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原価率とは?出し方・計算方法から業種別の目安まで紹介

2024.02.14

原価率は、売上高を100とした場合の原価が占める割合のことをいいます。一般に、原価率を抑えると利益につながると解釈しますが、実際は業種により実態は異なるものです。原価は商品の材料費というイメージでも、実際は材料のみならずさまざまな経費が含まれています。

そのため利益を出すには、材料費やさまざまな経費を含めて割り出した原価率を把握しておくことが重要です。今回は、原価率について詳しく見ていくとともに、業種別の数値の目安、数値への対処法、経営において意識したいことを解説していきます。

目次

原価率とは 

原価率とは、売上高のうち原価が占める割合を示し、この場合の原価とは売上に直接かかわった費用にフォーカスされます。たとえばカレー店の場合、カレーを作るのに必要な食材

・食材ロス・水道光熱費・人件費・運搬費などが原価に相当します。

業種により原価の対象となる項目は若干異なりますが、売上に対してどのくらいのコストがかかっているかを図る指標として用いられるものです。

原価率が高い場合、事業としては利益が少なくなり、消費者にとってはよいものを安く手に入れられる傾向があります。反対に原価率が低い場合は、事業として利益を多く得られる可能性があるものの、消費者にとっては満足度の低下が起こる懸念があります。こうしたことから適切な範囲で調整・維持することが大切です。

原価率の計算方法

具体的な数値は、売上高や売上原価の数値がわかれば、大まかに算出できます。ここは具体的な計算方法を解説していきます。

原価率の計算式

原価率は次の計算式で求められます。

原価率=売上原価÷売上高×100

ここで気をつけたいのは売上原価の求め方で、業種により考え方が異なるので注意が必要です。一般的には仕入高を基準にして在庫も含めて計上しますが、製造業では材料以外に製造中のコストを含めて計上します。

また、売上高は一定期間の売上合計額を指し、一般には一会計期間中で算出するケースが多いです。

売上原価

原価率を計算するために欠かせない売上原価は、次のような計算式で求められます。

売上原価=期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高

棚卸高は、棚卸しを行った際に在庫数と評価額の計算をして割り出すもので、決算で必ず行う処理です。もしも、よくわからない場合は、過去の損益計算書をチェックしてみることをおすすめします。

また、棚卸で差異がでた場合は、棚卸減耗、在庫商品の評価が下がったときの商品評価損も視野に入れておかなければなりません。少し難しい話になりましたが、こうした部分をしっかり理解していくことが原価率を把握するためには重要です。

原価率の目安

原価率の計算方法や考え方をお伝えしましたが、次は事業で役立つよう業種ごとの目安を見ていきます。2020年の経済産業省企業活動基本調査を参考に、それぞれチェックしていきましょう。なお、この調査は従業員50人以上かつ資本金または出資金が3,000万円以上の企業となっているため、規模によっては同じ業種でも数値が異なる可能性があります。

製造業

製造業はおおむね80%程度が目安です。2016年度からの推移は79.8%、79.5%、80.4%、81.1%、2020年度は約80.8%です。売上高の約8割が原価という印象ですが、材料や設備投資、光熱費や多くの従業員がいるといったことを考えると、高めになることも理解できます。

卸売業

卸売業は製造業よりも高く88%前後で推移しています。原価率が高い理由として、製造業者と小売業者の間で商品の流通を担うことが関係しているといえます。また、扱う商品によるところもあるでしょう。

2016年度から順を追って見ていくと、88.3%、88.6%、88.6%、88.2%、2020年度は87.6%と、やはり高めの数値を維持しています。

小売業

小売業の原価率はおおむね71.5%前後で、2016年度から順を追って見てみると71.4%、71.7%、71.8%、71.8%、71.2%と、72%に届かない数値で推移しています。近年はやや低下しているように見えますが、経営方針や規模などによっても若干の差が出てくるでしょう。取り扱う商品によりこの限りではなく、あくまでも参考となる数値です。

飲食業

飲食業は44.1%が平均的で、今回挙げた業種のなかでは最も低いといえます。一般に原価率が低いと利益が多いと解釈しますが、飲食店の場合は原価率の数値だけでなく、食材費と人件費に重きをおいて考えることも必要です。

原価率は売上高に直接かかわる費用で考えますが、飲食業の場合は、人件費が膨らむ傾向があり、一概に原価率だけでは測れないものがあります。また、ウェイトレスなど人の手が必要になる労働環境が多く、季節の旬の食材など変動しやすい商品を扱うこと、自動化しにくい部分があることも関係しています。

こうしたことから、食材費に関する原価率はおおむね30%程度が目安となります。利益や事業の状態をより明確に把握するには、食材費と人件費の合計が、どれほど売上高内で占めるかを示すFLコストも把握しておくことが必要です。

業種により原価率に差があることがわかりましたが、ではなぜ原価率が高騰するのでしょうか。次は、原価率が高くなる要因について解説します。

原価率が高くなる原因 

原価率は計算式の関係からみても、低いほど利益が増えると解釈できます。しかし、目安となる数値よりも高騰している場合は、今後の経営にもダメージを与える可能性があるでしょう。もしも、原価率が高い場合、どのような要因が考えられるのかチェックしていきます。

価格を下げすぎている

商品を販売する際の価格を安く設定している場合、必然的に原価率は高くなります。単純に考えて仕入値が300円の商品を500円と1,000円で売るのでは雲泥の差になります。そのため、利益を確保できるだけの価格設定にすることが重要であり、かといって競合他社よりも高すぎるのも避けなければなりません。

廃棄量が多すぎる

製造・販売する商品のなかには、廃棄処分になるものもあります。こうした不良品が多い場合も原価率が高くなります。たとえば、ネジなど部品をはじめ、食品などまでありとあらゆる商品において、製造過程で不良品が出ない保証はないのです。

しかし、不良品の分の材料費や人件費がかかるために、どうしても原価率が高くなるわけです。原価率が高いと感じている場合は、自社にどれだけのロスがあるかもチェックしてみてください。

信頼できる仕入先を確保できずにいる

材料を仕入れる際は、自社の商品やサービスに見合うグレードや価格のものを選ぶことが大切です。これらのバランスが悪い場合は、原価率が高くなりやすいです。商品を扱う業者のなかには、質の悪い材料でも高く売ろうとしたり、良品のなかに混ぜて売ったりするところもあります。

このようなことがあれば原価率は知らぬ間に高騰するため、信頼できる仕入先を確保することが重要です。また、仕入先のみならず、仕入量についても確認することをおすすめします。自社の経営や方針にちょうどよい仕入れができるかも重要なポイントになります。

業種や企業の規模、経営方針などにより原価率は変動しますが、できるだけ抑えるにはどのような対策が必要なのでしょうか。次は飲食店にフォーカスして、原価率を抑えるポイントを紹介していきます。

飲食店の経営で原価率を抑える方法 

飲食店の経営における原価率は、ほかの業種とは異なる見方が必要ですが、少しでも利益を増やすためには原価率を抑えることが大切です。とはいえ、現状を維持しながら調整するのはなかなか難しい場合もあるでしょう。そこで、いくつか原価率を抑えるポイントを紹介するので、できる範囲だけでも取り組んでみてください。

価格を見直す

また、国内の景気や需要などに合わせて価格を微調整することも重要です。消費者が受け入れられる範囲で値上げすることや、別の付加価値をつけたうえで値上げする、などのような工夫が必要になります。

仕入先を見直す

まず検討したいのが仕入先についてです。仕入高は、取引先の価格設定により左右されるため、もしできるなら値引き交渉を行い、わずかでも値引きしてもらえれば、現状よりも原価を低下させることにつながります。

また、仕入先が1社のみの場合は、ほかの仕入先を探すこともポイントです。既存の仕入先よりも安く仕入れられるところや、値引き交渉しやすい、場合によっては、小口でも対応してくれるなど、自社の都合にマッチする仕入先を確保しておくこともリスクの分散になります。

仕入量を見直す

商品を仕入れるときに、一括で大量仕入れをする代わりにディスカウントしてもらうといった交渉はよくありますが、在庫は原価率に影響するため、適切な仕入れが重要になります。商品のモデルチェンジや季節により入れ替わりがある場合は、こまめに動向をチェックして調整し、大量の在庫を抱えるようなことにならないよう注意しなければなりません。

大量・少量のどちらの場合でも、それぞれに対応できる仕入先を確保しておくのも選択肢の1つといえるでしょう。

在庫管理を見直す

商品をはじめ材料を保管する場合、倉庫など保管スペースや電気代・人件費などのコストがかかります。在庫管理に関するコストも原価率に影響するため、管理の自動化や適切なサイクルで在庫を回せるような仕入量にするなどの見直しが重要です。

材料においては長期的に保管することで劣化や腐敗などを起こすこともあるでしょう。そうなれば最悪、廃棄しなければなりません。こうした在庫の循環も考慮して見直すことが大切です。

原価率の低い商品を売る

提供するメニューや商品にもよりますが、原価率が低いものの割合を増やすことも、原価率を抑えたい場合は、検討する必要があります。一例としては、原価率が低い商品が目立つように陳列する、定期的に原価率の低い商品やメニューのフェアを行うなどが挙げられます。

そのほかでは、メニューのなかであまり人気がないものを廃止する、同じ材料でも異なるメニューを作る、といったことでも原価率を低下させることにつながります。

原価率の低い商品とセットで売る

飲食店のメニューのなかで原価率が低いものがある場合、原価率が高いものと組み合わせることも選択肢の1つです。たとえば、ランチタイムは双方のセットメニューのみ販売する、ディナーは原価率が低いドリンク類を充実させる、ドリンクバーなどを用意するなどが挙げられます。

いずれも店内の回転率を考えて設定することが重要で、どの時間帯でも同じスタンスではなく、時間を区切るか曜日により異なる設定にするなどの工夫が必要です。

ロスを減らす

飲食店で扱う材料の多くは食品や飲料です。そのため、これらが腐敗や劣化しないよう、在庫を循環させることは重要項目です。また、オーダーミスなどで売上として回収できない商品を出さないことや、調理過程においてもミスを最小限にできる仕組みをつくるといったことも意識することで原価率を抑えることにつながります。

また、材料のうち売上に貢献した割合を歩留まり率といいますが、飲食店ではこれが高いほど原価率が低くなります。材料を廃棄することなく活用できるメニューを開発することも、今後の課題といえるでしょう。

オーバーポーションを減らす

お子さまメニューなどにはおもちゃやデザートなどのおまけがついているケースがよくありますが、これらのおまけが必要以上に追加されている状態をオーバーポーションといいます。場合によっては、ライスの大盛り無料やおかわり自由といったケースも含まれます。

同じ料金でこのような過剰なおまけをすると原価率は必然的に高くなり、ライスのおかわり自由などを売りとして営業する場合は、将来的な経営にも影響が出る可能性があります。業態によっては顧客満足度をアップさせる、常連客を増やすことに貢献しますが、やはり原価率が高い場合は、これらを減らすことを検討しなければなりません。

たとえば、お子さまメニューのおまけはおもちゃ1つにする、ライスの大盛りはプラスいくらかの有料にする、おかわり自由は廃止して2杯目まで無料にするなど、ある程度の節度ある対応が挙げられます。

原価率のほかに意識すべきこと  

原価率は、事業を継続するための重要な指標の1つであり、適切な状態にコントロールすることで経費削減にも貢献します。しかし、この指標のみですべてを把握することは難しく、ほかにも意識しなければならない項目があります。原価率とあわせてチェックしておくべき項目について見ていきましょう。

営業利益率

営業利益率とは、売上高のうち営業利益が占める割合を示す指標です。売上高からさまざまな経費を差し引いた金額が営業利益となり、売上高に対してどれだけの割合かを算出します。事業の規模や業種・業態により割合は異なるものの、飲食店の場合は、10%~15%程度が一般的です。

1ヵ月ごとに割り出すことができるので、月単位や年単位で比較できます。営業利益率が低い場合は、それだけ利益が減っている状態なので、利益を増やすための工夫や対策が必要になります。こまめにチェックすることで、早期に適切な対処ができる指標ともいえるでしょう。

粗利

粗利とは、売上高から仕入原価を差し引いた利益のことで、損益計算書でいうところの売上総利益の金額です。ビジネスの現場では粗利と呼ばれることが多く、その事業の基本的な利益を示します。

帳簿上で、売上高に大きな変動がないのに粗利が減少している場合は、原価が高騰していると判断できます。物価の高騰や取引先の値上げなどがないか確認しておきましょう。

このように原価率とあわせて定期的に粗利を意識することで、事業継続に向けて迅速に対処できるようになります。また、景気や世界情勢による影響にも早期に対応できる可能性もあるでしょう。

FLコスト・FL比率

飲食店の経営状態を図る指標として不可欠なのがFLコストとFL比率です。FLコストは食材費と人件費の合計を指し、売上高に対しFLコストが占める割合をFL比率といいます。一般的な目安としては、食材費が24%~40%、人件費が20%~36%で、全体の比率としては60%以下が望ましいです。

また、比率が65%を超えている場合は経営が傾いている可能性が高く、55%以下の場合は、安定していると判断されます。店舗の規模や業態によって若干の変動はあるものの、原価率とあわせてチェックしておきたい指標です。

販売促進費の確保

飲食業でのFLコスト計算は重要ですが、原価率を計算する際にはギリギリの設定ではなく、キャンペーンや周年事業、常連客向けの割引などのために、原価率に余裕を持たせることも大切です。

年間のうち売り上げ低迷期間がある場合でも、原価率に余裕があれば経営を安定させることにつながります。

また、キャンペーン・感謝祭・公式LINEアカウントなどの販促の際に、値引きできる分の余裕ある原価率を計算しておくことで、インパクトある販促活動を実現できます。

飲食店における原価率は、経営にあたって無視できないものですが、開業するには税金も考慮しなくてはならないでしょう。こちらでは、飲食店経営にかかる税金と節税対策について解説します。 

まとめ

原価率はさまざまな業種で数値が異なり、高さや低さへの評価もそれぞれにあります。ただ、飲食店においては原価率だけで判断するのではなく、FLコストやFL比率をはじめ、粗利や営業利益なども定期的にチェックすることが重要です。

こうした経営に関する指標を把握しておくと、自身の事業がどのような経営状態なのかを理解できるとともに、万が一物価の高騰や景気などの影響がある場合にも、早期に対処するための手がかりになります。

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飲食店を開業したい方や初期費用を抑えたい方は、ぜひ居抜きの神様にご相談ください。

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居抜き物件のことなら「居抜きの神様」に任せるのじゃ

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