飲食店を開業したい!利用できる補助金・助成金まとめ

飲食店を開業したい!利用できる補助金・助成金まとめ

飲食店を開業したい!利用できる補助金・助成金まとめ

飲食店を開業するときに金銭面で大きな負担となるのが、開業にかかる初期投資です。開業の経済的な負担を減らすには、補助金や助成金の利用を検討しましょう。

この記事では、開業するときに利用したい補助金・助成金を紹介し、利用するときの注意点もあわせて解説しています。

目次

補助金と助成金の違い 

飲食店の開業にあたり、補助金や助成金を有効に使うと、開業資金の負担を軽減できる可能性があります。補助金と助成金は似たような言葉として捉えられがちですが、実際は意味合いが異なります。

補助金と助成金は何が違うのか、それぞれのポイントを押さえておきましょう。

補助金とは

国や地方自治体が予算を組んで、地域経済の発展を目的に事業者を支援する制度が「補助金」です。補助金は、融資とは違って返済しなくてもよいお金ですが、前払いでは支払われず、申請から約1年後に支給されるのが一般的です。

補助金には公募期間があり、1ヵ月間くらいの決められた期間内に申し込みをしなければなりません。予算に応じて採択される事業者数が限定されているため、応募して審査に合格にした事業者のみ補助金をもらえる仕組みです。

予算が出ない場合は、実施をとりやめる年度もあるため、最新の情報をチェックしておきましょう。

助成金とは

「助成金」も補助金と同様に、国や地方自治体の予算から事業者支援のために用意されている制度です。前払いで支払われず、申請から約1年後に支給される点は、補助金と共通しています。

補助金は審査にとおらなければもらえませんが、助成金は応募要件を満たせば受け取れるお金です。それに加えて、助成金の募集期間は長めに設定されているケースが多く、飲食店開業を考えている人には利用しやすい制度でしょう。

利用できる補助金の種類 

補助金は採択される事業者数が限られているため、助成金に比べてハードルは高いですが、審査に通過すれば事業の資金として大きな助けになります。ここでは、飲食店を開業する際に利用を検討したい補助金を5つ紹介します。

ものづくり補助金 

ものづくり補助金は、正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名前の制度で、中小企業や小規模事業者を対象としています。賃上げ、働き方改革、インボイス制度の導入などの対応に追われる中小企業や小規模事業者に対して、生産性アップを目的とした設備投資を支援する補助金です。

飲食店を営む事業者からの申請件数も多く、これまでにレストランやカフェ、居酒屋といったさまざまな業態でものづくり補助金が採択されています。飲食店でこの補助金の対象となる経費は、おもに商品開発や調理に使うための機器の導入費用です。

ものづくり補助金の基本要件となるのは、3~5年の事業計画を策定・実施する中小企業や小規模事業者で「付加価値額が+3%以上/年」「給与支給総額が+1.5%以上/年」「事業場内最低資金が地域別最低賃金+30円」 の3条件すべてを満たす事業者です。

ものづくり補助金には「通常枠」「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」があり、それぞれの募集枠で補助金額や補助率が異なります。通常枠は、飲食店がもっとも該当しやすい募集枠で、新しいサービス開発や生産性向上のための設備投資を支援するものです。

通常枠の補助金額は750万円から1,250万円の間で決まり、補助率は原則1/2ですが、小規模事業者の場合は、2/3まで補助率が上がります。 

参考:ものづくり補助金総合サイト 

IT導入補助金 

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が業務の効率化やDXを進めるために、ITツールを導入するとき使える支援策です。IT導入補助金には「通常枠」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」があり、飲食店でおもに申請されるのはデジタル化基盤導入類型です。

デジタル化基盤導入類型は、業務に使用する会計ソフトや決済ソフト、受発注ソフトなどのソフトウェア購入費が対象で、そのほかにパソコンやタブレットなどの購入費も補助対象とされます。飲食店では、POSレジやクレジット・モバイル決済サービス、モバイルオーダーシステムなどが該当するでしょう。

デジタル化基盤導入類型の補助金額は、補助率3/4の場合、下限なしで50万円以下です。また、補助率2/3の場合は、補助金額が50万円超から350万円となります。 

参考:IT導入補助金2023 

軽減税率対策補助金

軽減税率の導入にともない、事業者は複数税率に対応したレジや受発注システム、請求書作成システムなどを用意する必要があります。中小企業や小規模事業者にとっては大きな費用負担になるため、その経費を一部補助するための制度として軽減税率対策補助金の制度が創設されました。

軽減税率対策補助金には「A型」「B型」「C型」の3分類があります。A型は、複数税率に対応するレジや券売機導入費用を補助するものです。新規購入のほか、改修する場合も対象となります。

A型の補助率は基本的に3/4ですが、3万円未満のレジを1台だけ購入した場合は4/5まで補助されます。補助の上限は、レジや券売機1台あたり20万円です。1事業者あたりの上限金額は200万円までと定められています。 

B型は、受発注システムの改修や入れ替えにかかった費用を支援する項目です。補助率は3/4で、補助金額の上限は発注システムの場合1,000万円、受注システムの場合は、150万円までとなっています。 

C型は、請求書作成に使うシステムや事務機器を購入・改修した際に申請できます。補助率は3/4まで、補助金額は150万円が上限です。 なお、軽減税率対策補助金は2019年9月30日までに導入・改修をおこない、2019年12月16日までに申請した事業者が対象となっていて、申請受付はすでに終了しています。

参考:国税庁 軽減税率対策補助金 

小規模事業者持続化補助金 

小規模事業者持続化補助金

常時勤務する従業員が5人以下の飲食店は、小規模事業者持続化補助金の対象になります。小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者などがみずから持続的な経営計画を立て、そのうえで販路開拓や業務効率化に取り組む際の費用を支援する制度です。

小規模事業者持続化補助金には「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」の2つがあります。一般型の補助金の上限は、通常枠で50万円。賃金引き上げ枠、卒業枠、後継者育成枠、創業枠では200万円です。補助率は、補助対象となる経費の⅔ですが、賃金引き上げ枠に該当する事業者で赤字の場合は3/4になります。 

補助の対象となる経費は幅広く、機械装置などの費用や広告費、インターネット広告を含むウェブサイト関連費、展示会などの出展費、旅費、新商品開発費、資料購入費、借料、設備処分費、委託・外注費などについて申請可能です。

機械装置費は、補助事業をおこなうための機械装置が対象です。新たなメニュー開発に必要な調理機器を購入するなどのケースで、補助金が採択されている事例があります。

参考:東京商工会議所 小規模事業者持続化補助金

インバウンド対応力強化支援補助金 

インバウンド対応力強化支援補助金 

東京都内の宿泊施設や飲食店、免税店などを対象として、外国人旅行客に対応するための取り組みに対して支援をおこなうのがインバウンド対応力強化支援補助金です。インバウンド対応力強化支援補助金の対象となるのは、インバウンド需要への対応を強化するための事業です。

たとえば、インターネット環境を快適にするためのWi-Fi設備導入や、クレジットカード・電子マネー決済機器の導入、洋式トイレの設置などが該当します。また、店内の案内表示やパンフレットを多言語対応にするための費用や、飲食店が外国人向けグルメサイトに情報を掲載するための費用も対象です。

補助金額は、補助対象になる経費の1/2以内とされていて、上限は宿泊施設、飲食店、免税店などの場合、1店舗あたり300万円です。中小企業団体や観光関連事業者グループの場合、1団体あたりの上限は1,000万円までとされています。 

参考:公益財団法人 東京観光財団 インバウンド対応力強化支援補助金 

事業承継・引継ぎ補助金  

事業承継・引継ぎ補助金  

事業承継を機に新たなビジネスをスタートさせる中小企業や、小規模事業者は事業承継・引継ぎ補助金の制度が利用できます。事業承継・引継ぎ補助金は、事業再編や事業統合で経営資源を引き継ぐときに発生する経費の一部補助や、新たな取り組みにかかる費用の補助をおこなう制度です。

事業承継・引継ぎ補助金には「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」の3区分があり、各区分で補助対象になる経費や補助金額が異なります。経営革新枠の対象になるのは、事業承継やM&Aで新たな経営革新に挑戦するための費用で、設備投資費や店舗および事務所の改築工事費用などです。補助率は2/3または1/2で、上限額は600万円から800万円以内です。 

専門家活用枠は、M&Aで他者へ経営資源の引き継ぎを予定している、もしくは他者から引き継ぐ予定のある中小企業・小規模事業者を支援するもので、M&A支援事業者に支払う手数料や、セカンドオピニオンにかかる費用が補助されます。補助率は2/3または1/2で、補助金額は600万円以内です。 

廃業・再チャレンジ枠は、再チャレンジを視野に現在の事業を廃業する予定の人に向けた補助で、解体費や廃業支援費、在庫廃棄費などが対象費用です。補助率は2/3または1/2ですが、補助の上限は経営革新枠や専門家活用枠寄りも少なく、150万円以下となっています 。

参考:中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金

利用できる助成金の種類 

続いては、飲食店を開業するときに申請できる助成金を4つピックアップして紹介します。資金調達でお悩みの場合は、積極的に利用を検討しましょう。

創業助成金

創業助成金は、東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社から提供されている助成制度です。東京都内での開業を促進するため、都内で開業する予定または、開業から5年未満の中小企業などを対象としています。

創業助成金が適用されるには一定の条件を満たす必要があり「公益財団法人東京都中小企業振興公社が指定する創業支援事業19種類のうちいずれかを利用していること」や「事業を所定の年数以上継続できること」「助成対象の期間内に事業を実施できること」「納税地が都内にあること」など、さまざまな条件をクリアしなければなりません。

要件にあてはまる事業者は、事業費や人件費、委託費について最長2年間の助成を受けられます。事業費には、賃借料や広告費、器具備品購入費などが含まれます。委託費に該当するのは、市場調査・分析費です。

創業助成金には下限額があり、最低100万円からの助成となります。上限は400万円ですが、事業費や人件費を対象とした助成の限度額が300万円、委託費を対象とした助成の限度額が100万円となっています。 

参考:TOKYO創業ステーション 創業助成事業 

商店街起業・承継支援事業 

東京都内の商店街を活性化するために創設されたのが商店街起業・承継支援事業です。個人や中小企業が都内の商店街で開業するときに利用できる助成金で、開業に必要な費用の一部が助成されます。

助成対象の業種は、飲食業をはじめ宿泊業や小売業、不動産業、医療・福祉、教育・学習支援業など、さまざまです。助成される経費は事務所整備費と実務研修受講費、店舗賃借料の一部で、項目ごとに助成額が定められています。

事務所整備費は、助成対象費用の2/3以内で250万円までが上限です。実務研修費用は、助成対象費用の2/3以内で6万円まで。店舗賃借料は、助成対象費用の2/3以内で、1年目は月15万円、2年目は月12万円まで助成されます。 

商店街起業・承継支援事業は3つの分類に分かれています。ひとつめは、東京都内の商店街に新規で実店舗を開く「開業」です。もうひとつは、すでに実店舗をもつ事業者が新分野で新たに店舗を開く「多角化」です。さらに、後継者として既存事業を引き継ぐ「事業継承」もあります。

参考:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業 

雇用調整助成金 

雇用調整助成金は、厚生労働省が実施している助成制度で、経済的な事情で事業活動を縮小しなければならない事業者を助成するものです。この制度を利用すると、休業中に従業員へ支払う休業手当が一部助成されます。

助成を受けるための条件として、直近3ヵ月の売上が前年同期と比べて10%以上減っていることや、中小企業の場合は、直近3ヵ月の労働者数の平均が前年同期と比較して10%を超え、なおかつ4名以上増えていないことなどが指定されています。

雇用調整助成金の支給額は、これまで「前年度の雇用保険料の算定基礎となった賃金総額」をもとに1日あたりの助成額を算出する「平均賃金法」で計算されてきました。しかし、令和6年1月からは「実費方式」に変更され、実際に従業員へ支払った休業手当の総額をもとに助成額が算出されます。 

事業者が休業した場合、支払った休業手当額に助成率をかけた金額が支給されます。助成率は中小企業で2/3、中小企業以外で1/2です。従業員ひとりあたりの上限は、令和5年8月1日時点で8,490円です。

教育訓練を実施した場合は、賃金負担額に相当する金額に上記と同じ助成率をかけて算出された額が支給されます。それに加えて、教育訓練を実施したときの加算額としてひとり1,200円が加算されます。 

参考:厚生労働省 雇用調整助成金 

業務改善助成金 

業務の生産性向上のために設備投資や教育訓練などをおこない、さらに事業所内の最低賃金を指定された額以上に引き上げた場合は、業務改善助成金の対象になる可能性があります。業務改善助成金を受けるためには、事業所内最低賃金の引き上げ計画と、設備投資などの計画をあわせて申請する必要があり、計画どおりに事業をすすめたことを報告しなければなりません。

助成額は、設備投資などにかかった費用に助成率を乗じた金額か、助成上限額のいずれか安いほうの金額で決まります。助成率は、賃金引き上げ前の事業所内最低賃金によって変動します。

最低賃金が900円未満だった場合、助成率は9/10です。最低賃金900円以上950円未満だった事業所は、4/5となります。最低賃金950円未満では、助成率が3/4 です。 助成上限額は、引き上げる最低賃金の金額と、労働者の人数によって変わります。

飲食店における事例では、スチームコンベクションオーブンや業務用製氷機、POSレジなどの導入が、業務の効率化につながるとして業務改善助成金の対象となったケースがあります。

参考:厚生労働省 業務改善助成金 

キャリアアップ助成金

労働者の正社員化や、処遇改善をおこなった事業者に支給されるのがキャリアアップ助成金です。キャリアアップ助成金には大きく分けて「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2区分があり、そこからさらに細かく7つのコースが設けられています。

一例をあげると、正社員化支援の「正社員化コース」で中小企業が有期雇用契約の労働者を正規雇用契約に転換した場合、ひとりあたり57万円が支給されます。また、有期雇用契約から非正規の無期雇用契約に転換した場合は、ひとりあたりの支給額が28万5,000円です。

処遇改善支援には、基本給の増額、賞与・退職金制度の導入、社会保険の適用などの各コースがありますが、たとえば「賃金規定等改定コース」では、有期契約労働者の基本給の賃金規定を3%以上増額した場合に助成金が支払われます。中小企業では、賃金引き上げ率が3%以上5%未満でひとりあたりの助成額が5万円、引き上げ率5%以上で6万5,000円となります。 

参考:厚生労働省 キャリアアップ助成金 

補助金や助成金を利用する際の注意点 

飲食店の開業に補助金や助成金を利用する場合は、申請や事務処理を適切におこなう必要があります。補助金・助成金を正しく受給するためのポイントについて、押さえておきましょう。

開業資金としては利用できない 

開業にはまとまった金額を用意しなければならないため、補助金や助成金を開業資金に使おうと考える人もいるでしょう。しかし、補助金や助成金は事前にもらえず、原則として後払いです。

補助金も助成金も、事業をおこなった際にかかった経費の一部を補てんする制度であるため、開業前には支給されません。

こちらの記事では飲食店の開業に必要な届出、手続きの流れについて記載しています。合わせてご覧ください。 

税金を支払う必要がある 

税金を支払う必要がある
税金とグラフ

補助金や助成金には、税金がかかるケースがあります。補助金・助成金は、その種類によって確定申告で事業所得に区分されるもの、一時所得に区分されるもの、雑所得に区分されるものがあり、どの区分に属するかで課税対象になるかどうかが決まります。

国や地方自治体から補助金や助成金を受け取った場合は、事業所得に該当するケースが多いでしょう。個人事業主の事業所得に課されるのは、所得税・個人住民税・個人事業税です。 

市区村町から支給された対価性・継続性のない補助金や助成金は、一時所得として扱われます。一時所得には50万円の特別控除があり、ほかの一時所得と合計して50万円を超えなければ課税対象外となります。 

事業所得にも一時所得にも該当しない場合は、雑所得に分類され、所得税や住民税を支払わなければなりません。 また、法人の場合は個人事業主とは異なり、法人税が課されます。

支給までに時間がかかる

補助金や助成金は、申請してから実際に支給されるまで時間を要します。書類提出後に審査を受けて、認可されるまで1年かかるケースもあるため、申し込んですぐに受け取れるお金ではないということを理解しておきましょう。

不正な申請や虚偽の報告をしない

国から受け取れる補助金や助成金は、不正受給に関して厳しいチェック体制が整えられていて、違反するとペナルティを課される場合があります。

一例をあげると、厚生労働省の雇用助成金を不正に受給したときは、助成金の全額を返還するだけでなく、不正受給した助成額の2割に相当する額と、延滞金を請求されます。さらに、悪質な場合は、事業者名などを公表し、最終的に刑事告訴されるケースもあります。 

不正の疑いがなくても、補助金や助成金を利用した事業者には立ち入り検査がおこなわれることがあります。事前予告なしで突然調査に入られるケースもあるため、帳簿や台帳などの書類を正しく処理して、いつ見られても問題ないようにしておきましょう。

飲食店の開業には、防火管理者が必要です。こちらでは、防火管理者になるための資格や主な業務を解説しますので、合わせてご覧ください。 

まとめ 

飲食店の開業には、一般的に1,000万円前後の初期費用が必要だといわれていて、開業する人にとっては大きな負担になるでしょう。補助金や助成金を積極的に利用して、経済的負担を少しでも減らしましょう。

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