッフになるのでしょうか。

堤さんの方から声をかけた人もいるそうですが、実際には「接客をしてみたい」「ここで働きたい」と、お客さんの方から働くことを希望するケースがほとんどなのだそうです。

最初はお客さんとして店に通っていた人が、やがて「働く側」に回る。それが一人や二人ではなく、6人。

取材に行った日に働いていたスタッフにも話を聞くことができました。その方の本業は看護師。堺にある病院での勤務を終えてから「酒パンつつみ」に入り、店で働いたあと、終電でまた堺方面へ帰るそうです。

昼間に本業がありながら、なぜそこまでしてこの店でも働くのか。本人に理由を聞いてみると、単なる副業先として選んでいるというより、もともと客として通っていた「酒パンつつみ」への愛着が伝わってきました。

「この店で働いてみたい」と思うお客さんが、これだけいる。

客席で生まれた関係が、そのままカウンターの中へ続いていく。そんなスタッフの集まり方にも、「酒パンつつみ」とお客さんとの距離の近さが表れています。

5.人との縁が、次の店と次の企画を生む

堤さんと仲間の集合写真

堤さんの話を聞いていると、とにかく多くの人が登場します。最初の物件を紹介してくれた飲食店経営者、常連客からスタッフになった6人、「コヨイモ」を営むご夫婦、近隣で店を営む飲食店仲間。

若い頃から、飲みに行けば店主や隣り合わせた人とも自然に話していたという堤さん。そうした飲み歩きのなかで生まれた縁のひとつが、奥様との出会いでもありました。

ただ、堤さんはいわゆる「人脈を広げるのがうまい人」とは少し違います。誰かの懐へ積極的に入り込んでいくというより、話していてもむしろ淡々としている。それでも気づけば、その店や人の中に自然と溶け込み、関係が続いています。

人脈が広いというより、人との関係をその場限りで終わらせない人。

そして、関係ができたあとに何かが生まれそうなら、その縁を先へつなげます。
現在も、そのつながりは店の外へ広がっています。2026年9月には、近隣の飲食店仲間と「ヨコノバツツミ」を開催。「APE BREWING」とオリジナルビールをつくり、それぞれの店が料理を持ち寄りました。

別々だった人や店が出会い、それぞれの持っているものが混ざることで、また新しいものが生まれていく。

その一方で、堤さんは誰の話にでも乗るわけではありません。最初の物件でも、紹介してくれた人を知り、その人の実績を見ていたからこそ、「この人が言うなら間違いないだろう」と、物件を見る前に決めています。

人と自然につながり、相手を見て、信頼できると思えば次へ進むのが早い。

その感覚が、堤さんのこれまでの店づくりには何度も表れています。

本人は「今でも迷走してる(笑)」と話します。それでも、これまでの歩みを振り返ると、迷いは立ち止まっている証ではありません。試しているからこそ、次の選択肢が見えてくる。

人と出会い、溶け込み、信頼できる相手とは次へ進む。そして、迷いながらでも進み続ける。

最初から完成図を描き、その通りに店をつくってきたわけではありません。人との出会いや、そのときどきの選択を重ねながら進んできた結果、スタッフが増え、「コヨイモ」が生まれ、イベントやビールづくりへと広がってきました。

そんな堤さん自身の人との関わり方と行動力が、今の「酒パンつつみ」をつくっているように感じます。

「居抜きの神様」視点で見る「酒パンつつみ」が支持される理由

「酒パンつつみ」の歩みには、パンとお酒の魅力だけでなく、これから飲食店を始める人のヒントになる店づくりの工夫が詰まっています。ここでは、「居抜きの神様」の視点から、「酒パンつつみ」が支持される理由を3つに分けて解説します。

  1. 2度の居抜きを生かし、営業しながら整えていく店づくり
  2. 店主・常連客との距離が近い、小さな立ち飲み酒場という業態
  3. 「パン×酒」の軸と人の縁がつくる、真似のできない店の個性

1.2度の居抜きを生かし、営業しながら整えていく店づくり

「酒パンつつみ」は、同じビルの中で2度、居抜き物件を活用してきました。最初の店では大がかりな改装をせず、使えるものをそのまま生かして営業をスタート。実際に店を動かしながら、必要なところへ少しずつ手を加えていきました。

現在の店も、元カレー店の居抜き物件です。今回は大きく手を入れながらも、気に入った大きな窓を生かしてL字型のベンチを設け、入口の扉や古いガラスは残して使っています。

最初から完璧な店を目指すのではなく、営業の経験をもとに「残すもの」と「変えるもの」を選んでいく。居抜き物件ならではの段階的な店づくりが、無理のない開業と、その店らしい空間の両方につながっている好例といえるでしょう。

2.店主・常連客との距離が近い、小さな立ち飲み酒場という業態

店内はカウンターと、窓に沿ったL字型のベンチで構成され、立って一杯楽しむことも、腰掛けてゆっくり飲むこともできます。女性の一人客も多く、気軽に立ち寄れる雰囲気があります。

この距離の近さを象徴するのが、常連客からスタッフになった人が6人もいるという話です。客席で生まれた関係が、カウンターの中へと続いていく。小さな店だからこそ、店主とお客さん、お客さん同士の関係が深まりやすいのでしょう。

広い店でなくても、立ち飲みと着席を使い分けられる空間があれば、お客さんとの関係は十分に育てられる。「酒パンつつみ」は、そのことを示している店といえます。

3.「パン×酒」の軸と人の縁がつくる、真似のできない店の個性

父親がパン職人で、自身もパンが大好きだという堤さん。メニューは試行錯誤を重ねてほぼ一新されましたが、「パン」と「酒」という軸は変わっていません。地元・岸和田のパン「コーヒーランド」をオープン当初から提供していることも、店の個性の一つになっています。

さらに、使わなくなった最初の店からは「コヨイモ」が生まれ、近隣の飲食店仲間とのイベントやオリジナルビールづくりへと、人の縁が店の外へ広がっています。

堤さんは、人の真似をするより、自分の好きなものを軸に店をつくってきました。好きなものと人とのつながりから生まれた個性は、ほかの店が簡単には真似できない、長く選ばれる理由になっているといえるでしょう。

▶ 出店を検討している方へ|小さな酒場・立ち飲み店を始めるなら居抜き物件という選択肢

今回取材した「酒パンつつみ」は、物件を見る前に借りると決め、居抜き物件を生かして営業をスタートした店です。営業しながら手を加え、同じビル内での移転でも前の店の要素を残しながら、自分たちらしい空間をつくってきました。

飲食店の開業では、厨房設備や給排水設備などを一からそろえると、費用も工事期間もかかりがちです。居抜き物件でこうした設備を活用できれば、初期費用や工事期間を抑えられる可能性があります。

その分の予算や時間を、料理やドリンクの開発、内装の仕上げ、販促など、店の個性づくりに回しやすくなるのも居抜き物件の魅力です。

とくに、カウンター中心の小さな酒場や立ち飲み店は、限られた空間を生かして始めやすい業態です。前の店の内装や設備を引き継ぎ、営業しながら少しずつ自分の店に整えていく進め方は、居抜き物件と相性がよいといえます。

「居抜きの神様」では、大阪エリアをはじめ、居酒屋やバーなどの開業に使える居抜き物件を掲載しています。これから小さな酒場や立ち飲み店の開業を考えている方は、居抜き物件も選択肢の一つとして検討してみてください。

▶ 居抜きの神様 会員登録はこちら
https://godproperty.jp/register

▶ 居酒屋の居抜き物件・貸店舗・テナントの一覧はこちら
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▶ 大阪市中央区の居抜き物件・貸店舗・テナントの一覧はこちら
https://godproperty.jp/osaka/property/osaka/osaka-chuo-city

▶ 長堀橋駅の居抜き物件・貸店舗・テナントの一覧はこちら
https://godproperty.jp/osaka/property/osaka/osaka-city/nagahorihashi-st

居酒屋の開業手順や必要な資格、開業を成功させるためのポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。

これから飲食店を開業したい人へ|堤さんからのメッセージ

店主堤さん

最後に、堤さんから「今後自分のお店を持ちたい」と夢を描いている読者へのメッセージをいただきました。最初に返ってきたのは、とても現実的な言葉です。
「家賃は安い方がいい」(堤さん)

そして、もうひとつ繰り返していたのが、できるだけ早く自分の店を持つことでした。「若いうちにやった方がいい。30でも遅いと思いました」(堤さん)
もちろん、いろいろな店で働き、経験を積むことにも意味はある。それでも堤さんは、「結局、自分の店で経験したらいいかなと」(堤さん)と話します。

自分で店を持てば、うまくいくことだけでなく、失敗も含めてすべてが自分の経験になります。若いうちなら、その後にまた違うことへ挑戦する時間もある。だからこそ、やりたいと思っているなら、必要以上に先延ばしにするのはもったいないと感じているそうです。

堤さん自身も、料理人として長く修業を積んでから独立したわけではありません。料理を誰かに教わってきたわけでもなく、まず自分の店を始めました。
「あと、勢いも大事やね」(堤さん)

ただし、勢いだけで突っ走ってきたわけでもありません。相手を見て、信頼できると思えば踏み出し、やってみた結果から次を考える。

家賃を抑えること。自分の店で経験を積むこと。そして、勢いを持って踏み出すこと。堤さんの言葉を重ねていくと、「最初から100点の物件・100点の内装・100点のメニューを用意しなくても、店は始められる」という考え方が見えてきます。

現在の店で窓や扉、古いガラスを残すと決められたのも、1店舗目を実際に営業した経験があったからこそ。物件も内装もメニューも、始めてから育てていくことができます。前の店の設備や内装を引き継げる居抜き物件は、そうした「始めながら整える」店づくりを後押しする選択肢の一つといえるでしょう。

店づくりについては、「僕は人の真似はあんまりしたくないタイプなんで」(堤さん)とも話します。似たような店をつくるだけでは、いずれ飽きられてしまうのではないか。おしゃれであることも大切だけれど、それだけでは続かない。堤さん自身も、自分の好きな「パン」と「酒」を軸に、自分なりの店をつくってきました。

物件を見る前に「借ります」と決め、限りなく少ない初期費用で店を始め、メニューに迷い、店を移り、人との縁からさらに次の展開が生まれてきた「酒パンつつみ」。

最初から迷わなかったわけではありません。
迷いながらでも、走ってきた。

完成してから始めるのではなく、始めたからこそ見えてくるものもある。
堤さんの歩みは、これから店を始める人に、「まず始めてみる」という一つの選択肢を見せてくれているように思います。

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この記事を書いた人

【城戸 香奈子】

約20年にわたり飲食業界に携わる。外食チェーン本部で商品開発・広報・MD・店舗改善業務などを経験。全国約400店舗・2万回以上の店舗訪問を通じて、売上改善やオペレーション構築に関わる。現在は大阪を拠点に、飲食店の開業・運営・数字の見える化など、実務に根ざした支援を行う。

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